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佐山展生氏
変革リーダーPROFILE 1 インテグラル株式会社 代表取締役/スカイマーク株式会社 代表取締役会長 佐山 展生氏

Sayama Nobuo
京都大学工学部を卒業後、帝人に入社。1987年三井銀行(現三井住友銀行)に入行し、1999年にユニゾン・キャピタル共同設立、代表取締役パートナーに就任。2004年にM&Aアドバイザリー会社のGCAを共同創業し、06年にはM&Aアドバイザリー企業としては日本で初めての上場を果たす。08年インテグラル代表取締役に就任。ニューヨーク大学大学院でMBA、東京工大大学院で博士(学術)を取得。一橋大大学院国際企業戦略研究科教授、京都大学経営管理大学院客員教授でもある。

―「バルクセール」「入札方式」「戦後最大の破産案件のM&A」「非上場化」をはじめ、M&Aの世界で数多くの日本初を実現されました。次々と新しいことを仕掛けていく佐山さんの原動力はどのようなものでしょうか。

すでに誰かがやっていたら、ファイトが湧きません。誰かがやっているということは、できて当たり前だからです。「そんなのはできないよ」ということができてこそ、達成感があると思います。
希望通りの大企業に就職して、日常に満足している人は、日常を変えようとは思いません。日常に満足している人の成長には限界があります。しかし、人生で何か理不尽だと思うくらいの厚い壁にぶち当たると、どこにも向けられない、何とかしないと潰れてしまうというエネルギーがフツフツと湧いてきます。それを何かにぶつけないといけないと真剣に悩んで、初めて日常を変えようと思うのではないでしょうか。

―小さい頃からそのような気質をお持ちだったのでしょうか。

実は30歳まで、「変革」とは無縁の変化をあまり求めない人間でした。小学校卒業まではいわゆる「いい子」でした。中学・高校ではトコトン野球に打ち込みましたが、大学は何となく過ごして卒業。帝人に入社してから30歳までは、懸命に仕事をする模範的サラリーマンだったと思います。
帝人は本当にいい会社でいくら感謝をしてもしきれないくらいなのですが、あることがきっかけで、「大企業は、頑張っても必ずしも報われるわけではない。理不尽なものなのだ」ということに気づきました。初めて「このやろう」と涌き上がる感情を自覚しました。その状況に納得がいかなかった私は、「何かを変えなくては」と悩み、もがきました。
そして30歳で始めた司法試験に没頭していたある日、三井銀行の募集広告を見つけました。金融機関が初めて中途採用の募集を始めた年でした。技術者募集とは一言も書いていませんでしたが。畑違いの銀行が自分をどう評価するか、本当に興味だけで履歴書を送りました。その面接が「M&A」という仕事との出会いでした。そして、「面白そう」という理由で、その未知の世界に飛び込みました。完全に冒険感覚だったような気がします。
このときを境に、「失敗してもいい」「面白いと思うことをやる」「自分の人生は自分が切り開く」と、人生観が180度変わりました。三井銀行は本当にいい人ばかりで今日の自分があるのは三井銀行のお陰なのですが、大企業ならではの不条理な経験も何度かし、そのたびに「このやろう!」と自分を奮い立たせてきました。自分の中の「このやろう精神」がエネルギーとなり、誰もやってこなかったこと、答えのないこと、常に面白そうだと思う方に自身を突き動かしてきたように思います。

―新しいチャレンジを前にして、どれくらい成功イメージが持てているのですか。

正直、自信なんてまったくないです。新しい世界に入ってうまくいくかなんて誰にも分からないので、基本的に「失敗しても仕方がない」と腹はくくっています。ただ現状のままだと将来、自分が納得しないことだけは明確に分かっています。でも生き方を大きく変えれば、今の閉塞感からは脱出できます。その後うまくいくかどうかは自分の責任で、リスク感覚はあっても失敗への恐れはありません。今まで失敗したことはあると思いますが、性格的にあまり覚えていません。
例えば、オリンピックで金メダルを取る体操選手でも、練習のときには多くの失敗をします。何度も失敗するからこそ、成長するのです。失敗を恐れていては、飛躍はないと思います。

原動力は、「反骨心」と「冒険心」

―企業を変革する上で、最も重要な要素は何でしょうか。

銀行勤めをしていた頃は、会社の善しあしは経営者で「半分」決まると考えていました。しかし、実際に投資をやってみてわかったのは、半分どころか、経営者で「9割以上」決まるということでした。それは、リーダーによって、従業員の意識が大きく変わるからです。従業員の意識が変わり、皆が同じ方向に向いて動けば、みんなの力を最大限に発揮することができます。
私は、よく「犬のしっぽ」の話をします。犬の精神状態はしっぽを見ればすぐに分かります。もし人間に「しっぽ」があったら、ダメな会社では皆しっぽがダランと垂れていて、良い会社では皆ピピピとしっぽを振っています。人間に「しっぽ」はありませんが、人間のしっぽは「目」なんです。良い会社の従業員の「目」は本当に生き生きとしています。そのような目にすることができるのがリーダーです。
基本的に、就任後1カ月で従業員の目の色を全く変えられないリーダーは、会社を変えることは難しいと思います。更に3カ月経って、少しの結果も出せなかったら、その人では難しいという判定を下さざるを得ません。野球の監督も経営者も、結果を出せなかったら退任です。

―変革のリーダーに共通の資質はどのようなものでしょうか。

今まで何百人もの経営者の方と会ってきましたが、業績を飛躍的に上げた素晴らしい経営者は、間違いなく皆チャーミングです。従業員を駒としか見ておらず、自分のことしか考えていない経営者は、怖い顔をしていますし、愛嬌がありません。おそらく、私利私欲を捨て、本当に従業員のことを思って毎日行動していると、「チャーミング」な人になってくるのだと思います。
それと同じくらい大切なのは、「絶対に結果を出すぞ」という強い信念です。業績が芳しくないときに、環境のせいにしても仕方がありません。経営者は結果が全てです。
スカイマークの再建を通じて沢山のことを学んでいます。帝人からスタートし、銀行でM&A、そこから投資とやってきましたが、実際の事業会社に経営という観点で入ったのは初めてです。現場の従業員やBtoCビジネスにここまで深く関わるのも初めての経験です。スカイマークでの経験から学んだことは、結果を出せる経営者に必要な要件は、まず私利私欲がないこと、そして、それ以上に必要なことは、会社を愛して、従業員を愛することだということです。
人は愛されないと、それに答えようとしませんし、「思い」は「愛さないと伝わらない」のだと思います。
スカイマークでは、週2回、羽田で10人~15人ほどの研修がありますが、欠かさず参加し、従業員のみなさんとお話しています。経営者は、「何を考え」、「いつも何をしているか」を伝えなければ、その思いは伝わらないと思います。新体制になり会長に就任した2015年9月29日から、毎週、全社員に写真付きメッセージを送っているのも私の「思い」を伝えるためです。研修で行うフリーディスカッションでは、以前よりも活発に意見や質問が出るようになりました。また、研修後に撮影する集合写真では、従業員のみなさんの表情が明るくなってきていることを実感します。少しでも楽しい職場にしたい、それが少しでも前進しているのを実感するのはとてもうれしいですし、もっと頑張ろうとファイトが湧いてきます。

―最後の質問です。 「変革のリーダー」と「一般的なリーダー」の違いは何ですか?

苦境を立て直せる力のあるリーダーは、平常時のリーダーもできるだろうと思います。が、変革のリーダーは、平常時で誰でもできるような状況なら、「誰か他の人がやったらいい」とやる気にならず、結局、平常時の仕事は受けないと思います。そんなの無理だよということしか受ける気にならない「変革のリーダー」は、いつも「家でじっとしてない」「常に面白そうなことを探している」というのが特徴だと思います。
死ぬときに、周りに何を言われてもいいので、自分自身が「いやぁ、人生面白かったな」と思って死にたいと考えるような人物が、変革のリーダーなのではないでしょうか。

―「変革のリーダー」のご友人ネットワークを数珠つなぎ形式で、インタビュー連載していきます。佐山様が尊敬される変革リーダーをご紹介ください。

ドラッグイレブンや成城石井の社長を歴任され、現在はセブン&アイ・フードシステムズの社長をされている大久保恒夫さんです。
彼は元々、ユニクロや良品計画の改革に携わり、柳井さんも認めるトップコンサルタントでしたが、そこから経営者へと大きくキャリアチェンジをされました。「もっともらしいことを言う」コンサルタントから、「結果を出す」社長へと転身を遂げた、まさに「変革のリーダー」だと思います。

変革リーダー 数珠つなぎ Profile 2
(株)セブン&アイ・フードシステムズ
代表取締役社長 大久保 恒夫氏 Ookubo Tsuneo

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