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ディーラー事業の未来へ向けて勝ち残るための変化への対応策

EXECUTIVE SUMMARY

国内景気の動向を見ると、6年前後の周期で上下するトレンドが見られる。一般的には2020年の東京五輪に向けて景気が上昇していくと見られているが、2013年前後を景気上昇の起点と捉えると、20年までに景気上昇が一服し、厳しい環境に直面する可能性も考えられる。そのような状況を乗り越えていくために、少し長めの時間軸で、これから起こりうる市場の大きな変化を見据え、戦略を考えてみよう。

これからのディーラー事業について考えるに当たり、まずは直近の小売・自動車関連業界の動向を振り返っておきたい。

国内の小売市場全体は、人口減少と高齢化の影響があり、モノを売るというビジネスそのものが飽和状態にある。ただし、その中では高齢者層が成長市場として注目される傾向がある。というのは、国内の高齢者は、人口全体に占める割合が増えているだけでなく、数も増えているからだ。
自動車業界に限らず、この層でシェアを獲得することはビジネスにおいてプラスに働く。
所得については、平均年収が減少傾向にあり、ここ数年は400万円台で推移している。また、年収600〜800万円くらいの中間層が減り、400万円台と2500万円超の層が増加するという二極化の傾向も見られる。

自動車業界に関しては、新車の販売状況や国内の自動車保有台数は例年と比べて大きな変化はなく、横ばいの状態が続いている。中古車についても販売台数等の数値はほぼ例年と同水準だ。ただし、中古車販売を含む自動車関連企業では、新たな売り方やサービスが始まった。例えば、サービスステーション業態では、カーリース事業を手掛けるだけでなく、大手ポータルサイトと提携して新車のインターネット販売を開始する企業が現れた。初年度の目標台数こそ少ないが、新車をECサイトで販売する試みは初めてであり、話題性がある。

顧客データを生かし付加価値を高める

このような背景を踏まえると、今後のカーディーラーにはどのような点が重要になると考えられるだろうか。

消費者の所得面から見ると、例えば年収400万円くらいの層では、車を買うのではなく、共有することによって移動手段を確保するケースが増えるのではないかと予想できる。カーシェアやライドシェアといったシェアリングエコノミーだ。

ライドシェアでは、すでにUberやnottecoなどが広く認知されるようになった。都内なら15分も待たずに目的地へ向かう車に乗ることができて、非常に便利である。料金面でのメリットはまだ小さいが、規制等が緩和されていけばさらに利便性が高まり、普及していく可能性があるのではないか。現状は都市部が中心だが、地方での普及も見込める。企業との提携などを通じて、移動手段がない高齢者が施設と自宅を行き来する際に活用するケースが増えるかもしれない。

ここで押さえておきたいのは、シェアリングは利用するコストを下げるためのものだという点だ。つまり業界全体として見れば価格破壊をもたらす一因であり、カーディーラーの収益にも結びつきにくい。

一方、IoT(モノのインターネット化)によるデータの収集・蓄積・分析は、個々の消費者に向けた商品・サービスのカスタマイズにつながる。データをうまく活用すれば、商品・サービスの付加価値を高めることができ、収益率や利益率の向上にも結びつけられるだろう。この違いを明確に把握しておくことが重要だ。

データを取る環境はすでに整備されている。
実は自動車はIoTの最前線にあるモノだ。2016年の米国の調査では、新規にインターネットに接続された端末として、自動車の台数が携帯電話の台数を上回っている。次の段階は、収集したデータを最適化し、消費者が喜ぶ商品・サービスへ展開していくことだろう。

高齢者層を成長市場と捉える場合は自動運転が一つのキーワードになる。シェアリングエコノミーは販売台数の減少につながるが、自動運転は増加につながる可能性がある。自動運転の普及予測では、楽観的に見た場合で2030年に40%、悲観的に見ても20%くらいになるといわれている。一般的に市場では普及率が20%になると「広まっている」「普及してきた」と実感されることが多い。少し長めの時間軸で考えるのであれば、2030年に向けた動向にも注目しておく必要がありそうだ。自動運転は、高齢者に限らず、運転慣れしていない層にも支持される可能性が高い。

製品とサービスの変化を柔軟に取り入れる

次に、少し先のカーディーラー事業を考えてみたい。
意識しておきたい変化は三つある。業界構造の変化、顧客との関係性の変化、労働市場の変化である。

まずは一つ目の業界構造の変化について考えよう。その対策として、「製品イノベーションによる新規需要の創造」「サービスイノベーションによる進化」「別業態への進出」などが考えられる。
「製品イノベーション」は、魅力ある商品を作り出すということだ。これはメーカー主導で進んでいくことになるが、カーディーラーにとっては短期的な需要獲得につながる。他業種で見ると、携帯電話がわかりや代えすい例だろう。携帯電話の市場は10年前にすでに飽和していた。しかし、それでも市場が衰退しなかったのは、スマートフォンが誕生し、買い替え需要が発生したためだ。携帯電話の買い替えサイクルはかつては5年といわれていたが、今は2年ほどで新機種を買うようになった。その需要により市場が10年保ち続けているというわけだ。

自動車に置き換えると、新車の保有年数は平均7年ほどだが、新たに魅力的な商品が生まれれば「買ってみよう」「買い替えよう」と考える消費者も増える。高齢者や若い人が車を買うきっかけになるかもしれない。また、自動運転が普及すると、運転席という概念が薄れる。自動車がいわば移動する部屋になり、居住性や快適さが求められる。結果として、10年後のカーディーラーは車内のインテリアを売ることになるかもしれない。そのような変化に合わせ、ビジネスモデルや戦略を変えていくことが重要になる。

「サービスイノベーション」は、車というハードを売るビジネスから、ソフトを売るビジネスに移行するということだ。すでにメンテナンスなどを手がけるカーディーラーはあるが、今後はそのようなサービスをより効率化していくことが求められる。そのベースとなるのが顧客情報だ。つまり、お客様のデータを取り、サービスに生かすということである。
すでに述べた通り、情報を集める環境は整備されている。ポイントは、その情報を活用することだ。例えばマーケティングオートメーションのような仕組みを使うと、従来営業担当者が担ってきたフォロー活動が自動化できる。お客様の年収や家族構成を踏まえた上で、ウェブサイトへのアクセス回数や視聴時間などを分析することができ、その結果をもとに、購入や修理の案内を出すことができるようになる。これまで感覚値で行っていた営業活動を効率化でき、データが増えるほど精度を高めることができる。ディーラーが持つ顧客データが重要な資産になるといってもよいだろう。

「別業態への進出」は、企業が持つ強みを生かして多角化を図るということだ。カーディーラーはそれぞれ、売る力、顧客との接点、人を集める力などの強みがある。それを武器として新たな事業に踏み出すことも、業界構造の変化対応に結びつくだろう。

「人のメディア化」を意識して営業活動を効率化する

変化の二つ目は、顧客との関係性の変化である。他業種ではすでにインターネットを通じて商品・サービスを購入するのが当たり前になっている。この傾向は中長期で見ても変わらないだろう。小売業界内では、アマゾンの売り上げが右肩上がりであるのに対し、リアル店舗の代表ともいえるウォルマートが減収減益となった。高額商品はECに向かないと考える人もいるが、すでに生命保険などはインターネットで加入するケースが増えている。その点で自動車は遅れていて、前述の通り、やっと新車のネット販売が始まったばかりだ。

では、カーディーラーの顧客がネットで自動車を買うようになる可能性はどれくらいあるのだろうか。インターネットの利用状況で分けると、顧客は三つのタイプに分けられる。
まずは、すでにインターネットがある社会で生まれ育ったデジタルネイティブ、生まれた時にはなく、途中から使うようになったデジタル移民、そして、今もアナログを好むデジタル鎖国民である。このうち、現在の主な顧客層はデジタル移民だが、これからはデジタルネイティブが増え、デジタル鎖国民がいなくなっていく。デジタルネイティブの特徴は、インターネットを介して自分で探し、問い合わせ、AIのアドバイス(おすすめ商品の提案など)を受け、インターネット上で買うという流れに抵抗感がないことだ。

つまり、これまで営業担当者主体でやってきた興味づけや提案といった仕事が、デジタルネイティブ・移民とのやりとりであれば、インターネット内で完結できてしまうのである。2016年時点で実際に車を購入する際の情報収集源は、インターネットがショールームを上回ってすでに1位となっている。情報収集機能だけでなく、ネット販売に利便性が高くなれば、今後拡大していく可能性は高いといえる。

そこで重要になってくるのが、口コミだ。飲食店舗でも車の選択でも、インターネット上の口コミは大きな影響力を持っている。メディアというとテレビやラジオを思い浮かべる人が多いかもしれないが、そうではない。口コミの信頼性が高い時代では、人がメディアになる。いくらイメージアップ広告を出しても、実際に購入した人、サービスを受けた人、従業員がマイナスの口コミを書けば消費者の評価は下がる。経営としては、従来のメディアの活用法や、広告として発信しているメッセージの見直しを含め、自分の店を選んでもらうための戦略を考えていく必要があるのだ。

「働きたい」と感じる企業を目指す

三つ目の変化は、労働市場の変化である。
労働市場全体の傾向として、求人倍率は今後も上昇し、人財確保が難しくなるのは避けられない。また、人財を確保できたとしても、労働時間が確保できなくなる可能性もある。例えば働き盛りの世代では、介護な ど家庭の事情によってフルタイムで働けない人が増えるかもしれない。若い世代では、複数の会社に勤め、マルチワークによって自分のキャリアを複線化しようと考える人も増えていくのではないか。高齢者も若者も、人生設計や人生戦略が多様化している。カーディーラーとしても、そのような背景を踏まえた上で、多様な働き方のニーズに応えながら、 人財を確保していくことが重要だ。具体的には、仕事環境、福利厚生、労働時間など各種条件を改善し、働き手が「働きたい」と思う企業となることがポイントになるだろう。マルチワーク化が進めば他社と比較される。その中で自分の会社を選んでもらわなければならない。

営業担当者の確保についても同じである。信用力やアピール力がある優秀な営業担当者は、自分のネットワーク内であらゆる商品・サービスを売ることができる。車が売れる営業担当者は、家や保険も売れるものだ。力がある人は自らを個人事業主として位置付けながら、独立または半独立という形で仕事をするようになるだろう。つまり営業担当者のエージェント化である。所属して勤務するという従来のやり方から、契約して売ってもらうというやり方にも対応するための準備が、将来的にはカーディーラー業態にも必要になるかもしれない。そのためにも、会社の価値と魅力を高めて「この会社で仕事をしたい」と思ってもらうことが重要だ。

環境の変化を捉えて人を引きつける経営を

カーディーラーは地域に根ざした企業であり、地域社会に貢献するという使命を持つ会社も多い。そのような社会的姿勢が評価される会社は人を引きつける力を発揮できるだろう。会社の価値が高まれば、インターネット上の口コミ評価も上がり、消費者に選ばれる可能性も高まる。これからのビジネスを考える際には、環境の変化を捉えることが大切だ。同時に、自社がどのように変わり、成長していくかを考え、消費者や従業員に理解・共感される方針と方向性を打ち出していくことが重要だ。

UPDATE
2017.06.14
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