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《今こそデジタルウィンを決断するとき》第3回_今後のデジタル化に向けたアクション

EXECUTIVE SUMMARY

弊社は、良い経営とは、「環境、戦略、組織、人財の一貫性が取れていること」と定義している。環境の変化を機会と捉え、適応することが、経営の基本である。昨今、カーディーラー業界に関係する大きな環境変化は、①トヨタ系列における全車種併売化による変化、②コロナ禍による社会の変化、の二つである。特にコロナ禍による社会の変化は、カーディーラー経営においても「ウィズコロナ」を見据えたリモート、デジタル化をベースとした次代の事業基盤構築を加速させるチャンスである。今こそ、「Digital Win(デジタルで勝つ)」を決断するタイミングである。
弊社は、7月に環境の変化、特にデジタル化に着目し、「カーディーラー経営革新セミナー」を開催した。その内容を3回の連載で紹介する。第3回は、「今後のデジタル化(DX化)に向けて、どのようなアクションを取っていくべきか」について、支援事例などを紹介し、確認する。

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■DX化の定義

従来、DX化は、IT導入によるアナログをデジタルに置き換える、デジタイゼーションであった。アナログをデジタルに置き換えるオンラインセールスなどが該当する。現状、多くの企業においてこのDX化は有効である。
近年、DX化は、IT導入ではなく、情報技術とデータのビジネス活用、データやテクノロジーによって価値を生み出す、デジタライゼーションとして捉えられることも増えてきた。

■DX化の対象

DX化の対象は、経営、事務、既存事業、新規事業、の四つの領域がある。今回は、既存事業領域における①デジタルマーケティング強化、②オンライン商談の仕組み作り、経営領域における③経営ダッシュボードの構築、④DX戦略診断、の四つを紹介する。

■デジタルマーケティング強化(図1)

デジタルマーケティングは、既存事業領域のDX化である。
デジタルマーケティングは、マーケティングオートメーション、SNSマーケティング、Webマーケティングなど、様々な領域がある。今回は、Webマーケティングに関して紹介する。
マーケティングにおける顧客および購買行動の変化を確認する。弊社の全国消費者1,000人意識調査(2020年4月実施)の結果では、情報収集源は、主に販売店での営業担当者からの説明、Web(メーカー、販売店などのホームページ)の二つであった。特に、Webが多くなっており、情報収集の段階は、販売店からWebに変化している。顧客との初回接触としてWebがより重要となっている。

■デジタルマーケティングで直面している課題

デジタルマーケティングにおいて各社が直面している主な課題は、①自社サイトは強化したが、どの位お客様に見られているのか分からない、②自社サイトの社名を隠したらどこの会社でも当てはまる内容である、③SNS(LINEやInstagramなど)を始めたが、フォロワー数が1,000未満で停滞している、④Web広告、SNS施策を実施しているが、効果測定の方法が分からない、⑤担当者をどのように教育したら良いのか分からない、の五つである。
この課題に対し、多くの企業が自社にデジタルマーケティングのノウハウが十分になく、思考錯誤している。この状況を踏まえ「自社サイトをよりよくするためのポイントは何か」を確認する。

■自社サイトのチェック項目と取り組み事項(図2)

自社サイトに関するチェック項目は、①差別化(S)、②可視化(K)、③拡大化(K)、④収益化(S)の四つ、頭文字を取った「SKKS」である。実施において、各項目が適切に実施できていること、この順番で実施していること、が重要である。
第1ステップは、差別化である。検証は、HP上でターゲット視点から自社の特徴、他社との差別化要素を伝えているかである。強化項目は、自社の強み、提供価値は何か、戦略的に獲得したいターゲットは誰か、を明確にすることである。
第2ステップは可視化である。検証は、各集客施策の効果を可視化できているかである。強化項目は、効果の可視化を行うことである。具体的には、Webにとどまらず、Webから来店までの導線を設計する。
第3ステップは、拡大化である。検証は、デジタル・リアルで十分な集客拡大ができているかである。強化項目は、既存のHP上に来店促進コンテンツを強化することである。例えば、LINEから情報を発信し、HPへつなぎ、店頭へという集客施策(Web、SNS)を強化する。
第4ステップは、収益化である。検証項目は、来店顧客を収益化に繋げる仕組みがあるかである。強化項目は、例えば、オンライン上である程度のフェーズを完了するオンライン接客の仕組みやイベント来店時の顧客を収益化する仕組みを作ることである。

■支援事例(図3)

SKKSは、一貫性のある活動であることが重要である。支援における主なアウトプットは、自社の強みの明確化、ターゲットの明確化、ターゲットに対する施策の効果の可視化、HPやSNSでの情報発信や訴求内容の設計、LP作成など実際の来店促進コンテンツの設計、オンライン接客の仕組みの構築などである。
この支援における弊社の提供価値は、三つである。
一つ目は、「マーケティング戦略の一貫性づくりのサポート」である。押さえるべきマーケティングの考え方、ベンチマーク事例を元に、自社での課題と改善策の検討をサポートしている。
二つ目は、「ディーラー業界の知見・ノウハウを活かした実行サポート」である。自動車業界のマーケティング、セールスの支援ノウハウを活かし、自社独自の差別化、可視化、拡大化、収益化の仕組みづくりをサポートしている。
三つ目は、「自社内でPDCAを廻せる仕組みづくりのサポート」である。設定したゴール達成に向けた企画立案、実行、分析、改善施策の検討を行うための思考軸・判断軸を提供し、人財育成も含め、自走できるようにサポートしている。

■オンライン商談の仕組み作り

オンライン商談の仕組み作りは、既存事業領域のDX化である。
なぜ、オンライン商談が必要なのか。主な要因は二つである。一つ目は、収束せず長期化するコロナの第二波、第三波への備えである。二つ目は、顧客のDX化が拡がる中で、販売店としての対応であり、こちらが本質である。
オンライン商談に関する主な相談は、①オンライン商談の仕組みは整えたがオンライン商談の予約件数が増えない、②オンライン商談を実施するも来店での商談と比較して受注決定率が低い、の二つである。これらの解決方法を確認する。

■オンライン商談件数が増えない(図4)

オンライン商談に関するニーズを確認する。Googleの国際比較調査では、日本でも「オンラインで購入できる場合、ディーラーを訪れず、自動車の購入を検討する」との回答が45%であった。今後、デジタルネイティブが増加することを鑑みると、この比率は上がるものと予想する。
この状況を踏まえ、自社HPでオンライン商談を実施している企業が増えている。現時点では、新車ディーラーの半分、中古車および未使用車店ではより高い状況である。
この状況での共通した課題は、予約件数が増えないことである。原因は、オンライン商談の告知をHP上で行っているが、予約件数を増やす工夫や取り組みを十分に実施していないことである。
解決策の一例として、愛知トヨタの新型ハリアーに関するオンラインイベントを紹介する。このイベントは、ZoomやYouTubeを活用し、数千名が視聴した。ここでの工夫は、番組の最後に「興味ある方へ対する商談予約(応募フォーム)を組み込んだこと」である。このタイミングで、必要な顧客情報を取得し、接点を持つ仕組みがあった。
オンライン商談では、オンラインやバーチャルを活用したイベントにより、オンライン商談前に「いけす」を増やす施策が重要である。

■オンライン商談の受注決定率が低い(図5)

オンラインを活用することで顧客接点の数は増加させることができる。一方で、課題は、オンラインの特徴である会うことの真剣さ、本気度が来店と比較すると低いことである。熱感や仕組みによる成約数、受注決定率をいかに上げるかが重要である。

■オンラインを活用した熱感の醸成

オンラインの特性を活かし、人が話すのではなく、デジタルを活用する。一例として、オンライン商談の前に企業紹介のVTRを観せることで自社での購入メリットを知ってもらう、トップセールスが車の良さをVTRで説明する、などがある。

■オンラインtoオフラインの仕組みの構築

完全にオンラインでの完結が難しい場合、オンラインからオフラインへ連携させる仕組みを構築する。オンライン商談の勝ちパターンを自社で構築することが重要となる。
勝ちパターン構築の主な論点は、①商談の事前準備は何があるのか、②即決パターンや来店誘致ステップアップパターンの見極めの基準はどのようにするか、③パターン毎のセールスステップはどのようなものか (商談の流れとセールストーク)、④歩留りを検証するためには何が必要か (プロセスデータ収集と顧客アンケート設計)、の四つである。
代表的な勝ちパターンを、マーケティング、オンライン商談、来店商談の三つのプロセスで紹介する。マーケティング活動の目的は、オンライン商談の予約数の増加であり、KPIはオンライン商談予約数である。オンライン商談の目的は、お客様の熱感の醸成であり、KPIは来店率である。来店商談の目的は、受注であり、KPIは受注率である。仕組みの構築と同様、現場での落とし込みも重要である。

■経営ダッシュボードの構築(図6、7)

経営ダッシュボードは、経営領域のDX化である。
環境が変化する中、店舗でのKPIが数年前と比較して増えているのではないだろうか。店舗でのKPIの増加に伴い、本部での集計や集計結果を経営層に報告する業務も増加する。経営層や本部では結果をベースに施策の検討や落とし込みが必要だが、その工数が不足しているのが実態である。その結果、実行スピードが遅く、成果が出にくい構造になっている。
効果の即効性と実施の難易度で考えると、改善対象は「本部での集計や集計結果を経営層に報告する業務の増加」である。対応策として、経営ダッシュボードの導入、構築を紹介する。
経営ダッシュボードは、ビジネスの状態を可視化し、確認できるようにする経営者・管理者向けのビジネス管理ツールである。本部が行う集計、報告業務の自動化が可能である。
ツール導入前は、営業担当者の実績数値を店長が取りまとめ入力し、本部へ報告していた。本部は各店の実績を取りまとめ、各店の平均、合計など手作業を含め集計し、報告書を作成していた。
ツール導入後は、店舗での実績入力は同じだが、それをシステムにアップすることで自動に集計し、報告書を作成する。導入メリットは、経営層や本部が施策の検討や店舗への落とし込みの工数を確保でき、成果スピードが上がることである。
導入ステップは、①グランドデザインの設計、②デジタルシフトを行う指標の選定、③経営ダッシュボードツールの選定、④店舗での入力方法、格納場所など社内オペレーションの再構築、⑤トライアル実施および効果の検証、⑥指標の増加や本部から店舗へデジタルシフトを行う指標の拡大、である。
成功のポイントは、スモールスタートを意識し、特定部門の特定指標から実施し、効果が検証できた段階で順次拡大することである。
システムベンダーと自社だけでシステム導入を実施した場合、目標としたパフォーマンスが出ないケースが多い。システムベンダーは、テクニカル面でサポートする一方、デジタルをどのように経営につなげるかは専門外である。
これに対して、システムベンダー以外の弊社をはじめとする外部からの支援は効果的である。主な支援領域は、①ビジネス面からの論点整理やスケジュール作成などの導入サポート、②社内オペレーションの再構築、③活用マニュアルの作成および店舗への落とし込み、の三つである。

■DX戦略診断(図8)

DX戦略診断は、経営領域のDX化である。
DX化効果の創出のプロセスとして、戦略、計画・構築、オペレーションがある。DX化を進めるにあたって、客観的な羅針盤があると効果的である。
一例として、弊社のDX戦略診断を紹介する。DX戦略診断の対象は、ビジネスモデル、デジタル環境全体像などの「戦略」領域である。DX戦略診断は、DX化の進捗状況を確認し、投資対効果の視点からどの領域にDXを活用すべきかを把握したうえで、DX化の方向性、取り組むべきテーマ、優先順位を具体化することを目的とする。診断ステップは、ビジネスモデル明確化、現状把握および対応方針の策定、施策およびスケジュール作成の三つである。
診断の主な成果物は、ビジネスモデル明確化では、DXの起点となるビジネスモデルを具体化すべく、市場におけるポジショニング、収益モデル、事業構造モデルなどである。現状把握、対応方針の策定では、DX化の現状を確認し、DX化優先領域を特定すべく、現在のDX化状況、DX化優先領域などである。施策・スケジュール作成では、DX化施策を具体化し、全体計画を策定すべく、DX化施策、DX化優先領域などである。

■やることのリスク、やらないことのリスク

「デジタル庁の創設」など、「デジタル」という言葉を見る機会が増えてきた。今後、デジタルネイティブが消費者の大半になっていくことを鑑みると、経営においてDX化は更に大きなインパクトになるだろう。
DX化の推進は、存続のための必須条件だけでなく、得られる効果も大きい。多くのカーディーラーは、DX化のアクセルを踏むタイミングを模索しているのではないだろうか。
DX化を一気に推進した場合、多くの投資が必要になり、大きなリスクが伴う。DX化の推進は、できる領域、効果が期待できる領域、仮に失敗しても大きな損失とならない領域から、進めるべきである。ノウハウや経験が少ないDX化において「ビジネスパートナー」を活用できる環境もそろっている。必要なことは「決断」である。

3回の連載が、自社の経営におけるDX化の更なる一歩を踏み出す機会になれば幸いである。

 

株式会社 リブ・コンサルティング
チーフマネージャー KOICHIRO.N
チーフマネージャー HIDEKI.K

 

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UPDATE
2020.11.26
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