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【LiB Mobility経営 vol.8】
100年企業という未来へ挑戦するカーディーラーの伝統と、ベンチャーの革新とは

EXECUTIVE SUMMARY

SHV株式会社は、滋賀ホンダ販売株式会社を母体とする企業。代表取締役の丸本博氏も、前職は滋賀ホンダ販売の社長を務めていた。現在は、ドローンを使った農薬散布や動画撮影の事業を展開。変化の時代を生き抜く次世代のカーディーラーの事業モデルを考えたところ、技術活用の面で先行しているドローンにヒントがあるはず、と考えたという。
一方で、新規事業の立ち上げには障壁もあった。未知の分野である農業にどのように進出したのか。農家との接点作りや、農家の課題を把握するためにどのように取り組んだのか。そもそも、なぜ農家の支援だったのか。
事業創出の背景と、カーディーラー事業とのシナジーについて話を伺った。

ドローンの進化を見て車の未来を考える

LiB SHV株式会社様の現在の事業内容を教えてください。

SHV株式会社
代表取締役社長 丸本 博 氏

ドローンによる農薬や肥料の散布と、ドローンでの空撮と地上撮影を含めた動画制作を行っています。農薬や肥料の散布は農家さん向けで、今年が事業開始から2年目。個人の農家さんもあれば農業法人や地域の組合もあります。また、JAさんとの協業も見据え、農業関連全体をお客さんと捉えています。
動画の撮影と制作は、親会社である滋賀ホンダ販売と、他県のカーディーラーなどに向けた事業で、ブランディング用のプロモーション動画や人材育成用の動画などを制作しています。

LiB いずれの事業もドローンという共通点があります。ドローンに着目したのはどのような理由からですか。

私が滋賀ホンダ販売の社長を務めていた時、100年企業にするという方針を立てました。当時は60周年で、40年後の世界はどんな世界だろうと考えたときに、ふと空の世界に目が向きました。車は平地を走りますので、信号や道路の整備が必要になるわけですが、空にはそういう制限がありません。無尽蔵に広がっている世界こそ、新たな事業を考える良い領域だと思ったのです。

LiB そこでドローンが出てくるわけですね。

はい。車は自動化の流れでセーフティブレーキなどを開発していますが、AIを使った制御などはドローンが車よりも先行しています。自動航行が可能で、プログラムすれば無人で勝手に飛んでいってくれます。技術活用が進むドローンを知ることで、車やカーディーラーのあり方が予測できるのではないかと思ったのです。

LiB 100年企業となるためには、陸から空に目線を変えるくらい大きな変化が必要ということですね。

はい。そう思っていますし、そう思っているのは私だけではないと思います。自動車業界を取り巻く環境を見渡すと、業界内では電動化、自動化、MaaSといった変化があり、日本全体では少子化、高齢化という大きな変化があります。また、「所有から使用」の潮流の中で、車を所有する喜びから使用する楽しみに変わったり、AIや電動化によって壊れない車が増えていくほど、カーディーラーの収入源の1つである修理も減っていきます。すでに業界内では残価クレジットや個人リースに対応する動きがあります。サブスクリプション型のように月額で好きな車に乗れるようになったとき、メーカーは車の生産で生きていく道があると思いますが、販売だけに頼るカーディーラーは厳しいと思うのです。

現場の課題は現場で発見

LiB 農業向けというアイディアはどこから生まれたのですか。

ドローンを使って我々にできることは何だろうと考えた時に、地場である滋賀県という土地柄と日本全体の食料問題に目を向けました。農業の分野では人手不足と高齢化で、農家さんはかなり逼迫しています。その分野で手伝えることはないだろうかと思い、ドローンによる農薬散布の代行を事業にしようと思ったのです。

LiB 地域の課題、日本の課題、農業の課題という3つから、事業創出に至ったのですね。経緯は分かりましたが、農業とカーディーラーの仕事は日頃の接点がありません。どのように事業をスタートしたのですか。

最初は、社員のご両親が近くで農業をしていた縁があって、そこをドローンの農薬散布の練習場として借りていました。ただ、間も無くしてご両親が農業を引退することになってしまいました。我々としては練習場がなくなりますし、その田んぼで作っていたお米もなくなってしまいます。それは大きな損失だと考えて、我々が田んぼを借りて、スタッフでお米を作らせてもらえませんかとお願いすることになったのです。

LiB 会社で農業をするということですか?そういえば、会社の入り口に新米の俵がありました。

あれは我々が初めて作ったお米です。田んぼを耕すところから始め、田植え、稲刈りまでやっています。

LiB そうだったのですね。初めての経験で発見が多かったのではないですか。

はい。農家さんが何に困っているのか、機械化で効率を高められる部分を探すには、自分たちで経験することが大事です。実際に農業をやってみて、予想以上に大変であることもわかりました(笑)。

LiB まずは現場を知ることが大事ですね(笑)。

そう思います。僕以外の3人は20代、30代で力がありますが、高齢になると大変です。また、今年はものすごく雨がたくさん降りました。自然の影響を受けること、その影響によって収益も大きく影響を受けることなど、多岐にわたって経験できました。それが我々の財産になったと思っています。

LiB 農家さん側から見るとカーディーラーとの接点が少なく、ドローン活用について知らない方も多かったのではないですか。

ドローンを懐疑的に見る農家さんもいますし、機械に頼らなくても自分でできるという人もいます。反面、2代目、3代目の農家さんで、すんなり採用してもらうケースもあり、ドローン活用を含む機械化への反応は個人差があります。

LiB 機械化のニーズを感じている人もいらっしゃるのですね。

はい、ただ、あくまでも潜在的なニーズで、そこが車の営業と違うところです。車は「車を買おう」と思っているお客様が相手です。一方、ドローンの農薬散布はそもそも農家さんに求められているわけではなく、知らない人もたくさんいます。どういうもので、どんなメリットがあるか伝えるところからスタートしますので、その点で営業は苦労します。

LiB 具体的にはどのように営業しているのですか。

近畿一円を対象として、田んぼを見つけて1件1件ドア叩く営業もしますし、チラシを配り、散布の様子を見に来ていただくといったことも行っています。あとはウェブサイトに導入事例を掲載して、ウェブ経由で知ってもらう機会も作っています。最近は、効果を実感してくれた既存のお客さんが、個人で繋がりがある別の農家さんを紹介をしてくれたり、地域の農家さんの組織を紹介していただくことが増えました。

LiB 農地が広い農家さんほど興味を持つ人が増えるのでしょうか。

面積と大変さは比例しますし、何を作っているかによっても変わります。例えば、和歌山県はみかん農家が多く、みかんの木に農薬を散布します。みかんの木は斜面に植えられていますので、農薬を入れたタンクを斜面の中腹に置いて、ホースで人が歩きながら散布するのです。これを高齢の方々がやるわけですから、大変な労力です。我々がいかに楽な仕事をしているか思い知らされますよね(笑)。

LiB 確かに、そうですね(笑)。

びわの木も大変です。これもホースで散布するのですが、背が高くて上まで届きませんので、木に登って散布します。このような農家さんはドローンに興味を持ってくれることが多く、実際、ドローンによってかなりの労力を軽減できると思います。農家さんにとっては、労力軽減と人手不足を機械化で補えることがメリットですし、きちんと農薬散布することによって収穫量が増えますので、経済面での効果も期待できると思います。

あらゆる接点でお客様と積極的に付き合っていく

LiB 事業を成長させていく上での課題は何ですか。

季節、天気、気温です。農業は自然に左右される業界で、農作物を生産できるのは1年のうち半年ほどです。事業として成長させていくためには、この期間を長くする必要がありますので、九州や北海道に事業エリアを拡大したり、稲、大豆、麦といった生産時期が異なる品種を対象としながら、季節による制限を小さくしていきたいと思っています。ただ、そうはいっても真冬は無理です。
その期間を埋める意味もあって、動画制作の事業が重要になるのです。

LiB 動画制作はどのようにスタートしたのでしょうか。

もともとは親会社向けで、ブランディング、人材育成、CS向上を目指した動画制作をスタートしました。空撮と地上で撮影した動画をアップロードするYouTubeチャンネルは、現在、登録者数2000人以上になりました。これは全国のホンダディーラーでもトップクラスです。プロモーション面では、動画をアップロードすることによって全国2,000人以上の人に無料で情報を届けることができます。動画制作のコストはかかりますが、ここまで効率よく展開できるプロモーションは過去にありませんでした。1回アップロードすれば何ヶ月も見ていただけますので、非常にいいブランディングになります。

LiB 動画とカーディーラー事業のシナジーが生まれているのですね。

現状はまだシナジーというほどではありませんが、ドローン撮影した動画を役立てられる可能性は色々あると思っています。また、技術活用が進んでいるドローンを知ることで、カーディーラー事業を変化させていく先見性や未来感を養うことができ、それもシナジーに結びついていくと思っています。

LiB 親会社以外にはどのような企業の依頼があるのでしょうか。

カーディーラー業界では、親会社向けに作った動画の延長線上で他県のディーラーからも依頼や相談をいただくようになりました。また、コマーシャル動画やプロモーション動画などはカーディーラー以外のニーズもあります。空撮と平面が両方とも撮れて、制作も当社でできますので、ニーズを見ながらお客様を開拓していこうと考えています。

LiB 最後に、カーディーラーのこれからの役割について、お考えをお聞かせください。

カーディーラーは、車の販売や修理を通じてお客様とお付き合いしていますが、今後はそこに止まらず、生涯を通じてあらゆる関わり方をしていくことが重要だと思っています。すでに保険などでお付き合いするケースもありますが、地場産業であることを踏まえると、例えば、お客様同士を結びつけ、カーディーラーを中心としたコミュニティを作っていくことなどが大事です。また、カーディーラーは地域の要所要所に店舗を持っています。このネットワークを活かして、地域の防災などに貢献していくことも重要な役割ですし、あらゆる可能性を模索しながら、地場に貢献していくことが使命だと思います。

LiB 貴重なお話ありがとうございました。

 

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UPDATE
2021.11.09
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