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【LiB Mobility経営 vol.8】
デジタル化推進の実態、地域、規模の差異はあるだろうか?
②組織および実行視点

EXECUTIVE SUMMARY

デジタル化は、カーディーラー業界に限らず、社会全体に大きく影響を与えています。カーディーラー業界を超えた動向を確認することで気づきがあると考えます。
弊社は、2021年4月に全国の中堅中小企業の経営層600人を対象に「デジタル化実態調査」を実施しました。第6号の経営視点に引き続き、第8号では組織および実行に係る項目に係る結果を紹介します。

調査概要

中堅企業をターゲットとし、デジタル化における実態を調査することを目的としました。
対象者分類は、地域軸で一都三県とそれ以外の地域の2分類、規模軸で従業員数が30人から100人未満、100人以上300人未満、300人以上の3分類です。対象者数は、地域軸、規模軸の6分類、各100人です。

調査項目

組織に係る調査項目として、デジタル化実務責任者、デジタル人材について紹介します。また、実行に係る調査項目として、SaaS利用状況および導入効果、AI活用、デジタル化における成果創出ポイントおよび活用におけるハードルについて紹介します。

デジタル化実務責任者【図1】

自社におけるデジタル化の推進責任者を確認すべく、「デジタル化の実務責任者を教えてください」と質問しました。
「経営者」(23.2%)、「役員クラス」(45.5%)、と計68.7%(3社中2社)が「役員クラス」以上と回答しました。
差異は、地域軸では確認できませんでしたが、規模軸において確認できました。
30人以上100人未満の企業では、経営者が27.5%、役員クラスが46.3%、IT部門の責任者が13.4%でした。100人以上300人未満の企業では、経営者が26.2%、役員クラスが38.3%、IT部門の責任者が22.0%でした。300人以上の企業では、経営者が16.9%、役員クラスが50.6%、IT部門の責任者が24.4%でした。
この結果を、企業成長段階に係るグレイナーの企業成長モデルで確認します。グレイナーの企業成長モデルは、社員数をもとに5段階で整理しています。第1段階は、3人から50人の組織で「創造性による成長段階」です。経営者は、プレイヤー兼任で組織をリードし、組織問題は迅速に解消されます。第2段階は、50人から100人の組織で「指揮による成長段階」です。社員が増え、組織が急拡大し、部門や役割が組織化します。第3段階は、100人から300人の組織で「委譲による成長段階」です。経営層は、事業マネージャーをマネジメントする立場になります。第4段階は、300人から1000人の組織で「調整による成長段階」です。横断型の調整機能により、全社最適化の視点で事業・組織が動きます。第5段階は、1000人以上の組織で「協働による成長段階」です。組織横断プロジェクトなどにより、既存事業の変革や新規事業の創造が加速します。
グレイナーの企業成長モデルで捉えると、30人以上100人未満の企業は、第1段階、第2段階に該当し、経営者や役員クラスがリードします。アンケート結果でも、経営者、役員クラスで73.8%となっていることが確認できました。
100人以上300人未満の企業は、第3段階に該当し、分権型組織が形成され、権限委譲が進みます。アンケート結果でも、30人以上100人未満の企業が13.4%であったIT部門の責任者が、22.0%と大きく伸びていることが確認できました。経営者は、27.5%と26.2%で、差異はありませんでした。
300人以上の企業は、第4段階、第5段階に該当し、組織間の調整や協働により成長します。アンケート結果でも、100人未満の企業では25%以上であった経営者が、16.9%と低下していることが確認できました。

デジタル人材【図2】

自社におけるデジタル人材の過不足に対する認識を確認すべく、「デジタル人材について教えてください」と質問しました。
「足りていない」(50.2%)、「大いに足りていない」(25.7%)、と計75.9%(4社中3社)が「不足している」と回答しました。
差異は、地域軸、規模軸共に確認できませんでした。地域、規模に関係なく、現時点ではデジタル人材が不足している状態でした。
デジタル人材を社内に抱えず、外部にアウトソーシングすることも経営の選択肢になると考えました。アンケート結果では、「社内に必要ない」は3.5%と少数で、現時点では社内にデジタル人材を確保することを前提とした企業が多いことも確認できました。
自社の事業活動を鑑み、社内で確保するデジタル人材を定義することも重要です。

SaaS(Software as a Service)の利用状況【図3】

SaaSの利活用状況を確認すべく、「デジタル化におけるSaaSの利用状況について教えてください」と質問しました。
「利用している」(26.2%)、「利用していない」(53.3%)、と半数以上の企業が、まだ利用していませんでした。
差異は、地域軸、規模軸共に確認できました。
地域軸では、「利用している」は、一都三県が33.0%(3社中1社)、その他の地域が19.3%(5社中1社)でした。一都三県でのSaaS利用は、その他の地域の1.7倍であることが確認できました。
地域差の外的要因として、SaaS事業者が一都三県を中心に営業活動をしており、その他の地域での事業展開が進んでいないことがあると認識しています。SaaS事業者とその他の地域の企業とのマッチングをすることで、SaaSの利活用が加速すると考えます。
規模軸では、「利用している」は、30人以上100人未満が13.0%、100人以上300人未満が27.5%、300人以上が38.0%でした。300人以上の企業は、30人以上100人未満の企業の約3倍でした。

SaaSの導入効果【図4】

「利用している」企業に対して、導入効果を確認すべく、「デジタル化におけるSaaS導入の効果について教えてください」と質問しました。
「非常に効果があった」(19.1%)、「効果があった」(65.6%)、と計84.7%が「効果があった」と回答しました。
差異は、地域軸、規模軸共に確認できませんでした。地域、規模に関係なく、導入効果が高いことから、全ての企業においてSaaS導入を検討、試行することは有効であると考えます。

AI活用【図5】

AI活用の実態を確認すべく、「AI活用について教えてください」と質問しました。
「既に活用している」(11.8%)、「今後、活用予定である」(21.3%)、「活用イメージが持てれば、前向きに考える」(38.7%)、と計71.8%が「活用意向」があることを確認しました。
差異は、地域軸、規模軸共に確認できました。
地域軸では、「活用意向」では差異はありませんでしたが、「既に活用している」は、一都三県が16.7%、その他の地域が7.0%でした。一都三県での活用は、その他の地域の2.4倍であることが確認できました。
規模軸では、「活用意向」は、30人以上100人未満が63.0%、100人以上300人未満が72.5%、300人以上が80.0%でした。「既に活用している」は、30人以上100人未満が3.0%、100人以上300人未満が12.5%、300人以上が20.0%でした。300人以上の企業は、30人以上100人未満の企業の6.7倍でした。

イノベーター理論による市場浸透の検証【図6】

「新しい商品・サービス、ライフスタイルや考え方」などが世の中に浸透する過程を示すマーケティング理論として、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が提唱した「イノベーター理論」があります。イノベーター理論では、イノベーター(革新者)が市場全体の2.5%、アーリーアダプター(初期採用者)が同13.5%、アーリーマジョリティ(前期追随者)が同34%、レイトマジョリティ(後期追随者)が同34%、ラガード(遅滞者)が同16%、としています。
イノベーター理論をもとに、①SaaS導入、②AI活用の浸透度合いを確認します。
SaaS導入では「利用している」が、一都三県では33.0%、その他の地域では19.3%でした。どちらも「アーリーマジョリティ」の段階と言えます。また、規模軸では、30人以上100人未満の企業が13.0%、100人以上300人未満の企業が27.5%、300人以上の企業が38.0%でした。30人以上100人未満の企業では「アーリーアダプター」、100人以上の企業では「アーリーマジョリティ」の段階と言えます。
AI活用では「既に活用している」が、一都三県では16.7%、その他の地域では7.0%でした。一都三県の企業では「アーリーマジョリティ」、その他の地域の企業では「アーリーアダプター」の段階と言えます。また、規模軸では、30人以上100人未満の企業が3.0%、100人以上300人未満の企業が12.5%、300人以上の企業が20.0%でした。300人未満の企業では「アーリーアダプター」、300人以上の企業では「アーリーマジョリティ」の段階と言えます。

デジタル化の成果創出ポイント【図7】

デジタル化において「成果があった」と回答した企業に対して、成果創出ポイントを確認すべく、「デジタル化における成果創出のポイントについて教えてください」と質問しました。
回答の上位は、「具体的な成果イメージがあった」(41.5%)、「デジタル活用の経営における重要度が高かった」(41.1%)、「取り組むテーマが適切だった」(37.5%)でした。デジタル化の利活用における重要性や具体性など、「方針・検討段階」が重要であることが確認できました。
差異は、上位3項目の順位に違いはありますが、地域軸、規模軸共に確認できませんでした。地域、規模に関係なく、組織体として共通の成果創出ポイントになると考えます。

デジタル化の活用におけるハードル【図8・9】

デジタル化の活用におけるハードルを確認すべく、「デジタル化の活用におけるハードルを教えてください」と質問しました。デジタル化が進んでいる企業と、進んでいない企業に分け、結果を確認しました。
「デジタル化が進んでいる」企業における上位は、「スキルのある人材が不足している」(51.3%)、「費用負担が大きい」(30.1%)、「投資対効果がわからない」(22.9%)でした。
差異は、地域軸では確認できませんでしたが、規模軸において確認できました。第1位、第2位は同じでしたが、第3位が、30人以上100人未満が「業務オペレーションへの影響が大きい」と業務に係る要因、100人以上300人未満が「投資対効果がわからない」と事業に係る要因、300人以上が「セキュリティ面が不安である」と社会的責任に係る要因でした。
「デジタル化が進んでいない」企業においても上位は、「スキルのある人材が不足している」(47.8%)、「費用負担が大きい」(30.4%)、「投資対効果がわからない」(29.7%)と、「デジタル化が進んでいる」企業と同じ結果でした。「デジタル化が進んでいる企業」と「デジタル化が進んでいない企業」の間で、差異はありませんでした。
差異は、地域軸では確認できませんでしたが、規模軸において確認できました。第1位、第2位は同じでしたが、第3位が、30人以上100人未満が「デジタル化しなくても現状で十分である」「何から手を付けて良いのかわからない」と業務に係る要因、100人以上300人未満と300人以上が「投資対効果がわからない」と事業に係る要因でした。

まとめ

第6号、第8号の2回で紹介したアンケート結果を通じて、デジタル化は戦略策定や計画段階から実行段階であることが確認できました。
組織視点では、多くの企業において組織の成長段階を鑑み、適切な責任者が推進している一方、デジタル人材は不足していました。
SaaS導入、AI活用は、既存の事業活動に大きな影響を与える変化です。実行視点では、SaaS導入の100人以上の企業、AI活用の300人以上の企業が、既に「アーリーマジョリティ」の段階であり、予想以上に導入や利活用が進んでいました。SaaS導入したほとんどの企業が「効果あり」と回答しており、全ての企業においてSaaS導入を早期に検討、試行することは有効と考えます。
デジタル化の活用におけるハードルは、意外にもデジタル化が進んでいる企業とデジタル化が進んでいない企業ともに、スキルのある人材不足、費用負担、不明確な投資対効果、と同じ結果でした。
デジタル化の成果創出ポイントは、「方針・検討段階」の重要性認識、活動の具体性でした。デジタル化におけるハードルが、進んでいる企業と進んでいない企業の結果が同じことを鑑みると、経営者の「決断」が大きいと考えます。
弊社は、急速に変化する現代において、経営者の方の「決断」をサポートすべく、関連する情報を調査し、共有していきたいと考えております。これらの情報が、貴社の次代への進化加速の一助になれば幸いです。

 

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2021.11.09
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