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【LiB Mobility経営 vol.10】
業務の無駄を削減!盤石な体制をつくり新たなチャレンジを続けるカーディーラー経営

EXECUTIVE SUMMARY

兵庫ダイハツ販売株式会社は、社内業務の効率化に積極的に取り組んでいるカーディーラーの1つ。
保険、アフター、残クレの取り扱いなどによってカーディーラーの業務範囲が広がっていく変化に対応していくため、負荷が大きい業務の削減や自動化を行っている。効率化の具体的な手段は、自工程完結の浸透とマクロやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用する自動化。その前提として、各拠点にてヒアリングを行い、現場の声を踏まえながら、各拠点にてヒアリングを行い、現場の声を踏まえながら、効率化できる業務を抽出している。直近半年の成果としては、手作業を中心に行っていた業務時間を約半分に圧縮。店舗の改善意欲も高まり、全社一丸となって業務改善に取り組む体制が整ってきた。その取り組みの背景と内容について話を伺った。

無駄とやり直しの削減がスタート

LiB 阿部様は2017年に兵庫ダイハツ販売の社長に就任されました。当時の思いとして、どのような会社にしていきたいと考えていましたか。

兵庫ダイハツ販売株式会社
代表取締役 阿部 薫 氏(写真右)
監査室 参与 藤原 悟 氏(写真左)

阿部薫氏(以下、敬称略) 社員500名以上の規模としては、同規模のディーラーと比べて利益が少ない状態でしたので、会社として1つにまとめて、同じ目標をもって成長していけるようにしたいと思っていました。当時は7億円前後の利益でしたので、社内では15億円は目指せると伝えましたし、10億は十分に狙えると思っていました。また、当時は研修制度などが固まっていませんでしたので、そこにも着手して人をつくる事にも力を入れたいと思っていました。

LiB 利益と人の両面で会社の基礎の部分をレベルアップさせるということですね。

阿部 はい。その点はまさにリブさんの支援で大変お世話になっているところでもあります。

LiB 兵庫ダイハツ販売様では、デジタル化の取り組みに力を入れています。その背景にも利益改善の方針があったのでしょうか。

阿部 スタートは違いました。30,40年ほど前のカーディーラーは、車を売っていれば仕事になりました。追加の仕事があるとすれば、自動車保険をプラスルくらい。ところが今はやることが増えています。また、仕事の範囲が広がり、量が増えたことによって、やり直しの仕事も増えています。これは無駄ですし、やり直しが発生することによって次の仕事にも影響します。そこで考えたのが、業務を減らすことです。デジタル化などの取り組みは最終的には業務フロー改善につながるのですが、その前に業務を減らすことから取り掛かったのです。

RPA化の前に業務ルールの整備が必要だった

LiB 無駄な業務の洗い出しはどのように行ったのですか。

阿部 社内でアンケートをとり、日々の業務でもっとも時間がかかっている業務、負荷が多いと感じる業務が何かを聞きました。工数が多い業務を洗い出し、見直し、減らし、変えて、最終的には無くす、という流れで取り組んでいこうと考えたわけです。例えば、お客様向けに毎月送っている店舗通信や業販通信などの工数が多いという声があり、これらはコミュニケーションをとるために必要なのですが、工数がかかっているなら、ということで、少し発行回数を減らし、ホームページとブログをしっかり作っていく方針に切り替えていきました。その後、藤原参与からトヨタ自動車で行っている自工程完結のプロセスについて聞き、2年ほど前から取り組むことになりました。

LiB カーディーラーの業務は多岐にわたりますので、工程の見直しは大変だったのではないですか。

藤原悟氏(以下、敬称略) 自工程完結の導入とほぼ同時に、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入も検討していました。関連会社もデジタル化の取り組みに着手し始めていたため、我々も情報収集と勉強を始めようとしていたのです。ただ、RPAには学習能力がありません。あらかじめ作業させる内容をきちっと設定する必要があり、その部分のルールが作れない状態だったのです。

LiB ロボット化するための土台から固める必要があったわけですね。

藤原 はい。契約を例にすると、まずはきちんとした契約ができるかどうかが大事です。お客様と商談し、要望に合う車を決めて、「これでよろしいですね」となってご契約いただくのですが、その後、「やっぱり色を変えたい」「オプションを変更したい」といったことが起きます。業務に関する社内のルールについても、拠店ごとにローカルルールがいくつもありましたし、ルールを把握していない社員もいます。これではRPA化できないため、まずは業務フローの部分の整理が必要になったのです。まず現状の業務を固めなければ、将来的に効率よく仕事ができる環境作りには結びつきません。そこで一昨年は本社、昨年は拠店において、業務のルールを落とし込み、その中で、「この業務は必要?」と感じるような「モヤモヤ」を明らかにしていくことにしたのです。

LiB 具体的にはどのように取り組んでいったのですか。

藤原 指導員となるメンバーを4人育成して、拠店に分散して取り組んでいく体制を作りました。この4人は中部品質管理協会公認の講師で、拠店の今の問題点を解決していく役割です。拠店において、店長レベルで実行可能なことはすぐに行います。拠店共通の課題は本部が判断して、全社統制で実行し、徹底します。このような取り組み方で自工程完結を進めていきました。

LiB デジタル化する業務も、その中で明らかになっていったのですね。

藤原 そうですね。このルーティーン業務を手作業で行うのはもったいないなどと感じる業務を抽出して、RPA化やマクロを使った解決策を考えていきました。当初はRPAを念頭に置いて考えていたのですが、マクロで解決できるものも意外と多くあるのです。

LiB 全社統制は他のカーディーラーでも難しいという声を聞きます。改善の取り組みを浸透できたポイントは何ですか。

藤原 まずは話を聞く事が大事です。大風呂敷を広げるくらいの立ち位置で、各拠点で「困っていることはないか」と聞く事からスタートしました。また、取り組みがスタートした後は、情報共有が大事だと思います。例えば、今も月2回行っている自工程完結の会議では、毎回議事録を作り、誰が何を言ったか、誰がいつまでに何をするかを記録しています。これを資料として共有することで全体が把握できるようになります。各店の店長も他店舗がどのように取り組んでいるかわかります。

LiB 会議には誰が参加しているのですか。

藤原 各店の店長、工場長、店舗の総務担当です。総務担当は本社の管理本部付けで、自工程完結などについて勉強していますので、拠店では旗振りの立ち位置です。

負荷が大きかった業務を600時間分削減

LiB 定量面での成果はどれくらい得られているのでしょうか。

藤原 業務の見直しでは、2021年4月から10月の実績で、従来1,077時間かかっていた業務が622時間になりました。この数字からも、いかにも無駄な業務が多かったかがわかります。マクロ化については、手作業で行っていた58時間の仕事が3.5時間になり、今後はRPA化も積極的に取り組んでいく予定です。

LiB 非常に大きな成果が出ていますね。先ほど、店舗通信や業販通信の簡素化という話がありましたが、他にはどんな業務を削減していたのですか。

阿部 代車の管理や店舗間で試乗車を動かす業務などです。

藤原 年末調整や業務決済も効率化しました。また、法人営業では、メーカー経由の受注を店舗で受注した時と同じように一枚一枚注文書に起こしていましたが、この事務処理も工数がかかっていましたので簡素化しました。

阿部 メーカー側の取り組みとして、Dポータルで入庫予約ができるようになったことも効率化につながっています。現在、当社の会員の半分が入庫をウェブ予約しています。店舗が動いていない時でも予約が入りますし、営業担当者からお客様に連絡する業務も減りましたので、これも成果につながった要因の1つです。

改善や効率化を求める店舗発信の声が増えた

LiB 業務の効率化が実感できるようになり、各拠点の反応も変わっていったのではないですか。

阿部 そうですね。業務改善の取り組みは、本社側は「こういう効果が得られそうだ」とある程度まで予測できているのですが、店舗展開する時には、各店舗で業務の棚卸しからスタートしてもらう必要があります。これは現場が「やらされ感」を感じてしまう原因です。できるだけ早いタイミングで、小さな成功でもよいので、効果を実感できるようにすることが大事です。煩雑に感じていた手作業がなくなるといったことは、効果を分かりやすく実感できます。

藤原 効果が出ると意識も変わります。スタート時には「どうせ変わらないだろう」と思っていたとしても、効果がわかることによって、次はこれも効率化したい、この業務を見直してほしい、といった声が出てくるようになるものなのです。

LiB 業務効率が良くなると、新たな取り組みに人や時間が使えるようになります。これからどんなことに着手していく予定です。

藤原 効率化については、2022年は社員のマスターデータを作りたいと思っています。現状は社員個々のデータをあっちこっちから引っ張ってきていますので、効率化できる余地が大きいと思っています。

阿部 事業の面では、例えば、コロナ禍によってオンラインのコミュニケーションが大きく進展しましたので、ホームページをブログとしっかり運用し、Dポータルの会員様とのLINEでの情報発信などを強化しながらオンライン商談の獲得にもつながっていきたいと思っています。また、高齢者などに向けた地域MaaSの取り組みにも力を入れながら、総合的なモビリティサービスを提供したいと思っています。

LiB これからの展開が楽しみです。最後に、兵庫ダイハツ販売様として目指していくことを教えてください。

藤原 デジタル化や効率化だけに限りませんが、最高の成果を生み出せる体制を固めていきたいと思っています。「失敗は成功のもと」とよく言いますが、取り組む前からきちんと段取りすることもできます。そういう会社になっていけば無駄なロスなくお客様に安心して車を届けられます。最短、最速、高品質、安全を実現していくために、体制作りと習慣化に取り組みたいと思っています。

阿部 第一に考えているのは、どこのお店で買ったか、どこに住んでいるかといった違いに関係なく、同じアフターサービスを受けられるようにすることです。それをベースとして、MaaSなど新たな取り組みで車を便利に使ってもらったり、もっと楽しんでもらえるようにしたいと思っています。

LiB ありがとうございました。

 

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UPDATE
2022.03.01
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