第2回/全3回

経営戦略としての紹介営業(第2回)

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経営戦略としての紹介営業(第2回)

EXECUTIVE SUMMARY

前回のコラムでは、CLV(顧客生涯価値)からCRV(顧客紹介価値)への転換の重要性について、さまざまな角度から述べました。
今回は、実際にCRV最大化のために行うべき具体的な取り組みについて触れていきたいと思います。
前回既出の四つの行動指針:①紹介が生まれやすい顧客の識別、②紹介が生まれる因子となる自社商品・サービスの特徴の抽出、③紹介が生まれやすい顧客との接点やコミュニケーション手法、④紹介による新規売上をパターン化する自社の組織づくりについて、紹介戦略のフレームワーク「四つのS」として紹介していきます。

四つのS その1:セグメンテーション

紹介戦略を進めるにあたり、最初に取り組むべきはセグメンテーション(選別)です。すべての顧客をターゲットにすることは非効率であるため、あらかじめ顧客を選別し、狙いを絞り込みます。

顧客選別の基準

ここでは、顧客を絞り込む基準が重要になります。セグメンテーションの狙いは「紹介を強化するために必要な顧客を選定すること」です。例えば、リピート購入を促す際、「Recency(最新購買日)」「Frequency(購買頻度)」「Monetary(最新購買金額)」の三つの視点から顧客を分析するRFM分析が有効ですが、紹介戦略においてはあくまでも紹介・口コミを狙っています。そのため、RFM分析とは全く違った顧客管理の軸が必要となります。
そこで、紹介戦略においては、「紹介意向(紹介実績と推奨度)」「満足度」「最新接触」をベースに顧客の選別をしていきます。

●紹介意向
まず紹介意向は二つの視点で捉えます。一つは紹介実績、もう一つは推奨度です。過去に紹介の実績がある顧客は次の紹介を生む可能性が高いです。推奨度に関しては、事前にCSアンケートなどで推奨の意思があるかを把握しておく必要があります。
●満足度
満足度に関しては、品質、価格、提供スピードなど評価基準をあらかじめ設けておく必要があります。顧客の満足度因子を整理して、「とても満足」に値するラインがどこなのか基準を定めておきます。
●最新接触
直近の接触タイミングも重要な判断基準となります。満足度が高く紹介実績があったとしても、最新接触日が5年前だと有効客として扱えない場合があります。業種にもよりますが、「過去2年以内に接触があった顧客」など基準値を設ける必要があります。

すでに述べていますが、このような選別を行うためにCSアンケートは必要不可欠です。初回購入のタイミングなど、定期的に実施していく必要があります。

次にこの三つの選別軸を基準に顧客のランク分けを行います。顧客ランクを分類しておくことは組織として、顧客アプローチの圧倒的な効率化につながります。
図1は、顧客ランクごとの具体的なアプローチ、コスト配分例です。

四つのS その2:サティスファクション

紹介戦略では、推奨度の高い顧客をどれだけ多く生み出していくことができるかが課題となります。そこで「そもそも何が推奨度に強い影響を与えるのか」を明確にしなければなりません。

推奨度と満足度の相関

図2は、「顧客満足度とリピート率の関係」をまとめたものです。これを見ると、「非常に不満」から「満足」まではロイヤルティはゆるやかに右肩上がりとなっていますが、「非常に満足」の時点で急激に上昇していることがわかります。これはCLVにおける「大変満足」レベルの重要性を示しています。

次のグラフはあるBtoB企業のデータ事例で、満足度と紹介意向の関係を示したものです。こちらも先ほどのグラフと同様、「満足」までは緩やかだった紹介意向比率が「大変満足」では急激に高まっています。

以上から推奨度を考えていく場合、「満足」ではなく「大変満足」のレベルにより注目していかなければならないことがわかります。

ここで大切なことは、「大変満足」レベルの顧客が具体的に商品やサービスのどこに「大変満足」したのかということを分析し、把握することです。

ある住宅販売会社の事例を見てみましょう。住宅は低頻度高額商材のため、基本的にリピート購入は見込めません。紹介を狙っていくことが必須の業態です。

上記の資料では、住宅を購入した顧客に対して「商品の何に満足しているか」というアンケートを実施しています。この中で、紹介意向と最も相関の高かった項目が「広さ」、「カラーコーディネート」、「営業の対応」の3項目だとわかりました。
この企業ではアンケートの結果を踏まえ、推奨度を上げる最も有効な項目が「カラーコーディネート」であると判断し、カラーコーディネートに関する打ち合わせ時間を大幅に増やす施策を取りました。
このように顧客の推奨度と関係の強いポイントを踏まえ、時間やリソースを適切に配分することで紹介をもらえる可能性が非常に高くなります。

推奨度に影響をもたらすタイミング

推奨度に影響をもたらすもう一つの要素として「タイミング」があります。それは、購買プロセスにおいて顧客の「満足度や関心度が高くなるとき」です。推奨度を考えるに当たり、顧客の満足度や関心度が高いタイミングにいかに紹介行動を促していくかが重要になります。

一般的に顧客満足度が高くなるポイントは三つあります。BtoBのケースとしてシステム開発会社を例に取りたいと思います。

顧客満足度が高くなるポイントは、まず時間をかけて競合他社の中から1社を選んだ「契約直後」、そして幾多の打ち合わせ・進捗報告を経て「システムが完成したとき」、それから検収期間を経て完全に顧客に引き渡される「最終確認終了後」の三つです。どのタイミングにおいても、紆余曲折からの決断や達成感が満足感を生み出しています。また同じ仕事をともに成し遂げたという共感がCSスコアアップの要因につながります。

自社としては、この満足度曲線を把握しておくことが重要で、同時に満足度をより高めるための効果的な具体的アクションを整理し、再現性のある業務フローを組んでおくことが重要になります。

さて、ここまでで紹介戦略のフレームワーク「四つのS」のうち前半二つのSを紹介しました。次回コラムでは、残り二つのS「セールス」と「システム」について述べていきたいと思います。

このコラムの執筆者

小川 純市
チーフコンサルタント
小川 純市

早稲田大学大学院にて工学修士取得後、大手経営コンサルティング会社に入社。
大手企業向け教育研修プログラムの企画運営、経費削減コンサルティング等に従事した後、住宅・建設・不動産業界を中心としたコンサルティングに従事。
経営戦略立案から、営業・マーケティング力強化等の成果直結型支援で数多くの実績を残す。
2013年、リブ・コンサルティング入社。
大手企業向けに戦略立案から、選抜チームでのパイロット展開、全社への教育体制整備や組織変革まで、戦略から実行フェーズを一貫して担っている。

UPDATE 2018.02.15
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