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「カーディーラー経営革新セミナー」 DX推進のポイントを押さえる

EXECUTIVE SUMMARY

2020年7月、リブ・コンサルティングはカーディーラー経営者向けのオンラインセミナー「カーディーラー経営革新セミナー」を開催した。セミナーでは、弊社のDXコンサルティング担当が「DX推進のポイントと、カーディーラー経営におけるデジタル活用事例」を紹介。
 

変革は逆行できない

カーディーラーにとってのデジタル化はどのようなものなのだろか。
自動車は高級消費財であるため、消費者が「買おう」と判断する際には安価なモノよりも多くの情報が求められる。乗り方や使い方はユーザーそれぞれのライフスタイルなどによって変わるため、営業担当者によって顧客ごとのカスタマイズした情報提供や提案も必要だ。
そう考えると、いくらデジタル化が進んだとしても「顧客と営業担当者が1度もリアルの接点を持たずに販売する形」に完全移行するのは難しい。
ただし、デジタル化やDXといった大きな社会の変化を考えると、従来のように店で来客を待つ事業モデルはいずれ通用しなくなる。
オンラインで情報収集する顧客が増えるにつれて、カーディーラーはより多くの情報をわかりやすい形で提供していくことが求められる。
インターネットやPCを使い慣れたデジタルネイティブ世代が増えていくことで、消費の舞台はリアルからネットへと移行していく。
この変化は「第4次産業革命」や「100年に1度」と言われる大きな変革で、逆らうことは不可能だ。
革命が起きれば、革命以前の社会には戻らない。カーディーラー経営もこの流れにしがみついていかなければならない。
アナログの取り組みとして質が高い営業活動を維持しつつ、それ以外の業務はできる限りデジタル化し、デジアナの視点で事業の効率化、顧客接点の新規創造、営業力向上に取り組んでいくことが重要といえるだろう。

■業務改善で事業を強化

では、何から取りかかれば良いのだろうか。
1つ目の取り組みとして、まずは足元の事業を強化しよう。そのために有効な方法の1つが通常業務をペーパーレス化によって効率化することである。
カーディーラーの業務は紙ベースで進む部分がまだ多く、車1台の契約で使う書類の厚さは約2cm、数十万台分の契約になると富士山の高さを超えるほどに積み上がる。
この部分をデジタル化することで、相当量の工数とコストが削減できる。例えば、本部とのやりとりでは書類の作成費や保管量が減らせる。押印などにかかる作業を減らせば、工数が減るだけでなく人件費削減の効果も見込める。また、デジタル化によって書類処理の時間短縮やミスを減らす効果も期待できるため、QCDの向上にもつながるだろう。
==リブ・コンサルティングの支援領域==
事業の強化では、ペーパーレス化の他にオンライン採用やデジタル教育の導入なども検討できます。リブ・コンサルティングはこのような取り組みを支援し、業務効率化、生産性向上、それに伴うコスト改善などを実現しています。
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■ビジネスモデルを変える

2点目として考えたいのがカーディーラーのビジネスモデルを変えることだ。
従来、カーディーラーは自動車メーカーと顧客の間に存在し、販売、納車、メンテナンスなどを行ってきた。しかし、昨今の変化として自動車メーカーが直接顧客とつながり、商品やサービスを直販するケースが増えた。これはカーディーラーにとってはマイナスで、販売機会が減り、カーディーラー間での競争が激化する。
これを避けるには、車を購入する人に向けた新たなサービスを作り出すか、車の購入者以外に向けた新たな事業を作り、接点を生み出していく必要がある。この2つがこれからのカーディーラーのビジネスモデルを作り出す。新規の顧客に向けた新規事業については、従来のようにメーカーのシステムをそのまま使えるわけではないため、自社でシステム概要を考えて構築していかなければならない。

■緊急性が高いのはコロナ対策

3点目はコロナ対策のためのデジタル化だ。
これは前述した2つより緊急性が高く、業界内でもすでにウェブ経由のコミュニケーションを導入したりリモート環境を活用するなど、顧客接点と社内の働き方の両面で非接触を前提とした取り組みが進んでいる。チャットによる問い合わせやVR試乗なども検討できるだろうし、オンラインでの車両登録や書類のデジタル化は消費者の利用意向が高い。
上記の3点で考えると、優先順位としては緊急性があるコロナ対策が最も高く、次にディーラーの事業強化(ペーパーレス化など)、ビジネスモデルの変化という順になるだろう。
デジタル化に向けた主要なテーマとして、コロナ対策はリモート活用(接客と販売)、カーディーラー事業強化は事業の効率化、顧客接点の新規創造、営業力強化、ビジネスモデルの変化は顧客サービス向上と新規事業創造が挙げられる。

■まずは目的を決める

次に、デジタル化推進のステップを考えてみよう。
まずは目的を決めることが重要だ。実はこのステップを踏み外し、DXのツールなどの機能に目を向けてしまうケースが多い。これはデジタル化で失敗する大きな原因の1つだ。
機能比較からスタートすると、役立ちそうなツールは数百という数があるため、比較するだけでそれなりの時間がかかる。また、ツールは頻繁にアップデートされるため、比較に時間をかけているうちに新たな機能が加わり、比較することそのものに意味がなくなる。
この状態に陥らないためにも、何のためのデジタル化を明確にすることが重要だ。
デジタル化は、一般的にはアナログをデジタルに置き換えるためのIT導入(デジタライゼーション)と認識されているが、その次の段階として、技術とデータをビジネスに活用する取り組み(DXとデジタライゼーション)がある。
どこから取り組むかは企業によって差があるが、デジタル化の目的が決まっているならデジタル化のテーマを決めるところから、デジタル化の目的が決まっていない場合は事業領域を見ながら目的を決め、テーマを決めると良いだろう。
例えば、経営領域においてデジタル時代の経営スタイルに変えていくなら、データを踏まえた客観的な経営の構築を目的に掲げたり、経営ダッシュボードなどを使ってデータ経営の基盤を作ることなどができる。
==リブ・コンサルティングの支援領域==
経営ダッシュボードは、ビジネスの状態を可視化し、確認できるようにする経営者や管理者向けのツールのこと。例えば、各店舗が実績などの数値を入力し、本社に報告する場合、本社の担当者はそのデータを集計し、報告書などにまとめなければなりません。これは負担が大きく、経営判断のスピードが遅くなる原因にもなります。
そこで、この集計作業を経営ダッシュボードのツールに置き換えます。すると、各店舗で入力する数値が自動的に報告書に転記され、負担が減り、スピードが増し、各店舗の状況を可視化できます。
リブ・コンサルティングは、このようなシステムの導入に向けた論点整理、スケジュール作成、社内オペレーションの再構築などを支援しています。
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事業領域では、例えば、既存事業を強化することを目的とするなら、オンラインセールスやデジタルマーケティングの導入を検討することができる。
目的からスタートすることでデジタル化に向けた効果的な施策が見えやすくなり、目的と施策が一致することによって効果も出やすくなるはずだ。
==リブ・コンサルティングの支援領域==
デジタル化できる領域を、経営領域、新規事業領域、既存事業領域、事務領域に分けて考えてみると、どれも重要に見え、優先順位の付け方で迷うケースがあるかもしれません。そのようなケースを想定して、リブ・コンサルティングはDX戦略診断を実施。各社のビジネスモデルや現状のデジタル環境を踏まえて、デジタル化の方向性、投資対効果が高い取り組みの選定、デジタル化のテーマの優先順位の決定を支援しています。
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■経営と現場にも変革が必要

デジタル化推進に向けて新たな技術やデータを導入する際には、ビジネス領域も変える必要がある。
例えば、せっかく技術やデータを活用できるツールが揃っても、既存の経営スタイルのままではツールの効果を引き出せないことがある。そのため、目標や計画をデータで定義できているか、行動レベルのKPIが設定されているかといったデジタル化の取り組みや効果を数値化して測定できるようにすることが求められる。
また、業務の実行環境についても、人がいない、ツールを使えない、デジタル化の取り組みが定着しないといった課題が想定できる。これも既存の実行環境がデジタル化に適した形になっていないことが原因で、例えば、定量データやIT技術を活用できる文化があるか、それらを扱える人はいるか、仕組みがあるか、適切に運用できるかと言った点を確認し、足りていない部分を変えていくことが重要だ。
DX推進の調査を見ても、阻害要因の上位にはIT技術以外の要因が挙がっている。具体的には、DXに対する幹部層の理解不足、従業員の理解不足、目標設定やロードマップができていないことなどだ。

■社内に担当者を作る

最後に1つ付け加えると、自社でデジタル化の担当者を決めて、企画段階から関われるようにすることもデジタル化を成功させる要因である。
中小企業は人が不足するが、担当者は基本的には社内で調達したい。というのも、ベンダーから人を借りることもできるが、そのせいでデジタル化が丸投げになると社内にノウハウが蓄積されなくなってしまう。これからの時代に不可欠なデジタル人材の育成も遅れる。
そう考えると、デジタル化は、やることのリスクよりも、やらないことのリスクが大きい。
デジタルネイティブの消費者が増えていくにつれて、デジタル化に向けた取り組みの出遅れは経営にマイナスのインパクトを与える。やることのリスクとしては、例えば、大きな投資を進める場合にはリスクを伴うが、できるところ、効果が出そうなところからスモールスタートで取り組んでいけば、仮にうまくいかないことがあったとしても大きなダメージは受けないだろう。
そのような視点を持って、まずは小さく始め、大きく育てていくことが大事だ。

 
株式会社 リブ・コンサルティング
DXチーム ヴァイス・プレジデント MASATO.Y

UPDATE
2020.11.25
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