バリューを体現する人事評価制度がベンチャー企業の成長を後押しする
PROJECT

事例概要

1.株式会社カンリーは、飲食店や小売店の業務効率化サービス(SaaS)を提供する30名規模の会社。サービスインから順調に導入店舗を増やしてきた。一方で、さらなる成長を実現するためには、会社が目指す方向性などを理解する人材の採用や、メンバーが能力を十分に発揮できる人事評価制度が必要。そのための行動原則を仕組み化する知見とリソースが不足していた。

2.ベンチャー企業への支援実績を軸にコンサルティング会社を選定。制度作りの支援を外部(リブ・コンサルティング)に依頼することによって専門性とリソース不足を解消。柔軟性とスピード感ある支援を受けることにより、カンリーが大事にする5つのバリューに基づく人事評価制度を構築することができた。

ルームシェアが共同創業に発展



LiB カンリーは、飲食店や小売店向けに業務効率化のクラウドソリューションを提供されていますが、起業に至った経緯を教えてください。

辰巳 カンリーは僕と秋山が共同創業した会社で、僕らは大学生の時に就活塾で出会いました。卒業後、僕は商社、秋山は銀行に就職しましたが、当時から仲が良かったため、社会人2年目から約2年間、2人でルームシェアしていました。お互いに「いずれ起業したい」という思いがあり、色々と話し、意見交換していく中で、一緒に事業をやろうという思いが強くなっていきました。

LiB 2人の共同創業という点が特徴の1つですね。

秋山  共同創業の形にしたのは、お互いの価値観を共有できたことが大きな理由です。就活塾ではそれぞれの原体験を共有し、ルームシェアをしている時は会話を通じてお互いのことを深く知ることができました。「1人ではなく、僕らだからできることに挑戦したい」という気持ちが自然と強くなりましたし、「この人になら裏切られても大丈夫」と思えるくらい信頼できる相手と共同創業者となったことに本質的な幸せを感じています。

LiB 共同創業にはそれぞれの強みを発揮し、弱みをカバーし合えるメリットがありますね。

辰巳 はい。僕は理系、秋山は文系という違いがありますし、性格面では、秋山は行動重視で「まずやってみる」タイプ、僕は 結果に拘る「圧倒的当事者意識」が強いタイプです。共同創業にはお互いが持っていない部分を補完できるメリットがあると感じますし、私たちのそれぞれの強みは今の会社の行動指針にも入れています。

LiB 性格面での違いが経営判断に影響するといった問題はなかったのでしょうか。

辰巳 おっしゃる通りで、2人の意見が割れることはよくあります。議論が白熱して、周りにケンカしていると誤解されることもありますね。ただ、よく知っている仲だからこそ相手の主張を理解できることが我々の強みであると感じています。また、そもそも意見が全く同じになることはありえないと思います。例えば、山登りしたことがない人は「富士山は高い」と思いますけど、エベレストに登ったことがある人は「富士山は低い」と思いますよね。それと同じで過去の経験などによって判断基準は変わるので、相手がどういう前提で意見を言っているかを理解できるかどうかが重要なのだと感じています。

LiB ルームシェアでお互いを深く理解したことが経営にも生きているわけですね。

辰巳 実際、共同創業はルームシェアに似た部分があると思っています。会社は業績が良くても良い組織でなければ崩壊してしまいますし、仲が良い組織を作っていくという点で、男同士で同じ釜の飯を食べてきたことは強みだと思っています。ルームシェアを例にすると、相手に合わせて部屋のきれいさを保つといったことでしょうか。僕はあまり気にしないのですが秋山はきれい好きなので、僕も秋山に合わせて部屋をきれいにしたり率先してゴミ出しをしたりするようになりました。相手を思うことは、わかりやすく言えば利他主義です。この精神が良い組織を作っていく上で欠かせないものの1つだと考えています。

秋山  私がきれい好きかどうかはさておき、利他的であることは僕らが大事にしているバリューの1つでもありますし、その中には前述した「(利他的なアクションを)まずやってみる」姿勢も含んでいます。お互いの中で大事にしたい、大切な価値観を会社のバリューに反映できることも共同創業のメリットと感じます。

バリュー浸透に結びつく人事評価制度が必要だった



LiB カンリー様はバリューとして「お客様の理想から入れ」「まずやってみろ」「圧倒的当事者意識」「利他主義でいこう」「正直であれ」の5つを掲げており、組織運営においてバリューを非常に重視していますが、バリューをここまで重視するようになった理由について教えてください。

辰巳  株式会社ユーザベースの共同代表である稲垣(裕介)さんの影響が大きいですね。稲垣さんからは、組織はバリューが大事であることや、社長はバリューを体現する一つの役割に過ぎないということを学びました。会社の規模が大きくなればなるほど組織の瓦解が発生し、バリューが形骸化していく傾向が強くなります。私たちとしては継続的な会社の成長とスピード感ある意思決定を実行していくためにも、バリューが重要であり、バリューをよりどころ、常に立ち返るものとして位置付けるようになりました。

秋山 稲垣さんに会う前はバリューを明確にしていなかったため、何か議論していても感覚的な議論になりやすく、社員に対してもどういう軸で良し悪しを判断するかを明確に伝えられていませんでした。また、自分たちが評価すべき人や行動基準も抽象的だったため、結果として採用にも難しさが生じていました。感覚的だった大切にしたい価値観をバリューとして明確にして、整理できたことは大きな成果であり、今のカンリーの成長に繋がっていると感じています。

辰巳  バリューは、ある意味では戒めの要素でもあると感じています。例えば「利他主義でいこう」というバリューは、支援、率先、組織とさらに3つの要素に分けています。細分化することで、自己中心的に考えそうになった時でも、「個人より組織」「自分のことより周りのこと」というのを意識しやすくなりましたし、個人の行動を会社の仕組みとして変容していくことに繋げやすくなりました。そういった中で、バリューをメンバーに浸透させ、組織としての行動や意思決定をミッション実現の方向にまとめていくために、人事評価制度という「会社としての仕組み」にきちんと落とし込む必要性を感じました。

秋山  とはいえ、ベンチャー企業ではリソース的に自分たちだけでは実現できないことが多くあるので、外部の専門家やリソースを活用していくことが必要だと考えています。その点において稲垣さんもそうですし、必要なリソースを借りて壁を乗り越えていく点でLiBさんのようなコンサル会社の力を借りていくことも重要なポイントだと考えています。

評価制度の"型"を持ちつつ、「柔軟×スピーディー」に対応してくれた



LiB 今回、人事評価制度の構築という面でご支援をさせていただきました。人事評価制度の構築を考えるきっかけはなんだったのでしょうか。

秋山 きっかけは今後の会社の拡大を意識したことです。企業規模は現状30名体制ですので僕と辰巳でオペレーションできますが、VC(ベンチャーキャピタル)に入ってもらい、上場という通過点が見えてくると、今以上に会社を成長させていく必要があります。そしてその実現のためには優秀な人財の採用と定着が不可欠ですので、本格的に組織が拡大する前のこのタイミングでしっかりと人事評価制度を作り、既存メンバーと新たに入社するメンバーが高いチャレンジ意欲と安心感をもって働けるようにする必要があると考えました。

辰巳 30名くらいまでは「ファミリー」ですが、100人を目指すならファミリーから「組織」にしていく必要があり、行動原則を仕組みとして作っていかないといけないなと考えていました。ただその分野のナレッジが僕らにはなかったので、秋山に外部の色々な会社を検討してもらい、その中でLiBさんにお願いすることになりました。

LiB 人事評価制度を一緒につくる会社を選ぶ際、どういった点を重視したのでしょうか。

秋山 ポイントは4つありました。1つ目は実績、2つ目は僕らの負荷が小さいこと、3つ目は金額、4つ目はチームです。これらは全て大事なポイントだったのですが、その中でも重視したのは4つ目の「チーム」です。LiBさんからの提案は、僕らの「想い」や「やりたいこと」というのを汲み取ってくれていましたし、僕らのスタンスに寄り添ってくれるだろうと感じました。

LiB 人事評価制度は奇抜さが求められる領域ではありません。我々 としても、どんな組織になりたいかを丁寧に把握して、カンリー様が目指す方向にできる限り合わせることを意識しました。

辰巳 その過程がアジャイルで非常に良かったと感じました。LiBさんはベンチャー企業の支援実績が多いので、おそらく制度作りのベースとなる型を持っているのだと思います。しかし、制度作りの過程では型を意識させることなく、僕らの想いをベースとした制度の検討をしていただきました。

秋山 僕も同感です。今回のプロジェクトでも、最終段階まで来ていた案を僕らがちゃぶ台返ししてしまったことがありました。その中でもプロ意識を持って臨機応変に対応していただけましたし、ヒアリングをやり直し、ゼロから作り直してもらいました。そこまで寄り添ってもらったからこそ、僕らも諦めることなく、僕らなりの思想や想いを大事にして進めることができたと思っています。

LiB 今回、弊社と一緒にプロジェクトを進める中で、LiBの強みはどこにあると感じましたか。

辰巳  LiBさんの「柔軟性」にはとても助けられました。ちゃぶ台返しの件もそうなのですが、ベンチャー企業は短期間で組織の方向性や考え方が変化していきますし、ともすると事業領域すら変わることがあります。僕ら自身、昨年のコロナが最も拡大していた時期はお肉の通販をやっていました(カンリーのリリースに伴いクローズ)し、やはり事業領域によって出会う人が異なり、組織作りの考え方も都度変わっていくことがあるのですが、そのような変化に「柔軟」に対応し、一緒に伴走してくれたからこそ、最後までやりきれたと感じています。

秋山  もう1つ「スピード」もLiBさんの強みだと感じました。こちらの大小様々な要望に対して、最速で必要最低限のアウトプットを提供いただいたことで、それを元にPDCAを回し、検討をスピーディーに進めることができました。ベンチャーやスタートアップ企業にとってはこのスピード感も大切ですし、プロジェクトを進める上での必須要件だと思います。

社会を良くする事業をインフラとして残したい

LiB 最後に、カンリー様の今後の展望を教えて下さい。



辰巳  クライアントが喜び、売上が増えても、社会に悪影響を及ぼすような事業では価値がありません。「三方よし(お客様、従業員、社会)」の幸せ、つまりステークホルダー全員が幸せになることを弊社では重要視しています。それを目に見える形にしたものが時価総額だと思っています。例えば、1兆円規模の会社になれば、お客様にも社会にも社員からも認められている会社だと一定評価できます。またCanlyは店舗情報の管理や運用にかかるコストや手間を軽減できるわけですが、その中で重要なのは店舗で働く方々の時間の負荷を軽減できることです。時間が確保できれば、飲食店、小売店、美容院などのスタッフが、各店のお客さんのために使える創造的な時間が増えます。それによって、接客が良くなり、お客さんが更に幸せになると考えています。お客様と向き合う時間をCanlyが創出することで、心の豊かさ溢れる未来・社会を創れたら嬉しいです。



秋山  当社のミッションは「店舗に関わる全ての人に、最も信頼されるインフラを創る」ことです。前職では、辰巳が商社で空港事業という空のインフラに携わり、僕は銀行業務に携わる中で金融インフラに関わる 仕事をしていました。起業が身近な存在になり、会社が簡単に作れるようになった時代で、わざわざ起業する意味は何かと考えた時に、僕らは次世代に残るインフラを作りたいと考えました。お金はお墓に持って行けませんが、事業は時代を超えて受け継がれていきます。最高の事業と最強のチームを作れば、社会のインフラとして100年後の日本に必要なものを残していくことができると考えています。現状、世界を舞台に戦えている国内テック企業はわずかですが、我々はソニーやホンダを超えるような日本を代表する会社を作りたいと思っています。まだまだ組織においても事業においても課題は山積みですが、仲間とともに力を合わせて次のインフラとなるような事業作りに取り組んでいきます。