組織開発

プロダクトライフサイクルから考える理想の営業像-事業成長を加速させる営業人材ポートフォリオ-



「理想の営業」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?


「毎日100件以上テレアポする行動力」
「巧みに顧客の課題を聞き出すヒアリング能力」

みなさん、それぞれ理想の営業イメージは異なると思います。

あなたの会社で「トップセールス」と言われている方は、他の会社では違う評価をされている可能性が高いです。

なぜでしょうか?

市場における会社の立ち位置によって、理想の営業像は異なってくるからです。ダメなのは理想の営業像を固定化してしまうこと。一つの理想像を持ってしまうと、会社は成長を止めてしまいます。

今回は、会社のフェーズによって変わる理想の営業像のタイプと見極め方を解説します。

営業は4タイプに分類できる

営業支援を続けていると、会社によって「理想の営業像」が違うことが分かってきました。

そして、この違いは明確に分類できることがわかっています。

理想の営業像を大きく4つのタイプに分けることができます。

みなさんの組織のセールスパーソンは、4つのうちどれに当てはまるでしょうか?(まずはざっくりとで良いのでイメージしてみてください)

1. 再現性のある優秀なセールス(ソルジャー)
「毎日100件以上テレアポする屈強な行動力」があるような営業

2. 唯一無二のトップセールス(アーティスト)
「商談で相手を魅了するプレゼン力」

3. 型/仕組みを作る企画営業(コンサルタント)
「顧客の真の課題を解決するソリューション提案」

4. ベテランのルート営業(コミュニケーター)
「データを蓄積し、効果的な営業戦略・資料を作る仕組み力」

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どうして理想の営業像は、4タイプに分かれるのでしょうか?そこには、会社とプロダクトライフサイクルの関係があります。

プロダクトライフサイクルのどこにいるかで人材定義は変わる

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-フェーズ1. 導入期
プロダクトライフサイクルの導入期の時期は、会社に前例や知名度がありません。「隠れた顧客ニーズを発見したり、顧客に刺さる提案を1から創造する営業(アーティストタイプ)」が活躍します。

-フェーズ2. 成長期
会社が成長期にある場合、「効果的な型や仕組みを作れる営業(コンサルタントタイプ)」や「型をまなんで、行動量をこなす営業(ソルジャータイプ)」が活躍します。

(例)キーエンス、光通信

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-フェーズ3. 成熟期以降
市場が成長の限界を迎えると、各社がシェアの奪い合いになる成熟期に入ります。他社を圧倒する完璧なプロダクトが生まれない状況です。顧客のニーズを汲みながら、カスタマイズやカスタマーサクセスを提案できる営業(コミュニケータータイプ)が活躍するようになります。

しかし、同時に新需要創造ができる営業、1から価値を創造する営業(アーティストタイプ)が再び必要とされます。

(例)リクルート、サイバーエージェント

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このように、ライフプロダクトサイクルに落とし込むと、自社に必要な営業タイプが自然と見えてくるはずです。

しかし、実際には環境の変化に気がついておらず、かつての理想の営業を鍛えている会社も少なくありません。

成熟期において新たなPMFが必要なのにソルジャータイプばかりを鍛えていたり、成長期にもかかわらずアーティストタイプにこだわり、ひたすら新規開拓をしているケースです。

4つのタイプの営業像のどれかが正解というわけではなく、プロダクトライフサイクルにあった営業タイプをバランスよく育て、事業と営業、顧客を再定義し続ける必要があります。

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「SUUMO」から紐解く、フェーズで変わる理想の営業

プロダクトライフサイクルの変化にあわせて、理想の営業タイプを変えてきた事例として、リクルートの「SUUMO」の事例を紹介したいと思います。

時価総額5位、起業家輩出としても有名なリクルート。

リクルートの営業の強さには、3つのポイントがあります。

①優秀な社員が勝ちパターンをつくる
②勝ちパターンを組織に落とし込む
③勝ちパターンを進化させる

勝ちパターンとは「高い受注率」と「高い再現性」を実現する営業パターンのことです。

リクルートの中でも大きな事業の1つである住宅情報サイトのSUUMO。このSUUMOの事業立ち上げ期も、リクルート流の勝ちパターンづくりが行われていました。

まず導入期においては、役員層を含むトップ層の社員たち(アーティストタイプ)が初期仮説を立て、各エリアをまわります。

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その中で、「だれに」「何を」「どのように」に売っていくと効果的なのか検証していくそうです。

検証結果を徹底的に記録し、実行した施策を評価しながら、「高い受注率」と「高い再現性」を実現する勝ちパターンを確立させていきます。

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つまり、SUUMOの展開では、プロダクトライフサイクルの状況に応じて「理想の営業像」を変えていったということです。

・導入期:アーティストが勝ちパターンを開発
・導入期〜成長期:コンサルタントが再現できるよう設計
・成長期〜成熟期:勝ちパターンをやり切る

より詳しいSUUMOの事例については、こちらで解説しています。

SUUMOの事例からも、
・アーティストが必要な段階でソルジャーを増やしても効果は薄い
・再現性が必要な段階でアーティストばかり増やしてもスケールしない
ことがわかります。

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事業と組織の歪みを防ぐポイント

事業拡大で必要とされる人材のバランスは、「アーティスト→コンサルタント&ソルジャー→コミュニケーター→アーティスト」と変わっていきます。

成長が止まってしまう会社に多いのは、事業と組織のバランスが崩れてしまっているケースです。

例えば、新しい価値創造が必要なのに、コンサルタントタイプが多く、既存の営業手法の仕組み化に取り組み続けている組織(のろのろ運転)。

そして、営業手法の型化と行動量が必要なのに、アーティストタイプが多く、新規事業ばかりが立ち上がっている組織(脱輪運転)です。

図解するとこのように整理することができます。

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のろのろ運転は大企業に多く、脱輪運転はベンチャー企業に多く見られます。

プロダクトライフサイクルのスピードが緩やかな時代は、「組織が変化に順応する余裕」がありました。しかし、スピードや変化が繰り返される時代では、組織崩壊や成長の鈍化というひずみが増えています。

こうした状況に陥らないためには、変わり続けるプロダクトライフサイクルに営業スタイルを合わせる必要があります。

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営業パーソンのタイプの見極め方

では、人材のバランスを把握し、適性を見極めるにはどうしたらいいのでしょうか?

アセスメントテストによって得意不得意調査・定性的なインタビューを行い、組織内の営業タイプのバランスをまずはチェックします。

アセスメントテストの一部をご紹介します。

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定性調査・定量調査の組み合わせで、「自社のポジション」や「必要とされている手法とのギャップ」を洗い出していきます。

サーベイを行うと「事業と組織が合っていても、環境と戦略がずれている」というケースが少なくありません。


BadケースA
新しいニーズの発見が必要な市場になっているにもかかわらず、ソルジャータイプばかりを鍛えて、新規開拓ばかりを見ているケース


BadケースB
新しいことをやりたいメンバーが多く、本来「仕組み化するコンサルタント」が必要なシーンでも「新しいノウハウを開発するアーティスト」が目立ってしまうケース

まとめ:自社にあった理想の営業像の見極め方

まずは下記3つのポイントを押さえて、自社にあった理想の営業像を定義してみてください。

ポイント①営業パーソンを4タイプに分類する
1. 再現性のある優秀なセールス(ソルジャー)

2. 唯一無二のトップセールス(アーティスト)
3. 型/仕組みを作る企画営業(コンサルタント)
4. ベテランのルート営業(コミュニケーター)

ポイント②プロダクトライフサイクルで理想の営業像を見極める
プロダクトライフサイクルのどこにいるのかで、理想の営業像は変わる。

決まった一つの理想の営業像を思い込まないこと。自社のプロダクトライフサイクルにあった営業タイプをバランスよく育て、事業と営業像、顧客の再定義を回し続ける
※事業拡大で必要とされる人材のバランスは、フェーズによって「アーティスト→コンサルタント&ソルジャー→コミュニケーター→アーティスト」と変わる

ポイント③営業パーソンの見極めテストを定期的に実施する
テスト例)

1. アセスメントテスト
2. 得意不得意調査
3. 定性インタビュー
など「自社のポジション」や「必要とされている手法とのギャップ」を洗い出していく。

ぜひ、強い営業組織をつくるための参考にして頂けたら嬉しいです!

最後まで読んでくださりありがとうございました!

 

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