2025.11.05 再現性のあるエンプラセールス体制へ――オンボーディングプログラムによる変革

2019年創業。クラウドセキュリティプラットフォーム「Cloudbase」を開発・提供する日本初のベンチャー企業。AWS・Azure・Google Cloudなどのパブリッククラウド利用時に発生する設定ミスや脆弱性を自動で検出し、一元管理・運用サポートを行う。「日本企業が世界を変える時代をつくる。」を掲げ、クラウドネイティブな開発・運用技術による日本技術力の再興を目指している。
エンタープライズ事業本部 本部長 谷口 洋斗様
Co-Founder エンタープライズ事業部長 東 友則様
EXECUTIVE SUMMARY
- 1.Cloudbaseでは、営業活動が特定のトップセールスに依存する「属人化」という課題を抱えていた。今後の事業拡大に伴い採用を加速するうえで、現状の組織体制では思うような成長を実現できないと考え、再現性のある新人育成の仕組み作りを意識するようになる。そこでリブ・コンサルティングと共に、誰もが成果を出せるオンボーディングプログラムの構築を決断した。
- 2.リブ・コンサルティングは、営業プロセスを役割分担する「ABCセールス」を軸とした、セールスオンボーディングプログラムの高度化を支援。新人が目指すべき具体的なゴールを提示し、育成の仕組みを構築した。Cloudbaseは「ABCセールス」にもとづき、職種横断のユニット制導入や新たな行動指針策定を実施。属人化からの脱却とチームで成果を出す文化の醸成が、着々と進んでいる。
双方の熱い想いから始まったパートナーシップ

―このプロジェクトは、東様と弊社・平田とのつながりという思いもよらないところからスタートしたのですよね。
―Cloudbase 東 様(以下、東) そうなんです。平田さんとはもともと個人的な繋がりがあったこともあり、DMでやり取りをしていました。その中で、ふとしたきっかけで当社代表取締役の岩佐晃也も交えて、三人で会食をする機会がありました。
ビジネスは関係なく近況をお互いに話すだけのつもりが、そこで意気投合してしまって。「機会があればぜひ一緒にお仕事をしたい」と盛り上がったのを覚えています(笑)。その後、しばらくして平田さんから「何かお力添えできないか検討したいので、お時間をいただけませんか?」という連絡があり、改めて打ち合わせの機会を設けました。
―リブ山崎 その一連の流れは、私もよく覚えています。コンサルティングファームなので基本的にマネ-ジャーが案件を作ることが多い中で、若干の動揺が生まれたほどです(笑)。
―リブ平田 打ち合わせさせていただくという時点では、プロジェクトの方向性は明確に定まっていませんでした。しかし、改めてお話を伺うとセールスチームのオンボーディングについて、課題を抱えているということが判明したのですよね。
お話を聞くうちにこの問題に対処せねばという機運が高まり、「セールスオンボーディングプログラムの高度化」を目指すプロジェクトをご支援させていただくことになりました。
―東 会社の成長に伴い、徐々に営業メンバーが増えていく過程で、属人性が高まっていくことに懸念を抱くようになりました。属人性は次第に「特定のハイパフォーマーにしかできない営業スタイル」という形で表面化していき、他のメンバーに伝授していくのも困難でした。
当社はこれまで「とにかくまずは行動・実践」というスタートアップ企業らしい文化で、人材育成など中長期的なスパンが必要なプロジェクトの優先度は高くありませんでした。それが原因で、ジョインしてくれたメンバーの能力を、最大限に開花させられなかったという反省もあります。私自身、「この年齢でこの経験ならこれくらいはできるだろう」と、無意識に期待し過ぎてしまうこともありました。
こうした根拠のない期待が、不幸な状況を生んでしまったんです。長年この会社に在籍するメンバーの一人として、誰でもセールスで結果を残せる仕組みを作らなくてはいけない。そう思ったことが、オンボーディングに本気で向き合おうと思った一番の理由です。
―谷口 本格的に人員を拡大するこのタイミングで仕組み化しないと、傷口がどんどん広がってしまう。まさに「今しかない」という状況で、「パートナー会社の力を借りて組織を変革させる」という意思決定を下したのです。
ゲームチェンジのきっかけとなった「ABCセールス」
―東 リブ・コンサルティングとのプロジェクトでもっとも衝撃的かつ有益だったのは、「※ABCセールス」モデルとの出会いでした。

セールスをA、B、Cという三つの役割で分担するモデル
A(Actor):場を動かし、キーマンに価値づけできる存在
B(Bridge):商談準備や進行を担い、Actorを補助する存在
C(Customer):顧客側のキーマン
従来はActor(トップセールス)が全ての商談を担う構造であったが、それでは新人セールスマンが育ちにくいという課題があった。ABCセールスにおいて、新人はいきなりActorを目指すのではなく、まずBridgeから成長しやがてActorへ育っていくという流れが設計されている。これにより、Aの負担軽減と組織全体の成果最大化、新人の早期立ち上がりが同時に実現される。
これまで当社には、セールスの役割を分担するという概念そのものがありませんでした。「全部一人でやりきって当たり前」という考え方でしたから。
―谷口 だからこそ、どんどん属人性が高まっていって、個々のトップセールスしか再現できない営業スタイルが確立されてしまっていた。そんな私たちにとって、ABCセールスは「私たちの課題をはじめから知っていたのか?」と驚くほど、課題解決にフィットした考え方でした。
―リブ山崎 ABCセールスは、Cloudbase様のオンボーディングのゴール設定においても非常にうまく機能したと感じています。
トップセールスである「Actor」をいきなり目指すのではなく、まずは商談の準備や進行を担う「Bridge」を育成するというステップを明確にできました。
これにより、大事な局面では必ずActorが張ることで全体の成約率を底上げでき、同時にBridgeとして段階的に経験を積むことで無理なく実力を磨けるようにする、この2つの効果を期待できるような体制とOBDプログラムを設計しました。

―東 そうですね。今思うと、従来のオンボーディングのゴールは「年間いくら売ってください」という、非常に曖昧なものでした。そこから今では、「まずはBridgeとしてここまでを目指そう」と、図を見せながら具体的に説明できるようになりました。
それに合わせて、個人の売上だけでなくチームで目標を追う評価制度への変更も検討しています。ABCセールスの導入は、Cloudbaseのセールス組織の「ゲームルール」そのものを変えてくれたと思っています。
期待を大きく上回る「領域理解」と高い「当たり前水準」

―リブ山崎 プロジェクトが始まる前、リブ・コンサルティングに対してどのような印象を持っていましたか?
―Cloudbase 谷口 様(以下 谷口) 私は前職で、大手のコンサルティングファームとご一緒した経験があります。そこでは理路整然とした質疑応答や丁寧にまとめられた資料をもとに、社内の稟議が進んでいきました。リブ・コンサルティングも、同様にプロジェクトを進めていくと考えていたんです。
しかし、実態はまったく異なりました。大きな違いは、資料などのアウトプットよりも事業成長という「アウトカム」を重視している点です。さらに印象的だったのはロジックだけでなくとても現場感を伴った提案だったことです。
―リブ山崎 「領域への理解」というのは、具体的にどんな場面で感じましたか?
―谷口 当社はクラウド環境上でのセキュリティという、傍から見ると非常に難解な領域を専門としています。もしも当社の事業領域を全く理解できないままプロジェクトを進めていたら、的外れなアウトプットが出てきてしまったと思います。
しかし、貴社はこの領域への理解を深めようと徹底的に学び、専門用語の使い方ひとつをとっても違和感がありませんでした。本質的に事業を理解しようとする姿勢が感じられたのが強く印象に残っています。提出される資料では、セキュリティにまつわる専門用語が正しく用いられており、私たちから見てもまったく違和感のないものでした。
だからこそ、安心して貴社とのプロジェクトを進めることができました。
―東 私が感じたのは、「当たり前の水準が非常に高い」という点です。 リブ・コンサルティングはとても根気強く当社が持つ既存資料に目を通し、動画コンテンツなども徹底的に確認したうえでアウトプットを作成してくれました。 リブ・コンサルティングは、当たり前を高い精度でやり切るチームだと感じました。
―谷口 プロジェクト進行も非常にスムーズでした。週1回の定例会をベースに、チャットで細やかにコミュニケーションを取りながら進めていただきました。成果物を逐次確認しながら議論を重ねる柔軟な進行ができた点も良かったです。
―リブ山崎 プロジェクトは2025年5月〜7月の2ヶ月間で行いましたが、その間、週1回の定例会とチャットでのコミュニケーションを行っていましたね。
―谷口 決まった周期で綿密にすり合わせができたので、とても安心感がありました。それに加え、貴社からの質問やアウトプットに対して、私たちもコミットしないと良質なプログラムができないという点で、ほどよい緊張感を持ちつつプロジェクトに臨めました。
―リブ山崎 今回のようなオンボーディングプログラムの構築では、お客様との協働が不可欠です。Cloudbase様とはまさにワンチームで考え抜く関係性を築けたと感じています。
プロジェクト後の変化と、未来への展望

―リブ山崎 プロジェクトを経て、組織にはどのような変化が生まれていますか?
―谷口 一番大きな変化は組織体制です。例えばこれまで、営業部門には「エンタープライズ事業本部」という大きな組織体がありました。それを「ユニット」という形に細分化し、アカウント・エグゼクティブやフィールドセールス、インサイドセールス、マーケティングなど多様な職種が連携する形にしています。
これはABCセールスモデルの考え方に大きく起因しています。ユニットに所属するメンバーは同じチームとして、売り上げやターゲットとなる業界・企業など共通の目標に向かって一致団結する。そんな「チーム力を重視した組織」に、シフトしている真っ最中です。
―東 ユニットはそれぞれ独自の行動指針を掲げています。私が事業部長を務めるエンタープライズ事業部で、「凡事徹底」「全員社長」「魅力的であれ」という3項目を行動指針としました。
この三つはそれぞれ独立しているのではなく、ひとつの連動したストーリーとなっています。 凡事徹底を心がけることで仕事の成果につながり、お客様に信頼される魅力ある人になれる。またお客様からの信頼を獲得するには、社員一人ひとりが会社や製品の思想を社長レベルで理解しておくことが大切である。
定例では毎回この言葉を確認することで、日々の行動を振り返る場所を作っています。
―リブ平田 プロジェクトでの学びが、組織文化として根付いていっているのを感じます。
―東 Cloudbaseのセールスにおいて、この数年は私一人の力で戦っている感覚がありました。確かにそれで一定の成果は生まれましたが、競合環境が激化する中でそのスピード感では全く足りないことを強く感じていました。
一人ではなくチーム全員が、同じ熱量を持って高い基準で仕事に取り組まなければ、当社は大きく飛躍しないでしょう。Cloudbaseを選び入社してくれたメンバーが飛躍できる環境を用意し、仮に当社を離れても面白いチャレンジができる人材になるようサポートする。それが、創業初期からいる自分の責任だと感じています。
―谷口 岩佐はよく、「選んだ道を正解にしてほしい」と口にします。しかしその想いを実行する体制が、これまで現場側では十分に整備されていませんでした。今回のリブ・コンサルティングとのプロジェクトで、ようやくビジョンと実行がシンクロし始めたと思います。
―東 とはいえ、まだ組織変革のスタートラインに立ったばかりという状態だと思っています。これからアップデートを重ねて、より良いチームを作っていきたいです。
―リブ山崎 今回のプロジェクトで、事業の大きな変革をお手伝いできたことを大変うれしく思っています。ぜひ引き続き、Cloudbase様の成長をご支援させてください。