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【LiB Mobility経営 vol.16】
EV販売レポート2022
EV販売における課題と対策、ユースケースに迫る

EXECUTIVE SUMMARY

はじめに

世界で電気自動車(EV)の普及が加速している。日本経済新聞は4月12日、一面トップで「2021年に世界の電気自動車(EV)の新車販売台数が約460万台と20年の2.2倍に増え、初めてハイブリッド車(HV)を上回った」と報じた。

こうした流れにおいて、トヨタや日産、ホンダなどの国内プレーヤーの存在感は決して大きいものではない。むしろ、出遅れたともいえる状況だ。日本経済新聞の集計によると、2021年のメーカー別EV販売台数の1位は米テスラ。そして2位の上海汽車集団をはじめ、上位20社・グループ中12社が中国勢となった。日本勢は日産・ルノー・三菱のグループの5位が最高で、ホンダは27位、トヨタは29位に位置する。

当然ながら今後、国内の自動車メーカー各社も現状でのポジションを変えるべく、EV開発と市場投下を早めていくだろう。その一方で、実際の販売現場においてセールス機能が十分にその役割を果たさなければ、国内におけるEVシフトは鈍化してしまう。

今回は、国内でのEVシフトにおいて重要な役割を担う自動車販売店の現場に焦点をあて、調査をおこなった。自動車販売店としてEVシフトへの対応は既にできているのか、また、自動車販売店が生き残っていくためにユーザーに求められている役割は何なのか、実際のカーディーラーへの訪問調査を通して見えてきた“EV販売の課題と対策”についてまとめた。

世界でのEVシフトの概況

菅義偉前首相は2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明した。いわゆるカーボンニュートラルと言われるものである。

その後2021年1月18日に始まった通常国会の施策方針演説で、国内の自動車販売は「2035年までに電動車100%を実現する」と表明し、自動車の電動化(EV化)はカーボンニュートラルを達成するために避けられないものとなっている。また、これまで「2030年代半ば」とされてきた達成時期がより明確になったことにより、目標達成に向けた着実なEVシフトが急務となっている。

また、グローバルでのEVシフトを牽引する欧州では、“Fit for 55”という政策パッケージを掲げ、自動車のCO2排出規則の強化など12の法案を掲げて欧州全体としてカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進している。それらの方針を受け、欧州の自動車メーカー各社では次々に施策を打ち出し、EVシフトのスピードを早めている。

その一方、日本でもようやくEVシフトが加速し始めている。トヨタ・SUBARUでは2022年5月よりSUV型EVの販売を開始し、日産・三菱では軽EVを同年6月にリリースした。現時点では各社ともEVとしての取扱車種は少ないものの、今後、ラインナップを増やす事で幅広い顧客ニーズを捉えていくことになるだろう。

 

EV購入層の現状~未来

そもそも現在、EV購入を検討しているユーザーはどのような理由でEVを選択しているのだろうか。過去のデータではあるが、デロイトトーマツグループの調査結果では、環境性能や機能面は引き続き、重要な購入検討要因である一方、「高揚感」や「周囲へのアピール」といったエモーショナルな要因が増加傾向となっている。

本データはあくまでもEV購入を「検討している人」への調査結果であり、「実際に購入した人」のデータではない。しかしながら、EV購入の1つのトリガーとして、環境性能や機能面ではなく、先進性などの周囲へのアピール要素があり、これは「イノベーター層」の特徴と重なる。
実際に、国内での新車販売におけるEV比率は現在1%未満であり、実際にEV購入に至ったユーザーは所謂「イノベーター層」と考えることができる

一般的にイノベーター層は、情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層であることが特徴である。 「新しい・ユニーク・これまでにない・自分の課題に対するソリューション」ということに価値を感じて、市場にまだ普及していない、利用費用が高いプロダクトやサービスであっても、自分の価値観・必要性に合致すれば購入に至ると考えられている。

日本においては現在、EVはイノベーター層を対象としたクルマであるものの、今後、アーリーアダプター層、その後のマジョリティ層を獲得していくためには、新しければ何でも飛びつくイノベーター層とは異なり、EVの価値やメリット、或いはユーザーの生活シーンに応じた利用アドバイスをしっかりと行うことが求められる。

では、イノベーター層ではない人々が、EVを購入する際に検討する(懸念する)ポイントは、どのようなものだろうか。当然、ユーザーによってポイントは異なるはずだが、一般的には以下の通りであり、大別すると、「EV“購入”における懸念点」と「EV“利用”における懸念点」に分類することができる。

前者については、そもそものガソリン車/ハイブリッド車と比較した場合のメリット・デメリット、EV購入時の補助金制度の利用など、主にEV購入時に検討するポイントを中心にまとめた。

その一方、後者については、充電方法や充電場所、航続距離や電欠になった際にどうするかなどの日常的なEV利用に関する検討ポイントがメインであり、EVならではの懸念点と言える。当たり前の話ではあるが、このようなEV購入におけるユーザーの懸念点・悩みをしっかりと認識した上で、お客様へ提案活動をしていくことが重要だ。

なお、上記の懸念点は当然、イノベーター層にもあてはまるが、これらの懸念点以上に「新しさ」に価値を置くため、相対的な重要性は低くなるものと考える。先にも述べたが、これからイノベーターからアーリーアダプター、そしてマジョリティへと購買層が拡大していく中で、これらの懸念点をしっかりと認識した上で、専門家としてのアドバイスや購入の後押しができるかどうかがEV拡販への重要な要素となるだろう。

自動車販売現場での実態調査

では、これまで見てきたEV購入時における懸念点に対して、適切な対応ができている販売店がどの程度存在するだろうか。販売現場の実態を確認するため、弊社コンサルタントが以下の調査を実施した。

以上が調査内容と結果概要である。詳細については別紙に譲るものの、EV販売の強化において今後、各販売店がクリアしなければならない課題は多いと考えられる。繰り返しにはなるが、ガソリン車やハイブリッド車とは異なりEVならではの懸念点を理解した上で、専門家としてのアドバイスや購入の後押しができるかどうかがEV時代における大きな差別化要素になり、ユーザーから選ばれる会社・店舗・スタッフになれるかどうかの要因と考える。

先進販売店の取組み事例

これまで、EV販売の実態について触れてきたが、既にいくつかの販売店において、“EV販売強化”に関わる先進事例が増えてきている。今回はその中でもトヨタユナイテッド静岡様での事例について紹介する。

トヨタユナイテッド静岡様ではEV時代の到来に先駆けて、電力小売や太陽光パネル、蓄電池などのエネルギー商材の提案活動を2022年3月よりスタートさせている。目的としてはエネルギー商材を取り扱う事による新たな収益源の確保ではなく、むしろ、EVの利用に関するお悩みをワンストップで提案できる体制づくりにある。つまり、本レポートで述べているEVの購入・利用における懸念点に対してアドバイスに留まることなく、ソリューションとして提供する事で、「EVを買うならトヨタユナイテッド静岡」というブランドを県内に浸透させていくことが一番の狙いである。

なお、現時点ではトヨタ系販売店においてBEVの取扱車種は少ないものの、先んじてこのような取組を開始することの背景は、早めに組織内でのエネルギー関連のノウハウ・知見を蓄えておきたい、という狙いである。エネルギー関連の提案を顧客に満足いただけるレベルで行うためには相応の準備期間が必要であり、EVが自動車販売の主戦場になってからでは遅いという経営判断の元、他社に先駆けて活動を進めている。

このようなEV+エネルギーソリューションの提供は、EV販売強化のための施策という位置付けだけではなく、これからのカーディーラーが担うべき機能への重要な示唆になると考える。

それは、“地域社会の課題解決をおこなうコンシェルジュ”のような機能である。トヨタユナイテッド静岡様ではEVの周辺領域としてエネルギービジネスへの着手を始めたが、それ以外にも医療やヘルスケア、住居などモビリティに関わらない生活サービスをカーディーラーが提供する時代が来ているのではないだろうか。特に地方部においては高齢者も多く、地域の販売店がリアルな場で適切な情報を届け、顧客の課題解決をおこなう機能は今後、増していくはずだ。

地域に根差したカーディーラーとして、今後も今の地位を守り抜くためには、これまでの自動車に関わるサービスだけではなく、ユーザー一人一人の生活に関わるサービスへの幅を広げ、他の事業者との連携の中で課題解決を図る、「地域のソリューションエージェント」としての役割が、今後、求められていくのではないだろうか。

今回のEV+エネルギーソリューションの取組はその実現に向けた第一歩であり、今後の動向に注目していきたい。

 

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UPDATE
2022.11.07
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