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日本においてEV普及により生まれるビジネスチャンス 

EXECUTIVE SUMMARY

今回はグローバルで加速していくEVシフトに伴い、新たに生まれるビジネスチャンスについて考察したいと思います。  グローバルで加速するEVシフトとは裏腹に、日本国内においてはEVの普及速度や盛り上がりに欠けるのではないかという意見もあるかと思います。 ところが、2021年に入ってから日本におけるEVシフトの動きも一部の領域で加速しつつあります。  日本もEVとは無縁とは言えない状況が目の前に来ているのです。 

1.中国のEV 開発競争の激化 

グローバルでの環境規制のあおりを受け、EVシフトが急激に進んでいます。 
特に中国では政府によるEVの強力な推進と、米EVテスラが中国事業を強化したことを背景にEV開発における競争が激化しております。 
中国では広州汽車・上海汽車など所謂いわゆる民族系と言われる既存の自動車メーカーに加え、バイドゥ(百度)、阿里巴巴(アリババ)、ファーウェイ(華為技術)など別業界からの参入も相次いでいます。 
また、中国民営トップのBYDももちろんEVの旗手として多くのEV車両を生産しています。

2.日本における中国EV導入の活性化と日本メーカーのEVからの撤退 2.日本における中国EV導入の活性化と日本メーカーのEVからの撤退 

日本市場においては中国製の自動車が長らく遠ざけられていましたが、2021年の今年から風向きが変わりつつある状況にあります。 

 

 ・日野の小型EVバス「日野ポンチョZEV」がBYDへのOEM 
 ・佐川急便の軽EV企画開発をASF社が担い、中国の柳州五菱汽車にOEM 
 ・平和交通や都タクシーによるBYDのバス導入 

 

また、エネルギー企業のEV企業との提携や事業参入も相次いでいます。 

 
 ・コスモエネルギーグループのASF社との資本業務提携 
 ・ENEOSによるBYD車を活用したEVリース事業の実証 
 ・JXTGホールディングスのBYDと蓄電池事業での協業 
  
一方で、日本メーカーによるEV車は国内市場においては撤退が相次いでいます。 

 ・日産の商用バンEVの「e-NV200」(生産終了) 
 ・三菱の軽EVの「i-MiEV」と商用軽EVである「ミニキャブMiEV」(生産終了) 

中国にOEMをする日系ベンチャーであるASF社や中国EVメーカーのBYD社の躍進が目覚ましい状況にあります。 

3.日本におけるEV需要と供給のひずみ 

菅義偉首相による2020年10月26日に開会した臨時国会の所信 表明演説で、国内の温暖 

化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針が表明されました。(いわゆるカーボンニュートラル) 
その後2021年1月18日に始まった通常国会の施策方針 演説では、国内の自動車販売は「2035年までに電動車100%を実現する」と表明されました。 

 

そのような流れを受け、日本におけるエネルギー企業をはじめとする多くの企業が活発な動きを見せております。 
対外的な環境対策を講じる企業というイメージ戦略を打ち出すためには、ハイブリッド車のような単なる電動車ではなく、もっとドラスティックなものとしてEVを導入したいと考えているようです。 

 

ところが、蓋を開けてみれば、日本においてEV車は日産のリーフや三菱アウトランダーといったPHEVなどごく限られた車種しかない状況です。 

 

実際、先日、トヨタ自動車豊田章夫社長から、「(カーボンニュートラルの実現に向けては)電気自動車(EV)化ばかり急ぐべきではない」とする旨の発言があったかと思います。 
つまり、EV市場が今後広がっていくためのインフラ整備と、EV車両の生産実績が他国と比較して差が拡がってきてしまうような状況が存在しています。

4.国内においてEV普及により生まれるビジネスチャンス 

今後EV車の需要が高まった先にあるビジネスチャンスについて述べたいと思います。

以下より、モビリティ×エネルギー領域における新たなビジネスの一例として考えられることをお伝えします。

一般家庭がEV車両を購入した場合、当然充電が必要となり電力使用の大きな比重を占めるようになるため、電力プランの見直しが選択肢として浮かび上がります。 

下図の通りとおり、従来の重量電灯プランではなくEVの充電も考慮した電力プランへの切り替えが考えられます。  

これは、車を買うことで必ず付随してくる保険の購入と同様に、電力とEVはセットで販売すべきなのです。 

 

①ディーラーなどの車の販売店 

これをEV販売側、つまりディーラーなどの車の販売店の立場に立った時には、電力の取り扱いによる単価向上といったアップセルを狙えるようになります。 

仮に自社で電力を扱うことがなかったとしても電力会社への紹介と販売成約時のマージンを取得することも可能です。 

 

②電力会社 

一方、電力会社の立場になった時、今まで電気単体で顧客と契約していたものを、今度はEVとセットで取り扱うことができるようになり、車の販売店同様にアップセルを狙えるようになります。 

電力会社の売上は基本的に人口動態と強い相関があると考えられるため、人口減少が進行していく日本においては、売上を単価と数量に分解した際、数量は減少するため、単価を伸ばす方向に舵を切らざるを得ないのではないかと考えます。 

そのような状況下においてこそ、このEVを活用した電力とのセット販売が効いてくるはずです。 

車の販売店と同様、電力会社においても、自社でEVをセットで販売するか、ディーラーへの送客を促し成約等によるマージンを得るえるかなど、単価アップに向けた戦略の幅が出てくるのです。 

ディーラー側と電力会社側でEVという商材を介し、相互に強みを補完し合い、発展していくための相互送客が実現できるのだと考えられます。 

5.まとめ 

現状では、国内のエネルギー企業や、環境対策に注力する企業を中心にEV需要を満たすのは、中国製のEVが主流になると思われます。 
とはいえ、バスや配送トラック・配送車両など、商用向けのニーズが主流のため、国内におけるEVの需要限定的で、充電設備の問題などハードルも存在します。 
従って、この短期的な視点のみで判断するのは性急で、今後の数年間の動向を見て日本メーカーのEVシフトに対する動きも注視していく必要があると思われます。 
国内でのEVニーズが高まる中で、ディーラー及びおよび会社における電力+EVのセット販売モデルが考えられ、今後のビジネスチャンスとして注目すべきポイントだと考えております。 

 

以上、最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。 

 

<参考> 

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