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EVはキャズムを超えられるのか

EXECUTIVE SUMMARY

EVシフトはイノベーター、アーリーアダプターには早期に普及することが見込まれます。しかし、アーリーマジョリティやレイトマジョリティといわれる大衆に普及させるには補助金制度などの「飴」と中国のEV車以外の車にナンバープレートを事実上取れなくするなどの「鞭」の効果的な仕様、つまり「国主導の補助政策(アメ)と規制(ムチ)」が必要です。

EV導入が比較的容易に進む導入初期

EVシフトは、このまま順調に進んでいくのかというと、リブ・コンサルティングはNOだと考えています。EVが安定成長に入るのは、2030年代前半になってからというのがリブ・コンサルティングの予測です。ここでは、その理由と安定成長に至るステップについて説明していきます。

現在、EVメーカー各社は少しでもシェアを押さえるために、EVラインナップの拡充と拡販に力を入れています。日本も遅ればせながら、比較的、低価格で購入できる軽タイプEVが市場に投入され注目を集めるようになってきました。自動車業界の雄であるトヨタも世界販売台数を「2030年までに350万台」に設定しました。テスラの2021年世界販売台数が93万台ほどですから、この数字からトヨタの本気度が伝わってきます。しかも、2030年までに30車種をEVを市場へ投入するとも発表されました。ホンダ、日産も同様にEV開発へ大きく舵を切っており、2026年までにEVのラインナップは急速に増えていくはずです。それにともなって販売台数は伸びていくことになるでしょう。

欧州や中国は購入補助金やガソリン車規制などもあって、EVが便利とは言い難いながらもEVの普及率が上がっています。2020年代の中盤までは、この流れが続き、各国のEVシェアは着実に上昇していくはずです。しかし、ある程度普及してくると、購入者層がイノベーターやアーリーアダプターから、大衆へシフトしていきます。アーリーマジョリティやレイトマジョリティと呼ばれる層です。イノベーターなど早期に購入している層は環境意識やステータスとしてEVを購入する傾向が強く、現状、EVが抱える不便さもそれほど気にしません。テスラを買っている人たちが購入時に中古車の価格を気にしていたとは思えないからです。

イノベーター理論
出典:SingApps

EV成長のステップ

キャズムを越えない限り、安定成長は望めない

ところが、大衆は異なります。新しい製品やサービスを購入することには慎重で、メリットやデメリットを吟味し実用性を重視します。棚上げされていた数々の課題やデメリットがあらためてクローズアップされ、普及スピードの鈍化が2020年代の中盤にやってくると想定しています。この乗り越えるべき深い溝=キャズムを越えるため、2020年代後半は、本腰を入れて各社がEVの課題解決に注力する時期になるでしょう。航続距離を気にすることなく走れるEVの開発や、バッテリー交換式EVを利用した移動スタイルの定着、想像もしていなかったような技術革新などによって、次々と課題が解決されていき、EVの良さが再評価されるようになるのが2030年頃ではないかと考えています。ここからEVを購入する理由が、ステータスから実用性へと軸が移り、安定成長へと突入していくはずです。

繰り返しになりますが、安定成長へと入れるかどうかは、キャズムを乗り越えられるかにかかっています。そして、どのタイミングでキャズムにぶつかり、乗り越えるために何年を要するかで、このロードマップは前後することになるはずです。

またEV普及の時間軸は、国やエリアによっても異なってきます。中国などでは、規制によってEV以外のナンバープレートを事実上取れないようなエリアもでてきていますが、一方、異なるエリアではHV(Hybrid Vehicle、ハイブリッド自動車)の人気が高まっているといった報道もされています。つまり、的確なロードマップを設定するための一番のキーは、「国主導の補助政策(アメ)と規制(ムチ)」なのだといえるかもしれません。

UPDATE
2023.04.13
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