CASE
三井物産株式会社
1. 三井物産では、EV普及を含む電力市場の構造的変化を見据え、出資先であるドイツ/The Mobility Houseのソリューションを日本市場へ展開するための事業構想・戦略策定を行っていた。しかし、「業界のプレーヤーの動向や顧客のニーズ」をより多角的に捉え、意思決定に資する複合的な分析や論点整理を行う必要があった。
2. リブ・コンサルティングは、独自のネットワークや分析手法を駆使し、商用車電動化の市場環境・プレーヤー整理、潜在顧客や周辺プレーヤーを含む現場に近い情報収集を実施。また、三井物産が有するアセットや組織の上位戦略を踏まえた分析や提案を行った。さらに、単なる市場調査にとどまらず、制度・システム・事業構想まで横断的に助言し、今後の事業展開に向けた意思決定に資する材料を提供した。
3. システム領域では、アーキテクチャの読み解きや、海外パートナーとの間に立ったコミュニケーション支援、電力市場における制度面の論点整理まで踏み込み、短期間でロードマップや役割分担を明らかにした。
欧州の潮流と日本特有の事情。そのはざまで求められた「事業化に向けた検討」
三井物産株式会社 大瀬戸 様
リブ大原 まずは全体像から伺います。今回の取り組みは「何を実現するための事業」なのでしょうか?
三井物産 大瀬戸 様(以下 大瀬戸) 我々は、再エネとEVの普及が進む中で、EVを「調整力」として活用する社会を目指すThe Mobility Houseのソリューションを、日本で展開するべく取り組んでいます。欧州で起きていることが日本でも追随して起きる部分もありますし、日本特有の事情もあります。それらを踏まえながら、どのタイミングでどのようなソリューションを提供していくべきか、という観点を意識しながら取り組んでいます。
リブ大原 この事業を日本で推進するために、最初に越えるべき壁は何でしたか?
三井物産 猪股 様(以下 猪股) 当社としては、単に海外の事例を紹介するのではなく、日本の電動化のトレンドや電力市場の構造も踏まえながら、国内でどのように価値を創出していくのかを示していくことが重要だと考えています。
三井物産 渡邊 様(以下 渡邊) EV単体の議論に閉じず、電力市場・制度・インフラ・事業者を含めた全体像で考え直す必要がありました。商社として、海外技術と国内の事業者・制度をつないでいくか、という設計です。
リブ大原 日本展開の議論で、戦略判断をするうえで“決定打”になった材料は何でしたか?
大瀬戸 社内では「本当にEVをこのタイミングでやるべきなのか」「市場・制度動向に対してどのような見立てを持ち、どう対応していくのか」「日本でどう収益を実現するのか」といった論点がぶつかりました。重要な判断材料となったのは、机上の市場規模だけではなく、国内のプレイヤーの実態も踏まえて「どのような事業戦略なら成立しそうか」を描けたことです。
リブ大原 様々な論点がぶつかった、というのは具体的にはどんな空気感でしたか?
大瀬戸 脱炭素が追い風だった時期と違い、「EVだけでは難しいのでは」という見方もありました。だからこそ、EV単体の議論に閉じるのではなく、電力価値も含めてどのように事業として成立させるのか、という方向も整理をする必要がありました。
「距離の近さ」と「地に足のついた情報」。短納期でも前に進められると感じた理由
リブ・コンサルティング 大原
リブ大原 ここからは支援の話も伺わせてください。今回、リブ・コンサルティングにご依頼いただいた経緯を教えてください。
猪股 きっかけはセミナーや研修です。モビリティとエネルギー領域を深く見ている、そこに注力している会社という印象がありました。書籍や発信で「どういう情報を持っているか」「どういうプレーヤーと関わりがあるか」が明確で、今欲しい情報をくれるだろうという期待がありました。
リブ大原 このあたりは、他の皆さんの視点でもいかがでしょうか。
大瀬戸 我々の中でも、外部のデータは揃っていたものの、「現場の声」を第三者の視点からも把握する必要があると考えていました。その点について、短時間で情報を補完できる点に期待はありました。
渡邊 単発で情報を集めるだけではなく、背景や持ち物を踏まえた上で提案までしてもらえるか、という観点でも相談したいと思っていました。
リブ大原 短納期でのご依頼だったと記憶しています。
渡邊 当時、一定のタイムラインのもと、日本展開に向けた実行プランの検討を進めているフェーズにありました。その中で、市場調査や事業成立の実現可能性について短期間で整理する必要があり、1ヶ月という限られた期間で市場環境の把握および情報収集を依頼しました。限られた時間の中で、どこまで現場に近い情報を集められるかが重要なポイントでした。
現場の声と論点整理が、戦略の明確化を後押しした
三井物産株式会社 猪股 様
リブ大原 実際にプロジェクトが始まってから、どのような支援が特に役立ちましたか。
猪股 例えば、国内の導入検討プレーヤーや周辺企業との対話機会を設計・実施いただき、現場の論点(導入条件、運用上の制約、意思決定プロセス)を把握できたことです。
リブ大原 振り返って、検討を進める上で特に有効だったポイントはどこだったと思われますか。
大瀬戸 事業を検討する際には、市場性だけでなく「どのようなパートナーと連携するのか」「どのような事業スキームなら成立するのか」といった具体性が求められます。リブ・コンサルティングには現場の声やプレーヤーの実態を踏まえて論点整理いただいたことで、事業の解像度が上がり、議論が進めやすくなりました。
猪股 単に情報が増えたことではなく、「日本で本当に成立する事業なのか」という問いに対して、具体的なプレーヤーや顧客の反応を踏まえて議論できるようになったことです。事業構想を具体化するためには、第三者の視点を通じた現場の実態把握も重要だと考えていました。現場の知見を踏まえて論点整理いただいたことで、検討の解像度が高まり、議論が前に進みやすくなりました。
依頼内容に加え、検討の広がりにつながる提案がなされた。背景に踏み込んだ提案が、次の一手につながる

リブ大原 実際にご一緒する中で、リブ・コンサルティングらしさを感じられた点はありましたか?
猪股 最終的には、専門性に加え、当社の検討状況に応じた柔軟な対応が期待できると考えたからです。モビリティ・エネルギー領域に関する知見やネットワークを持っていることはセミナーや発信内容から理解していました。実際にお会いすると、答えを押し付けるのではなく、私たちの状況や検討の文脈に合わせて一緒に考えてくれる。まるで社内のメンバーと議論しているような感覚でした。新規事業は不確実性が高い領域であるからこそ、知識だけでなく、同じ目線で伴走していただけるパートナーかどうかが重要です。その意味で、リブ・コンサルティングの皆さんには有用な知見を得ることができました。
リブ大原 実際にご一緒してみて、特に価値を感じられた点はどこでしたか。
猪股 依頼事項に応えるだけでなく、重要な論点を先回りして提示してくれた点です。特に、選択肢と根拠を並べた上で議論できる形にしてくれたのが助かりました。加えて、外部のコンサルというより、社内の同僚に近い距離感で伴走し、こちらの状況や課題を踏まえて一緒に考えてくれた点が大きかったです。
リブ大原 「期待以上だった」と感じた点はありましたか。
猪股 ミニマムゴールとしては、依頼した内容に対応いただければ十分だと思っていました。ただ実際には、三井物産が有するアセットや強み、組織の上位戦略、といった背景にも踏み込んだ上で提案をしてくれました。最終的な整理や提案の中で、「向こう6ヶ月、こんなふうに動いていったらどうか」といったネクストステップまで整理されたことで、検討をスムーズに進めることができました。
リブ大原 この点について、大瀬戸さん・渡邊さんはいかがでしたか。
大瀬戸 単なる情報収集にとどまらず、議論すべきポイントを整理しながら一緒に組み立てていただけたのは非常に助かりました。
渡邊 システムや制度など、領域が跨ると論点が分散しがちですが、こちらから投げた質問や追加の相談に対して、次回までに整理していただけるテンポ感がありがたかったです。我々も社内で出た反応や新たな論点を持ち寄りながら議論していたので、単なる報告会ではなく、議論のキャッチボールが非常にやりやすかったと感じています。
リブ大原 こちらとしては「まずは依頼事項をやりきる」がゴールになりがちですが、背景まで踏み込むことで打ち手の精度が上がる、という感覚はありました。
猪股 お願いしたことだけをやる、ではなく、我々の背景や戦略も踏まえた上で提案いただいた。次のステップまで整理してくれたのがありがたかったです。
リブ大原 いわゆる正論だけではなく、進め方まで一緒に考える、ということですね。
猪股 そうですね。ファクトがある上で、こちらが要望していない段階でも「業界の動きを見ると、このあたりが来るのでは」と示していただいた点が印象的でした。押し付けることなく、主体的にアイデアを出していただけた点が頼もしかったです。こちらが持っている情報とリブさんの知見を掛け合わせながら方向性を探っていくことができたので、まさに同じチームで事業を前に進めている感覚がありました。
システム×電力市場×海外パートナー。難所を噛み砕き、短期間でロードマップを前進
リブ・コンサルティング 森本
リブ森本 続いて二つ目のテーマ(システム領域)についても伺います。最初にお話しいただいたとき、率直にどんな印象でしたか?
大瀬戸 エネルギー領域については知見をお持ちだと理解していましたが、システム領域まで支援いただけるとは正直思っていませんでした。SIerにお願いする領域なのではと思いつつ、駄目もとで「こういうことできますか」と聞いたところ、対応可能だと伺えて嬉しかった。エネルギーとシステムの両領域にまたがる知見をお持ちである点に安心感があり、ご支援をお願いしました。
リブ森本 実際、システム領域は専門用語や前提知識の違いが一番の壁になりやすいですよね。進める中で、特にどんな場面が難しかったでしょうか。
大瀬戸 専門用語もそうですが、システム上の構成要素が何を意味しているのかを読み解きながら、システム領域に精通した専門チームとの認識を揃えていく点が難しかったです。そもそもの前提理解が揃っていないと認識のすり合わせが難しいため、その間に入っていただいて整理いただいたことで、スムーズに進めることができました。
リブ森本 実際に進めてみて、特にどのあたりが役に立ちましたか?
渡邊 まず、システムの読み解きを丁寧に噛み砕いて説明してくれたところです。さらに、スコープ外に見える追加の質問(例えば、卸売市場・需給調整市場に入る際のライセンスなど)も、次回には資料にまとめて整理してくれた。迅速に対応いただけた点も嬉しかったです。
リブ森本 プロジェクトを振り返ってみて、印象に残っていることはありますか。
渡邊 市場環境や制度、システムなど幅広い論点がありましたが、一方的に支援を受けるというより、議論を重ねながら一緒に形にしていった感覚があります。毎週の打ち合わせでも、「次はこれを確認しましょう」と自然に役割分担しながら進めていて、同じチームで取り組んでいるような感覚がありました。
今後の日本展開:スマートチャージングと蓄電池を軸に、段階的に価値を拡張
三井物産株式会社 渡邊 様
リブ森本 今後の話もぜひ伺わせてください。日本展開に向けて、いま特に注力している活動はどのあたりでしょうか?
渡邊 大きくは二つで、スマートチャージング領域と、定置型蓄電池領域です。 スマートチャージングでは、商用車の中でもまずはバス向けに注力しています。日本の電動化状況や、電力制御・最適化の効果を発揮しやすい領域であることを踏まえると、まずはここから取り組むことが重要だと考えています。欧州の技術を日本で展開するにあたり、日本の充電器会社との接続確認、ショーケース作りも進めています。
こうした取り組みをベースに、社有車向けの普通充電といった比較的シンプルなユースケースから、蓄電池や太陽光発電も組み合わせて、スタジアムなどピークがシャープ且つ限定的な施設のエネルギー最適化、さらにマイクログリッドのような分散型エネルギー環境での活用も含め、幅広い適用可能性があると考えており、段階的に広げていきたいと考えています。
リブ森本 最後に、少し踏み込んで伺いたいのですが、日本市場で価値を広げていく上で、どんなパートナーと組めると相性が良いと感じていますか?
渡邊 この領域は新しく、座組もまだ固まりきっていません。だからこそ、この領域の可能性を見据えて、前向きに取り組んでいるパートナーとご一緒できればと考えております。
リブ森本 具体的には、どのような企業・事業者の方々であれば事業を共に拡大できそうでしょうか?
渡邊 EVを複数台保有されている事業者であれば、エネルギーマネジメントによる電力コスト最適化だけでなく、充電オペレーションの効率化といった効果も実感いただきやすいと思います。これから導入する方も、既に持っている方も、台数が増える中で電気料金に加えて、充電タイミングの調整等、運用面での課題も気になってくる場面があると思うので、関心のある関係者との対話を進めていきたいと考えています。
蓄電池領域については、三井物産がアグリゲーターとして運用を受託するだけでなく、発電・トレーディング・電力小売などの周辺事業も含め、組み合わせで価値を創出していきたい。特定の領域に限定するのではなく、パートナーの方の強みや関心領域に応じて、最適な形を一緒に描いていきたいです。
リブ森本 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
渡邊 この領域はまだ発展途上であり、業界の垣根を越えた新しい連携が求められています。私たちは、スマートチャージングや定置型蓄電池を起点に、再エネ電力や周辺サービスも含めたソリューションへと発展させていきたいと考えています。加えて、V1G/V2Gといったグリッド連携を通じて、電力系統に対する新たな価値提供にも繋げていきたいと考えています。
EVを保有・導入される事業者の皆さまはもちろん、新たなエネルギー活用や事業共創に取り組まれている企業の皆さまとも、幅広い関係者と今後の可能性について検討を進めていきたいと考えています。ご興味のある方はお気軽にお声がけください。
(本記事の情報は、2026年5月の取材当時のものです)
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