事業グロース

100社以上のグロース支援から見えた Go to Market戦略の作り方

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先日、急成長企業のGo to Marketにフォーカスをしてお話を伺う「グロースの軌跡-Revcomm編-」が、大好評でした。
その後の私のポスト(ツイート)にも多くの反響を頂いて、Go to Marketにおける考え方や事例の発信は
とてもニーズが大きいのだなと感じるキッカケになりました。

リブ・コンサルティングは、100社以上のスタートアップの事業のGTM戦略の構築と実行を伴走させて頂いており
そこでかなりのノウハウが蓄積されています。
これを社内だけに留めるだけでは勿体なく、スタートアップの皆さまにも還元するべく執筆をしています。

目次

Go to Marketとは

言わずもがなかもしれませんが、Go to Market(以降GTM)とはPMF(プロダクトマーケットフィット)が実現した後のフェーズで、
今後サービスを世の中にどう普及させていくかの戦略策定と体制構築を行うことを指します。
GTM期が終わるとスケール期に入り、マス層に一気に市場浸透を狙って動いていくことになります。
多くのスタートアップ企業の戦いはこのGTM期に決するとも言われており、
有名なフリル vs メルカリの戦いもこのGTM期の戦い方で勝負が決した事例と言えるでしょう。
このGTM期にどうグロースプランを作り市場開拓をしていくのかについて、本記事では解説をしていきます。

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Go to Marketとは

GTM戦略を考える上での検討論点

GTM戦略を考える上では、下記の論点をまず検討をしていくことが必要です。

①目標売上を達成する時の顧客構成は何か
②顧客と提供価値の組み合わせは何か
③どの順番で顧客開拓を行うか
④顧客を開拓する上で最適なチャネルは何か
⑤自社に合うグロースモデルは何か

これらを一つずつ解説していきます。

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セミナー資料より抜粋

①目標売上を達成する時の顧客構成は何か

まずは目標設定を行い、その上で目標を分解して解像度を上げることが重要です。
仮にARR(年間計上収益)10億円程度が一つの上場のミニマムラインと仮定をした際に、
この10億円がどのような構成で作られているかを明らかにすることが必要です。
例えば、下記のようなイメージです。

SMB(中堅・中小)企業のARR/社が50万円と仮定すると、ARR10億円に対して必要な社数は、10億÷50万=2,000社となります。
エンタープライズ企業のARR/社が1,000万円と仮定すると、ARR10億円に対して必要な社数は10億÷1000万=100社となるわけです。
SMBとエンタープライズで5億円ずつ作る場合は、SMB企業で1,000社、エンタープライズ企業で50社となります。
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ARR10億円を分解した時のイメージ

これらを自社が狙うマーケット情報や自社のサービス特性に照らし合わせ検討を行い、目標を設定します。
より解像度を上げられる場合は、業界やセグメント別にどの程度の売上を作るかまで細分化出来るとより良いです。

Revcomm社は目標を時価総額1兆円と設定をし、下記のような分解を計算されています。

時価総額1兆円を目指す際に付けられるPSR(株価売上高倍率)は20倍程度と見込み、必要なARRは500億円。
MRR(月次経常収益)に直すと約42億円です。42億円のなかで初期のARPA(1社あたりの平均単価)が13,000円なので、
必要な社数が約32万社。ここからARPAをどこまで引き上げていくかの狙いを定めて目標分解を行った。
「グロースの軌跡-Revcomm編-より」

なぜ目標分解が重要かというと、狙う顧客構成によって戦い方が全く異なるためです。
社数が1000社必要であれば、圧倒的に量の勝負として戦っていくThe Model型のアプローチが求められるし、
100社で良いのであればどの100社を狙ってアカウントを開拓するかのABM(アカウントベースドマーケティング)のアプローチが必要になります。それに伴い作るべき組織も大きく変わりますので、最初に狙いを定めることが重要となります。

余談ですが、以前The Modelで有名な福田さんにお話を伺った際にも、
「まずは達成時のイメージから逆算をすること」が重要と仰っていました。

②顧客と提供価値の組み合わせは何か

これはいわゆるWhoとWhatの組み合わせの事を指しています。
FORCASの田口さんがAll star saas fundさんの取材でも語っておられましたが、
GTMはHow論に終止しがちですが、実はWho Whatのクリア度の方が重要です。

GTMフェーズでは、Who What Howの一貫性ある組み合わせを何本作れるかが重要で、
この組み合わせの数が多いほど事業として売上が積み上がっていきます。
例えば、チャットボットのサービスで考えると、下記のような組み合わせが考えられます。

Who)Web上でCVを狙う企業 × What)CVRが上がるチャットボット
Who)問い合わせが多いBtoC企業 × What) コールセンターの電話削減を実現するチャットボット
Who)ECサイトを持つ企業 × What)カゴ落ちを減らせるチャットボット

同じチャットボットというサービスであっても顧客によって使い方、感じる価値は異なります。
それらを理解して、Who Whatの組み合わせを明確にさせることが重要です。
これらを考える際に、組み合わせ別にマーケットサイズや競合環境などを整理して、
どのセグメントから狙っていくかなども考える事になります。

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③どの順番で顧客開拓を行うか

目標の分解とWho Whatの組み合わせの検討が出来れば、ここからはどの順番で顧客開拓を行うかの検討に移ります。
ここはいくつかパターンがありますが、今回はHorizontalSaaSの企業を想定して解説をします。
まず、自社で最初に狙う市場を選定し、その次に市場の中でどの順番で開拓を行うかということを考えます。

市場選定においては、基本的には市場の魅力度と市場の開拓難易度の2軸によって決めることが多いです。
魅力度というのは、対象となる市場のマーケットサイズや自社サービスのフィット度などです。
難易度は、競合環境や対象業界のアプローチ難易度、提供における障壁などにより整理をします。

Revcommでは、最初に人材業界を狙って開拓をしたと仰っていました。

自社にとって魅力的なマーケットは、電話営業が中心の業界なので、労働集約モデルで属人的に取り組まれている業界であった。そのため、不動産保険金融人材などが候補となった。
不動産などは利益率が高く自社でシステム開発をスクラッチで行っている事も多かった為、最初から攻めたらなかなかハードルが大きいと考え、最も新興系企業も多く導入障壁が薄いと想定された人材業界にマーケットを絞った。「グロースの軌跡-Revcomm編-より」
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業界別にセグメントを切る際のイメージ

実際は、リサーチで検討することもそうですが、実際に足を動かしてテストセールスをこのタイミングで行い
マーケット別の反応度などを検証してマーケットを絞り込んでいきます。

次に狙うべきセグメントが定まればそのなかで、どの規模の顧客を開拓していくかを定めます。
これはプロダクトの開発状況などにも応じて検討が必要ですが、まずはSMBマーケットを切り開き、
その上でエンタープライズ企業へ広げるケースもありますし、逆にエンタープライズ領域に最初から狙いを定めるケースもあります。

企業規模×業界×エリアという2×2×2の8象限に整理をして、どの順番でマーケットを拡大していくかなどを
整理しておくと共通化は図りやすい
です。

多くの企業はイノベーター層である都心のSMB企業から開拓を行いますが、
その後に戦略的にマーケットをどう広げるかを考えないと、スケールしないサービスのままで終わってしまう可能性が高いです。

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8象限をどの順番で攻略するかを決めることがポイント

④顧客を開拓する上で最適なチャネルは何か

これまでずっとWhoとWhatの話をしてきましたのでここからはHow論の話となります。
実際に顧客開拓を行うにあたり、どのようなアプローチオプションを用いて顧客開拓を行うかは非常に重要な問いとなります。
多くの企業はまずWebマーケから入って、云々という事になりますが、狙いを持ってアプローチオプションを整理していくことが重要です。

アプローチオプションの選び方は、狙うターゲット属性と自社のプロダクト単価によっておよそ決まります
ターゲットがイノベーター層に近いのかラガード層に近いのか、自社プロダクト単価(正確には想定LTV)が
高いのか低いのかによっておよそ下記のように整理が出来ます。

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1枚のスライドに詰め込み表現したところもある為、より詳細を知りたい方はお問い合わせ下さい。

一つ言えることとしては、LTVが低い商材では打てる施策が非常に限定的になるのでプライシング検討は慎重に行い
できるだけ高単価で提供出来るようにした方が良いということです。
もしLTVが低い商材で戦っていくのだとすると、PLGのような仕組みを並行して構築しないと非常に厳しい戦いとなります。

各アプローチオプション別の詳細解説については、需要があればまた記事化します。

⑤自社に合うグロースモデルは何か

この論点はこれまでの①~④の内容と重複するところもありますが、自社のグロースはどんな企業を参考にして作るべきか
などでも参考になる為、章を分けて記載します。
グロースモデルは、プロダクトの特性と狙うターゲットセグメントによって異なり、
この組み合わせの中で自社に合うものを選びグロースをさせていく
ことになります。
 
下記のスライドにその組み合わせを整理しました。
3×4の12マスのなかで自社はどのマスに居るのか、どこが参考企業になるのか、どうやってグロースさせるのかの参考にして頂ければと思います。

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グロースの12セグメントMAP

上記12マスそれぞれでどうやってグロースをさせるべきかについては、別途資料にまとめていますので、欲しい方は下記へアクセス下さい。

少しだけ解説すると、1-Aのサービス提供先が個人向けであり、既存の現金での支払いをリプレイスするサービスであったPaypayは、
「早い、安い、うまいマーケ」ということで、より自身のサービスを分かりやすく大量の資金を投下して、
マーケットシェアを取りに行く事が戦いとして求められます。
メルカリやUberも同様で、彼らは全員大量の資金をマーケティングに投下していくことで、一気に顧客獲得を行いました。

1-BであるSmartHRやマネーフォワード社は、分業効率型のThe Model型のシステムが有効となります。
これはサービス単価が低いなかでより多量の顧客数を開拓していくことが求められる事と、
初期ユーザーの一定リテラシーが高い層から開拓をしていく点から言えます。
Webマーケティングを中心に多くのリードを獲得し、効率的に受注に繋げていくモデルを作れるかが重要です。
ちなみにSmartHR社は最近、1-Cのエンタープライズ領域へ拡大をしている為、違う戦い方をする組織を社内に包含されています。

2-Cであるプレイド社やヤプリ社は、エンタープライズ企業に新しいWeb接客やアプリ提供の価値を提供している為、
全く違う戦い方をされています。The Model式で量の勝負をするのではなく、ターゲット企業1社1社をどう攻略していくか、
さらに社内をどう攻略していくかという「チャレンジャーセールス」の戦い方が求められます。いわゆるABM的なアプローチですね。

このようにマスによってグロースの戦い方が大きく異なってくるので、自分たちはどのマスでまず戦うのかをクリアにすることが重要と考えます。実際は、最初はこのマスで戦い事業成長に伴い、新しいマスへ移動するということが起きますので、
その際には戦い方が変わるという風に理解を頂ければと思います。

また、基本的にはマスの上にいけばいくほど再現性を持って売りやすくなります。
その為、新しい需要を作りに行くという気概は持ちつつも、
既存プレイヤーのシェアを奪いにいく戦い方をまずは行う方が結果的にグロースのスピードが上がる
ということは抑えておいて頂きたいポイントです。

⑥セールスプレイブックを作り、営業の型化を行う

戦略・戦術が定まれば、あとはその内容に沿って営業の型を構築していきます。
Go to Marketのフェーズでは組織の人員数がどんどん増加していくなかで、初期に型を構築することが出来るかが非常に重要になります。
ここのコミットメントが弱く型化が進まないと人を採用した時に、売れる人と売れない人の差分が非常に大きい組織になってしまいます

先日のセミナーでRevcommでは會田さんがこの型化にもコミットをして、広げていったというお話がありました。

自身で業界の中のKOL(キーオピニオンリーダー)企業を3社ほど開拓し、その開拓を通して得た情報をもとに営業の型を作り、あとはメンバーにどんどん拡販をしていく体制を取っていました。「グロースの軌跡-Revcomm編-より」

SalesForce社のSaaSFounder’s Guideでもセールスプレイブックの作成には言及があり、
伸びている会社には間違いなく有り、必須の武器であると言えます。

型作りの詳細まで話し始めてしまうとまたNote一本分くらい書けてしまいますので、今回は簡易な説明に留めさせて頂きます。

当社では、下記のように必要なセールスの型化の内容を定義し、それぞれにおいてのアウトプットを整備するようにしています。
ここに上段の考え方などを整理して言語化している企業さんも一定多いのかなと思います。

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セールスの型化に必要なアウトプットの一例

個人的に型化において重要だと考えている事は、②の内容でも触れたWho Whatの組み合わせを明確に言語化しておくことと、
営業シナリオ・営業資料を標準化しておくことです。

Who Whatの組み合わせの整理は、商談前にいかに顧客を分類出来るかが重要であり、アポイントが始まる前の段階では
問い合わせ情報や事前ヒアリングによって顧客を分類出来ており、その分類に合わせた営業シナリオ・資料をもとに
お客様に営業を出来るようにすることがポイントになります。

例えば、勝手にSlackのようなチャットツールの営業だとした時には下記のようなイメージで顧客分類を行い、
事前ヒアリングでお客さんの分類が出来るようにしておきます。
そうすることで、営業はAパターンのお客さんだからこの営業シナリオと資料と事例のセットで行こう、というように
属人化を無くして精度が高い営業が出来るようになります。

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もう一つが営業資料についてです。
営業資料は、お客さんの気持ちに沿って進める構成にすることが重要で、よくある一人よがり営業やヒアリングだけ長い営業を作らない為にも、
しっかり営業資料に沿って営業メンバーをリード出来る状態を作っておくことが重要です。
資料については、また需要があれば別途解説いたします。

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このあたりのセールスの型については、7割くらいは殆どの企業で近いようなものを活用することが可能です。
先人たちの知恵を借りておよその型をつくり、3割を自社流にカスタマイズすることで、有効なものに仕上がっていくと思います。

とはいえ、ゼロイチで営業組織を立ち上げた人でないとなかなかすべてを自力でつくっていく事は難しいですので、
もしよければ当社のスタートアップ向け営業の型化支援へご相談を下さい。

まとめ

いかがでしたでしょうか。気づけば6000字を超える長文となってしまいましたが、少しでも皆さんの思考の整理になれば嬉しく思います。
実際は、ここにグロースの為の資金をどのように調達するかというファイナンスの論点や、どんな人材をどの程度採用し、
どういった育成体制、評価制度を作っていくかなどの組織の論点も考慮が必要となります。
また、具体的なHow論の中身についても、各施策毎に具体的な成果創出のポイントがあり、それをいかにやり切れるかが重要となります。
こちらの内容は多くの皆さんが具体ノウハウを公開していらっしゃるので、そちらにお任せをして、本Noteは締めくくらせていただきます。

無料のグロース相談や一緒に働いてくださる仲間も募集しておりますので、もしご興味を持って頂いた方いらっしゃれば気軽にお話させて下さい。

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