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【セミナーレポート】北京モーターショー2026から考察する中国EV経済圏の正体

EXECUTIVE SUMMARY

第1部では、36Kr Japan 取締役の公文 信厚氏が、北京モーターショーの熱量と競争の変化を、現地の目線で解説しました。

会場には新商品をPRしたい企業が一斉に集まり、常に人が車の周りに集まり、どのブースでもライブ配信が行われ、単に規模が大きいイベントではなく、中国では車の選ばれ方そのものが変わり、競争の中心が車両スペックから顧客価値づくりへ移っていると公文氏は述べました。

第2部では、リブ・コンサルティング パートナーの横山 賢治が、中国の最新動向を俯瞰しながら、日本企業が取るべき戦略的アクションを提示しました。中国は特殊市場で終わるのか、それとも世界の先行モデルなのか。この捉え方が、これからの戦略を大きく左右します。中国は一部特殊な条件を含みつつも、世界で最も電動化かつ自動運転化が進む先行市場であり、新たな顧客体験価値を生み出す”社会実装の場”であると語りました。

登壇者プロフィール(お写真左より順にご紹介)

株式会社 36Kr Japan
取締役 パートナー 公文 信厚 氏

大学在籍中に北京大学へ留学。2019年に36Kr Japanに入社。日本におけるメディアの立ち上げや、日本経済新聞社との協業等に携わる。

株式会社リブ・コンサルティング
エンタープライズ事業本部 パートナー 横山 賢

同志社大学 経済学部卒業後、大手電機メーカーへ入社。住宅用太陽光発電システムや住宅用リチウムイオン蓄電池等のエネルギー商材の法人営業として従事。毎年前年比を超える実績を残し、新規商材として、住宅用リチウム蓄電池システムの拡販に取り組みグループ内で1番の販売台数の成果を残す。
リブ・コンサルティングに入社後はモビリティ関連企業の経営支援を行い、2025年よりエンタープライズ事業本部のパートナー職を務める。
2023年に、経済産業省 EVグリットワーキングにオブザーバーとして参画。

※プロフィールは2026年5月セミナー開催当時の所属・役職を記載しております

セミナープログラム

  1. オープニング
  2. 第一部講演:株式会社 36Kr Japan 取締役 公文 信厚氏
    「北京モーターショー視察内容・モビリティを再定義する異業種プレイヤーの進撃
  3. 第二部講演:株式会社リブ・コンサルティング パートナー 横山 賢治
    「中国企業のスピード感の源泉と、今後の日本企業の勝ち筋」
  4. パネルディスカッション
    「視察を終えて、中国企業から学ぶべき点は何か?」
  5. クロージング

36Kr Japanについて

36Krは、中国最大級のスタートアップ・テクノロジー専門メディアであり、中国の最新ビジネスやテック領域の動向を発信しています。公文氏は、自社について「日本で1番中国の最新情報を発信するメディア」と紹介し、中国モビリティ市場の変化を現地目線で伝える存在として説明しました。

36Kr Japanメディアページはこちら:https://36kr.jp/ 

第1部講演:北京モーターショー視察内容・モビリティを再定義する異業種プレイヤーの進撃(36Kr Japan、公文氏)

第1部は、36Kr Japan 取締役の公文 信厚氏が登壇し、現地での観察をベースに、中国市場の競争の変化を具体例とともに語りました。

会場の空気が示す圧倒的な熱量と競争環境

公文氏はまず、会場に展示されている車は1451台、世界初公開は181台とされ、まさに各メーカーやブランドが新商品をぶつけ合う状態だったと紹介しました。注目すべきは数の多さだけではなく、会場全体の熱量です。どのブースにも人が集まり、あらゆる場所でライブ配信が行われ、経営者クラスが会場を歩き回る。新しい車の発表が、単なる展示会ではなくイベントとして消費されていることが分かります。

さらに印象的だったこととして挙げたのは、人気車種に人が集中するのではなく、どのブースにも来場者が集まっていた点です。以前は特定の話題ブランドに注目が集まりやすい局面もありましたが、今回は多くのメーカーが同等レベルの体験を準備し、全体の完成度が底上げされていたと紹介しました。

変化の本質:買われる理由が「スペック」から「体験」へ

公文氏は、航続距離や電池容量、加速性能といったEVとしてのスペックや数値の競争ではなく、購買決定要因が車内空間の快適さや自動運転も含めた新たな体験に競争軸が移り変わったと述べました。

背景には、自動運転技術の進化があります。運転自体が完全に任せられる世界ではなくても、運転の負荷が下がるほど車内は移動のための場所から過ごすための場所へ近づきます。そのとき価値の中心は、車内体験の作り込みに移ります。中国ではすでに、その競争に入っているという実感が語られました。

視察で見えた3つの変化:①主導権を握る次世代サプライヤーの台頭

完成車メーカーが主役である一方で、AIやソフトウェア、車内体験の基盤を握る企業が同じステージに立っていました。誰が車の頭脳を提供し、誰が体験を設計するのかが重要になり、異業種が競争の中心に入ってきています。

公文氏は象徴的な事例として、グローバルテクノロジー企業の華為技術(以下、ファーウェイ)を紹介。開発責任者の「車内価値の中心は人を理解できるかに集約される」という考えの通り、車内センサーやAIでドライバーの状態を捉え、先回りしてサポートを行います。さらに決済やエンタメ等の外部サービスを繋ぎ、車を移動する生活空間へと再定義していると伝えました。

さらに、自動運転・AIスタートアップ企業のMomentaも紹介しました。彼らは日々発生するリアルなデータをAIに回流させて自動進化するサイクルを確立し、走行中に学び続けるだけでなく、大量のデータから改善が回り続ける「勝ち方のシステム化」に本質があると述べました。

視察で見えた3つの変化:②社会インフラに溶けるモビリティとテクノロジー

展示されているのは車だけではなく、無人で人や物を運ぶサービスの形であり、都市の仕組みと一体化する未来像です。車が社会の中でどう働くのかが、強いメッセージとして打ち出されていました。

公文氏は、宇宙から地上までを網羅する巨大テック企業として吉利汽車(以下、Geely)を取り上げ、自前の巨大AIセンターで車の脳を10年以上磨き、無人自動運転タクシーを開発していると紹介。地上・宇宙・AIの三位一体ネットワークで砂漠でも途切れない通信と超高精度な位置測定を確保しつつ環境インフラへも長年投資し地球規模の移動インフラを内製化していると伝えました。

加えて、自律走行モビリティを手掛ける小馬智行(Pony.ai)を取り上げ、今回の視察で実際に自動運転車に乗車した感想もふまえて紹介しました。走行したのは、バイクや三輪車が入り混じり、歩行者が突然現れることもあるような、決して整った環境ではない一般道を滑らかに走り、体感としては「運転が上手な人の車に乗っているのと同等か、それ以上」に感じたと語りました。

また、交差点で左折しようとした際、横断中の人が「先に行っていい」という合図を出すと、車がその意図を汲み取るようにゆっくり動き始めたと言います。試乗後にPony.aiの担当者へ確認したところ、こうしたジェスチャー認識も含めて開発しているとのことで、人の動きや空気を前提に走る設計が進んでいることを実感したと紹介しました。

またPony.aiの強みは、車両の賢さだけではなく、立ち往生時も人間は遠隔で大きな方針を指示するだけで最終的な判断や実走行は車載側のAIに一任されるため、最小限の人員で大量の車両を管理する超高効率運用を実現しています。深夜に自動で充電や洗車を行う無人体制により維持コストも極限まで低減していると述べました。

視察で見えた3つの変化:③AIなどハイテク導入による顧客体験の進化

公文氏は、中国トップの清華大学発ユニコーン企業の面壁智能(ModelBest)を紹介。米半導体大手企業Intelと共同開発した独立型エッジAIユニットは、車内完結の処理により顔データ等の機密情報を外へ流さない安心をもたらします。さらに、業界初の交通事故処理AIにより、事故直後の乗員ケアから過失計算、保険金申請まで、警察等の到着を待たずに一気通貫で完結できる圧倒的な顧客体験を実現していると説明しました。

第2部講演:中国企業のスピード感の源泉と、今後の日本企業の勝ち筋(リブ:コンサルティング、横山)

第2部は、リブ・コンサルティング パートナーの横山 賢治が登壇し、第1部で示された事例を踏まえつつ、より俯瞰した視点から構造的に中国の実態を解説し、日本企業が採用すべき視点を整理しました。

中国NEV市場の現状と実態

横山氏はまず、グローバル全体で2026年第1クオーター(1月から)時点の新車販売のうち、EV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)が大きな割合を占める市場になっていると説明しました。さらに重要なのは、一大市場に対して各メーカーが複数のブランドを打ち出しており、2025年の主要ブランド数では、109ブランドあるうち、市場シェアを2%以上取っているのは僅か13ブランドしかなく、あらゆるブランドが激しい戦いを繰り広げている市場であるという事です。今後は新ブランドの台頭と旧ブランドの撤退によりこの数も収束していく見通しだと紹介しました。

また、市場構造の変化についても、自動車メーカーが圧倒的に力を持つピラミッド型から、ソフトウェアや半導体を一気通貫で供給しブランド支配力を強めるファーウェイのような垂直統合型と、メーカー側に主導権を維持させるMomentaのような水平分業型の覇権争いへと変化しているといいます。こうした構造に変化していく中で抑えるべき点は、顧客の購買決定要因だと述べました。

次世代車の販売実績を見ると、フルラインナップの戦略をとる巨大企業と、特定のカテゴリーで強みを発揮するカテゴリーキラーの戦いが鮮明になっており、カテゴリーキラーについては、一部の企業で販売台数を増やしながら収益を上げている状況であることも紹介しました。

中国市場における事業機会

横山氏は、北京モーターショーで見えた競争環境の変化を踏まえたうえで、日本企業にとって中国市場がもたらす影響を、脅威と機会の両面から整理しました。ポイントは、中国メーカーの台頭を単なる逆風として捉えるのではなく、競争の軸が変わるからこそ、日本企業が価値を生み出せる新しいテーマも増えているという見立てです。

日本企業にとっての脅威:速さと構造変化が一気に押し寄せる

まず脅威として挙げられたのは、商品投入や改善のサイクルがさらに速くなることです。多数のブランドが生き残りをかけて戦う中国では、差別化できなければ淘汰されるという緊張感が常にあり、その結果として意思決定と改善のスピードが速くなります。日本企業が従来の開発プロセスのままで向き合うと、スピードの差がそのまま競争力の差になりやすいと示唆しました。

次に、中国メーカーのグローバル競争が激しくなる点です。中国は国内市場の規模が大きく、そこで鍛えられた商品やサービスが海外に出てくると、価格だけでなく体験の完成度も含めて競争が厳しくなります。

さらに、テック企業の影響力が増すことも脅威として整理されました。車の価値がソフトウェアや自動運転、車内体験へ寄っていくほど、完成車メーカーだけで完結しない世界になります。OSや自動運転の基盤を握るプレイヤーが力を持つことで、産業構造そのものが変わり、従来の強みだけでは守れない領域が増えていきます。

最後に、ロボタクシーの本格実装です。自動運転が社会の中に入ってくると、車の使われ方が根本から変わります。販売台数だけの議論ではなく、利用や運用の構造が変わるため、既存のビジネス前提が揺らぎやすいという問題意識が共有されました。

日本企業にとっての機会:勝負どころは周辺領域と価値設計にある

一方で競争軸が変わるからこそ、日本企業が勝ち筋を作れる機会も増えていると強調し、4つの要素を提示しました。

1つ目は、運転支援や自動運転が広がるほど、安全性の重要性が一段と上がる点です。横山氏は、技術が進んでレベル2プラスやレベル2.9のような高度な運転支援が中国国内で広がる中で、政策だけではなく保険やセキュリティなど周辺領域の整備が鍵になると解説。技術だけでは埋まらない安心の設計は国や地域を問わず必須になりやすく、日本企業にとって事業機会になり得ると整理しました。

2つ目は、車内空間の価値が上がることです。運転の負荷が下がるほど、車内は移動の場から過ごす場へ近づきます。横山氏は、空調を含むキャビンの最適化が差別化ポイントになり得ると示し、日本企業が強みを持つ領域として期待が持てると述べました。性能の競争が横並びになりやすいほど、快適性や安心感、使い心地の作り込みが効いてくるということです。

3つ目は、モビリティとエネルギーの統合です。V2G(Vehicle to Grid)のように、車の電池を社会インフラとつなぐ動きは進んでいますが、横山氏は中国が全面的に先行しているわけではないという見方も示しました。電力価格やインフラ投資など条件がそろっている中でも、決定的なキラーコンテンツがまだ固まり切っていない余地があり、使い方やビジネス設計次第では日本企業が勝負できる可能性があるという位置づけです。単に技術を持つだけでなく、どの場面で誰の得になるのかを設計し、実装していくことがテーマになります。

4つ目は、PHEVのニーズが残り続けることです。市場全体が電動化へ進む中でも、PHEVは過渡期の選択肢としてだけでなく、一定の需要が維持され、技術革新も続くと整理されました。電動化を一気に進めにくい地域や用途がある以上、多様な解を持つことが競争力になると述べました。

日本企業が取るべき戦略的アクション

横山氏は、中国の変化を前に日本企業が取るべき行動は、技術をただ追いかけるのではなく、「顧客が価値を感じる体験を、速く磨き続ける仕組みを持てるか」だと整理しました。

そのうえで横山氏が強調したのが、「競争優位の源泉は顧客価値であり、それを磨き続ける企業のみが勝ち残る」という考え方です。AIやSDVはあくまで手段であり、最終的に顧客の便利さや安心、納得感につながっているかが勝負になります。だからこそ日本企業は、中国の個別の事例を表面的に真似するのではなく、顧客価値をつくって検証し、改善を積み上げるプロセス自体に再現性を持たせることが必要だと述べました。

具体的なアクションとしては、顧客起点の価値検証を増やし、改善の回転を速めることが中核になります。横山氏は、中国企業の強さの背景に、高いコミットメント、顧客起点での価値検証、圧倒的なスピードで改善を回す文化があると整理しました。顧客の困りごとを捉えたら小さく試し、結果を見てすぐ直す。この積み上げが、顧客体験中心の競争における強さにつながると締め括りました。

パネルディスカッション:視察を終えて、中国企業から学ぶべき点は何か?

セミナー後半では現地視察を踏まえて「中国企業から学ぶべき点は何か」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

公文氏は、中国企業の強さとして、顧客体験の安定性へのこだわりを挙げました。少しの反応の遅れも信頼を損ねるため、体験の完成度を小さくても積み上げ続ける姿勢が徹底されているという指摘です。加えて、顧客が困る場面で機能提供を止めず、手続きまで含めて最後までやり切る発想が価値になっている点も共有されました。

また横山氏からは、日本企業が実行で遅れやすい背景として、顧客起点の価値検証をどれだけ回せているかの差を挙げました。顧客の声や行動を拾い、改善に反映する回転数が競争力を左右するという整理です。

クロージング:変化が速い時代に必要なのは、継続的な更新と一次情報

最後に、登壇者から視聴者へ向けたメッセージとして、セミナーの締めくくりが行われました。

公文氏は、AIの進化によりモビリティ領域の変化が想像以上に速くなっていると強調しました。短い期間で状況が変わり得る世界だからこそ、継続的に情報をアップデートし、新しい動きを定期的に捉え続けることが重要だと呼びかけました。

横山氏は、技術が進化したときに勝負を分けるのは、顧客に価値を届けられるかどうかだと改めて整理しました。そのうえで、価値づくりの判断を誤らないためには、現地で得られる一次情報や生の情報が重要になると述べ、今後もそうした情報を届けられるように取り組みを強化していく方針を示しました。

【ご案内】中国市場各種リサーチのご案内

昨今の中国における先進的な取組の高さから、中国国内の市場動向や現地企業の取組の把握のスピード・品質向上を目的とし、2026年5月、弊社は36Kr Japanと業務提携を開始いたしました。

下記のリサーチ例に記載のテーマでもそれ以外のテーマでも、ご関心がある方はぜひお問い合わせください。
https://www.libcon.co.jp/mobility/contact/

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※本記事の情報はすべて開催当時(2026年5月)当時のものです

UPDATE
2026.06.29
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