2017.07.10

今を読み解くキーワード 〜この変化を見逃すな〜 Fintech

Banking is necessary, banks are not.

ビル・ゲイツ氏の言葉にあるように、銀行のあり方を変えるFintech。金融(Finance)と技術(Technology)の掛け合わせから誕生した言葉ですが、一言で「Fintech」といっても、消費者や企業にもたらされる価値は多岐にわたります(図)。今回は、Fintechの中でも比較的歴史のあるクラウド・ファンディング(Crowdfunding : 以下CF)を取り上げたいと思います。

 

Banking is necessary, banks are not.

 

CFは、資金調達をしたい個人・企業と、保有資金を有効活用したい個人・企業をインターネット上でマッチングし、貸し手と借り手の当事者間でP2P(Peer to Peer)の融資を可能にするFintechです。CFは、2011年の東日本大震災をきっかけに注目されたため、復興を手助けする手段として徐々に拡大してきました。2015年度の国内市場規模は、前年度比68.1%増の363億円。2016年度には約478億円まで拡大が見込まれています。

昨年話題になったプロジェクトを個別に見てみると、『この世界の片隅に』のアニメ映画化を応援するために集まった支援金額は3,900万円。絵本作家兼お笑い芸人が絵本の個展を入場無料で開催するために集まった支援金額は約4,600万円。国内最高額となる1億円以上の支援を集めたのは、ソニーのスマートウォッチでした。ソニーは今後もCFに力を入れる方針で、実際、すでに複数のCFのプロジェクトが出されています。ソニーのように、今後、各企業はCFをどのように活かすことができるでしょうか。

CFを活用して、クチコミを狙って起こす

CFの主な役割は「資金集め」です。資金不足で事業化できなかった企業に対し、CFはリーンスタートアップを促進してきました。しかし、CFには資金集め以外にも2点、活用方法があります。1点目はテストマーケティング。CFでは、新商品ないしは新商品のアイデアへの出資者の反応を通して、販売時の需要を予測することができます。これは、P2Pコミュニケーションならではの効用でしょう。

2点目は、メディアやSNSでのPRです。今までも、プレスリリースなどで新商品・サービスをPRされてきた企業様も多いと思います。CFのプロジェクトがテレビなどマスメディアに取り上げられると、商品・サービスの認知度をより高めることができます。さらに、マスメディア以上に狙うべきは、SNS上でのクチコミ拡散です。今や、クチコミは顧客に購買行動を起こさせる大きな要因です。日本におけるCFの利用者は5.6%なので、情報発信力の高いイノベーターやアーリーアダプターが利用している状況です。彼らの情報発信力・クチコミ拡散力を活かすべく、キャズムをいかに超えるか、クチコミ戦略を練ることがポイントになります。CFを使いつつ、クチコミを“狙って”起こすのです。

このように、CF ひとつとっても、本来の目的以外の多くの活用方法があります。他のFintechも同様です。IT技術が顧客との接点をより多く作る手段のひとつであることを考えると、当然とも言えるでしょう。進化するテクノロジーの導入自体を目的化するのではなく、テクノロジーを用いて何を実現したいのか、今一度、問い直す時期に来ています。

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