2022.09.15

建設業におけるDXとは

建設業におけるデジタルトランスフォーメーションは建設DXと呼ばれており、建設の仕事にAIやICTなどのデジタル技術を活用することを意味します。建設業にDXを導入することで、効率的な業務の実施や労働力不足の解消につながります。

加えて、建設業にデジタル技術を用いれば次世代へ高い技術力を継承することもできるため、より安全性の高い建物や道路の構築が可能です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業がデジタル技術を活用してビジネス環境の激しい変化に対応し、社会のニーズに沿った製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務内容や組織そのものを変革して競争上の優位性を確立することです。

経済産業省のDXレポートによると、2022年現在では日本国内全体でDXの推進を推奨しており、既存システムの見直しを実施しなかった場合、約12兆円もの経済損失が発生すると推測されています。

DXを推進することで顧客や社会のニーズを満たして収益増加につながるだけでなく、効率的な業務の実施、人手不足の解消などさまざまなメリットが得られます。

建設DXとは

建設DXとは、DXを建設業界に導入して活用することです。DXを計画や設計、施工などそれぞれの段階で導入することで、人手不足の解消や生産性の向上につながります。

建設業の問題点の1つとして、長時間労働の状態化が挙げられています。建設業界は人手不足の傾向が強いため、長時間労働を強いられることが多く、一人一人が重い作業負担を強いられています。

ただし、DXを導入して業務効率化に努めれば、一人当たりの労働時間が大幅に削減されるため長時間労働の問題の解決につながり、建設業に従事する従業員がより働きやすい環境づくりにすることが可能です。

たとえば、施工管理アプリを用いて情報シェアをして事務作業を削減したり、ヘルメットに装着するウェアラブルカメラを導入することで遠隔から現場検証できて移動時間を削減したりできます。

建設業に必要な主なデジタル技術

建設業に必要な主なデジタル技術として、以下の5つが挙げられます。

  1. AI(人工知能)
  2. ICT(情報通信技術)
  3. IoT(モノのインターネット)
  4. 第5世代移動通信システム
  5. クラウドサービス

AI(人工知能)

AI(人工知能)とは、コンピュータを用いて人間の問題解決能力と意思決定能力を模倣した機械学習のことです。現在、建設業ではAIを用いた自己生成型建築設計支援や自立作業型ロボットなどが活用されています。

自立生成型建築設計支援とは、建築物のデザインや建築計画の策定を過去の建築事例を基にサポートするシステムです。設計士が建築物の要求とゴール地点を設定すれば、AIのデザイン生成ソフトウェアが最適のデザインや建築計画の策定をしてくれます。

また、自律型作業ロボットでは、重機、ブルドーザーにAIを搭載して特定業務で従業員の作業を代替しています。鹿島建設が自律型作業ロボットを導入した際には、人間では不可能な上向溶接ができるため、溶接の品質の向上に成功しています。

参考:進化を続ける鹿島の現場溶接ロボット工法

ICT(情報通信技術)

ICT(情報通信技術)とは、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを用いて人とインターネットをつなげるデジタル技術のことです。

豊和建設ではクラウドを導入して伝票や勤務記録などを効率的に処理することで総務や経理担当の負担を大幅に軽減しています。竹内セントラルでは現場に持ち運んでいた膨大な設計書類をクラウド導入してタブレットで管理することで、迅速な対応を実現しています。

参考:クラウド導入を機に総務・経理ソフトを一新
参考:タブレットで業務が変わった!たたき上げ社長が取り組むIT改革

業務の量を軽減して従業員がより働きやすい会社にしたり、より迅速に仕事を進めたりするためにはICTの導入が欠かせません。

IoT(モノのインターネット)

IoT(モノのインターネット)とは、物理的なものに通信技術を搭載したインターネット技術のことです。IoTを導入すれば、従業員の作業状況の見える化につながるので、効率的な人員配置ができてムダな残業の削減ができます。

大成建設では、IoTを導入して地震発生直後の建物の安全状況を可視化させています。従来では地震が起きたら調査員が現地に赴いていましたが時間がかかりすぎるため、IoTを導入して作業を効率化させています。

業務効率化を進めることで、建物の居住者が建物にそのまま住み続けてよいのかが従来の半分の時間でわかります。効率的な業務を実施するうえで、IoTの導入は大切です。

5G(第5世代移動通信システム)

5G(第5世代移動通信システム)とは、次世代通信規格のことです。5Gを導入することで、4Gよりも超高速化や同時接続が可能になっており、多くの情報が素早く通信できるようになるため生産ラインの最適化につながります。

5Gを導入すれば、障害物が多くて電波が届きにくい地域であっても素早く電波を届けられるため、建設機械の遠隔自動操縦による工事や運搬の実現が可能です。

クラウドサービス

クラウドサービスとは、ユーザーがネットワークのインターネットを介してPCやスマートフォンから利用できるサービスのことです。クラウドサービスはインターネット環境さえ整っていれば、どこでも使用できます。

クラウドサービスがあれば建設現場と会社で工事状況の進捗具合の確認ができます。より精密な業務を実施するためにも、クラウドサービスの導入は欠かせません。

建設業でDXを推進するメリット

建設業でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  1. 業務効率化につながる
  2. 人手不足が解消する
  3. AIを活用して熟練技術を継承しやすくなる

業務効率化につながる

DXを導入すれば業務の自動化や情報の集約化ができるため、業務効率化につながり、無駄な作業を省略できます。

たとえば、DXを導入すれば立体的な画像を使用して検証できるため、現場に行かずに視覚的に正確な打ち合わせができるようになり、確認する流れが迅速になります。

人手不足が解消する

国土交通省によると、平成28年度はもっとも建設業就業者が多かった平成9年度と比較して約3割も減少しています。そのことから、建設業は少子高齢化の影響が根強い業種といえます。

そんな人手不足の建設業でもDXの導入で業務効率化することによって、人間が実施する作業を大幅に削減できるため、人手不足の解消につながります。人手不足を解消したいのであれば、DXの導入が適しています。

AIを活用して熟練技術を継承しやすくなる

2022年現在、建設業は少子高齢化の影響を多く受けており、高度な技術を持つ従業員が年々減少していることから、技術力の低下が懸念されています。

DXを活用すれば、熟練技術者の施工事例がデータとして残るため、社内全体で施工事例を共有すれば熟練技術を多くの建設就業者が学べます。熟練技術者の施行をAIに学ばせれば、同レベルの作業が実施できるので、少子高齢化が進んでも高水準の技術力を保てます。

まとめ

建設業にデジタルトランスフォーメーションを導入すれば、業務効率化や高度な技術力を継承できるなどのメリットが得られます。業務効率化すれば、一人当たりの労働時間を大幅に削減できるため、人手不足対策の削減につながります。

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