2022.07.29

製造業における生産性向上

製造業における生産性向上とは、できる限り少ない従業員や原材料に対し、製品の生産量をより多く製造できるよう業務を改善することです。労働人口の減少や競争の激化の背景から多くの企業から注目を集め、取り組みが進められています。

コストの削減や利益の拡大などのメリットがあり、企業の成長を促進することは間違いありません。しかし、生産性向上の取り組みは単純ではなく、実現には原因や成功ポイントを把握する必要があります。

製造業における生産性向上とは

生産性向上とは少ない資源を有効活用し、最大の成果が出せるよう業務を改善することです。製造業での成果は製品の生産量に値し、資源は製品をつくる従業員や原材料を意味します。

投資した資源に対して、得られた成果が大きいほど生産性が高いといえます。単に生産性向上に向けた取り組みをおこなうのではなく、結果を出し続ける仕組みづくりが重要です。

生産性向上が注目される背景

生産性向上が注目される背景として、労働人口の減少と国内やグローバル市場における競争の激化が挙げられます。

日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少傾向にあります。人手が少なくなるなか、事業を続けるためには生産性を向上するしか道はありません。逆に、少ない人手で成果を出せれば、企業を成長させることができます。

また、グローバル化が進むことで、競争相手が世界中の企業へと変化します。日本の生産性は高いとはいえませんが、競合との争いに勝つには商品の質を高く保ちながら、利益獲得に向けて取り組みを進めていく必要があります。

製造業における生産性向上のメリット

製造業における生産性向上のメリットは次のとおりです。

  • 利益を増大できる
  • 品質を担保できる
  • コストを削減できる

利益を増大できる

競争が激化するなかでも企業の売上を増大できます。生産性が向上すれば原材料の発注ミスや従業員の作業ミスが減少し、無駄なコストがかかりません。

また、少ない資源でより多くの製品を生産できるため、生産が間に合わず、利益を上げる機会を逃すといった失敗も心配ないです。状況によっては生産量が大幅に増えることもあり、海外との競争で十分争える力が身に付きます。

品質を担保できる

従業員が持つ技術の均等化やテクノロジーの導入が進むことで、製品を一定以上の品質に保てます。また、生産性が向上すれば製品をつくるスピードは向上するため、良質な製品を素早く製造でき、短時間で多くの利益を生み出せるはずです。

質の高い商品をいち早く製造できれば、企業の安心感と信頼度が向上し、顧客からの指示が集まります。良い評判が多くの人に認知され、ブランド価値向上も期待できます。

コストを削減できる

最小限の資源で大きな結果が出せるようになれば、コストの削減につながります。削減できるコストとして挙げられるのが人件費や製造費用です。

作業の効率化により労働時間が減少して人件費を削減できたり、製品をつくり過ぎてしまい在庫が余ってしまう事態も防げたりします。より多くのコストを削減するほど、企業の利益は拡大します。

生産性を低下させる原因

生産性を低下させる原因は次のとおりです。

  • 時間や手間を取れない
  • 作業や発注をミスする
  • コミュニケーションが不足する

時間や手間が取れない

生産性向上には企業側の人材育成や、個人でのスキルアップが必要です。しかし、現状を改善する時間や手間が取れず、生産性向上に向けた取り組みが進まないケースは少なくありません。経験や知識の浅い従業員だけでは、生産性を向上させるどころか、生産性を低下させてしまいます。

作業や発注をミスする

作業や発注ミスが多いと生産性は低下します。ミスが多発すると確認の手間が増え、効率が悪くなるため対策が必要です。特に発注ミスは企業の費用を無駄にしてしまうため、避けるべきであり、在庫管理や部品調達を徹底する必要があります。

コミュニケーションが不足する

製造業では1つの製品の製作に対し、複数の部署と協力しながら業務に取り組みます。進捗状況や情報を共有する必要があるため、部署間や従業員どうしのコミュニケーションが必須です。しかし、コミュニケーションが不足していると、部署間でお互いの状況が確認できず、連絡ミスが起きたり、作業が途中で停止したりします。

生産性向上に向けた具体的な施策

生産性向上に向けた具体的な施策は次のとおりです。

  • 数値で目標を設定する
  • 課題を明確にする
  • 生産プロセスを改善する
  • テクノロジーを導入する
  • 設備を改善する

数値で目標を設定する

目標は具体的な数値で設定します。従業員のスケジュールを細かく管理することで、効率良く仕事を進めることが可能です。また、実現できる内容であることが大切で、無理な目標設定は失敗につながるため避けるべきです。

課題を明確にする

生産性向上を妨げる課題や原因を明確にします。課題が分からないと、何を改善するべきか分からず、生産性を向上させることはできません。作業工程を可視化し、課題を見つける必要があります。現場で働く従業員の声は参考になるため、直接話を聞くことも大切です。

生産プロセスを改善する

作業過程の可視化で発見した課題を改善します。課題を発見しただけで、改善に取り組まなければ生産性は向上しません。課題の解決とともに、目標獺祭に向けて生産性プロセスを改善します。

テクノロジーを導入する

テクノロジーの導入は生産性を大幅に向上させます。ロボットやAIによる作業の自動化は、従業員の負担を大きく減らし、ミスの削減にもつながります。生産性向上を目指すのであれば、テクノロジーの導入は検討するべきです。

設備を改善する

設備を改善し、労働環境を整えることも生産性向上に必要です。働く環境が充実していれば、従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上し、最高のパフォーマンスを期待できます。環境の改善に向けた取り組みとして、従業員から直接声を聴くこと、実際に作業現場を確認することなどが挙げられます。

製造業における生産性向上の成功事例

生産性向上に向けた取り組みを成功させるためには、企業の事例を把握する必要があります。成功事例は次のとおりです。

参考:食品製造業の生産性向上事例集(農林水産省)

株式会社せき

せきでは、作業工程に課題があり、生産性の低さを問題視していました。そこで、生産過程の改善や従業員の育成に力を入れはじめます。集めたデータの分析により無駄な作業を発見し、少ない人数でも作業が完了できるよう作業工程を改善したところ、労働時間の削減や生産量の増加に成功しました。

株式会社中島大祥堂

中島大祥堂は作業工程の可視化を目的に、生産性向上への取り組みをはじめます。これまでは作業工程の生産計画を1日単位で作成し、作業の日に必要な生産量とかかる時間を従業員に指示していました。

そこで、生産計画を30分単位で立案することに変更したところ、作業スピードの微調整や工程待ちの削減が可能となり、生産性の向上に成功しました。

ヤマダイ株式会社

ヤマダイの製造工程では、紙帳票を用いたアナログ式のデータ共有であったため、必要以上の工数の増加や作業の重複を問題視していました。生産性向上の施策として情報をパソコンへの入力に変更したところ、各部署間での連携が円滑になったうえ、リアルタイムでの情報共有が可能となりました。

まとめ

生産性向上とは少ない資源を最大限に活用し、大きな成果が出せるよう業務を改善することを意味します。製造業における生産性向上には利益の増大や品質の担保などのメリットがあり、企業の成長を大きく促進するはずです。

生産性を低下させる原因としては、作業ミスやコミュニケーション不足が挙げられます。しかし、具体的な目標設定や課題の可視化といった施策に取り組むことで、生産性向上を実現できます。競争が激化するなかでも、自社が勝ち残るためには、生産性向上への取り組みを進めなければなりません。

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