2023.02.07

ジョブ型雇用の問題点

ジョブ型雇用は、特定の業務に対して能力を持っている人材を雇用する方法です。即戦力で高いスキルを持った人材を採用できるほか、多様な働き方に対応しているなどさまざまなメリットがあり近年導入する企業が増えています。しかし、日本ではメンバーシップ型雇用を導入している企業がほとんどであり、ジョブ型雇用に切り替えがスムーズに進まないケースは少なくありません。

高いレベルのスキルを持つ人材を見つけられない、ジョブ型雇用に対応しきれていないなどさまざまな問題点が挙げられます。

ジョブ型雇用における問題点

ジョブ型雇用において次の問題点が挙げられます。

  1. 人材を見つけにくい
  2. 人材が流出する
  3. 帰属意識が下がる
  4. 配置転換や転勤などが制限されている

人材を見つけにくい

ジョブ型雇用は対象の業務に対して遂行できる人材が必要になります。そのため業務によっては高いレベルの技術を持った人材が必要であり、採用するのがむずかしいことがあるのです。さらに少子高齢化が進んでいる日本においてこれまで以上に人材を探すのがむずかしくなることが見込まれます。

人材が流出する

高いスキルを持った人材であれば、ほかの企業に引き抜かれる可能性があります。もともと業務を遂行できる高いレベルを持った人材が、同じ業務に集中することによりさらにスキルを向上する可能性があるのです。契約した業務が終わった時点の評価次第では、転職したり引き抜きがあったりなど人材が流出するリスクがあります。

帰属意識が下がる

ジョブ型雇用での契約は、ジョブディスクリプションに記載されている業務内容のみに対応します。そのほかの条件もあらかじめ設定されていることから、ほかの従業員とチームプレイをすることは基本的にありません。そのため、帰属意識が下がる可能性があります。

配置転換や転勤などが制限されている

ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションにてあらかじめ書かれている内容の業務や勤務地を変更や追加をできません。そのため、企業側の都合で配置転換や転勤は基本的に不可能です。そのため、ほかの部署や支店などで欠員が出た場合でも異動してもらうことはできないので注意が必要です。

ジョブ型雇用での従業員側の問題点

ジョブ型雇用を導入するうえで、従業員側においても次のような問題点が挙げられます。

  1. 十分なスキルが必要
  2. 雇用が安定しない

スキルが足りないと就業できない可能性が高い

ジョブ型雇用においては、対象となる業務に必要なスキルがなければ基本的に就業できません。そのため、ジョブ型雇用を導入する企業が増えれば、スキル不足の人にとっては仕事に就きにくくなる可能性があります。

雇用が安定しない

メンバー型雇用は長期雇用が前提で、今の業務がなくなったとしてもほかの業務を担当することは少なくありません。しかし、ジョブ型雇用の場合は対応できる高い専門的な仕事がなくなれば退職する必要のある場合があります。日本では欧米のように業務が終わったらすぐ退職とはならず長期的に勤められることが多いのですが、メンバー型雇用ほど安定していないのが現状です。

現在はメンバーシップ型雇用が主流

日本の企業はメンバーシップ型雇用が主流であり、ジョブ型雇用を導入しているのは一部の企業です。しかし、国際的な競争力の向上や多様化する働き方への対応、従業員一人ひとりのキャリア支援などさまざまな理由でジョブ型雇用を検討している企業は少なくありません。

現状ではジョブ型雇用の導入がスムーズに進んでいるとはいえず、企業側、従業員側ともに問題があります。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、特定の職務に対応できる能力のある従業員を採用する方法です。高いスキルが必要な職務が対象になることが多く、即戦力の人材を採用できるのです。人件費のコスト削減や生産性の向上が見込まれます。技術革新が進む中高い技術を持った人材が今後必要になり、国際的な競争力を勝ち抜くためにもジョブ型雇用の需要は今後高まっていくとされています。

企業側から見た問題点

ジョブ型雇用の導入には、ジョブディスクリプションが重要です。ジョブディスクリプションには業務内容を明確に記載する必要があります。ほかにも業務フローや業務の目標などを明確にする必要がありますが、言葉だけで伝えるのは決して容易ではありません。例えば、業務範囲ひとつとっても人によって捉え方が異なる場合があります。そのため、明確なジョブディスクリプションを作れず、ジョブ型雇用を導入できない企業もあるのです。

日本の企業では社員の職務遂行能力を基準として評価をしていることが一般的で、職能資格制度を採用しているケースもあります。しかし、ジョブ型雇用においては職務評価制度では対応できず、業務内容への対価に対して従業員を評価して報酬を支払う必要があります。そのため職務の内容に応じて難易度やかかる時間などに応じてランクづけをすることが必要です。企業によってはジョブ型雇用に必要な評価制度を整備しきれてない場合があります。

日本では、上司相手をはじめとしてコミュニケーション能力や人間力が高く評価されているケースは少なくありません。しかし、ジョブ型雇用では客観性や透明性が高い評価基準が必要です。このため、ジョブ型雇用を導入するためには大幅に企業改革が求められます。

従業員から見た問題点

従業員の立場で考えてもメンバーシップ型雇用に馴染んでおり、ジョブ型雇用に慣れない人が少なくありません。日本では特に新卒のときは、研修やジョブローテーションなど研修制度が充実しています。しかし、ジョブ型雇用であれば担当する業務を自分で遂行することが必要です。

メンバー型雇用は長期雇用が前提ですが、ジョブ型雇用の場合は対応できる高い専門的な仕事がなくなれば退職する必要のある場合があります。そのため、メンバーシップ型雇用ほど安心して業務ができない可能性があります。このような従業員の不安をなくすためにも、適切で明確な評価制度が必要です。

メンバーシップがメイン

現在日本では、終身雇用制度や年功序列を含めたメンバーシップ型雇用がメインです。ジョブ型雇用を導入している企業が増えているとはいえ、全体数は決して多くありません。そのため、企業側、従業員側の問題を解決するためにはジョブ型雇用導入を社内で浸透させ、評価制度の整備や明確なジョブディスクリプションの作成などの準備が必要です。

ジョブ型雇用が必要な理由

ジョブ雇用が必要な理由として、国際的な競争力をつけることや多様な働き方に対応すること、技術革新が進むなかでも対応できる能力のある従業員の採用が必要であることなどさまざまな理由が挙げられます。さらに、従来の日本のように継続年数で評価するのではなく個々の能力で評価したいといった企業が増えているのです。企業へ貢献しながら個々の能力を高めるなど、キャリア支援を掲げている企業は今後増えていくことが見込まれます。

まとめ

ジョブ型雇用導入の問題点として、企業や従業員とともにメンバーシップ型からの切り替えをできていないケースがほとんどです。日本では長年メンバーシップ型を導入している企業がほとんどで、現在でも状況は変わりません。つまり、ジョブ型雇用を導入するには企業全体の大改革が必要です。しかし、一部の業務からジョブ型雇用にするなど工夫することによってスムーズにジョブ型雇用を導入できることもあります。

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