2023.06.14

秘密計算とは

秘密計算とは、データを暗号化した状態で計算できる技術です。秘密計算を活用することによってデータを秘匿状態で扱うことができ、プライバシー保護をしやすくなります。秘密計算に注目が集まった理由として、近年企業においてデジタル化が加速しており、ユーザーの個人情報や行動情報などのパーソナルデータを扱うことが多くなりプライバシーの管理が重要になった点が挙げられます。

世界ではGDRRやCCPA法などプライバシーに関連する法整備が進んでいます。日本でも2022年4月に改正個人情報法が施行され、プライバシー保護においてより規定や罰則が厳しくなっています。そのため、プライバシー保護をするために、秘密計算と呼ばれる技術が注目されているのです。

秘密計算とは

秘密計算(Secure Computing)とは、暗号化したデータをそのままの状態で計算できる技術です。従来、性別や年齢などの一次情報に対して、機械学習や統計処理などで分析をしていました。秘密計算は、データを秘匿化したままで従来の方法と同じ分析アルゴリズムを活用することが可能です。

不正利用や漏洩のリスクを避けるだけでなく、従来の方法と同じ精度の分析結果を出せるのです。

秘密計算が注目される背景

近年、情報化社会が進みデータの活用が盛んになっています。しかし、その一方で企業秘密の流出や個人情報の漏洩などセキュリティ面での問題が大きな課題として取り上げられているのです。世界では2018年にGDPR(General Data Protection Regulation、EUによる一般データ保護規則)、2020年にCCPA(California Consumer Privacy Act of 2018、カリフォルニア州消費者プライバシー法)が発表されました。

日本でも個人の権利保護の強化を目的に2022年4月に個人情報保護法改正が施行されました。そこで、データを秘匿状態で扱える秘密計算が注目されるようになったのです。

秘密計算の特徴

秘密計算は複数の関係者がデータを共有してそれぞれの情報を秘匿できることから、個人情報や企業秘密の保護ができます。秘匿した状態で計算をしていますが、データの信頼性や正確性の担保も可能です。そのため秘密計算はセキュリティやプライバシーの問題を解決しながら、正確なデータ分析をできることが特徴です。

さまざまな分野への応用

秘密計算は、企業の機密情報や個人情報などの分析だけが目的ではありません。近年では医学研究への応用を目的とした検証が実施されています。ほかにも、生体認証の仕組みや異種混合学習などの分析技術や情報銀行での活用など、活用領域が広がっています。

秘密計算の種類

秘密計算には次のような種類が挙げられます。

  1. MPCベースと秘密分散の活用
  2. 完全準同型暗号ベース

MPCベースと秘密分散の活用

MPCベースと秘密分散を使って秘密計算をするためには、システムにおけるアーキテクチャの設計から見直す必要があるため、構築は難しく初期費用が高額になる可能性があります。しかし、一般に計算スピードが完全準同型暗号ベースよりも速いため、秘密計算をするときによく利用されている手法です。

※秘密分散法:元となるデータを断片情報に分割して秘匿状態にする手法。断片化した単体だけでは元のデータがわからないような仕組みであり、断片化したデータは元のデータに復元することも可能。

※MPC(Multi-party computation、マルチパーティ計算):複数のサーバーを使って通信をおこないながらも同じ計算を同じタイミングでおこなう仕組み。

完全準同型暗号ベース

完全準同型暗号ベースとは鍵を使って暗号化する方法です。MPCベースと比べて簡単に秘密計算をできますが、暗号化したデータを計算するためのコストが高額となることが多く、機械学習の分析にはむずかしいことが一般的です。

秘密計算が活用されている分野

秘密計算は暗号化した状態で計算するため、情報漏洩のリスクの少ないことが特徴です。そのため、次のような分野において活用されています。

  1. 人工衛星
  2. 医療分野
  3. 金融機関
  4. 交通領域

人工衛星

地球の周りには多くの人工衛星がありますが、衝突リスクがあります。しかし、人工衛星が飛行するルートは、各国の機密情報であることから共有するのは容易ではありません。そこで、秘密計算の技術を活用することによって、飛行ルートを共有しないで衝突の危険性を分析することが可能です。

参考:衛星通信における量子暗号技術の研究開発(総務省)

医療分野

医療分野において、AI活用をすることで個別化医療や業務効率化に取り組んでいます。しかし、個人情報を扱うケースが多くプライバシー保護やセキュリティ対策が重要です。そこで、秘密計算技術を活用して診療データを暗号化した状態でAI解析をしているケースがあります。高い安全性とAIによる業務効率化を実現しているのです。

参考:FRONTEO、AI医療機器における秘密計算技術の導入に向け新規セキュリティシステムの開発を開始(PR TIMES)

金融機関

金融業界では、近年チャットボットや商品レコメンデーションのカスタマイズなど機械学習やAIへの投資を拡大しています。シカゴ・マーカンタイル取引所やNASDAQが基盤システムをクラウドに移行したり、金融庁ではマネー・ロンダリング対策の実証事業を実施したりしています。

しかし、AI活用をするためには課題もありました。効率よく機械学習を進めるためには膨大なデータを集める必要がありますが、複数企業から学習データを集める場合は個人情報をはじめとして情報漏洩において十分注意が必要です。そこで、データを暗号化したまま解析や活用をできる秘密計算の需要が高まったのです。

参考:高まる「秘密計算」の活用ニーズ CSAジャパンが語る、金融機関におけるデータ活用の課題と対策(EnterpriseZine)

交通領域

交通機関や不動産会社などによって、電車やバス、タクシーといった公共交通機関の乗り降りデータと決済データを複数の企業にて連携し、駅周辺の販促活動や不動産戦略に活用するといった取り組みの重要性が長年検討されていました。しかし、企業をまたいで個人情報を扱うことから秘匿性や機密性を担保できるかどうかが大きな課題となっていました。

そこで、乗り降りデータや決済データといった個人情報を暗号化したまま分析できる秘密計算が取り入れられるようになったのです。このことで、交通領域においてもデータ活用の幅が広がっています。

参考:EAGLYS、「秘密計算 ×パーソナルデータ」で新たなデータビジネス創出に向けてJR東日本と協業開始(PR TIMES)

まとめ

近年さまざまな分野においてデジタル化が進み、個人情報を扱うケースが増えています。しかし、個人情報の漏洩や不正アクセスなどといったリスクもあります。そこで、データを秘匿状態で扱い従来の方法と同じような分析ができる秘密計算の需要が高まっています。

一般的な暗号であってもデータを保護した状態で通信できますが、秘密計算はデータを暗号化した状態で計算プロセスまで保護できるのが特徴です。

一覧に戻る

関連コラム