2022.12.20

2027年問題とは

2027年問題とは、SAPシステムにおいてSAP ERP保守サポートの標準保守期間が2027年末までとなっていることにより起こりえる問題です。主な対策として、SAP ERP 6.0を継続して利用する方法とSAP S/4HANAへ移行する方法、またはほかのERPを導入する方法が挙げられます。

2027年問題を解決する際において、基盤システムの整備やUnicode化対応を考慮することが重要です。

2027年問題とは

2027年問題とは、SAP社の基幹システムパッケージERP(Enterprise Resource Planning/企業資源計画)であるSAP ERP 6.0のメインストリームサポートが2027年末に期限を迎えることで起こる問題です。かつては2025年末が期限だったためSAP2025年問題だったのですが、期限が2027年に伸びたことから2027年問題となりました。

世界中の企業が導入しているSAPですが、日本国内でも2,000社以上が運用しているといわれ保守期間が終わると大きな影響を与えることになります。2027年問題を解決するためには、継続してSAP ERP 6.0を活用するかSAP S/4HANAへ移行する、もしくはほかのシステムを導入するといった主に3つが挙げられます。

SAPとは

SAPとはドイツに本社を置くヨーロッパ最大のソフトウエア会社です。なかでも企業の基盤システムであるERPにおいては世界一のシェアとなっており、世界中の企業が導入しています。日本国内でも2,000社以上が導入しており、保守サポートの期間が終了することは日本企業に大きな影響があります。

保守期限が延長になった理由

SAP ERP 6.0の保守期限はもともと2025年に終了する予定でしたが、SAP移行作業をするSE不足が深刻であることが保守期限が延長になった理由の1つです。さらに、SAP S4 HANAはSAP ERP 6.0と比較して仕様が大幅に変わっていることにより移行に膨大なコストがかかることも要因の1つです。

2027年問題において考慮するべき点

2027年問題において次の点に考慮することが必要です。

  1. 基幹システムの基盤整備
  2. Unicode化対応

基幹システムの基盤整備

2027年問題に対応するときは、システム基盤再整備をするタイミングです。SAP ERP6.0の継続をした場合やSAP S/4HANAへの移行をした場合のいずれにおいても、Web対応をしたりクラウド環境へ移行したりすることで拡張性が高く柔軟性のある基盤システムに整備することが可能です。基盤システムを柔軟にしておくことで、経営環境の変化に対応しやすくなります。

Unicode化対応

SAP S/4HANAコンバージョンの前提としてUnicode化が挙げられます。そのため、現在のSAPシステムがNon-Unicode環境である場合、Unicode化の検討や改修、ダウンタイム、影響調査などに対応することが必要です。ERPシステムにおいては、改修範囲が広いことから十分な準備をする必要があります。

SAP2027年問題への対応

SAP2027年問題への対応は次の3つが挙げられます。

  1. SAP S/4HANAへの移行
  2. SAP製品以外のERPサービスに移行
  3. 継続して活用

SAP S/4HANAへの移行

SAP社が推奨しているのが最新版であるSAP S/4HANAへの移行です。SAP ERP 6.0と比較しても優れた機能があり、クラウド化していることからスムーズな導入が可能でビジネスの意思決定をしやすいのが特徴です。

しかし、システムを移行する際にPoC要件定義、アドオンの最適化などプロセスが高度であり、人的や資金的などのコストが必要なデジタル戦略の構想策定が必要です。

SAP製品以外のERPサービスに移行

SAP製品以外にさまざまなERPサービスがあり、クラウドベースのERPサービスをはじめとしてあらたな基盤システムに移行する選択肢があります。ほかのERPであれば最新のIoT技術を導入するなどシステムの再構築をゼロからすることが可能です。しかし、ほかのERPシステムを選んだり開発したりするプロセスにおいて高額なコストが発生します。

継続して活用

SAP ERP 6.0を継続して活用することが可能です。現在の保守基準料金に2%追加することで、保守期限を2030年末まで伸ばすことができます。2026年以降継続して保守を受けるためには、エンハンストパッケージ6以降が適用されていることが条件となります。適用されていない場合は、インフラやデータベースなどの保守期限にも対応が必要です。

SAP S/4HANAの特徴とは

2015年にリリースされた最新世代であるSAP S/4HANAには次のような特徴が挙げられます。

  1. データ処理が高速
  2. クラウド対応が可能
  3. 充実した新機能

データ処理が高速

SAP S/4HANAは分析計と基礎系の統合や分析機能が含まれており、データ処理が高速であることから、対応までのスピードを上げることからパフォーマンスの改善につながります。

クラウド対応が可能

SAP S/4HANAはオンプレミス以外にクラウドの運用プラットフォームを選択可能です。さらに、クラウドにはプライベートクラウドとパブリッククラウドがあります。プライベートクラウドは、プライベートクラウドでホストすることでオンプレミスを導入します。パブリッククラウドとは、SaaS(Software as a Service)のことです。

充実した新機能

SAP S/4HANAは、Central Financeをはじめとして充実した新機能があります。SAP S/4HANA Cloudにおいてビジネスパートナテーブルの利用しているデータに対して、プライバシー関連手続きを自動化できるようになりました。このことにより、潜在的なプライバシーリスクを自動的に検出できるようになったのです。

さらに、販売領域において受注時の製品提案や受注登録など機械学習を活用した機能が増えました。このことにより、受注処理を自動化することにより業務効率化につなげたり機会損出を削減したりすることが可能です。

売掛金処理をはじめ6つのアプリが追加されました。分割支払いの登録を支払い約束でできたり、回収請求書においてのカスタム項目などSAP ERP 6.0と比較して柔軟な対応ができるようになりました。

まとめ

SAP ERP保守サポートの標準保守期間が2027年末までとなっていることが原因で考えられる問題を2027年問題とよんでいます。2027年問題への対策として、SAP ERP 6.0を継続して利用することやSAP S/4HANAに移行すること、さらにほかのERPを導入することが挙げられます。

SAP S/4HANAに移行することにより、革新性や迅速性、社内外プロセスの連携といった新しい技術を活用できます。ほかにも、販売領域において機械学習を活用したり新しいアプリが追加されたりするなどさまざまなメリットがあるのです。

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