2023.05.31

デファクトスタンダードとは

ビジネスや技術の分野において、規格や標準が重要な役割を果たしています。しかし、規格が必ずしも公式に定められたものでないことがあるのです。デファクトスタンダードとは、法律や公式の規定によって定められたものではなく、市場において実際に広く利用されている規格や標準のことを指します。

デファクトスタンダードとは

デファクトスタンダード(De Facto Standard、事実上の標準)とは、業界標準として認められた規格のことです。市場での競合他社との競争が基準であり、公的な標準化機関から認証を受けるわけではありません。公的な標準化機関から認証を受けた場合はデジュールスタンダード(De Jure Standard)と呼ばれます。

デファクトスタンダードは、市場において実際に広く利用されていることが重要です。そのため、市場競争において、デファクトスタンダードを採用することが企業にとって有利になることがあります。例えば、携帯電話のアプリストアは、AppleのApp StoreやGoogleのGoogle Playがデファクトスタンダードとなっており、消費者はこれらのプラットフォームで提供されるアプリを利用することが一般的です。

デファクトスタンダードの特徴

デファクトスタンダードの特徴として、市場の変化に左右されないことが挙げられます。公式の規定が変更されると企業は従わなければなりませんが、デファクトスタンダードは市場において実際に利用されているため市場の変化に左右されず、長期的な視野で利用できます。また、デファクトスタンダードは消費者にとっても利便性が高く、規格の統一によって製品の相互運用性が向上するため、市場全体に有益です。

デファクトスタンダードのメリット

デファクトスタンダードには次のようなメリットが挙げられます。

  1. 協力体制が構築できる
  2. 優位性を確保できる
  3. コスト削減につながる
  4. 市場の動向に左右されない
  5. パテント料が入る

協力体制が構築できる

業界内で広く採用されているデファクトスタンダードは、多くの企業や個人が共通の技術や手法を使用することになるため、相互運用性が高まります。これにより、協力関係を構築しやすくなるのです。例えば、共通の技術を使用している企業同士で情報共有をおこない、より効率的なビジネスを展開することができます。

デファクトスタンダードには、オープンなコミュニティが存在する場合があります。こうしたコミュニティに参加することで、技術や手法に関する知見を共有し、相互に支援しあうことが可能です。

優位性を確保できる

デファクトスタンダードは、市場や業界の自然な流れによって定まるため、採用することで競争優位性を確保することができます。例えば、ある技術がデファクトスタンダードとなっている場合、その技術を活用することで競合他社よりも優位な立場を築くことができます。

さらに、デファクトスタンダードは特定の企業や団体によって定められる公式な規格よりも、市場の需要に合致したものである場合が多いため、より顧客ニーズにマッチした商品やサービスを提供することが可能です。

コスト削減につながる

デファクトスタンダードは、業界内で広く採用されているため、その技術や手法に関する情報が豊富にあります。このため、採用する企業は自社で技術や手法を開発する必要がなく、既に確立されたものを活用することができます。これにより、開発や研究にかかるコストの削減が可能です。

デファクトスタンダードは市場における主流の技術や手法であるため、その技術や手法に関する人材の供給が豊富である場合が多く、人材の獲得にかかるコストも低減することができます。

市場の動向に左右されない

公式な規格と異なり、デファクトスタンダードは市場において広く採用されているため、市場の変化に左右されにくいという特徴があります。このため、企業が製品を開発する際には、市場の動向に合わせてデファクトスタンダードを選択することができ、市場競争に勝利することが可能です。

パテント料が入る

デファクトスタンダードには、パテント料が入るといったメリットもあります。デファクトスタンダードを策定した企業が特許を持っている場合、その企業は他社にライセンスを提供することで、パテント料を得ることが可能です。このため、デファクトスタンダードを策定した企業にとっては収益源となることが期待できます。

デファクトスタンダードの注意点

デファクトスタンダードには次のような注意点が挙げられます。

  1. 有益にならない可能性がある
  2. 独占禁止法に触れる可能性がある

有益にならない可能性がある

デファクトスタンダードは、市場の自然な流れによって定まるため、必ずしも最適な規格であるとは限りません。そのため、採用したとしても、企業や顧客にとって有益にならない可能性があります。

例えば、ある技術がデファクトスタンダードとなっているが、その技術によって生産性が向上するわけではない場合、採用しても何の効果も生まれません。また、デファクトスタンダードであるからといって、必ずしもその技術や手法が最適であるとは限りません。

独占禁止法に触れる可能性がある

デファクトスタンダードは、市場における主流の技術や手法であるため、その技術や手法を独占する企業が発生することがあります。このような場合、独占禁止法に触れる可能性があります。

例えば、ある企業がデファクトスタンダードとなっている技術を独占している場合、その企業が市場支配的地位を持つことになり競合他社が参入することが困難となるのです。その結果、企業や顧客にとって不利益が生じる可能性があります。

デファクトスタンダードにおける事例

デファクトスタンダードには次のような事例が挙げられます。

  1. USB端子
  2. Windows

USB端子

USBは、パソコンなどのデバイスに接続するためのポートの規格のことです。USBは、1996年にインテル社を中心に策定された規格です。USBが策定される以前は、パソコンにはさまざまな端子があり、それぞれのデバイスに合わせた接続方法を必要としていました。しかし、USBが登場することで、1つのポートで複数のデバイスを接続することができるようになり、接続方法が統一されました。今では、USBが当たり前のように使われており、パソコンにはUSBポートが複数備わっています。

Windows

Windowsは、Microsoft社が開発したオペレーティングシステムのシリーズのことです。1985年に最初のバージョンがリリースされ、現在でも多くのパソコンで使用されています。Windowsは、パソコン市場でのデファクトスタンダードとして、他のオペレーティングシステムとの競合に勝ち抜いてきました。また、多くのソフトウェアがWindows用に開発されているため、Windows以外のオペレーティングシステムを使用する場合でも、Windows上で動作するエミュレーターソフトが必要になることがあります。

まとめ

デファクトスタンダードは、法律や公式の規定によって定められたものではなく、市場において実際に広く利用されている規格や標準であるため、一般的には自由競争の結果として形成されるものです。市場競争に勝利するためには、デファクトスタンダードを認知して製品を開発することが求められます。

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