2023.04.02

「新たなフェーズでの迷いを断ち切る戦略の確立」――株式会社ドーモ

株式会社ドーモ

2000年創業。ECを初めとした各種Webサイトの顧客体験改善サービスを提供するほか、デジタルハリウッド横浜校を運営する。2019年からは、セキュリティ&パフォーマンスCDN「Cloudflare」(クラウドフレア)」の取り扱いを開始。同サービスの導入数実績は1,000サイト以上を数える。

取締役 CTO 種村和豊 様

EXECUTIVE SUMMARY

  1. 株式会社ドーモは、2019年より取り扱いを開始した「Cloudflare」について、2022年頃からその売上を大きく伸ばしていた。一方で、今後さらなる事業成長を見据えて、どのような事業戦略を立てるべきかを明確に判断できず、社内で模索を続けていた。
  2. リブ・コンサルティングが新規顧客セグメント開拓のための事業戦略策定を支援することで、サービス設計および販売チャネルを明確に定義できた。役員による意思決定も、迷いなくスピーディに行えるようになった。

成長ゆえの迷走からコンサルティングを依頼

LiB小林(事業開発事業部 DXチーム コンサルタント)  私と種村様は、別のクライアント様のプロジェクトで出会いました。その後、種村様に会食の席を設けていただいて、今回のプロジェクトをご依頼いただきましたね。

種村 中長期的な事業成長を考えたプロダクト戦略、短期的な事業成長の両立をどう考えるかロードマップ策定に関して悩んでいる時期に、ちょうどご縁があって、小林さんと会食の機会がありました。プロダクト戦略における「ホールプロダクト戦略」の話題で、盛り上がったのを覚えています。

ホールプロダクト戦略とは、ベンダーが最初に提供する製品の価値と、顧客が期待する価値の間にあるギャップを埋めていくことが重要と考える戦略でしたね。最初期に市場へ投入する「コアプロダクト」では、リテラシーが高い顧客や多少機能不足でもサービスを導入して課題を解決したい顧客にしか刺さらず、より多くの顧客に導入してもらうためには「コアプロダクト」の周辺の機能・サービスを充実させる必要がある、という話をしていただきました。

例えば、ドローンの社会実装は、まさにこのホールプロダクト戦略に基づいていると思います。

LiB小林 そうですね。ドローンは飛行機能をコアプロダクトとしつつ、点検システムなどのアプリケーションや研修サービスを充実させることで、テクノロジーリテラシーが低い人にも普及しつつありますね。

種村 多くの企業が、初期顧客獲得後の事業・プロダクトの成長に悩んでいます。弊社も、まさにその一社でした。

LiB小林 ドーモ様の提供する「Cloudflare」は、「表示スピード改善」「セキュリティ」というコアの機能がすでに定まっています。会食の席では、このサービスをより多くのお客様に提案し導入していただくには、どうすればいいのかという課題を抱えていると、ご相談いただいたのを覚えています。

種村 「Cloudflare」の機能を、高く評価してくださるお客様への導入がある程度一巡してしまい、今後の事業成長の方向性に悩んでいました。

弊社は、「Cloudflare」認定パートナーとなった2019年から、まずはプロダクトを世に送り出すことに専念しました。売上が大きく伸び始めたのは、2022年に入ってからとごく最近です。しかも、そこから弊社は迷走するようになってしまいました。事業のグロースを考えた際の、選択肢が増えてしまったからです。

社内でも、今後どんなコンテキストで「Cloudflare」の販売戦略を立てるべきか、議論を重ねました。しかし、明確な方向性は打ち出せずにいました。そんな時に小林さんと出会い、コンサルティングをお願いしたいと伝えました。

自社の現在地と方向性に対する共通認識を揃えられた

LiB小林 今回の支援では、ドーモ社のボードメンバー(取締役もしくは、役員)のみが参加する形で、経営合宿を「一緒に壁打ちしながら戦略を考えていく」というワークショップ形式で行いました。

種村 弊社の場合、大きな課題は「ボードメンバーがどう合意形成するか」でした。マーケティング、営業、技術の各領域で、役員はそれぞれの考えを持っています。それらを議論した上で、方向性を統一させることに、もっとも注力したかったのです。そこで、小林さんに主導いただきつつ、メンバーの意見をまとめていきました。

LiB小林 私の方では、初回のワークショップで事業戦略・マーケティング戦略・プロダクト戦略の考え方と検討のフレームをお伝えし、ケーススタディなどを行いました。ここで、「ドーモの課題は何か」の意見を各メンバーから出していただき、議論を整理することで、優先度の高い検討課題を定義しました。

種村 このタイミングで、小林さんが商品価格と営業チャネルに関する図を見せてくださったじゃないですか。この図が、コンサルティングでも特に大きな成果につながったと感じています

 

種村 弊社はベンチャーに属している企業ですが、年商1,000億円以上のお客様の案件を担当することもあります。とはいえ、中心となる市場はこの図でいう「小規模ITサービス」です。そこに目を向けると、さらなる事業拡大に向けて、注力すべき販売チャネルは「代理店販売」なのだということが分かります。

実は、ボードメンバー内でもこの仮説は立てていたのです。とはいえ、ほかの営業チャネルでも売上は出ているので、販売戦略を一点に絞ることはできませんでした。小林さんから資料を元に説明いただき、ボードメンバーで議論するというプロセスを経て、代理店販売という戦略に論理的な根拠を見つけられたのです

また、小林さんはキャズムに関するお話もしてくださいましたね。

LiB小林 キャズムの説明では、ドーモ様が現在どのフェーズにいるのかという認識を揃えることが目的でした。

 

種村 弊社では、最近テクノロジーに詳しいわけではないお客様からの問い合わせが、徐々に増えていました。お客様が増えつつある一方で、競合他社との競争に対して、ポジショニングや新規チャネル開拓の必要性も増しています。弊社はもう、アーリーマジョリティのフェーズへ移行しつつあるという認識を、ボードメンバー全員で共有できました

-LiB小林 次に、改めて「ドーモ様の顧客は誰か」について考える時間を設けました。マチュリティレベル(組織のIT成熟度)で顧客をセグメンテーションして、どのようなシチュエーションで受注することが多いかを整理していったのです。
この整理で、あるセグメントにおいて「販売代理店が勧めたことがきっかけ」に「スイッチ(切り替え)することが多い」ことが導出されましたね。
セグメントの購買意思決定の特徴を鑑みても、販売代理店の活用が有望だという仮説が強化されました。

種村 ファクトベースで考えたことで、全員がこの戦略の確実性を理解できました。

LiB小林 検討の後半では、ターゲットとなる顧客セグメントに対して、具体的にどのような機能がホールプロダクトとして必要かを設計しました。

種村 顧客セグメントごとに人によるサポート・コンサルティングが必要なことが明らかになりました。連動して販売チャネルの方針も決まりました。

また、これまでは、ドーモの事業=プロダクト(「Cloudflare」)となっていましたが、改めて市場に提供できる価値をベースに事業の拡張の方向性をボードメンバーの間で認識できたことも本プロジェクトの大きな価値です。

販売チャネルが定まり行動のムダが一切なくなった

LiB小林 ドーモ様は、今回のご支援の一番の成果は何だと思われていますか。

種村 明確に販売チャネルが定まったことで、ムダが一切なくなったことです。小林さんが販売戦略を整理してくださったことで、「なぜそれをやるのか」と逡巡することがなくなりました。コンサルティングを受けた直後から、自分たちの担当領域に集中できるようになったのです。

小林さんは、いきなり戦術論からコンサルティングを始めるのではなく、改めて事業戦略の基本的な概念を解説してくださいました。そこから議論をスタートし、ホールプロダクト戦略を考えるというプロセスを経たことで、メンバーも腹落ちしやすかったのだと思います。

また小林さんは、Amazon Web Services(AWS)による技術支援で世界的に高い評価を受けている大手パブリッククラウドベンダーC社の具体的な事例など、ハイコンテキストな事業戦略/グロースの考え方を体系的に説明してくださいました。弊社と近しい事業領域についての、豊富な知見やコンサルティング実績を持っていたことは、私だけでなく他のボードメンバーの信頼につながったと思います。

そもそも小林さんは、会食の席ですでに「ドーモは代理店販売を主軸に、その後、独自のホールプロダクトをどう考えて行くかが重要」とズバリ指摘されていました(笑)。その指摘内容が、私たちの仮説、常日頃の考えと大きくズレていなかったという点も、コンサルティングを依頼する大きな後押しになりました。

プロダクトの拡張とアップデートで進化していく

LiB小林 最後に、ドーモ様の今後の展望をお聞かせいただけますか。

種村 小林さんのコンサルティングによって、弊社がさらなる事業成長を見据えて、自走するための準備が整ったと考えています。ここで得られた戦略を机上の空論に終わらせず、お客様により役立つようにプロダクトを拡張しつつ、より多くのお客様に我々のソリューションをご活用頂けるよう、新規顧客開拓を頑張りたいと考えています。

しかしながら、ホールプロダクト戦略というのは、「一度まとめておしまい」というわけではありません。小林さんからは、今回のコンサルティングを受けての戦略をシートにまとめていただきました。その資料を定期的に見直しつつ、適宜アップデートしていくことが、今後の私たちの仕事かなと思います

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