2023.03.28

新規サービス展開のための「強み」の掘り起こし――株式会社インフォメーション・ディベロプメント

株式会社インフォメーション・ディベロプメント

1969年創業。50年以上にわたり、金融、公益、航空など幅広い業種の顧客へ、ITシステム運用やシステム開発、ITインフラを中心とした幅広いITサービスを提供している。長年培ってきた、サイバーセキュリティのノウハウと、IT運用・開発における経験を組み合わせて、顧客の課題を解決してきた。

企画担当部長 三好 敏明様(画像右)
次長 神沼 直人様(画像左)

EXECUTIVE SUMMARY

  1. 株式会社インフォメーション・ディベロプメントは、2020年11月よりクラウドの導入・移行を支援するサービスとして、「ID-Cross(アイディクロス)」をリリース。自社の専門性を活かしたサービスではあるものの、明確な訴求ポイントが見いだせず、新規顧客の獲得が難航していた
  2. リブ・コンサルティングがマーケティング戦略の支援プロジェクトに参加し、ユーザーインタビューによるヒアリングを実施。その結果、市場の課題に対して、自社の持つ技術・ノウハウが強力な「強み」として活かせることを発見した。

自社の「強み」を改めて見つめ直したい

-LiB小林(事業開発事業部 DXチーム コンサルタント) 今回の支援にあたり、インフォメーション・ディベロプメント様が、どのような状況にあったのかをお聞かせいただけますか。

三好 弊社は2020年に、新規サービスであるマルチクラウドソリューション「ID-Cross」をリリースしました。「ID-Cross」は、クラウドシステムを導入するお客様を支援する、クラウドSIサービスです。単にシステム導入を支援するのではなく、システム設計、構築、運用、セキュリティという各種フェーズに対して、弊社の専門家がサポートいたします。

「クラウドシステムにまつわる全てをお任せいただけます」というのが、このサービスの特長です。しかし、網羅性が高すぎる故に、「何が強みなのか」が不明瞭という問題を抱えていました。

神沼 クラウド系の商材は、競合が非常に多いです。弊社でもさまざまなアイディアを出し合いましたが、新規のお客様の心に響く訴求を打ち出せずにいました。そこで、外部の知見を入れ弊社の「強み」を明確化し、サービスの方向性を考え直し、市場での競争力を高めようと考えました。

 

-LiB小林 今回のプロジェクトを、リブ・コンサルティングに依頼していただけたのはなぜでしょうか。

神沼 私たちは、リブ・コンサルティングを含めた3社で検討を進めていきました。一番の決め手になったのは、貴社の提案の内容が非常に具体的で、プロジェクトのゴールを明確にイメージできたという点です

小林さんは初回のヒアリングの後、弊社のソリューションに関するユーザーインタビューを行っていましたね。その上で、「貴社のサービスの強みはここです」と、仮説に基づいた提案をしてくださいました。

 

-LiB小林 貴社との初回面談は、5月中旬に行われました。その後、約2週間でユーザーインタビューを行い、5月末に提案書を作成・プレゼンさせていただきました。弊社が過去に類似の案件を取り扱っていたり、そこでご協力いただいた関係者様とのつながりを活用したりすることで、迅速な分析と仮説構築ができました。

神沼 他社と比べて、提案のスピードが非常に早いと驚かされました。提案者とプロジェクト参加者が異なるコンサルティング会社も多い中、小林さんがそのままプロジェクトにも参加するという点にも、安心できました。

ユーザーインタビューという新たな手法の発見

-LiB小林 3ヶ月間のプロジェクトのうち、1ヶ月目では市況や貴社のサービスの強みは何か、市場でどう戦うべきかを議論しました。2ヶ月目からは、ユーザーインタビューを通じて戦略の精度を高めていきました。

神沼 弊社は当初、従来のサービスに新たなソリューションを加えていく、あるいはサービス内容を変更するという方針を持っていました。しかし、プロジェクトが始まってすぐ、そのアイデアではダメなのでは…という結論に至ってしまいました。

プロジェクトで仮説を立てたアプリであれ、WAFであれ、データ活用であれ、あらゆる方策を検討しても弊社の強みたりえない。果たして、このままプロジェクトを通じて成果を出せるのか、一抹の不安を抱きました。

 

-LiB小林 私にも、その不安は伝わりました。ただし、経験則として「売上高が100億円以上の会社は、必ず強みを掘り起こせる」という確信がありました。貴社の場合も、何か確固たる強みがあるはずだと。

実は、ユーザーインタビューの前段階が、一番試練の多い時期でもあります。ユーザーの生の声がなく、どんな議論も机上の空論に感じてしまうからです。そのため、弊社ではなるべく早く、ユーザーインタビューを行う方針を取っています。

三好 ユーザーインタビューを始めてすぐ、皆さんの力を強く実感しました。私も何度か同席しましたが、小林さんがインタビュイーに対して、かなり突っ込んだ質問を投げかけていたことに驚きました。

私たちも、営業からお客様の反応をフィードバックしてもらい、プロダクトに反映させることはあります。しかし、皆さんのインタビューは、それとは全くの別物でした。

神沼 小林さんが行うユーザーインタビューは、忖度なしの意見を聞き出すことができていて、私たちが行うヒアリングとの大きなギャップを感じました。

三好 ユーザーインタビューが始まってすぐ、「これは私たちにとって、絶対に必要なアクションだ」だと痛感しました。プロジェクトの最終報告でも、役員陣は口々に「ユーザーインタビューは今後もやっていきたいね」と話していました。

自社では当たり前だと思っていた強みの掘り起こしができた

-LiB小林 20人以上にユーザーインタビューをした結果、「ID-Cross」のユーザーは、大きく2種類に分けられるということが分かりました。ひとつは、クラウドシステムへの移行に慣れていない、マチュリティ(成熟度)の低いユーザー。

もうひとつは、複数回クラウドシステムの導入経験があるユーザーです。
これらのユーザーは「運用で困っている」という、共通の課題を持っていました。そして、「運用こそが、インフォメーション・ディベロプメント様の強みであり突破口ではないか」という結論に至ったのです。

三好 システムを安定稼働させるには、さまざまな保守・運用ルールやプロセスを定義する「運用設計」というフェーズが必要です。しかし、多くの企業はシステムの構築までは意識するものの、保守運用まで考えてはいないということが、ユーザーインタビューで分かりました。

弊社は約50年の歴史を持ち、運用・保守を見据えたITインフラ構築を提供してきました。実はユーザーが抱えるニーズと、私たちが持つ強みがマッチしていたわけです

 

-LiB小林 ”「ID-Cross」は「運用設計」が強み”という戦略の素晴らしい点は、他社が真似できない点にあります。保守・運用という、担い手が少ない社会課題に対して、長年この領域を担ってきた貴社に、経験や技術力で勝てる企業がいない。この強みを見つけた瞬間、なんて美しい戦略なんだと感じました(笑)。

三好 経営陣への最終報告の時も、小林さんが「この戦略にはすごく自信があります!」とおっしゃっていましたね。この発言は、私たちにとっても大きな後押しになりました。

実は「ID-Cross」立ち上げの段階で、「運用」というキーワードは社内でも出ていました。しかし、社内で議論が進むうちに、この論点は埋もれてしまいました。リブ・コンサルティングさんは、弊社が潜在的に感じていた強みを、改めて論拠を持った形で掘り返してくれたと感じています

それができたのは、ユーザーインタビューを通じて、第三者の言葉をちゃんと拾い上げられた結果だと思います。小林さんは、SIerのシステム開発や、最新のテクノロジーに関する知見を豊富にお持ちでした。その上でインタビューを行ってくれたおかげで、有意義な意見を引き出せたのだと思います。

神沼 3ヶ月目はマーケティング戦略を元に、ホワイトペーパーや営業資料、LP・広告の作成やインサイドセールスチームづくりを進めていきました。小林さんは、「ソリューションをどう世に出していくか」という、プロジェクトの成果を示す重要なアクションにも、丁寧に取り組んでくださいました。

-LiB小林 私自身も、リブ・コンサルティング社内のサービスのホワイトペーパーを、自分で書いたり広告出稿したりしています。そこでの実践経験も踏まえて、この取り組みで支援できたと思います。

リブの支援だからこそ聞き出せた「第三者の言葉」から戦略の軸を見い出す

-LiB小林 3ヶ月間のプロジェクトで、リブ・コンサルティングが参加した価値はどこにあったとお考えですか。

神沼 私たちだけでは、「運用」という強みも社内に埋もれたままでした。ユーザーインタビューという新たな方法で、第三者の意見を集めることができたおかげで、軸を見出すことができたのです。この点に、私たちは大きな価値を感じています。

短期間でプロジェクトを完遂できたのも、リブ・コンサルティングさんが推進力になってくださったおかげだと考えています。

三好 軸が定まったことで、チーム内でも「運用が強みなら、サービスはこういう形になるべきだよね」という議論が生まれています。今後、軸に対してサービスの方向性も明確化されれば、チームの体制も自ずと変化していくでしょう。

 

-LiB小林 インフォメーション・ディベロプメント様が「運用のプロである」というのを定義できたことで、それに則ったサービス内容や、お客様の課題への共通認識が形成できたわけですね。

神沼 プロジェクトには、現場メンバーも多く参加していました。プロジェクトの成果は、ダイレクトに現場にシェアされていったのですが、セールスからの反応は特によかったです。強みが明確になったおかげで、メンバーも訴求しやすくなったようです。

そのおかげか、セールスには「このメッセ―ジはリードに正しく伝わり、受注につながったのか」を検証する意識が芽生えたと思います。メンバーにマーケティング的な視点が備わったのが、このプロジェクトのもうひとつの成果です。経営陣への最終報告も、すごく説得力のある話ができたことで、非常に好印象でした。

三好 プロジェクト終了後、考えれば考えるほど、「運用」という強みが「できる人に頼らざるを得ない領域」ということが分かってきました。それができる経験、技術力があるというのは、まさに「他社にオープンにしても戦えるだけの強み」だと、私たちも言い切れるようになりました。

これまでは、運用という強みを感覚的に理解しつつも、訴求する方法が分からなかったのです。リブ・コンサルティングさんが明確に定義してくれたおかげで、訴求方法を少しずつ社内でも考えられるようになっています。今後は、それをさらに洗練させていきたいです。

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