2023.11.06

GX領域における事業計画およびマーケティング戦略策定・実行支援――双日株式会社にお話を伺いました。

双日株式会社

自動車、航空産業・交通プロジェクト、インフラ・ヘルスケア、金属・資源・リサイクル、化学、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービスの7つの本部体制で、国内外での多様な製品の製造・販売や輸出入、サービスの提供、各種事業投資などをグローバルに多角的に行う総合商社。
話を伺った方

インフラ・ヘルスケア本部 環境インフラ事業部グリーンEVインフラ事業推進チームリーダー 忠鉢 良明 様(画像右より2番目)
インフラ・ヘルスケア本部 環境インフラ事業部 上級主任 グリーンEVインフラ事業推進チーム 山本 五郎 様(画像右より1番目)

EXECUTIVE SUMMARY

1.社会の大きなムーブメントであるGXビジネスの事業戦略立案は、従来のノウハウだけでは解決が難しい挑戦だった。双日のアセットを活かした事業戦略立案に向けて、「EVX」を提唱するリブ・コンサルティングが(以下:リブ)が事業戦略立案とマーケティングプランの策定で手を組んだ。

2.事業戦略立案において、世界の動向把握や国内市場の傾向分析だけでなく、一次情報である顧客の声を収集、ニーズを分析することで、より解像度の高い事業戦略の構築を実現した。また市場での競争優位性分析を行った。

正解のない現在進行形の社会的なムーブメントに向けて、一次情報を活用し、実現性の高い 事業戦略を描いていく

ーリブ花月 はじめに、御社のGX事業の特徴と業務内容を教えてください。

ー双日 忠鉢  総合商社はほぼ全ての産業にビジネスアセットを保持していますが、当部は太陽光や風力といった再生可能エネルギー発電のインフラ事業に特化しており、GX領域でビジネスをスタートするのにふさわしいビジネスアセットをすでに持っていると考えています。

GX領域は単なる産業ではなく社会が変わっていく大きなムーブメントと捉えていて、そこに絡んでいく面白さがあります。私は自動車部門に所属し、長年海外で日本車の輸入総代理店やディーラーの経営を担ってきたのち、現在は環境インフラ事業部にてグリーンEV事業の事業開発責任者を務めていますが、自動車事業で経験してきた案件開発やマーケティング戦略を新たな領域で実行しています。

現在弊社が持つソリューションサービスを事業としてグロース、スケールさせる仕組みづくりが最注力のミッションになります。顧客のニーズに繋がる課題抽出を顧客よりも先回りして捉えたうえで的確なソリューションを提案し、顧客と共に社会の変容を推進していくことが重要です。GXは未知の領域でありビジネスの答えがまだ見えない中ですが、ソリューションをマーケティングの仕組みを活かして必要とされているお客様にお届けするのが弊社の価値だと思い試行錯誤しています。

ー双日 山本  私は忠鉢とともに上記のミッションを遂行しています。先ほど忠鉢がGX領域の事業創出に対して面白さ、という表現を使っていますが、社会課題からニーズを探り・解決案を見出すために様々な部署、パートナー企業を巻き込んでいく必要があり、総合商社が持つビジネスアセットを活かせる醍醐味があります。

ーリブ 花月 まだ正解が存在しないビジネスでありながら、将来に向けた再現性ある仕組みを作っていくという難しい挑戦でしたよね。総合商社ならではのビジネスアセットを活かそうという取組でもありました。今回はGX領域における事業検証とマーケティング戦略立案のプロジェクトでしたが、当社にご依頼いただいた背景を教えてください。

ー双日 忠鉢 御社が出版している書籍「EVX モビリティ×エネルギー領域の融合」を読んだのがきっかけです。 EV領域の新規事業を日々模索していたため、御社のセミナーを拝聴し、ご提供の資料もたくさん読みました。その後”EVX”が出版され、早速拝見したところ見事に自身が知りたいことが網羅されていました。

その時ちょうど今回のプロジェクトの構想段階でコンサルティングファームへの依頼を検討していたため、お声がけしました。

(書籍:「EVXモビリティ×エネルギー領域の融合」)

ーリブ花月 当社では2021年からEVをハブとしてモビリティとエネルギーの領域におけるビジネスの変化の中で、新しく生まれる市場を、EVX(EVトランスフォーメーション)と定義し、情報発信を強化しました。当社の発信に共感いただき感謝いたします。実際に当社に相談を持ち込んでいただき、どのような印象を持ちましたか。

ー双日 忠鉢 実は他のファームにも相談しました。面談を通じて他社もGXの潮流やトレンド理解、当社が描くストーリーに共感していただきましたが、GX領域における具体的な企業の動向、プレイヤーのアクションプランなど一次情報まで掴んでいる点ではリブさんが最も信頼できると感じ、手を組ませていただきました。

ー双日 山本  来年度から始まる中期経営計画を策定するタイミングであり、脱炭素事業を拡大させる上で大きな絵を描いて社内に説得する必要がありました。
各事業については、既に当社で走り出し知見も溜まってきている為、リブさんには我々の現状の仮説のブラッシュアップ、それから営業マテリアル作成やマーケティング支援を一貫して伴走いただける点が期待でき、起用の決め手になりましたね。

ー双日 忠鉢 新規事業を立ち上げる際には、確度を高めるために当社の既存アセットの活かし方が非常に重要で中期経営計画の策定はかなり深いところまで詰めていく必要があります。具体的にどの顧客に対して、どのように、どんな体制で、どれくらい時間をかけるのか、さらにそのマーケティング活動に対するリターンまで逆算する必要がありました。

ーリブ 花月 初めにご相談の際に捉えたのは、「正解がない市場」という点と「事業立ち上げの段階」という点が重なっていたことでした。中長期の成果を出すためには、まずはGXという新しい市場で明確な初期成果を出していく必要がありました。短期の勝ち方に、いかにリアリティを持って生み出せるか、並行して中長期の目線に向けての大きな構想の解像度を高めながら勝ちパターンを作り上げていくバランスがすごく難しかったと感じています。

当社をお選びいただいたキーワードの一つにありましたが、国内のGX領域において「一次情報」をどのファームよりも知っている、不明な情報であれば掴みにいくことで、市場や顧客ニーズの解像度を高め、事業成果の可能性を高めるという使命として持っていました。

モビリティ×エネルギーの領域においては、これまで当社の強みとして全国のカーディーラー様の支援やエネルギー業界に対する多数のプロジェクトのノウハウがあります。リアリティを持っているその情報をどこまで、御社のアセットと融合できるのか細かく見たことがこのプロジェクトの鍵になったように振り返ります。
このプロジェクトは3ヶ月間という期間でしたが、毎日のように打ち合わせをさせていただき、まさに伴走し、事業戦略を共創させていただいた実感があります。

アジャイル型の事業検証で、市場と顧客ニーズの解像度を高めていく

ー双日 忠鉢  GX事業は未来予想図でありつつも、ビジネスとして取り組んでいくためには事業規模の見極めと顧客ニーズの解像度を相当高めないといけない点が難しかったですよね。成功例が存在しない中、事業の成功確率を高めるために、ターゲットの絞り込みとその中での事業ポテンシャルを上げていくのに想定より苦労しました。

ーリブ 花月 顧客ニーズを探るため様々な業態へのインタビューを行いましたが、具体的なシーンで言うと、太陽光発電事業において、ゴルフ場や商業施設へのインタビューを通じて、顧客ニーズが見え始めた瞬間がありました。ターゲットペルソナと具体ニーズがパズルのようにはまると帰納法的にマーケティング戦略の組み上げが加速してくるイメージが持てました。

ー双日 忠鉢 仮説を立てた上で、事業検証を進めて行きましたが、ニーズが見えない中、一緒に悩みながらやったのはありますね。

ーリブ 花月 我々も本領域に対するナレッジを保持していた自負はありますが、初めから答え持ってるわけじゃない、そんな中、腹を割って一緒に悩みながら考えて、とにかく顧客の声を集めて、事業の勝ち筋を探して行きました。

ー双日 忠鉢 プロジェクトのターニングポイントとして、事業の全体像をコンセプトブックとLPにてクリエイティブに落とし込んだ点がありました。やはり実際にマーケティング活動で使えるマテリアルがあると想像力が膨らんで解像度が上がってきますが、事業検証段階で並行して制作いただいたスピード感には驚きました。

複雑な事象をたくさんの言葉で説明することよりも、簡単に説明する方が何倍も難しいですよね。このコンセプトブックは、チラシ1枚にまとまっておりシンプルに見えますが、実は当社のアセットや展望が詰まっている。

ーリブ 花月 3ヶ月という期間の中で、どこまで事業戦略の確度を高められるのか、成果創出と言う点には妥協なく実行できたと思います。

ー双日 忠鉢 これから戦略立案からマーケティング施策を実行していくフェーズになりますが、制作したコンセプトブックは社内外での営業活動に機能しています。商社の営業活動において、周囲の力をうまく活かすことが重要です。このコンセプトブックは社内でも多くのメンバーに横展開されており仲間づくりや販路拡大に役立っています。

ーリブ 花月 ステークホルダーが増えてくる中で、議論のベースとなるツールがあると様々な可能性が出てきますよね。

GX事業の加速に向けて、ステークホルダーを巻き込み存在意義を確立していく

ーリブ花月 GX領域における今後の展望についても教えていただけますか。

ー双日 忠鉢 脱炭素は、これから10年20年をかけた息の長い仕事となると想定され、案件管理が肝となりますので、デジタルでプラットフォームを作っていきたいと考えています。新しいカスタマーエクスペリエンスを提供し、インプリメンテーションの品質管理の徹底がビジネスとして勝敗を分ける鍵になるでしょう。

ー双日 山本 GXは、まだこれからの事業領域です。今後様々なサービスがまだまだ増えていきます。我々は、若干ではありますが、他社よりも早く事業パートナーのソリューションや、当社で開発したサービスなどを市場に提供してきた優位性があります。収集されたお客様の声と、同時に提供済みのソリューションから収集されたデータをうまく連携させることで、お客様の利便性を改善させ続けたいです。新たなGXソリューションを多様なパートナーと創造し続けられる仕組みをいち早く築いていきたいと思います。

ーリブ 花月 世の中的に未知の取り組みでもデータドリブンで効果検証を行っていくことで、この先に出てくる新たなムーブメントに対しても再現性を持たせることが出来ると思いますし、象徴事例を創ることに繋がると思います。

では、最後のご質問です。今後コンサルティングファームとはどのような付き合いを期待していますか。

ー双日 忠鉢 市場調査やマーケティング戦略の設計に加えて、企業間や事業間のマッチングまで期待したいですね。マーケ戦略立案作業で潜在顧客探しにもご協力いただきましたが、当社のアセットと他者の組み合わせで化学反応を生み出していくような取り組みがあってもいいかと思います。競合他社さまもウェルカムです。

今回御社とともに策定した事業計画をこれから推進していく中で壁にぶつかる局面が出てくると思います。その際には、事業計画のコンセプトに立ち返る意味で、御社とディスカッションさせていただければありがたいです。

ー双日 山本 お互い業界の最先端の商材やパートナーを紹介し合い、常に一歩先を行く意見交換がし続けられるような関係になると嬉しいですね。

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