2023.10.02

EVにおける事業開発支援。戦略策定からパートナー創出までを一貫して伴走――三菱商事ロジスティクス株式会社

三菱商事ロジスティクス株式会社

1954年設立。日本、中国、アジアを中心にグローバル展開する物流会社。アパレル、工業製品、自動車などの分野で、その業界を代表するお客さまとの取引から得た多様な機能を背景に物流の枠にとらわれないソリューション提案型ビジネスを展開。 顧客の経営課題解決のために、輸送や保管を行う協力会社と関わりながら、物流のマネジメントから企画立案や消費の予測まで携わり商社機能を活用して、生産から消費までの物流の全領域をカバーしている。
話を伺った方

執行役員 自動車カンパニー長 自動車カンパニーオフィス室長 後藤靖雄 様(画像右より3番目)
自動車カンパニー 自動車ソリューション部長 大海正德 様(画像左より3番目)
自動車カンパニー 自動車ソリューション部 モビリティ事業チームリーダー 伊藤真 様

EXECUTIVE SUMMARY

1.物流の全領域をカバーしている三菱商事ロジスティクス株式会社(以下MCLOGI)は世界的な脱炭素潮流の中、EV・モビリティ領域における新規物流事業構想を検討していたものの、リサーチを進めるにあたり実態との乖離が発生していた。EV領域の専門知見と事業開発ナレッジを持つコンサルティングファームの起用を検討し、「EVX」を提唱するリブ・コンサルティングに相談を持ち掛けた。

2.事業構想において欠けていたピースを紐解き、リブ・コンサルティングが本プロジェクト(以下PJ)におけるガイディング・プリンシパルをMCLOGIと共に策定し、戦略策定からパートナー創出など伴走型支援を実施し、「事業構想の確立」を実現した。

 

 

EVXに共感し、事業開発パートナーに

―リブ坂本 MCLOGI様の事業内容を教えていただけますか。

―MCLOGI 後藤 弊社は物流事業者として、国際複合一貫輸送業、倉庫業、流通加工業等を主な生業としております。国内・海外問わず、自社・パートナー様の機能を複合的に組み合わせ、お客様に最適な物流を構築、実行しております。一般的に例えるなら貨物版の旅行代理店のような事業内容であり、QCDEFS(品質・コスト・納期・環境・柔軟性・安全性)の観点で貨物の輸配送保管等を様々な角度から提案・実行しております。

その中でも自動車カンパニーでは自動車に関連する物流を専業としております。自動車生産部品の国際複合一貫輸送では、トラック・コンテナ船・航空機・鉄道等を組み合わせて日本や第三国からの輸出入や国境を跨いでの輸送となるクロスボーダー輸送を行うのみならず、海外ではモータープール事業という自動車完成車の1万台を超えるような大規模保管や、当該国で200か所近くあるディーラー様拠点に積載車で自動車を運ぶような事業も行っております。

また、弊社ではLLP(Lead Logistics Provider)と呼ばれる、お客様の生産・販売の武器となるような物流の企画設計から運営というトータルソリューションを自動車OEM様やディストリビューター様に寄り添う形で行っているのも特色です。

―リブ坂本 PJリーダーである伊藤様の業務領域について教えてください。

―MCLOGI伊藤 2022年4月に新設されたモビリティ事業チームのチームリーダーを務めております。このチームでは主に国際複合一貫輸送の中でも少し特殊な貨物や地域を扱う事業と、現在注力しているEV・モビリティ領域での物流新規事業開発を担当しており、リブ・コンサルティングにサポート頂いているEV・モビリティ領域の物流新規事業開発においてプロジェクトリーダーを務めております。

―リブ坂本 今回のプロジェクトを依頼されたきっかけを教えていただけますでしょうか。

―MCLOGI大海 世界的な脱炭素潮流の中、世の中でEVシフトやモビリティが急速に広まっております。そうした中、EV・バッテリー関連における様々なサプライチェーン・物流上の課題にも実務として直面しております。弊社としても、そうした物流課題の解決の一助となるサービスを開発、提供することで、世の中の課題解決・価値提供を行っていきたいと考えたのがスタートです。そうした中、リブ・コンサルティングが提唱している※1「EVX」の領域において企業の事業開発伴走型として、ともに事業構築を行って頂けるという点で、弊社が新たに取り組む領域であるEV・モビリティ領域の事業開発サポートをお願いしました。

※1「EVX(EVトランスフォーメーション)」=EVをハブとしてモビリティとエネルギーの領域におけるビジネスが急激な変化を遂げ、新しく生まれようとしている市場。

EV領域の専門知見と事業開発ナレッジを組み合わせてガイディング・プリンシパルを策定

―リブ坂本 今回のPJ以前はコンサルティングファームを活用されたことはありましたか?

―MCLOGI後藤 海外拠点でのリサーチやシステム構築ではありましたが、特に自動車カンパニーでは事業開発としてPJを本格的に事業検証したり推進していくようなものでは初めての試みでした。

―リブ坂本 改めて、ご一緒させていただきありがとうございます。このEVXという領域は、EV後進国である日本において解明されていないことがほとんどであり、チャレンジングな取り組みをご一緒させていただき改めて感謝いたします。このPJ依頼にはどのような意図があったのでしょうか?

―MCLOGI大海 元々は自分たちのみで推進していく計画だったのですが、いざ計画を進める中で“モビリティの実態“が想定とかなりかけ離れていると感じ、EVシフトやモビリティにおける専門家への相談を検討した背景もあります。

新たな領域の事業開発を行うにあたって調査から入りましたが、リブ・コンサルティング様にはモビリティ業界の調査から入っていただき、順を追って要件整理・事業開発・マーケ&セールス支援という形で伴走頂いております。初めは調査のみの予定でしたが、短期間でのプロジェクト実行ということもあり、専門的にプロジェクトリードと伴走支援をして頂く形になりました。

―リブ坂本 最初に御社とお話させていただいた際に、全体構想や目指す世界観を伺う中で新規事業を進めていく上での目的やそのための手法論が定まりきっていないように感じたため、※2「ガイディング・プリンシパル」を固めることが重要だと感じました。

新規事業開発を進める中で、ガイディング・プリンシパルが固まり切れていないことで、事業構築の方向性が定まらなかったり、どこで躓いたのか・なぜ上手くいかないのかPDCAを回せないケースを何度も見たりしてきています。事業開発段階においてはまずは事業構築の足腰となる部分を固めることに注力させていただきました。

大海さんが仰ったように、まずは産業調査からご一緒させていただくような形となりました。我々が意識したポイントとしては2点あり、1点目はただの産業調査にしないこと。調査を行う上で将来的な事業構築に向けて学ぶべきポイントはないか、どのような影響があるのかを抑えながら進めていきました。

その将来予測を出していくロジックが重要な部分になりますが、我々独自でロジックを組み立てるのではなく、MCLOGIの皆様とかなりの頻度でディスカッションさせていただきながら納得感のあるものを作っていきました。もう一点は、重複しますがガイディング・プリンシパルの策定になります。

産業調査後のフェーズである事業構築に関しては、前述の通り新規事業構築にあたっての目的や成し遂げたいことをMCLOGI様と共通認識を持ちながら策定できたのは事業構築の手法として上手くいったポイントだったと振り返ります。

※2「ガイディング・プリンシパル」=目的性を明確にした上で、どう価値を見出すかを考え、実装戦略に落とし込むこと

事業推進にコミットする“社内外”に向けた伴走支援

―MCLOGI後藤 今回のPJにおいてリブ・コンサルティングのモビリティ領域の業界専門性と事業開発というコンサルティングナレッジの知見と弊社のアセット組み合わせて事業構想を作り上げることができたと思っています。具体的に言うと弊社の得意とする物流提案の中での価値づくりをリブ・コンサルティングの業界知見や業界ネットワークを掛け合わせることで現実的かつ新たな価値創造・価値提供の創出と言えるでしょう。

―リブ坂本 ありがとうございます。支援依頼時の目的に対する成果や印象に残っているシーンはありますか。

―MCLOGI伊藤 私はMCLOGI側のプロジェクトリーダーとして最も長い時間協議させていただきましたが、プロジェクトマネジメントの部分が特に印象に残っています。プロジェクトの内容や事業の内容どうこうではなく、どうしても企業内や業界内での変化がプロジェクト中に起こり、環境状況によってプロジェクトがうまく進まないことが何度も発生しました。

そういった中でも、戦略的なものや事業の内容だけはなく、社内での推進方法や社内のどの人物に、どのように起案していくのか大企業が抱える事業が進みづらい部分も含めて寄り添っていただけた部分はプロジェクトリーダーとしては非常に心強かったと思っています。
リブ・コンサルティングは先ほど後藤が発した業界知識やテーマへの強みに加えて、成果重視の伴走型支援という特徴があると伺っておりました。伴走型の名の通り、事業戦略だけでなくその後のエグゼキューション部分における、セールス手法構築や顧客連携におけるメールの投げ込みもシェアしながらやったりと、泥臭い手を動かす仕事まで一緒になって、同じ社員のように仕事を進めていけたというのは、かなり強い特色だったと思います。

―リブ坂本 PJスタートは現在からちょうど一年ほど前になりますが、当時と現在では当社に対する印象の変化はありましたか?

―MCLOGI大海 3点ほど変化がありました。1点目は支援いただく前後の比較として外況変化が大きい業界のため、スピード感や外部ネットワークの連携でブレイクスルーしていく点での有効性。2点目は加えて情報の総数もあると感じています。当社は大手商社グループに所属していますが、どうしても限定的であり、リブさんの場合、様々な業界の顧客やパートナーなど様々な角度や深さから集めてきた情報の確信性もあると思いました。3点目は伊藤が言ったように伴走いただける姿勢。当初のコンサルティング会社の印象として、戦略は描いてくれるけど最後の実行部分はお付き合いいただけないっていうイメージがあったのでそこの印象はだいぶ変わりました。

―MCLOGI伊藤 今回のPJの中で、当社としても新たな取り組みであるデジタルマーケティング(PR発信)も行いましたが、他部門にも波及して様々なマーケティング手法をトライしてみようという空気が生まれたのではないかと思っており、良い波及効果を生み出せたと感じています。

―リブ坂本 御社の中でも新規的な取り組みをご提案させていただきましたが、そのチャレンジをご一緒させていただき、その施策が横展開に繋がったのは非常に嬉しい反響でした。

事業グロースと並行して、次なる事業構想を磨き続けていく

―リブ坂本 今後のビジネス展開について、どのような展開を想定されていますか。

―MCLOGI伊藤 事業構築において、弊社のバリューアセットが最大限活きる形で、「次世代モータープール事業+フリート充電ステーション事業」、「バッテリー物流トータルソリューション事業」の二つの事業構想を立て、現在様々な需要者様、パートナー様と協議を重ねております。これからの世の中に必要なものであるという確信は得ており、様々なご指摘を頂きながらより需要者様にとって利用しやすいサービス作りを行っている状況です。弊社の事業構想は少し将来的な需要に依拠している部分もありますが、世の中が無理のないEVシフトをしていけるよう、足元でしっかりと事業ローンチをしていきたいと思っております。

―MCLOGI後藤 御社のような専門性の高いコンサルティングファームと一緒の目線で議論させていただけると、我々事業会社側の検討のステージが一段階ステップアップしてくると感じていますし、もっと外に目を向けて事業を推進していく必要があると思いますね。

  • 次世代モータープール+EVフリート充電ステーション事業

  • バッテリー物流トータルソリューション事業

 

 

 

EVシフトの潮流に乗り遅れない、脱ガラパゴスのアクションを目指していく

―リブ坂本 少し視野を広げて、自動車業界そのものの在り方についての意見はありますか。

―MCLOGI後藤 インド、タイ、インドネシアなどASEANに訪問する機会が多いのですが、EVにおいて日本は完全にガラパゴス状態にあります。特にバンコクのコロナ前とコロナ後では物凄い変化が起きており、EV化のビッグウェーブを肌で感じます。中国メーカーや欧米メーカーがEV化の波に乗っている中、日本の最後の砦と言われる自動車産業を何とかグローバルな戦いの中で負けないように物流面から支援していきたいですし、EVシフトが起きているこのタイミングこそ我が社が飛躍していく上での勝負の時じゃないかと思っています。

―リブ坂本 私も後藤様と基本的に同じ想いで、この業界を何とか進めていきたいと日々感じております。我々も様々な検討会にてオブザーバーとして参加させていただいておりますが、名だたるグローバル企業においても、結論どういう結果になるか見えない中でもどうにかしたい想いは各社皆さん強く持っていらっしゃいますし、世の中を変えたい・良くしたいと思うプレイヤーが増えれば増えるほど、世の中は最適化されていくという風に思っています。

その中で、自動車物流業界の御社がこういった新しいチャレンジングな取り組みをいただいてますし、この取り組みが世の中に広がっていくことによって、御社と同じように自分たちも新しいことにチャレンジしよう、この業界社会に対して提供していこうと思うプレイヤーさんがやっぱり増えていくということが、御社を超えた世の中全体の価値という観点においてはすごく重要なのではないかという風に思っています。

そのようなフロントランナーである皆様のお手伝いを我々が今させていただいているということに本当に感謝をさせていただくと共に新しいチャレンジを作っていただいたことに感謝いたします。

―リブ坂本 三菱商事ロジスティクスというこの会社が、この業界の中でどのようなポジション取っていきたいとお考えでしょうか。

―MCLOGI後藤 今の変革の時代の中で、我々の取り組みを大きくしていくには特定のターゲットだけでなくマスに対しての認知度を上げていかなきゃいけないと感じています。物流関連においても系列の物流会社が既にポジショニングしているため物流領域での認知を高めるのは難しいですが、EV・モビリティ領域の中でプレゼンスを高めていくチャレンジをしていきたいと思います。

EV・モビリティ領域ではスタートアップ企業で何社か存在感を出してきているプレイヤーもあり、新領域に参入してくる企業もMCLOGIに声をかけてみようという関係性ができる会社でありたいと思っています。それは日本国内だけでなく、ASEANなど自動車マーケットの成長国に対しての知名度を上げていきたいですね。

―リブ坂本 今後当社にどのような支援を期待していますか。

―MCLOGI後藤 今後は事業ローンチに向けてある程度自社で進んでいく必要がありますが、日進月歩で変化していくEV・モビリティ領域では柔軟な発想、変容が必要だと思っております。事業環境はどんどん変わっていく中、定期的に意見交換してこの領域の中のコンパスを常にアップデートしていきたいですし、PJが次のフェーズに入る・新PJが立ち上がる際には最前線の情報持っている御社と一緒に協業していくことはイメージしています。

―MCLOGI伊藤 日々変化していくこの領域は1年後には、必要とされているサービスの内容がガラッと変わっているでしょう。我々が取り進めている事業も場合によっては 短期間で終わってしまう可能性もあると思います。その中で得られた知見が今後の価値であり、次の事業開発に繋げていくサイクルを回していかなければいけないと思っています。先ほども申し上げましたが、自社のみの情報だけでは限定的な視点になりますので、御社にお力添えいただければと思っております。

―リブ坂本 新規事業の取り組みプロジェクトというのは、環境に合わせた企業あるいは事業変革の第1歩であると同時に、今後続いていく様々なプロジェクトにとってのベンチマークになることなのだろうなという風に思っています。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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