2022.11.21

脱炭素とカーボンニュートラルの違い

カーボン(carbon)は炭素といった意味であり、脱炭素やカーボンニュートラルといった両方とも炭素に関連しています。しかし、それぞれの意味合いや目的が異なります。

脱炭素社会とは、二酸化炭素排出量を完全にゼロにする社会です。それに比べて、カーボンニュートラルとは二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスが実質ゼロであることをさします。人が排出した二酸化炭素と植物が吸収した二酸化炭素が同じ量であれば問題ないといった考え方です。

脱炭素とは

脱炭素とは、二酸化炭素排出量ゼロを実現した社会です。脱炭素を実現することにより、地球温暖化を抑えることにつながります。1960年代に環境汚染が広がるようになり、1972年には環境問題を議題としてはじめて国際会議が開催されました。そのあと、1997年の京都議定書やパリ協定など多くの国が脱炭素社会を目指して会議をしたり、取り決めをしたりしています。

二酸化炭素増加による影響

二酸化炭素が増加したら次のようなことが起きることが予想されます。

  1. 海面上昇
  2. 気象に対する影響

海面上昇

二酸化炭素が増えると、まず考えられるのが海面の上昇です。1901年〜2010年までの約100年間ですでに19センチ上昇しており、このままの状況が続けば今世紀末に最大で82センチまで上昇すると予測されています。海面が上昇することにより、高潮になる可能性が高くなり海水によって作物の成長に影響がでたり、飲み水が塩水になったりするといったさまざまな被害が見られます。

現在の状況が続けば、モルディブやミクロネシアなどは国全体の被害額が国内総生産(GDP、Gross Domestic Product)の1割を超える可能性があるのです。

参考:海面上昇の影響について(JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター)

気象に対する影響

地球温暖化の影響によると予測されるゲリラ降雨が近年増えています。全国の1時間における降水量において、50mm以上を観測する年間発生回数は年々増加傾向です。1976年〜2021年の間で、10年あたり27.5回増加している数値がでています。このほかにも、2012~2021年に発生した平均年間発生回数は約327回であり、1975年から10年間のデータと比較して約1.4倍に増えているのです。


画像引用:大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化(気象庁)

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、排出される二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを削減することです。しかし、脱酸素のように二酸化炭素排出量ゼロにするのではなく、森林の吸収分と相殺することによって実質的に排出量がゼロになるような取り組みのことを指します。

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」 から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
引用:カーボンニュートラルとは(脱炭素ポータル)

カーボンニュートラル推進による企業への影響

日本ではカーボンニュートラルを推進していますが、企業に対して次のような影響が挙げられます。

  1. 評価の対象
  2. 再エネの導入

評価の対象

日本政府は企業や家庭に対して、環境に配慮することを提言しています。企業では、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮するESG投資が注目されており企業における評価の基準となっています。そのため、環境意識が低い企業は周りから評価されにくい傾向があるのです。

再エネの導入

再エネはESG投資としてだけでなく、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策にも関連していることから企業リスクを下げることになります。再エネにはさまざまな種類がありますが、代表的な例として挙げられるのは太陽光発電の導入です。このほかにも、さまざまな手法で再エネを導入する企業が増えています。

脱炭素とカーボンニュートラルの違い

脱炭素とカーボンニュートラルには次のような違いが挙げられます。 

  1. 目的の違い
  2. 目標達成のためにすべきこと

目的の違い

脱炭素は二酸化炭素の排出が実質ゼロになることを目指しています。脱酸素が達成されることにより、地球温暖化の抑止をするのが目的です。カーボンニュートラルは二酸化炭素だけでなく、メタンやフロンガス、一酸化二窒素(N2O)を含めた温室効果ガスが対象であり、森林をはじめとした吸収量を超えないようにするのが目的です。

目標達成のためにすべきこと

脱炭素は二酸化炭素の排出をなくすことが目的であるため、待機電力を減らしたり自家用車をやめて公共交通機関を使ったりするなど、企業や個人が日々無駄な電力やガソリンなどの使用料を減らす必要があります。

カーボンニュートラルは森林管理や植林などによる吸収量を差し引いて、実質的にゼロにするのが目的です。そのため、温室効果額の排出量を減らすだけでなく、森林による吸収作用の保全をすることが重要です。

パリ協定とは

さまざまな国が地球温暖化をはじめとした気候変動問題に取り組んできました。全世界が合意した取り組みとして2015年に採択されたパリ協定が挙げられます。パリ協定に日本も参加していることから、脱炭素やカーボンニュートラルといった言葉が浸透していきました。

パリ協定が転換点に

パリ協定とは、2015年12月にパリで第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたときに採択されました。主な内容として2020年以降の温室効果ガス排出削減等の主な枠組みであり、すべての国が参加する歴史上初めての公平な合意となりました。

日本でも2020年に途上国向けの支援資金を発表したことをはじめ積極的に気候変更交渉に参加しています。

・京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みです。
・歴史上はじめて、全ての国が参加する公平な合意です。
・安倍総理(当時)が首脳会合に出席し、日本からは2020年に現状の1.3倍となる約1.3兆円の途上国向け資金支援を発表。先進国全体で2020年までに年間1,000億ドルという目標の達成に向け取り組むことを約束し、合意に向けた交渉を後押ししました。
引用:2020年以降の枠組み:パリ協定(外務省)

このように、パリ協定によって初めてすべての国が公平に参加する枠組みができ、企業でも脱炭素に取り組むケースが増えています。

パリ協定の概要

具体的なパリ協定の概要としては世界共通での目標として、世界の平均気温上昇を産業革命児に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える取り組みを掲げています。さらには、それぞれの国が削減目標を5年ごとに提出する、レビューを受ける、世界全体における実施状況を検討する仕組みを5年ごとにおこなうなどの内容が含まれています。

まとめ

脱炭素は二酸化炭素の排出量をゼロにすることが目的です。カーボンニュートラルは、二酸化炭素のほかにメタンやフロンガス、一酸化二窒素(N2O)などの温室効果ガスの排出量が森林や植物などの吸収量を超えないようにすることで、実質温室効果ガスの排出がゼロになることを目的とした取り組みです。

方法や考え方は異なりますが、いずれもパリ協定において設定している目標に対しての取り組みであることには変わりありません。

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