2022.09.08

デジタルトランスフォーメーションの国内での市場規模

デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術やデータを活用してビジネスモデルを変革することをいいます。単なる業務のデジタル化ではなく、企業文化や組織体制など、企業における広範囲の変革を意味する言葉で市場における競争力の獲得が目的です。

日本のデジタルトランスフォーメーション化の現状は芳しくはありませんが、市場規模は拡大しつつあります。日本では労働人口の不足が事業、経営上での課題として挙げられ、その解決策としてデジタルトランスフォーメーションのニーズが高まることが予想されています。

デジタルトランスフォーメーションが拡大し続ける理由

デジタルトランスフォーメーションの市場規模が拡大を続ける理由は以下の4つが挙げられます。

  1. 業務の効率化
  2. 人材不足の解消
  3. 働き方改革の影響
  4. 2025年の崖の解消

業務の効率化

デジタルトランスフォーメーション市場の規模が拡大している理由は、第一に業務の効率化を図れることが挙げられます。デジタルトランスフォーメーションにより、最新技術を導入し、現在まで人の手でおこなっていた作業をAIやツールに任せることで工数を減らすことができます。

例えば、内容が決まっているルーティンワークを自動化することで人為的ミスを減らし作業スピードの向上が見込めます。さらに、そのルーティンワークを担当していた社員の浮いた工数をそのままほかの業務に転用することも可能です。

代替可能な業務を自動化し、今後挑戦したい分野や力を入れたい分野に人材を注力することで会社の成長にもつながります。

人材不足の解消

日本は今後、少子高齢化が進み労働人口が減少してしまうことによる人材不足が予想されます。(参考:労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の概要(総務省統計局))そこでデジタルトランスフォーメーションを進めることで業務の効率化や工数のカットが可能となります。

日本を始めとする人件費の高い国に対しデジタルトランスフォーメーションを導入すると、業務のパフォーマンスを向上させることが可能です。

働き方改革の影響

現在の日本では働き方改革が重要視されています。働き方改革とは、労働環境を改善するという取り組みのことで厚生労働省は以下のように発表しています。

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
引用:「働き方改革」の実現に向けて(厚生労働省)

2025年の崖の解消

日本が抱えるITの課題に2025年の崖というものがあります。2025年の崖とは、経済産業省が提唱している問題の1つであり、2025年までに既存システムのサポート終了、IT人材の引退、退職が進むことで発生する経済損失を指しています。(参考:DXレポート(デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会

デジタルトランスフォーメーションによる社内のデジタル化を進め、2025年の崖を乗り越えるためにも、次の2つを改善し、最新ツールの導入も検討していく流れができています。

  • 老朽化したシステム
  • 現在のシステムの維持費

デジタルトランスフォーメーションの国内での市場規模

デジタルトランスフォーメーションは企業の重要な課題として位置づけが高まっており、企業価値の向上につながる取り組みとして投資がおこなわれています。2020年からはじまった新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響からのリモート化や自動化などのオペレーション改善を目的とする投資やWeb、スマートフォンを軸とした顧客接点改革への投資が積極的です。

変化の迅速かつ柔軟な対応を目的として、システムの内製化(ある業務において外部委託をやめて、自社内でその業務をおこなうよう変更すること)が本格化しており、2030年度には、投資金額が5兆1,957億円となることが予測されています(参考:『2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編』まとまる(富士キメラ総研))。

デジタルトランスフォーメーションの分野別の市場規模

デジタルトランスフォーメーションでは主に以下の5つの業界の市場が大きくなると考えられます。

  • 製造
  • 交通/運輸
  • 医療/介護
  • 金融
  • 流通
2020年度 2030年度予測
製造 1,620億円 5,450億円
交通/運輸 2,780億円 1兆2,740億円
医療/介護 731億円 2,115億円
金融 1,887億円 6,221億円
流通 441億円 2,455億円

参考:『2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編』まとまる(富士キメラ総研))

製造

製造業では5G導入によってデジタルデータを活用して業務プロセスの改革、品質や生産性の向上を継続発展的に実現すること、保全業務の効率化への投資が見込まれています。デジタルトランスフォーメーションには、既存設備の切り替えや機能付与などが必要となるため、他業界に比べて投資額が高くなる傾向にあります。

交通/運輸

ドライブレコーダーによる運転解析の技術への投資が現在進んでいます。また、AIの活用による自動運転技術やビッグデータの活用によって、新しい配送や配車サービスの開発にもつながります。

医療/介護

患者情報のデータ化が進み、看護師の業務負担軽減やサービス向上が考えられます。5Gの普及による遠隔での診断や治療のような技術改革の期待も高まっています。

金融

受付業務などのRPA導入による自動化が進められている状況で、チャットボットへの技術はもちろん、AIによる資産運用管理のアプリ開発やセキュリティ関係への投資が増えると考えられます。

流通

流通業界では、店舗の接客業務の自動化や商品のRFID管理、自動搬送技術、新しい顧客価値創出のためのサービス開発などへの投資が増加するとされています。

デジタルトランスフォーメーションの市場規模を国内と世界で比較

デジタルトランスフォーメーションの市場規模は、国内では富士キメラ総研の調査により2030年度に5兆1,957億円になることが予測されています。世界では、株式会社グローバルインフォメーションの調査により、2026年には総額1兆2,475億ドルにのぼると報告されています(参考:デジタルトランスフォーメーションの市場規模、2026年に1兆2,475億米ドル到達予測(株式会社グローバルインフォメーション))。

デジタルトランスフォーメーションの市場規模を国内と世界で比較すると、約33倍もの差があるため、日本はまだまだ市場規模が小さいといえます。ですが、コロナ禍で経済的な成長が伸び悩む中、着実に市場規模は拡大しているため、現在も継続してデジタルトランスフォーメーションへの投資や導入が進められています。

まとめ

デジタルトランスフォーメーションの市場規模を日本と世界で比較すると、まだまだ日本の市場規模は小さいですが、コロナの影響もありデジタルトランスフォーメーションの需要は徐々に高まっています。

需要が高まる理由として、業務の効率化、人材不足の解消、働き方改革の影響、2025年の崖の解消が期待されるため、今後日本のデジタルトランスフォーメーションの市場規模は拡大し続けることが考えられます。

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