2022.09.07

自治体DXとは

経済産業省が2018年にDXレポートを発表し2021年9月1日にデジタル庁が発足してから、民間企業だけでなく全国の自治体においてもDXに取り込む動きが活発になっています。

自治体システムにおいてクラウド化が進められてきたのですが、標準化や共通化をすることによってさらに自治体業務の効率化や国民の利便性を高める動きが加速されています。自治体DXは国民と行政の間でより接点を持つことも目的の1つです。

自治体DXとは

DX(Digital Transformation)とはデジタル技術を使うことによって、企業を改革し競争上の優位性の確保が目的です。経済産業省では2018年にDXレポートを発表していますが、民間の企業だけでなく自治体においても推進計画が進められています。

総務省の自治体DXの定義としてデジタル技術を使って、住民一人一人のニーズにあったサービスを提供して多様な幸せが実現できる社会を掲げています。

自治体DXの定義

日本政府はデジタルを活用することによって多様な幸せが実現できる社会をDX推進の目的として掲げています。この目的を達成するためには市町村の役割が重要であり、自治体は次の点を求められています。

  • 自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、
  • デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく

引用:自治体DXの推進(総務省)

自治体DX推進計画の重点取組事項

自治体DX推進計画において次の点を重点的に取り組むべき事項として挙げています。

  1. 自治体の情報システムの標準化・共通化
  2. マイナンバーカードの普及促進
  3. 行政手続のオンライン化
  4. AI・RPAの利用推進
  5. テレワークの推進
  6. セキュリティ対策の徹底

引用:自治体DXの推進(総務省)

自治体の情報システムの標準化・共通化

行政業務において自治体によって取り組みの進み具合が異なるのが現状です。そこで、全国の自治体のシステムを標準化や共通化させることによって、自治体の業務負担を減らし安定して住民に質の高いサービスを提供できるように取り組んでいます。

マイナンバーカードの普及促進

2015年10月以降に国民に通知されているマイナンバーは、行政の効率化や国民の利便性の向上、さらに公正や社会を目的としています。個人情報を国や自治体の間で情報連携することで業務の手間を減らし、国民にとっても提出が必要な書類が減るため手続きが簡単になります。

さらに、国民の所得状況が明確になることから不正受給の防止や生活に困っている人に対しての支援につながります。

行政手続のオンライン化

マイポータルを活用することによって、これまで書面でおこなっていた行政手続きをオンラインで進められるようにしています。このことにより、職員や住民の両方が手間を減らすことができ、よりスムーズに手続きを進められるようになります。

AI・RPAの利用推進

AI(Artificial Intelligence、人工知能)やRPA(Robotic Process Automation、ロボティックプロセスオートメーション)を導入することにより、より効率的な業務内容を目指します。すでに自治体でもAIやRPAを使った事例は多くありチャットボットによる問い合わせ対応やドローンを使ったスマート農業などが挙げられます。

テレワークの推進

総務省ではテレワークの推進をしています。自治体においてもテレワークを進めることによって、働き方改革やオフィスコスト削減、人材の確保、離職防止、育児や介護との両立などを目指します。

セキュリティ対策の徹底

情報の気密性や可用性を確保するため、それぞれの自治体における情報セキュリティポリシーの見直しをする必要があります。デジタル化を進めるためには情報セキュリティ対策の徹底が不可欠です。

自治体がデジタル化する目的

自治体がデジタル化する目的には次の2点が挙げられます。

  1. 職員の負担軽減
  2. 質の高いサービスを提供

職員の負担軽減

近年ではライフスタイルが多様化していることから、自治体が対応するべき業務が増えています。さらに、自治体の職員数は1994年の330万人から2014年には274万4,000人と大幅に減っています。少子化や高齢化社会により労働人口が減ったこと以外に、ライフスタイルの多様化による支出が増えていることが要因として挙げられます。

地方公共団体の総職員数の推移画像出典:地方公共団体の職員数の推移(総務省)

質の高いサービスを提供

住民が自治体に求めることが多様化していることから、自治体は住民一人ひとりに対してニーズのあったサービスを提供する必要があります。これまでのアナログでデータ運用するためには手間がかかり十分なサービスを提供するのが困難になっているのが現状です。そこで、デジタル化することで業務を効率化させることにより住民に質の高いサービスを提供できます。

自治体DXの事例

とよなかデジタル・ガバメント宣言(大阪府豊中市)

新型コロナウイルス感染症拡大を契機として、とよなかデジタル・ガバメント宣言を掲げました。宣言内容は次のような内容が含まれています。

デジタル技術によって、市民の暮らしや社会経済活動をより便利なものに変えていく。まずは、市民や事業者の皆さんが市役所に来庁せずとも手続き等が可能となる『オンラインサービスの拡充』を一丁目一番地の最重点課題として、スピード感を持って取組む。
引用:とよなかデジタル・ガバメント宣言・戦略(豊中市)

スマート人材育成(三重県)

三重県ではデジタル社会の形成を目的として、スマート人材を育成するプログラムを提供しています。DXの理解やデータの活用方法、AIなどのほかスマート農業やスマート漁業などのフィールドワークも進めています。

スマート人材育成における事業の成果や課題は次のようになっています。

  • 研修ではDXに関わる基本的な知識・スキルが得られるとともに、意欲を喚起できたが、より行政に直結する内容にするとともに、組織のマインドの変革を促すカリキュラムが必要。
  • 行政が業務や組織運営の在り方を見直すだけでなく、社会全体のDXが進むよう、すべての住民にデジタルの恩恵が行き渡るような取組を進めるため、それを牽引する人材が必要不可欠であることから、継続的なスマート人材育成事業が求められる。

引用:スマート人材育成事業最終報告会(三重県)

ペーパーレス化を実現(愛知県瀬戸市)

2021年に瀬戸市ICT戦略推進プラン・官民データ活用推進計画を策定した愛知県瀬戸市は、ICTを活用して持続可能な町を実現しています。ICT活用の一環として導入した電子決済機能付き文書管理システムによって、行政事務を完全にペーパーレスにすることを実現しています。

参考:自治体DX推進手順書参考事例集(総務省)

まとめ

自治体DXとは、自治体においてデジタル技術を活用することで業務フローや住民に対するサービスの改革を進めていくことが目的です。総務省ではデジタルを活用することにより、一人ひとりのニーズにあったサービスを提供して多様な幸せを実現できる社会を自治体DXの定義としています。

デジタル技術を導入することで、自治体の業務効率化を進めさらに住民の利便性を高めることが重要なポイントになります。

一覧に戻る

関連コラム