2023.06.14

マルチクラウドとは

マルチクラウドとは、複数のクラウドを使い分けることによって最適なクラウド環境にすることです。特定のクラウドのみを使っていると、会社が求めている要件を満たせないことが少なくありません。そこで、複数のクラウドを合わせて最適な機能を導入することで、それぞれのクラウドでの長所を活かして最適な環境にすることが可能です。

クラウドはスケーラビリティや俊敏性が高いことから、企業において情報システム環境の主流となっています。近年ではクラウド関連のサービスが増えており、それぞれに特徴があります。そこで、それぞれのクラウドの良さを活用できるマルチクラウドの需要が高まっています。

クラウドとは

クラウドは、Web上でソフトウェアやハードウェアといったサービスを利用できる形態です。クラウドでサービスを受けることにより、導入費用やランニングコストを抑えられたり使う場所を問わなかったりなどといった特徴があります。

クラウドでのサービスには次のような特徴があります。

  1. システムを拡張や縮小をできる
  2. どこでもサービスを利用できる

クラウドサービスはリソースに拡張性があることから、サーバー数や仮想マシンのスペックなど柔軟に変更可能です。オンプレミスの場合はシステムの許容量を増やす場合は、新たにハードウェアが必要です。そのため、手間がかかるほか対応に時間がかかるとビジネスチャンスを逃す可能性もあります。クラウドならサーバー数の調整やシステムの拡張などスムーズな対応をできます。

また、クラウドサービスであれば場所や時間を問わずに利用することが可能です。インターネット環境であれば、パソコン以外にスマートフォンやタブレットなど端末があればいつでもサービスを活用できるため、サービスを利用するためだけにオフィスに戻る必要はありません。

クラウドの種類

クラウドの代表的な例として次の3つが挙げられます。

  1. PaaS
  2. SaaS
  3. IaaS

PaaS(Platform as a Service)はWeb上で、OSやハードウェア、ミドルウェア、サーバーシステムなどを利用できるようにするサービスです。開発に必要なOSや管理システム、管理などはプラットフォームに含まれているため、開発環境を整備する手間を削減できます。Google cloud PlatformやAWS(Amazon Web Services)などが主な例として挙げられます。

SaaS(Software as a Service)はクラウド上にあるソフトウェアやアプリケーションをユーザーが利用できるようにするサービスです。インターネット環境にあれば利用できる場所が限定されず、複数の人数で同時に編集できます。ソフトウェアの開発が不要であることから、導入コストが安い点も大きな特徴です。主な例として、GmailをはじめとしたWebメール、Google Driveをはじめとしたオンラインストレージ、Microsoft Office 365をはじめとしたオフィスソフトなどが挙げられます。

IaaS(Infrastructure as a Service)は、Web上でネットワークやサーバーといったインフラを活用できるようにするサービスです。OSやアプリケーション、ミドルウェアはユーザーが準備、運用することが必要です。しかし、サーバーやネットワークは安価で業者に任せられます。GCP(Google Compute Engine)やAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)が主な例として挙げられます。

マルチクラウドとは

マルチクラウドは複数のクラウドサービスを使って、最適な環境を構築することです。複数クラウドサービスを使い分けることで、柔軟なシステムを構築できるメリットがあります。1つのクラウドに依存しないため、耐震障害性やシステムの可用性が向上する可能性があります。さらに、複数のクラウドにおけるサービスを組み合わせるため柔軟性の高い活用方法ができます。

マルチクラウドを使って適切な戦略を立てるためには、複数のクラウドを利用するだけでなくデプロイやリソースの設計を明確に立案することが必要です。さらに、複数のクラウドを利用してデプロイするにあたってのアプローチ設計も求められます。たとえば、GCPやAWSといった複数のプロバイダーを利用する、同一のプロバイダーにおいて複数のクラウドを利用するなどさまざまなアプローチが考えられます。マルチクラウド戦略を適切に進めるためには、複数のクラウドを利用する意図と要件をはっきりとさせることが重要です。

マルチクラウドのメリット

マルチクラウドには次のようなメリットがあります。

  1. リスク分散できる
  2. 機能をカスタマイズできる
  3. ベンダーロックインを防止できる

リスク分散できる

マルチクラウドを導入することで、リスク分散が可能です。1つのクラウドを利用して業務を進行している場合、クラウドに障害が発生してしまうとすべての作業が止まってしまう可能性があります。

機能をカスタマイズできる

マルチクラウドによって、複数のクラウドから必要な機能を選ぶことができるため柔軟にカスタマイズすることが可能です。1つのクラウドでは必要な機能を揃えることはむずかしく、求めている機能すべてを揃えることは容易ではありません。しかし、マルチクラウドであれば、必要としている最適なサービスが含まれているクラウドを選んで機能のカスタマイズが可能です。

ベンダーロックインを防止できる

ベンダーロックインとは、特定のベンダーに依存しているため、ほかの製品に切り替えることがむずかしい状態です。ほかの製品に切り替えられないため、価格が高騰した場合は結果としてコストが高くなります。マルチクラウドであれば、ベンダーロックインを回避できます。また、1つのクラウドに依存しないため、常に最新の機能を活用できるほかコストの削減にもつながります。

マルチクラウドの課題

マルチクラウドには次のような課題が挙げられます。

  1. リソースが必要
  2. コスト最適化

リソースが必要

マルチクラウドを運用するためには、複数のクラウド環境を管理することになります。それぞれの環境において対応できるスキルを持った人材が必要となるほか、採用や教育の整備が求められます。さらに、クラウドのシステムを最適化するにあたって専門の知識を持った人材が必要になるなど、マルチクラウドを運用するためにはリソースが必要です。

コスト最適化

マルチクラウドは複数のクラウドを併用することから、利用しているサービスの費用がかかります。そのため、必要な機能を1つのクラウドにまとめたシングルクラウドの活用と比較するとコストが高くなるのが一般的です。クラウドの機能や価格、サポートの充実度などを前もって確認することで、コストパフォーマンスが良いかどうかを把握してください。

まとめ

近年ではクラウドサービスの種類が増えておりそれぞれに特徴やメリットがあります。そのため、クラウドを導入する際に1つのクラウドサービスではなく、それぞれ目的に合わせたクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドの活用が一般的となっています。マルチクラウドを活用することによって1つのクラウドサービスにおいて障害が起きた場合でもリスクを最小限にできる、ベンダーロックインを防止できる、機能をカスタマイズできるなどさまざまなメリットがあります。

一覧に戻る

関連コラム