2023.07.05

RegTech(レグテック)とは

RegTech(レグテック)とは、規制に対応するための技術や取り組みを意味します。2008年のリーマンショック以降、金融業界をはじめ、さまざまな業界で規制の強化が加速しており、企業は規制に対応するためのコスト増加や人的リソースの負担が大きな問題となりました。

そこで、テクノロジーを活用したスピード感のある対応が効果を発揮しており、海外諸国ではRegTechのような取り組みが推進されています。日本国内でも、規制へ迅速に対応しようという動きは拡大しており、自動化や予測分析といった新たなサービスを提供する企業に注目が集まっています。

RegTechとは

RegTech(レグテック)とは、規制(Regulation)と技術(Technology)を組み合わせた造語であり、各業界における規制に対応するための技術や取り組みを意味します。2000年以降、目まぐるしい勢いでデジタル化が進むなかで、規制への対応もデジタル化が進んでおり、特に金融ITソリューションの発展が広がりを見せています。RegTechは先端IT技術であるAIや機械学習、ブロックチェーンなどを活用し、規制への迅速な対応やコンプライアンス管理にも役立つ取り組みです。

RegTechの役割

RegTechは企業におけるさまざまなリスクやコストを軽減し、コンプライアンス業務に重要な役割を果たします。リーマンショック以降、金融業界における規制の強化により、企業では規制に対応するためのコンプライアンスコストの増加や人的リソースの負担、規制違反に伴う高額な罰金など、多くの課題を抱えるようになりました。

さまざまな課題を解決する手段としては、規制遵守のための技術であるRegTechの導入が挙げられ、規制に対しての効率化やコストの削減、人的リソースの軽減を実現可能です。結果、RegTechは金融業界におけるサービスの向上や安心を支えるという重要な役割を担っています。

SupTechとの違い

RegTechと似た言語でSupTech(スプテック、監督(Supervisory)とテクノロジー(Technology))と呼ばれるものがありますが、両者には大きな違いがあります。RegTechが規制される側に対する取り組みであることに対して、SupTechは規制する監査機関側の取り組みです。

規制される企業にも規制する行政にも大きなコストが発生しており、IT技術を活用して大幅なコスト削減を可能とするのがRegTechやSupTechの取り組みです。また、規制する行政側もRegTechを活用している企業を適切に規制するためには、SupTechの取り組みが不可欠になっています。

RegTechを導入するメリット

RegTechの導入メリットは次のとおりです。

  1. 手間やコストを削減できる
  2. コンプライアンス管理ができる
  3. リスクマネジメントが強化される

手間やコストを削減できる

RegTechのIT技術により作業時間が短縮されるため、コストの削減につながります。これまで手続きは窓口対応や郵送などが主軸でしたが、RegTechのAI技術によってオンライン上での本人確認が可能となるため、手続きにかかる手間や時間を大幅に削減することが可能です。

また、RPA(Robotic Process Automation)の活用により定型業務を自動化し、付加価値の高い業務に人的リソースを集中させることができるため、生産性の向上にもつながります。RPAとは、パソコンでおこなう作業を自動化できる技術を意味します。

コンプライアンス管理ができる

RegTechによってコンプライアンスを徹底し、管理することができます。コンプライアンスの重要性は高まっており、たとえ法令には違反していなくても社会的に不適切だと判断されればコンプライアンス違反とみなされてしまうのが現状です。

そこで、RegTechを活用することで、網羅的にコンプライアンスチェックが可能となり、頻繁な法令の改正にも迅速に対応できます。ただし、コンプライアンス要件を満たすために顧客体験の向上を阻害してしまう恐れもあり、適切な対応が必要です。

リスクマネジメントが強化される

コンプライアンスと同様に、RegTechではリアルタイムなリスク管理が可能であるため、リスクを早期に発見し、適切に対応できます。また、将来のリスクを予測することも可能であるため、効果的なリスク対策の策定が可能です。

RegTechではこれまで個人情報保護などの観点から、個別でおこなってきたデータ管理を複数の組織で共有し、取り引きを監視することができます。そのため、マネーロンダリング抑制などにもつながります。

RegTechにおける先端技術の例

RegTechにおける技術の例は次のとおりです。

  1. AIや機械学習
  2. ブロックチェーン
  3. ビッグデータ解析

AIや機械学習

AIや機械学習では、膨大なデータ量の分析が可能であるため規制への対応が迅速になります。顧客のあらゆるデータをAIに与え、規制違反や異常な取り引きパターンなどを検出することが可能です。また、金融機関には必須である本人確認もAIの画像解析によってオンライン化することができるため、画像解析のサービスを提供する組織も増加傾向にあります。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、組織間でデータを安全に共有できる技術です。組織間のデータ共有が可能になると、これまで困難であったマネーロンダリングの検知率を高められると期待されています。

これまでひとつの組織で多額の取り引きがあったとしても、犯罪組織によるものだと判断するには不十分でした。しかし、複数の組織をまたいだ多額な取り引きが続いたとしたら、調査するに値するものだと判断することが可能です。このような金融機関の取り引き履歴を確実に追跡するためには、ブロックチェーンの技術が不可欠です。

ビッグデータ解析

RegTechにおける規制技術には、多様化した膨大な量であるビッグデータは重要です。膨大なデータの収集や管理、分析をおこない、活用することによって、膨大な量の規制遵守や法的要件を把握できます。分析結果をもとに規制違反の潜在的リスクの検知や、企業における規制コンプライアンスの自動化が可能となります。

RegTechにおける課題

RegTechにおける課題は次のとおりです。

  1. 日本国内における認知度が低い
  2. 試行の仕組みが整備されていない

日本国内における認知度が低い

RegTechは比較的新しい分野であるため日本国内での認知度は低く、現在でもコンプライアンスへの対応は手作業でおこなっている企業が多い傾向です。RegTechの積極的な推進を進めている海外諸国に比べ、日本が出遅れている理由のひとつは、RegTechの重要性に対する理解が十分ではないことが挙げられます。

そのため、周知活動や教育プログラムの開発をおこなう必要があります。今後RegTechの認知度向上のためには、勉強会やカンファレンス、企業における階層別の教育プログラムに加え、将来的に金融を担うであろう学生などの層にも教育プログラムの提供が必要です。

試行の仕組みが整備されていない

RegTechを試行するための仕組みが整備されていない点も大きな課題です。特に企業内で試行のための環境を整備する場合、安全のため試験用のシステムデータやネットワークなどが独立した環境を用意しなければなりません。そのため、試行環境にはコストや人的リソースがかかってしまいます。

また、RegTechに取り組むためにはシステムを導入するだけではなく、従業員の規制遵守も徹底しなければなりません。海外では、こうした従業員の規制遵守を支援するサービスを提供している企業も存在しているため、第三者の存在も重要と考えられています。

まとめ

RegTechとは企業への規制に対応するためにテクノロジーを活用する取り組みです。RegTechにより大幅なコスト削減やコンプライアンス管理、リスクマネジメント強化など、さまざまなメリットがあります。

行政が規制をかけず民間に任せるという選択をしないのは、効果的な市場は適切な規制から生まれるものであるためです。そして、テクノロジーにはテクノロジーでしか対応できないため、近年では日本国内でも、RegTechの重要性が高まっています。

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