2023.07.05

RBV(リソース・ベースト・ビュー)とは

RBV(Resource Based View)とは企業の内部環境にフォーカスした経営戦略であり、資源ベース理論とも呼ばれています。価格競争で大企業に勝つことは困難ですが、RBVのように他者との差別化を図る戦略は中小企業でも取り組みが可能です。

RBVの取り組みでは、希少性が高く模倣が困難であるビジネスモデルを確立し、持続的な競争優位性の向上を目指します。RBVは業界内におけるポディショニングにもとづくファイブフォースのような戦略ではなく、あくまで企業内部に競争優位性の源泉を求めたものです。

RBV(リソース・ベースト・ビュー)とは

RBV(Resource Based View)とは、企業内の経営資源における競争優位の源泉を探り、磨き上げて持続的な競争優位へつなげていくという戦略論です。経営資源のなかでも有形資産は企業が所有する設備や建物、土地などの資産が該当し、無形資産は特許や商標、ノウハウなどの目に見えない資産を意味します。外部環境に左右されない独自性の確立に着目し、他社との差別化を図ることで競争優位性を高めるのが狙いです。

VRIOフレームワークとの関係性

RBVで経営戦略を立案するにはVRIOというフレームワークを活用します。競争優位を確立するためには、どの経営資源が有効であるかを分析するためです。

分析するための視点として、経営価値や希少性、模倣困難性、組織という4つの項目を挙げており、企業における現在のリソースと高めるべきリソースを評価していきます。経営資源を見極め、有効活用するにはVRIOフレームワークを活用し、企業内における競争優位の源泉を探ることが重要です。

VRIOフレームワークの進め方

はじめに企業における経営資源のどの部分を分析対象にするのかを決めます。次に4つの評価項目を質問に置き換えて一覧表にし、YESかNOのどちらかで回答してもらうという形です。

4つの項目すべてにYESと回答されると、持続的な競争優位とみなされます。一覧表にすることで各視点の優位性を分析しやすい点がメリットではありますが、整理する情報も多くなるため取り組みには時間が必要です。

VRIOフレームワークの実施

VRIOフレームワークを実施する際は、次の4点を基準に評価が進められます。

  1. Value(経済価値)
  2. Rarity(希少性)
  3. In-imitatability(模倣可能性)
  4. Organization(組織)

Value(経営価値)

Value(経済価値)は企業の経営資源が社会にどれくらいの価値を見出しているかの評価です。顧客が企業の製品やサービスに継続的にお金を払ってくれるだけの価値があるか、という評価をおこないます。経済的な価値がないと判断された場合に生じるリスクは事業の縮小や継続の困難です。所有しているあらゆる経営資源が、ピンチやチャンスに対応できる能力や可能性があるかの評価もしていきます。

Rarity(希少性)

Rarity(希少性)は企業の経営資源が他社にはない希少性があるかの評価です。競争優位を勝ち取るためには希少性の高い経営資源が有効であり、厳しい市場環境のなかでもビジネスを有利に進められます。需要は多いが供給の少ないものは希少性が高いとされ、独自のアイデアや特殊な分野での専門性など、競争力に強い経営資源が潜在するかの評価です。

In-imitability(模倣困難性)

In-imitability(模倣困難性)とは企業の経営資源が他社による模倣が困難であるかの評価です。他社でも真似できてしまうものは短期的に競争優位が築けても持続しません。

数多くの特許やノウハウを持ち合わせていたり、代替品が効かなかったりするものは模倣されにくいといえます。また、模倣困難性が高いものはすべての項目をカバーすることができるほど重要です。経営資源が絡み合ったものや因果関係が不明なものは模倣が困難であり、持続的な競争優位が期待できます。

Organization(組織)

Oraganization(組織)は企業の経営資源を活用できる適切な組織を有しているかの評価です。希少性を持ち、模倣されにくい経営資源があっても、企業内で活用できなければ意味がありません。

優れた製品や人材、ノウハウを有しているのにもかかわらず業績が伸び悩むという状況は、運営の仕組みに問題があるということです。また、優位獲得は製品のサービスやマーケティングにもよるため、経営資源を有効活用できる組織づくりが重要です。

RBVを活用するメリット

RBVを活用するメリットは次のとおりです。

  1. 自社の強みと弱みが把握できる
  2. リスクマネジメントに活用できる
  3. 従業員の意識改革に有効である

自社の強みと弱みが把握できる

RBVの取り組みによって、自社の強みと弱みを見つけ出し、強化する部分や克服する部分を把握できます。強みと弱みが浮き彫りになることで、経営戦略を立案しやすくなる点がRBVの大きなメリットです。また、強みの部分に経営資源を集中や強化をおこなうことで、実行可能な戦略を生み出しやすくなります。

リスクマネジメントに活用できる

RBVによるVRIOフレームワークで経営分析をおこなうことで企業のリスクマネジメントにも役立ちます。リスクマネジメントで最初に着手するのがリスクの洗い出しです。そこでVRIOフレームワークによって企業の強みと弱みを浮き彫りにすることができれば、さまざまな視点からリスクを認識できます。

従業員の意識改革に有効である

RBVの取り組みは経営資源を可視化するため、従業員の意識改革に有効です。多くの従業員は日々の業務に追われ、企業内における経営資源の分析にまで着目できずに過ごしています。

そこでRBVによるVRIOフレームワークを全社的に実施すると、事業活動を順序立てて考えて構成要素を洗い出すようになり、従業員が経営資源を隅々まで認識できるようになります。その結果、企業の方針であるビジョンやミッションに反映することが可能です。

RBVを成功させるためのポイント

RBVを成功させるポイントは次のとおりです。

  1. 外部環境を意識する
  2. 経営資源を組み合わせる
  3. 定期的に取り組む

外部環境を意識する

RBVによって経営資源における競争優位性を探ると同時に、外部環境を常に意識し、環境の変化を敏感に察知することが求められます。近年、IT技術の発展によってビジネスのスピードは速くなり、これまで価値のあった経営資源が活用できなくなることがあるためです。

リーマン・ショックや新型コロナウイルス感染症などのように、大規模な環境の変化が起こった際は、過去の分析データは通用しないため、抜本的な見直しが必要になります。RBVの成果を上げるためには、環境の変化に対応した活用法を示すことが重要です。

経営資源を組み合わせる

実際の経営では、経営資源を組み合わせることによって他社との差別化を図ることがポイントです。どのような経営資源を選択し、組み合わせ、活用するかを求めたうえで、企業独自のものを構築することで模倣されにくい状態を作り出します。また、時間をかけ、練り上げられて完成した経営資源の組み合わせも模倣は困難です。

定期的に取り組む

RBVに限らず、企業で取り組む経営分析は定期的に取り組まなければ効果を発揮できません。環境の変化が激しくなっている現代では、ニーズの変化や法改正などの影響により、物の価値は簡単に変化します。

そのため、RBVを実施する際は、規模が大きい企業であればデータの収集から正しく分析するまでに時間はかかりますが、中長期的な取り組みが必要です。RBVを定期的におこない、企業の競争優位性を確認することが重要です。

まとめ

RBVとは企業の経営資源に注目し、競争優位性の維持や向上を目的とした経営戦略です。企業における経営資源を評価するためにVRIOフレームワークを活用し、競争優位性の源泉を探ります。競争優位性を確保するためには、スピード感のあるビジネスへの柔軟な対応力や、経営資源の組み合わせによる希少性、模倣困難性を高く保つことです。

RBVの取り組みによって企業の強みや弱みを把握することで、リスクマネジメントや従業員の意識改革といったメリットがあります。企業の強みを強化し、競争優位性を確保するためにRBVによる取り組みは欠かせない分析手法です。

一覧に戻る

関連コラム