2023.03.24

VOC分析とは

VOC分析とは、商品戦略におけるプロセスの1つです。商品やサービスを開発、販売、拡大していくには利用者の声、つまりVOCの効率的な収集と分析から得られる知見が欠かせません。商品が売れ続けるための分析、それがVOC分析です。

モノにあふれた現代で同じ商品を売り続けるのは簡単ではありません。トレンドの変化についていくには、顧客ニーズや不満点を高い精度で抽出する分析手法が必要です。他社の目新しい商品や最新技術のサービスに顧客を奪われないためにも、VOC分析を活用して顧客満足度を向上させる取り組みが企業には求められています。

VOC分析とは

VOC分析とは顧客の声や感想をもとに顧客が真に求めているものを把握し、自社の商品やサービスに活かす手法です。そもそもVOC(Voice Of Customer)とは、自社商品やサービスの利用者から寄せられるレビューや感想、クレームなどフィードバックのことです。

例えばECサイトに投稿された商品レビューや、電話問い合わせの質問もVOCの1つに数えられます。

VOC分析のメリット

VOC分析のメリットは主に以下の4つです。

  1. 自社商品の品質改善
  2. PRポイントの明確化
  3. 商品に対する不満点の可視化
  4. 顧客満足度の上昇

流行り廃りのサイクルが早い現代では、1つの商品やサービスがそのままの形で長く売れ続けるのがむずかしくなっています。トレンドに乗った商品が半年後にはまったく売れなくなることも珍しくありません。

また、現代はSNSやレビューサイトの浸透によって商品の良し悪しが可視化されています。商品情報の発信による販促より、利用者の顧客満足度が商品の売れ行きを左右する傾向が見られます。

VOC分析を導入すれば消費者の動向や商品に対する満足度など、効率的な商品やサービスの改善が可能です。

VOCデータを活かすポイント

VOC分析には分析のもととなるVOCデータが必要不可欠です。しかし、すべてのデータが商品やサービスの改善に役立つ訳ではありません。参考データは改善に適したものだけを選ぶ必要があります。

例えばトレーニングジムにあるプール設備の改善の場合、プールとは関係ないトレーニング器具やダンスレッスンの感想やレビューを参考にしても意味がありません。顧客の感想やレビューが多くなるほど、なかには対象と関係ないものが含まれてきます。必要な情報と無関係なノイズを区別するシステムがVOC分析では必要です。

VOC分析のツール

実際にVOC分析を実践する際、商品口コミや電話問い合わせなど、すべてのVOCを一元管理できるツールが必要不可欠です。

エクセル

参考データが少ない場合、エクセルの分析ツール機能によって基本的な統計量を求められます。統計の算出はもちろん、プログラムを追加すればヒストグラムや箱ひげ図などVOCデータのグラフ化も可能です。

BIツール

BI(Business Intelligence)ツールとは、さまざまな形式のデータを一元管理して可視化するソフトウェアです。VOC分析においては自社データのなかから商品のVOCに関するデータだけを抽出し、改善の知見を得るために用います。

テキストマイニングツール

テキストマイニングとは、多種多様なテキストデータのなかから、属性毎でデータを区別、抽出するソフトウェアです。

テキストマイニングツールではVOC以下の要素を分析できます。

  1. 市場のトレンド
  2. ネガティブキーワード
  3. アイデアの創出ヒント
  4. 顧客ロイヤリティの数値

VOCデータには顧客の性別や年齢など基本情報だけでなく、レビューの内容や応対記録など、テキストや音声で蓄積されたデータも多数存在します。

このように分類、構造化がむずかしい定性データも一元管理できるのがテキストマイニングツールです。

VOCデータの収集チャネル

精密なVOC分析には、どのチャネルからVOCデータを収集するかが成功のカギを握ります。VOC分析の実践ではどのチャネルが改善に有用な情報を提供してくれるのか、適切なチャネルを定義しなければなりません。

VOCの収集チャネルは特徴によってサーベイ型、ソーシャル型、コンタクト型の3種類に分類されます。

サーベイ型

サーベイ型は、絞り込んだターゲットに対してヒアリングやアンケートなど調査をおこなうタイプのチャネルです。具体的には以下のチャネルがサーベイ型といわれます。

  1. CS(顧客満足度)調査
  2. NPS(顧客推奨度)調査
  3. アンケート調査
  4. グループヒアリング

サーベイ型はターゲットを絞られるため、得られる結果は限定的です。しかし、その分、ノイズの少ない正確なVOCを収集できます。

ソーシャル型

ソーシャル型は、ソーシャルメディアを用いるタイプのチャネルです。各種SNSやレビューサイトに寄せられるユーザーからのレビューや口コミ投稿がこれにあたります。ソーシャル型が得意とするのは商品への要望や不満、情報拡散度の把握です。

ソーシャルメディアを用いるため悪意や偽りのあるレビュー、間違った情報がVOCに混じる可能性が出てきます。反面、効率的にVOCを収集できるのが特徴です。

コンタクト型

コンタクト型は、顧客との直接的な接点を用いるチャネルです。電話、メールによる企業への問い合わせがこれにあたります。ユーザーとの接点を持つプラットフォームが必要なため、コンタクト型のチャネルにはコールセンターの設置が必須となります。

コンタクト型で収集できるデータは音声ログやテキストデータがほとんどです。分類化やデータ化がむずかしいチャネルなので、VOC分析で活用するにはテキストマイニングなど専用ツールが必要です。

VOC分析に欠かせない4A

VOC分析に有効な顧客マネジメント手法に4Aサイクルという実践方法があります。4AサイクルはAccept、Analyze、Acknowledge、Actの4工程で1サイクルとし、これらを常に回転し続ける手法です。

Accept(VOCの収集)

Acceptの工程では、データ収集の環境やVOC分析の目的にもとづいて、VOCを収集します。既存商品の評価を集めるならレビューサイトを、データが少なければ一般調査やアンケートを実施するなどチャネル毎の特徴を活かすのが収集の早道です。

Analyze(VOCの分析)

Analyzeの工程では、収集したVOCを分析して一元化する役割を担います。分析前に集まるデータは、チャネルによって保存形式も求め方もバラバラです。テキストマイニングやBIなどデジタルツールを活用して可視化できるようにします。

Acknowledge(分析結果の共有)

Acknowledgeの工程では、まとめた分析結果を社内全体で共有し、課題点を洗い出します。分析結果はVOCチームだけが管理するのではなく共有することで、各部署の意見や知見を得られるようになります。

また、VOC分析の結果が全社的に共有されることで、社内全体の方向性や課題を再確認できるといったメリットもあります。

Act(改善の実行)

ACtの工程では、分析結果や課題、各部署の意見を業務や商品にフィードバックします。Acknowledgeで得られた要素は、商品やサービスの改善につながるだけではありません。

VOC分析では、コールセンターの応対時間が長い、SNSの情報拡散度が低いなど、マーケティング手法やカスタマーセンターの改善点も洗い出せます。Actの工程では商品へのフィードバックとともに、各部署の業務にも応用させることが大切です。

まとめ

VOC分析は顧客の声を収集し、商品やサービスの改善につなげるための手法です。参考にするデータは購入者のレビュー、コールセンターへの問い合わせなど多岐にわたりますが、商品の改善につながるものをうまく選別しなければなりません。

VOC分析チームは使用ツール、収集チャネル、目的を定義し、分析結果を全社的に共有することが成功の早道です。トレンドの変化が早い現代では、PDCAを回しながら絶えず分析を繰り返すVOC分析が商品の質を向上させます。

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