2023.08.08

データ駆動型社会とは

データ駆動型社会とは、デジタル技術と累積した大量のデータを活用して、知識や情報を生み出し社会的価値を生み出すことです。CPS(Cyber Physical System)によって、現実世界とサイバー空間を緊密に連携して、作り上げた知識を現実世界において生かしていることが特徴です。

日本では、高度道路交通システムや地域包括ケアシステムなどデータを活用したシステムが続々と登場しています。セキュリティ面や人材不足など課題が残りますが、データを駆動することによって、より快適な生活ができるような社会にすることを目指しています。

データ駆動型社会とは

データ駆動型社会とは、AIやIoT、インターネットなどIT革新により増えたデータとサイバー空間を緊密に連携できるCPS(Cyber Physical System)によって社会的価値を生み出すといった概念です。現実世界とサイバー空間を緊密に連携することで、作り上げた価値や知識を現実世界の領域で実装していきます。

データ駆動型社会は、2015年5月に産業構造審議会や商務流通情報分科会、情報経済小委員会の中間とりまとめにおいて初めてとりあげられました。さらに、2018年発表された未来投資戦略2018において、データ駆動型社会の共通インフラの整備が重要課題として説明されています。

参考:中間取りまとめ~CPSによるデータ駆動型社会の到来を見据えた変革~(産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会)

データ駆動型社会の現状

日本は総務省で2001年にe-Japan戦略を設定し、世界最先端のIT国家を目指してきました。その結果、2023年時点でブロードバンド基盤の整備では世界最先端となりましたが、医療や行政、教育などの分野においてデジタル化が進んでいるとはいえません。

人口減少をはじめ日本が抱えるさまざまな課題に対して、ビッグデータやAIなどを活用することで課題発見から将来予測、さらには全体最適へシフトチェンジをする必要があります。その際、リアルとサイバーの垣根を超えたデータ循環が重要な要素となります。

参考:「e-Japan戦略」の今後の展開への貢献(総務省)

CPSの影響によるITの技術革新

CPSは決して新しいシステムではなく、AI技術やクラウドコンピューティング技術、センシング技術などさまざまなデジタル技術が進展したことによりあらためて注目されるようになりました。

CPSはセンシング技術を使って現在の世界をデータに置き換え、置き換えたデータをクラウドコンピューティング技術によって収集するのが特徴です。さらに、収集したデータからAI技術を使って予測や知見を導いていくことをはじめ、さまざまな技術が発達したことにより、CPSを使ったデータ駆動型社会が実現できるようになりました。

データを駆使した新産業

データを駆使した例として次の産業が挙げられます。

  1. 高度道路交通システム
  2. 統合型材料開発システム
  3. 地域包括ケアシステム

高度道路交通システム

高度道路交通システムとは、最先端の情報通信技術を活用することにより、人や車両、道路をネットワークでつなぐシステムです。交通事故や渋滞などの交通における課題を解決することが目的です。さらに、高度道路交通システムの開発や普及におけるロードマップが策定、推進されるようになりました。

参考:ITSとは(高度道路交通システム研究室)

統合型材料開発システム

統合型材料開発システムとは、IoTやビッグデータなどの技術を活用した新産業の育成システムです。国際競争力を向上させるために、革新的材料を創出できるような研究を目指します。信頼性が高く要求性能を満たしている材料をビッグデータから選んだり、性能を予測したりできる技術を活用しています。

統合型材料開発システムには、経済産業省が実施しているCPSによるデータ駆動型社会の実現や超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト、文部科学省が実施している情報統合型物質・材料開発の推進が挙げられます。

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムとは、地域で高齢者の支援を総合的におこなっているサービスです。厚生労働省は団塊の世代が75歳を迎える2025年をめどにして、介護や医療、生活支援、住まいなどのサポートができる地域包括ケアシステムの構築を進めています。

地域包括ケアシステムが発達することで高齢者が住み慣れた地域で過ごせる環境作りができるほか、認知症高齢者を支えられます。地域によって異なる課題を解決することも地域包括ケアシステムの大切な目的です。

データ駆動社会における視点

データ駆動社会には次のような視点が挙げられます。

  1. 課題解決型社会
  2. データ危機管理

課題解決型社会

日本はデータ駆除社会の構造途上にあり、経済面や社会面において抱えている課題を、ビッグデータやソリューションを活用することによって解決することが必要です。限られた財政や急激な人口減少といった状況で課題解決型社会を進めるためには、データの質や量、さらに流通速度が求められます。

データ危機管理

デジタル技術が社会に浸透し、さまざまな分野でデータが活用されるようになりました。その反面、データの改ざんや不正利用による被害が増えており、データ危機管理がより重要となっています。デジタル技術が個別領域だけでなく幅広く活用されるようになることにより、不正利用の影響は社会経済システム全体に及ぶことになるため注意が必要です。

データ駆動型社会を実現するための課題

データ駆動型社会を実現するためには次のような課題が挙げられます。

  1. セキュリティ対策
  2. データサイエンティストの育成

セキュリティ対策

データ駆動社会ではセキュリティが重要です。情報セキュリティの確立において重要な真正性や気密性、可用性を高めるためにデータのサプライチェーンや機密性の高いデータの蓄積方法について見直すことが必要です。公的主体が保有しているデータは国内法で担保している国内のみで扱うことが求められます。

データの真正性を高めるためには、フェイクニュース対策も重要なポイントです。フェイクニュースが大量に流れてしまうと大きな混乱を与える可能性があり、注意喚起や表示抑制をはじめとして、偽情報を分析する仕組みが必要です。

データサイエンティストの育成

データ駆動型社会を実現するためにはデータサイエンティストが必要です。データサイエンティストは、収集した大量のデータを活用して企業の問題を解決することが仕事です。そのためビッグデータを収集しても、活用できるデータサイエンティストがいなければデータの効率化ができません。

近年では少子高齢化の影響があり、人材の確保がむずかしい状況です。特にデータサイエンティストは人材が足りておらず、育成に取り込むことが求められます。一般社団法人データサイエンティスト協会の発表では、2019年にアンケートをとった企業のうち、58%が目標としていたデータサイエンティストを確保できなかったとしています。

データサイエンティストを採用しようとした企業のうち「目標としていた人数を確保できなかった」企業が58%
画像出典:データサイエンティストの採用に関するアンケート調査(一般社団法人データサイエンティスト協会調査・研究委員会)

データサイエンティストの人材育成を目的として社内研修や社外研修支援制度を実施している企業が多いなか、育成や研修の制度がない企業も18%と少なくありません。このようにデータ駆動型社会を進めるためには人材育成が重要な課題です。

育成・研修制度としては、社外研修支援と社内研修が多い一方で、育成・研修の制度がない企業も18%ある
画像出典:データサイエンティストの採用に関するアンケート調査(一般社団法人データサイエンティスト協会調査・研究委員会)

まとめ

データ駆動型社会の目的は、デジタル技術を活用することで大量のデータを累積、分析することで社会的価値につなげることです。日本では高度道路交通システムや地域包括ケアシステムなど人々の生活を向上させることを目的とした、データを活用したシステムが誕生しています。

2023年時点ではセキュリティ面やIT人材不足などの課題は残りますが、AI技術やクラウドコンピューティング技術、センシング技術などのデジタル技術を活用することでさまざまなツールが開発されています。

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