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ITガバナンスに必要な要素と導入メリット
ITガバナンスとは企業がIT技術を活用してビジネス価値を最大化するための取り組みです。ITリソースやシステムを効果的に活用し、業務プロセスの効率化やセキュリティの向上などにより企業価値を高めることが目的です。
特に近年では、デジタル化が進展し企業のIT環境はますます複雑化しています。ITインフラはより多様化し管理がむずかしくなっている状況である中で、ITガバナンスは企業がITリソースを効果的に活用しビジネス目標を達成するために不可欠な役割を果たしています。
ITガバナンスとは
ITガバナンスとは、企業がIT技術を活用してビジネス価値を最大化するための取り組みのことです。ITリソースやシステムを効果的に活用し業務プロセスの効率化やセキュリティの向上などを通じて企業価値を高めることを目指します。
ITガバナンスは、企業がITを効果的に活用し競争力を向上させるために重要であり、経済産業省では次のように定義しています。
ITガバナンスとは、組織体のガバナンスの構成要素で、取締役会等がステークホルダーのニーズに基づき、組織体の価値及び組織体への信頼を向上させるために、組織体におけるITシステムの利活用のあるべき姿を示すIT戦略と方針の策定及びその実現のための活動である。
引用:システム管理基準(経済産業省)
適切なITガバナンスを確立することで企業はリソースの最適化やリスクの管理、法的コンプライアンスの遵守などを実現し持続可能な成長を促進できます。
COBIT
COBIT(Control Objectives for Information and related Technology)は、1992年に情報システムコントロール協会(ISACA)とITガバナンス協会(ITGI)によって策定されたグローバルITガバナンスの国際標準フレームワークです。ITガバナンスの教科書ともいわれ世界中の企業でIT管理の指針として活用されています。
COBITは、事業体のIT活動を大きくITガバナンスとITマネージメントの2つに分け、さらにITマネージメントを以下の4つの領域に分類しています。
- IT戦略の策定、IT組織の構築、IT人材の育成など
- ハードウェア、ソフトウェア、サービスの調達、導入、運用など
- ITサービスの提供、運用、保守など
- ITガバナンスとITマネジメントの有効性を監視
それぞれの領域は、IT戦略の策定やIT組織の構築やIT人材の育成、IT資源の調達や運用、ITサービスの提供や運用、ITガバナンスとITマネジメント全体の有効性監視といった多岐にわたる活動を包括的にカバーしていることが特徴です。
ITガバナンスの課題
IT技術が急速に進化する現代では適切なITガバナンスフレームワークを選択することは容易ではありません。複雑化するIT環境下で情報の透明性と信頼性を確保することが重要な課題として浮上しています。
セキュリティリスクの増加や法規制の変更は、情報資産の保護と法的コンプライアンスの確保を一層重要視させています。ITガバナンスの課題に対処するためには組織全体でコンプライアンス意識を高め、リスク管理体制を構築する必要があります。
ITガバナンスの構成に必要な要素
ITは企業経営の基盤となる重要な要素です。IT環境の複雑化に伴い、ITガバナンスの重要性が高まっており、ITガバナンスを成功に導くためには以下の要素が必要といわれています。
- 業務内容の明確化
- 運用体系の設定
- システムの整合
- 予算の設定
- リスクコントロール
- ルールの設定
- 組織作り
業務内容の明確化
ITシステムにより業務効率を向上させるためには、業務プロセスや業務フローなどの業務内容の理解が不可欠です。業務に適した機能を備えたシステムの選定、必要なカスタマイズ、既存システムとの連携などを検討し、導入前に業務内容を深く理解することで企業の成長に貢献することができます。
運用体系の設定
効率的な運用体系を構築するには役割と責任の分担が不可欠です。誰がどのような責任を持ち、どのような権限を行使するかを明確にすることで情報システムの管理や運用に関する混乱や重複を防ぐことができます。IT環境は常に変化するため、定期的なレビューと改善のプロセスを組み込むことで運用体系を柔軟に調整する必要があります。
システムの整合
導入目的とシステムが適切にマッチしていない場合、期待通りの効果が得られない可能性があります。戦略に基づいたシステムの整合性を確保するには、事前調査と分析が重要であり、企業ニーズや目標、業務プロセスの特性などを把握し、最適なシステム選定の基準を明確にする必要があります。
予算の設定
ITプロジェクトは多大なコストを伴う場合があり、費用対効果を考慮せずに推進することはできません。
費用対効果を評価する際には、投資した資金やリソースが企業にもたらす価値を明確に把握する必要があります。コストが過剰にかかると、プロジェクトの進行が遅れたり、本来の目標や成果を達成することが困難になる可能性があるため、予算の使途やコストの管理には細心の注意を払う必要があります。
リスクコントロール
新たなITシステムやソフトウェアを導入することで、データ漏洩やセキュリティ侵害、システムの停止などのリスクが発生する可能性があります。セキュリティ面でのリスクとして、機密情報や個人情報が不正にアクセスされることやサイバー攻撃によってシステムがマルウェアやランサムウェアに感染することが考えられますが、システム導入に伴うリスクはセキュリティ面だけにとどまりません。
予算超過やプロジェクト遅延、システム互換性の問題なども発生する可能性があります。新たなITシステムを導入する場合、予期せぬ問題が発生し、予定通りにシステムを稼働させることが困難になるケースも少なくありません。想定されるリスクを軽減するためには、事前のリスク評価やリスク管理計画の策定、適切な予算とリソースの割り当て、プロジェクトマネジメントの適切な実施が不可欠です。
ルールの設定
ITガバナンスの基本となるルールやポリシーには、情報セキュリティポリシー、アクセス管理ポリシー、データ管理ポリシーなどが含まれます。明確なルール設定は、組織内のIT運用を円滑に進め、セキュリティリスクを低減するために不可欠です。
さらに、ITシステムの運用や管理に関するプロセスもルール設定の対象となります。システムのバックアップや復旧手順、セキュリティパッチの適用手順、システム変更管理プロセスなど、ITシステムの安定性やセキュリティを確保するために重要なプロセスをルール化することで、システムの信頼性を高めることができます。
組織作り
ITガバナンスの観点から、既存の組織体制ではITシステムを効率的に導入や運用できない可能性があることから、IT環境の構築やシステム導入を成功させるためには、組織体制の見直しが不可欠な場合があります。組織体制の見直しでは役割と責任の明確化が重要です。
それぞれの担当者の役割を明確にすることで、誰がどのような業務を担当し、どのような責任を負うのかを明確に把握できます。ITシステムの導入や運用には、さまざまな部門や担当者が関わるため情報共有やコミュニケーションが円滑におこなわれる仕組みが必要です。
まとめ
ITガバナンスとは、IT技術の活用によってステークホルダーに対する企業価値を最大化するための体系的な取り組みです。業務内容の明確化や責任範囲の明確化、運用体系の設定、リスク管理体制の構築など、さまざまな要素の見直しが欠かせませんが、ITガバナンスを適切に導入することで、企業はスムーズな業務遂行とリスク管理を実現し、ステークホルダーの期待に応えることができるだけでなく企業価値の向上にもつながります。