2023.11.17

人事評価の目的と手法

人事評価の目的は、企業が目的を達成するために従業員一人ひとりを評価し処遇を決めることです。また、ほかにも従業員に企業方針を共有したり、人材育成につなげたりするなどさまざまな目的が挙げられます。人事評価には、MBOやコンピテンシー評価、360度評価などの方法がありますが、企業の目的達成や従業員のモチベーション向上などにつなげることが求められます。適切な人事評価を通じて、企業の目標達成と従業員の成長を両立することが重要です。

人事評価とは

人事評価とは、従業員一人ひとりの仕事ぶりや成果、実績など企業が設定した基準に沿って評価を設定することです。従業員のモチベーションの向上によって組織を活性化するためには、適切な人事評価をおこなうことが求められます。従業員に対する公平かつ適切な評価は、従業員一人ひとりが自己成長の機会を見つけ、組織に貢献し続ける原動力となります。

人事評価を通じて、個人の強みやキャリアプランを明確にし、適切なフィードバックと公平な評価をすることが可能です。このことで従業員が自身の職務に対して責任感を持ち、目標を達成しようと努力するモチベーション向上につながります。また、人事評価は報酬や昇進の基準を確立するのにも役立ちます。適切で明確な評価がおこなわれれば報酬体系が公平で透明になり、従業員が給与や自身のキャリアプランに対して納得しやすくなります。

評価基準

人事評価の基準には、次の要素があることが一般的です。

  1. 成果評価
  2. 能力評価
  3. 情意評価

成果評価とは、設定した対象期間内に目標に対しての達成度を評価するための項目です。企業が求める役割に対して、従業員一人ひとりがどのような成果を出したのかを明確に評価します。業績目標や課題目標、日常業務などさまざまな項目が設定されます。

能力評価とは、企業の目標を達成するための能力や身に着けたスキルなどを評価する項目です。評価基準に取り入れる能力やスキルは、業務や職務によって異なります。能力評価には、企画力や知識、実行力、育成力などが挙げられます。

情意評価とは、従業員の勤務態度や取り組む姿勢などを評価する項目です。成果や能力といった評価方法では反映しにくい人間性を評価することが可能です。具体的な数値ではだせないため、評価項目を明確にすることが求められます。

3つの制度

人事評価には次の制度があります。

  1. 等級制度
  2. 評価制度
  3. 報酬制度

等級制度とは、役職をはじめとした等級ごとに役割を明確にして階層化することです。等級制度での項目を具体的にすることで、従業員は企業から求められている役割を把握しやすくなります。

評価制度とは、従業員一人ひとりの能力や成果を基準として評価する制度です。業務目標やKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)に対して、評価基準を設定することが一般的です。

報酬制度とは、評価や等級に対して従業員に対する給与や待遇を決める制度です。主な例としてボーナスが挙げられます。

人事評価の目的

人事評価には次のようにさまざまな目的があります。

  1. 企業方針の共有
  2. 求めている従業員像の共有
  3. 人材育成
  4. 処遇の決定
  5. 従業員のモチベーション向上
  6. 企業の評価向上

企業方針の共有

人事評価の目的の1つに企業方針を明確に示すことが挙げられます。企業としてどのような方向性を見据えているのかを共有するうえで人事評価は重要です。企業方針を評価基準に含めることで、企業方針を理解して実現するために必要な従業員像をイメージして日々業務に取り組みやすくなります。

企業方針を評価基準に取り入れることで、組織全体が一貫性を持ち、戦略的な方向へ向かって協力する環境が整備されます。従業員は自身の業績が企業の成功にどのように貢献するかを把握し、モチベーションを高めることができます。

求めている従業員像の共有

人事評価は企業方針を共有したうえで、企業が掲げている目標を達成するために従業員に期待している人物像を記載します。企業方針を実現するためには、従業員一人ひとりの意識改革が重要です。企業方針以外にも、ビジョンやミッションが評価基準に組み込まれることで、従業員は会社の長期的な目標に共感し、達成するための役割を明確に理解できます。

評価基準に盛り込まれた企業方針は、従業員に対し自身の業務が企業の成功にどのように貢献するかを示し、モチベーションを高めます。また、人事評価を通じて従業員一人ひとりの意識改革を促進することも重要です。企業が追求する方針に沿った行動や価値観の発展を支援し、従業員の成長を促進します。

人材育成

人材育成を効率よく進めるためには人事評価を活かすことが重要です。従業員一人ひとりに適切なフィードバックをおこなうことで、従業員のモチベーション向上につながります。人事評価には評価項目が設定されており、設定どおりに評価され報酬につながれば、従業員の仕事に対する意欲向上を期待することが可能です。

さらに、人事評価は従業員一人ひとりの強みや今後取り組むべきことを特定し、従業員のスキルや知識を強化するための教育プランの設定に役立ちます。従業員が自己成長の機会を見つけスキルの向上を追求することは、組織全体の競争力を高めるのに不可欠です。そのため、人事評価は従業員のモチベーション向上やスキルの発展に大いに貢献する重要なツールであり、組織にとって戦略的な人材育成の一部となっています。

処遇の決定

人事評価をする大きな目的として、従業員の査定や処遇に公平性を持たせることが挙げられます。人事評価を適切におこなうことで、評価結果を基準として給与や賞与、昇格などの処遇を決めることが可能です。このことで、組織全体に公平性が保たれた状態で改革を進められます。

従来の日本では年功序列によって処遇が決まることがほとんどでした。しかし、従来の方法であれば歴が浅くても能力が高く企業に貢献している従業員に対して、適切な処遇を与えることができません。そこで、従業員のスキルや貢献度に見合った対価を与えるためには適切に人事評価を運営することが重要です。

従業員のモチベーション向上

適切な人事評価によって、従業員が満足できるような処遇があれば従業員一人ひとりのモチベーション向上につなげることが可能です。また、処遇以外にも働く環境やキャリアプランの形成などを重視する従業員が増えています。

職場の文化や協力的な仲間、ワークライフバランスなど、労働環境が従業員の満足度に大きな影響を与えます。さらに、キャリアプランニングも重要です。従業員にスキルや経験の向上に対するサポートを提供することで、従業員の満足度が向上します。このように、処遇面以外にも従業員が納得できるような人事評価をすることが重要です。

企業の評価向上

人事評価を明確にして適切に運用することで、企業の評価向上につながります。従業員のスキルや貢献度などを適切に評価することで、従業員一人一人のモチベーションが向上します。このことで、企業の評判と求職者の企業評価を高めることが可能です。

人事評価の手法

人事評価にはさまざまな手法があります。なかでもよく利用されているのが次の手法です。

  1. MBO
  2. コンピテンシー評価
  3. 360度評価

MBO

MBO(Management by Objectives)とは、従業員一人ひとりが個人的に目標を設定し、進捗度合いに応じて評価を決める手法です。企業は従業員が決めた目標を管理するほか、組織目標に沿っているかを判断します。MBOは、従業員が自己管理し自己評価をおこなう機会を提供することで、目標達成に向けた自己責任を促進します。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、従業員一人ひとりの行動特性から評価する方法です。優れた結果を残している人材をモデル化する方法や企業の目標からモデルを創り出し評価基準を設定することが一般的です。個々の従業員がどのように仕事を遂行し、求められるスキルや行動特性をどれだけ持っているかを評価するのに役立ちます。

360度評価

360度評価とは、人事評価の公平さにフォーカスした、上司や同僚など評価者が複数人いる手法のことです。一般的な人事評価は上司が部下を評価しますが、360度評価は複数人がさまざまな立場で意見を出すことで、多角的な観点や客観性を出せます。

また、複数の人数が評価に参加することから人のスキル、コミュニケーション能力、リーダーシップ資質などを包括的に評価することが可能となり、従業員一人ひとりの強みや改善点が明確になります。

まとめ

人事評価とは、従業員一人ひとりを適切に評価し適切な処遇を決定することです。ほかにも企業方針の共有や人材育成、能力開発などさまざまな目的が含まれます。従業員が適正に評価され、その評価に応じた報酬やフィードバックを受けることで、モチベーションが高まり生産性が向上します。従業員のモチベーション向上は企業の成長を促進します。また、適切な評価は従業員間の透明性と公平性を確保し、組織内のコミュニケーションを向上させます。これにより、組織の方針と従業員の成長が調和し共に発展することが期待されます。

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