2024.06.04

リカーリングのメリット・デメリット

リカーリングとはサービスを継続的に提供することで収益を得るビジネスモデルです。顧客が商品を購入したら終わりではなく、提供したサービスや商品を継続的に利用したり、購入したりするため安定した収益につながり、顧客が継続してサービスを利用することからロイヤリティを高められるというメリットがあります。

リカーリングとは

リカーリングとは、商品やサービスを継続的に提供し顧客から定期的な収益を得るビジネスモデルです。顧客は月額料金や年会費を支払うことで特定のサービスを利用したり商品を受け取ったりできます。長期的にサービスを利用することで長期的な関係を構築することが可能です。

リカーリングビジネスの最大の利点は、顧客が継続的に利用料を支払うことで安定した収益が見込める点であり、企業は将来の収益を予測しやすく事業計画の策定や投資判断が容易になります。

さらに、顧客との長期的な関係構築は、顧客ロイヤリティの向上と解約率の低減につながります。継続的なサービス提供を通じて顧客ニーズを深く理解し、顧客ニーズに応じたサービス改善をおこなうことで顧客満足度を高めることも可能です。

サブスクリプションとの違い

近年注目を集めるストック型ビジネスモデルは、継続的な収益を得ることを目的としています。その代表的な形態として、リカーリングとサブスクリプションが挙げられますが明確な定義がないため混同されがちです。

リカーリングビジネスは、顧客が機器や基本サービス契約後に、消耗品や従量制サービスを追加購入する仕組みです。顧客は利用した分だけ支払うため、企業は長期的な関係を築き、安定収益を見込めます。プリンターとインクカートリッジ、スマートフォンとデータ通信サービスなどが典型的な例です。

サブスクリプションビジネスは、顧客が一定期間、商品やサービスを利用する権利を定額で購入する仕組みです。利用量に関わらず料金は固定のため、予算管理を容易にすることが可能です。動画配信や音楽ストリーミングサービスなどが代表的な例です。

リカーリングビジネスの需要が高まる理由

リカーリングビジネスは次の理由で需要が高まっています。

  1. コモディティ化の進行
  2. 顧客体験価値の向上

コモディティ化の進行

製品やサービスが市場にあふれ、価格以外での差別化が困難になるコモディティ化が進むと、価格競争が激化し企業の利益率は低下します。

リカーリングビジネスは、継続的な価値提供を通じて顧客ロイヤリティを高め安定した収益基盤を確立できるためコモディティ化を打破し、持続的な成長を遂げるための有効な戦略として注目されているビジネスの手法です。

顧客体験価値の向上

顧客は商品やサービスを所有することよりも、それらを利用することで得られる体験価値を重視する傾向が強まっています。リカーリングビジネスは顧客に継続的な価値を提供し、長期的な関係を築くことで、顧客満足度を高めることが可能です。

音楽ストリーミングサービスのSpotifyや動画配信サービスのNetflixは、定期的なコンテンツの追加やパーソナライズされたおすすめ機能を通じて、顧客に常に新しい体験価値を提供しています。

リカーリングのメリット

リカーリングには次のようなメリットがあります。

  1. 販売戦略を明確にしやすい
  2. 集客しやすい
  3. 事業計画を立てやすい
  4. 長期的な顧客を得られる

販売戦略を明確にしやすい

継続的な顧客関係を通じて購買行動や利用履歴などのデータを容易に収集できます。さまざまなデータを分析することで、顧客のニーズや嗜好を深く理解し、パーソナライズされたサービスや商品を提供できます。

定期購読型サービスでは、顧客の利用頻度や好みのコンテンツを分析し個々に合わせた特典を提供することで、顧客満足度を高め、長期的な関係構築につなげることが可能です。

集客しやすい

定期的な顧客との接点により、行動や視聴データなどを収集しやすいため、顧客ニーズを正確に把握できます。このため、顧客が求める商品やサービスを的確に提供し、満足度を高めることで長期的な利用を促進できます。

さらに、収集したデータからパーソナライズされたサービスを提供することも可能です。例えば、Spotifyは、ユーザーの聴取履歴に基づいて好みのプレイリストを自動作成し、顧客満足度を高め集客力を強化しています。

事業計画を立てやすい

リカーリングビジネスは月額や年額のサブスクリプション料金を通じて安定したキャッシュフローを確保できることが特徴です。このため、財務の安定性を維持しやすく、突発的な売上変動が少ないため、安心して新しいプロジェクトへの投資や研究開発に資金を投入できます。さらに、定期的に利用されるサービスや製品は顧客の生活に欠かせないものとなりやすく、解約率が低いため、長期的な成長を支える基盤を築くことが可能です。

長期的な顧客を得られる

継続的な商品やサービスの提供を通じて、長期的な顧客を獲得できます。顧客は一度気に入ったものを継続利用する傾向があるため、ニーズを満たす限り、継続的な売上増加が見込めます。さらに、定期的な接点を通じて得られる顧客の行動データは、パーソナライズされたサービスや商品の提供に繋がり、顧客満足度を高めることで、さらなる長期的な関係構築を可能にします。

リカーリングのデメリット

リカーリングには次のようなデメリットもあるので注意が必要です。

  1. 価格競争が起きやすい
  2. 業務が煩雑化しやすい

価格競争が起きやすい

継続的な収入が見込めるリカーリングビジネスは、参入障壁が低いため競合が増えやすく、差別化が難しい場合は価格競争に陥りやすい傾向があります。しかし、リカーリングビジネスは定期的なサービス提供を通じて顧客との関係を深められるという強みがあります。優れたカスタマーサービスやパーソナライズされた対応により、顧客満足度を高め、価格競争を回避できます。

業務が煩雑化しやすい

商品を売り切るビジネスと比較すると、リカーリングビジネスは、定期的な請求や支払い処理、顧客情報管理など、継続的な顧客対応が必要となるため、管理業務の負担が大きくなる傾向があります。

これらの業務を手作業で行うと、膨大な時間と労力を要し、ヒューマンエラーのリスクも高まります。そこで、専用の請求管理ソフトウェアやサブスクリプション管理システムを導入することで、請求処理の自動化や顧客情報の一元管理が可能となり、業務効率を大幅に向上させることが可能です。

また、リカーリングビジネスでは、定期的なサービス提供に伴い顧客からの問い合わせやトラブル対応が増えるため、迅速かつ丁寧なカスタマーサポート体制が求められます。カスタマーサポートチームの拡充やチャットボット、FAQページの活用などにより、顧客満足度を高めることが重要です。

リカーリングビジネスを成功させるポイント

リカーリングビジネスを成功させるためには、次のようなポイントが挙げられます。

  1. 顧客ニーズのある決済手段
  2. データ分析を活かした運用

顧客ニーズのある決済手段

リカーリングビジネスにおいて、顧客ニーズに合致した決済手段の選択は顧客満足度や解約率に大きく影響するため非常に重要です。顧客の多様なニーズに応えるため、複数の決済オプションを提供することが求められます。

クレジットカードやデビットカード、銀行振込、電子ウォレット、仮想通貨などさまざまな決済手段に対応することで、顧客は自分に合った方法で支払いができ利便性が向上することで顧客満足度を高めることにつながります。

データ分析を活かした運用

リカーリングビジネスにおいて、データ分析は顧客の行動パターンや購買履歴を理解し、サービス向上やマーケティング戦略の最適化に不可欠です。定期的な購入や利用が前提となるこのビジネスモデルでは、顧客一人ひとりのニーズに合わせたサービス提供が求められます。

顧客データの収集と分析を通じて、企業は顧客満足度を高める施策につなげられます。例えば、ストリーミングサービスでは、視聴履歴を分析し、顧客の好みに合わせたコンテンツを推奨することで、顧客の視聴時間を増やし解約を防止することが可能です。

さらに、データ分析はマーケティング戦略の最適化にも役立ちます。顧客の属性や行動データを基にターゲットセグメントを明確化し、効果的なマーケティングキャンペーンを展開することが可能です。データに基づいた新規顧客獲得戦略や既存顧客のリテンション戦略を立案や実行することで、マーケティング効果を最大化しリカーリングビジネスの成長を加速させられます。

まとめ

リカーリングとは継続的に収益を得るビジネスモデルです。顧客が定期的にサービスや商品を利用することで、企業に安定した収益をもたらします。サブスクリプションサービスや定期購入モデルなどが代表的なリカーリングの形態です。

リカーリングビジネスは、安定した収益と顧客ロイヤリティの向上といったメリットがある一方で、競争激化や運営上の課題も抱えています。企業はメリットとデメリットを十分に理解し、適切な戦略でビジネスを展開することが重要です。

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