2023.07.05

RHQ(地域統括会社)とは

RHQ(Regional Headquarters、地域統括会社)とは、地域に子会社のグループを設置し、グループに対して命令や管理、指導、支援などを本社の代理としておこなう企業体のことです。統括会社は子会社の出資者として、統括業務に専念することが可能です。

RHQによって事業や戦略、管理機能があるなど特徴が異なり、また地域発成長重視やガバナンス強化、事業拡大重視などさまざまなタイプがあります。トヨタをはじめとして、RHQを導入するケースが増えています。

RHQ(地域統括会社)とは

RHQ(Regional Headquarters、地域統括会社)とは、米州や欧州、アジアなどを対象として、それぞれの地域における現地子会社の事業を統括や支援、調整をおこなうことが目的です。世界のさまざまな地域に展開していることが多く、それぞれの地域にて戦略の立案や遂行をおこないます。

RHQは1960〜70年代に、アメリカの企業が欧州に事業を拡大する際に欧州の子会社への経営統制を高めるために設立されたのが始まりです。日系企業は直接投資による海外進出が遅れており、RHQが設立されたのは1980年以降のことです。

RHQの主な目的として、本社機能の一部をそれぞれの地域に委譲することによりスムーズな意思決定ができることが挙げられます。さらに、それぞれの地域にて熟知している現地の子会社を設定することで、マーケティングをはじめとした地域内業務の標準化や地域への適応を図ることも目的の1つです。

RHQにはそれぞれ異なる機能のあるタイプがあり、管理機能の一部だけを統一しているタイプから事業や戦略、すべての管理機能のある場合までさまざまです。さらに、地域の分け方も企業によって異なるほか市場環境によって変更する場合も少なくありません。

RHQの役割

RHQの役割として主に次の3種類が挙げられます。

  1. 事業機能
  2. 戦略機能
  3. 管理機能

RHQによって上位のすべての機能を統括しているケースから、管理機能の一部だけを統一しているケースまでさまざまです。事業機能は、販売や製造業務における効率化の向上や生産稼働率の調整など、最適化の実現のことを指します。

RHQ(地域統括会社)のタイプ

RHQには主に次の3つのタイプに分けられます。

  1. 地域発成長重視
  2. ガバナンス強化
  3. 事業拡大重視

地域発成長重視タイプは、地域ごとの収益最大化を最優先としており、地域主導の経営をおこなうことが一般的です。そのため、販売計画も地域主体で実行されます。販売会社の管理だけでなく生産会社の経営も責任を負います。

ガバナンス強化タイプは、本社が主導となって経営指導をしたり、事業活動の進捗を管理したりするタイプです。現地法人の計画は事業部門からトップダウンで指示をするほか、生産や販売拠点でも全社戦略に依存する特徴があります。

事業拡大重視タイプは、地域特性に合わせた戦略を本社とすり合わせることによって実行します。販売計画は本社と地域統括会社によってすり合わせをおこないますが、具体的な取り組みは地域統括会社が進める点が特徴です。

RHQ(地域統括会社)における課題

RHQには地域を管轄する企業の中枢としてさまざまなメリットがあります。しかし、RHQには次のような課題もあるため注意が必要です。

  1. システムの統一化
  2. 業務の属人化

システムの統一化

それぞれの地域にて異なるシステムを運用することによって、情報の収集や分析が非効率となり、戦略の立案やスムーズな意思決定をしにくいリスクがあります。たとえば、品目コードを統一していないと地域内の品目別売り上げの集計をしにくいことから、業務負担が大きくなります。

RPA(Robotic Process Automation、ロボティック・プロセス・オートメーション)をはじめとしてツールを導入することで改善をできる場合があったとしても、地域内のシステムを統一してデータの標準化をすることが必要です。

業務の属人化

海外現地法人の課題として、限られた従業員に特定の業務が集中することにより属人化している場合の多い点が挙げられます。そのため、従業員が離職をしたり不正をしたりした場合業務が止まってしまうリスクがあります。

業務が属人化してしまうと、デジタル技術を活用することで業務を標準化したり複数の拠点をまとめることにより業務の効率化をしたりしにくくなります。そこで、単一サーバーを使ったERP(Enterprise Resource Planning、基幹系情報システム)を導入することをはじめ、本社からリアルタイムでグループ会社の状況を把握することで担当者任せにならないような環境が必要です。

RHQ(地域統括会社)の事例

トヨタ

トヨタは、1993年には北米販売に占める現地生産車の比率が45%となったことをはじめ、現地での生産率の高い点が特徴です。1990年代後半以降、北米での現地生産を拡大するために経営の現地化を進めていきました。現地法人を統括管理するための体制を変更するほか、北米全域における渉外広報活動の強化を進めました。

1996年に北米製造事業の統括会社として、ケンタッキー州アーランガーにトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ノース・アメリカを設立しました。これまで日本でおこなっていた生産準備から物流まで生産に関連する業務全般を現地でおこなうことが目的です。さらに、2006年には研究開発部門のトヨタ・テクニカル・センターを統合することで生産技術や調達などとの機能連携やそれぞれの拠点における人材交流の活発化に成功しました。

参考:第1節北米市場でのプレゼンスの高まり第4項現地化の進展(トヨタ自動車75年史)

オムロン

オムロンでは、米州や欧州、中国、韓国、アジアパシフィックに海外地域統括本社を設定しています。米州に設定されたOMRON MANAGEMENT CENTER OF AMERICA, INC.(OMCA)は、米国やカナダ、メキシコ、ブラジル、およびそのほかラテンアメリカが対象地域です。

オムロンでは、グループ内それぞれの事業や機能が連結することにより、事業運営を強化することを目的としています。OMCAでは、従来税関の規則や難易度の高い法的規則事業に必要な専門知識を提供することで、米地域での最適な経営プラットフォームを構築することに成功しました。

参考:研究開発拠点、営業拠点海外地域統括本社(オムロン)
参考:グローバル・タテヨコ経営(オムロン)

まとめ

RHQ(地域統括会社)とは、米州や欧州、アジアといった地域を設定し現地に子会社のグループを設置することです。RHQの目的は事業拡大や地域発成長、ガバナンス強化などさまざまです。さらに、事業機能を持つRHQから管理機能を持つRHQまで企業によって役割が異なります。

海外にRHQを設けることにより、人材交流や生産技術をはじめとした機能連携などさまざまなメリットがある点が特徴です。1990年以降日本でもトヨタをはじめ、RHQを設定する企業が増えており、今後も需要が見込まれています。

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