2022.07.21

魔の川、死の谷、ダーウィンの海の乗り越え方

新規事業やイノベーションを目指す経営者にとって魔の川、死の谷、ダーウィンの海は無視できない関門です。目の前の仕事に集中することも大切ですが、プロジェクト全体の進捗度合いを確認し、待ち受けるであろう課題について事前に対策を考えることが大切です。

魔の川、死の谷、ダーウィンの海と呼ばれるイノベーションの課題は、これまで多くのプロジェクトが頓挫する原因となってきました。それぞれの特徴や原因を理解し、自分の事業に当てはめて考えることが重要です。

魔の川、死の谷、ダーウィンの海とは

イノベーションを実現するまでには、さまざまな段階を踏まなければなりません。新技術の事業化は、研究、開発、事業化、産業化の4段階に分けることができますが、次の段階に進むためには大きな困難を伴います。

こうした困難・障壁のことを経済用語で魔の川(Devil River)、死の谷(Valley of Death)、ダーウィンの海(Darwinian Sea)と呼びます。

それぞれの困難、障壁を乗り越えることができずに頓挫した新規事業は数多く存在し、イノベーションの実現の難しさを表しています。

魔の川とは

魔の川は、研究段階から開発段階に進むにあたってぶつかる障壁を指します。研究段階から具体的な新製品・新サービスの開発プロジェクトに進むまでには大きな困難があることから、渡るのが困難な魔の川と表現しています。

魔の川の原因

グローバル化やIT技術の発展により、市場環境は日々変化しています。また、技術分野においても日進月歩で発展しており、最新は常に更新され続けています。

このようななか、市場ニーズを的確にとらえた新製品・新サービスを開発するのは至難の業といえます。これが魔の川と呼ばれる所以です。

魔の川の原因には、主に以下の3点が挙げられます。

  • 競合商品の登場
  • 消費者ニーズの変化
  • 研究開発のスピード

いずれも、他社に先を越されてしまったという状況が、魔の川が生じる原因となっています。

魔の川の乗り越え方

魔の川を乗り越えるためにはプロダクトへのこだわりだけでなく、市場ニーズや競合他社の状況をしっかり把握するビジネスセンスが必要です。特にターゲット顧客と、他社との差別化ポイントを明確にすることが重要です。

死の谷とは

死の谷は魔の川を乗り越え製品化にこぎ着けた商品、サービスを事業として発展させていく段階においてぶつかる障壁を指します。

売上をつくるためには、生産設備や労働者などへの投資や資金調達が必要になるなど、さまざまな課題をクリアしなければなりません。ここで頓挫すれば、これまでかけた資金が無駄になり、ダメージが大きくなることも、死の谷と呼ばれる所以です。

死の谷の原因

新商品、新サービスが顧客に認知されるためには広告費をはじめとした費用を投じる必要があります。資金を調達したり、優秀な人材を採用したりするためには売上がなければいけません。しかし、売上が立たないまま時間だけが経過してしまうのは、よくあるパターンです。結果として運営資金がショートして事業が失敗に終わってしまいます。

死の谷の乗り越え方

死の谷を乗り越えるためには、早いうちから売上にコミットしていくことが大切です。まだ商品、サービスが完全な状態に至ってなくても試作レベルで事業化していくことが重要です。

実際にリリースすることで顧客からの反応を直接得られることから、プロダクト開発にも活かすことができます。テストマーケティングを繰り返しながら徐々にブラッシュアップしていき、柔軟性を持ちながら完成を目指します。

ダーウィンの海とは

3つ目の障壁であるダーウィンの海は魔の川、死の谷を乗り越えて市場投入できた商品、サービスが事業として成功するまでにぶつかる障壁を表しています。せっかくリリースしても競争力や適応力がないと生存競争から淘汰されてしまいます。このような状況がダーウィンの進化論と重なるため、ダーウィンの海と呼ばれています。

ダーウィンの海の原因

ダーウィンの海はさまざまな要因によって発生します。代表的な要因には以下のようなものが挙げられます。

  1. 時代のニーズを読み間違えた
  2. 競合他社がいた
  3. もっと良いプロダクトが生まれた

大企業は分析力や開発スピードが優れているため、ダーウィンの海を制することは比較的容易です。しかし、スタートアップやベンチャー企業の場合は経営資源の乏しさなどから厳しい生存競争を生き残るのは至難の技かもしれません。

一方で、小さな企業の方が柔軟性に優れ、市場の変化に応じて製品やサービスの中身を変化、改善させることができる場合もあります。プロダクトそのものに欠点はなくても競合の出現などによって淘汰されてしまうこともあるので油断は大敵です。

ダーウィンの海の乗り越え方

ダーウィンの海を乗り越えるうえでもっとも重要なのは競争力です。プロダクトの付加価値を高め、競争の優位性を確立しなくては市場のなかで生き残れません。そのため、常に市場調査によって顧客ニーズを知り、プロダクトの改善に注力していくことが大切です。

魔の川、死の谷、ダーウィンの海に共通する対策

魔の川、死の谷、ダーウィンの海の3つの関門は、それぞれが異なる困難な状況を表しています。しかし、イノベーションを起こすにあたって常に意識しなければならないのは柔軟性です。

前例を踏襲するのではなく異なる視点やアイデアで困難を乗り越えることが大切です。アイデアや手段が多いほど魔の川、死の谷、ダーウィンの海を乗り越えられる成功確率は上がるはずです。

また、綿密な市場調査や差別化、スピード感も3つの関門に共通する効果的な施策です。

まとめ

ゼロからイノベーションを生み出すことは簡単なことではありません。数多くの素晴らしいアイデアが日々生まれていますが、事業として成功するのはほんの一部です。

ほとんどのアイデアが、魔の川・死の谷・ダーウィンの海を乗り越えることができず、事業として継続することができません。

しかし、逆をいえば、イノベーションの性質を理解し魔の川、死の谷、ダーウィンの海への対策をきちんと講じられていれば、どんなアイデアでも事業化が成功する可能性があるということです。

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