2022.09.16

人事評価制度における相対評価

相対評価とは自社のなかで能力を比較し、従業員の評価を決定する仕組みです。日本で馴染みのある方法で学校の成績や企業の人事で活用されてきました。担当者が取り組みやすく、組織のなかで従業員同士が切磋琢磨し合える利点がある反面、個々の成長を妨げてしまうリスクもあります。

一方、相対評価と反対に位置する絶対評価は目標の達成度によって従業員の評価をおこないます。目標を達成し、成果を上げた従業員は全員評価される仕組みです。成果は具体的な数値や言葉で表現できるため従業員が納得しやすい人事制度です。

参考:人事評価制度構築コンサルティング

相対評価とは

相対評価とは個々のスキルを他者と比較し、従業員の立ち位置を決定する評価制度です。これまで学校の成績や企業の人事評価など、さまざまなシーンで活用されてきました。

あらかじめA評価は5人、B評価は8人、C評価は12人とランク別に枠を用意し、評価を決定する際に生徒や従業員を枠へ当てはめるといった手法です。バランスのとれた評価方法で、運用するとグループ内で切磋琢磨できる環境が生まれます。

相対評価におけるメリット

相対評価におけるメリットは次のとおりです。

  1. 評価しやすい
  2. 担当者の影響が少ない
  3. 競争が激化する

評価しやすい

相対評価はグループ内における従業員の成果や能力を比較し、優劣をつけてランキングを決定する評価方法です。そのため、評価に取り組みやすく、評価に取りかかる時間も比較的少ないため、担当者に大きな負担はかかりません。

担当者の影響が少ない

他者との比較から順位を決めるため、担当者の影響力が少ない点がメリットです。業績を評価するにあたって基準があいまいな評価方法では、担当者によって評価が変化してしまい、評価が厳しい方と甘い方とでは評価に差が生まれてしまうリスクがあります。しかし、相対評価では評価の枠があらかじめ定められているため、担当者が与える影響は少ないです。

競争が激化する

相対評価では同じグループ内で優劣がつくため、従業員どうしで競争が生まれます。成績上位を目指すにはグループ内でトップの成果を残す必要がありますが、ほかの従業員もトップを目指して努力するため、競争の激化が予想されます。

お互いにライバルとして競い合うことになるため、モチベーションが高まるうえ、管理者が指示しなくても意欲的に業務へ取り組む従業員は多いです。結果的に良い環境づくりにつながります。

相対評価におけるリスク

相対評価におけるリスクは次のとおりです。

  1. 適切な評価が不可能である
  2. 個人の成長を妨げてしまう
  3. 評価の根拠に具体性がない

適切な評価が不可能である

相対評価では組織のなかのランキングによって評価が決定してしまうため、適切な評価が困難です。あるグループにおける成績上位者が、ほかのグループに移籍した途端に中位に落ちてしまうケースが見受けられます。優秀であるにも関わらず、グループ内で優れていない評価をされてしまえば従業員のモチベーションは低下します。

個人の成長を妨げてしまう

所属するグループによりますが、相対評価では個々の成長が評価に含まれないケースがあります。たとえ自分が努力して成果を上げたとしても、周囲のライバル達も成長して成果を挙げるため、相対的に評価が下がる場合も考えられます。

評価されなければ業務に対するモチベーションは低下し、生産性も落ちてしまうため注意が必要です。伸びしろがあるのにも関わらず、途中で辞めてしまうなど個々の成長の妨げにつながる可能性も十分にあります。

評価の根拠に具体性がない

他者との比較により評価が決まるため、根拠に具体性がない状態で評価されているケースは少なくありません。同レベルのスキルを持つ従業員どうしでの評価は特に大切で、評価があいまいであると従業員からの不満や反発を招きます。正当な評価をするには具体的な根拠が必要です。

絶対評価とは

相対評価とは反対側に位置する評価制度に絶対評価があり、目標の達成度によって個々の評価をおこないます。目標を達成できれば評価されますが、達成できないと評価されないシンプルな手法です。

周囲のライバルたちの成績は関係なく、1人ひとりを客観的に評価できます。達成度の基準も明確であるため、自分に何が足りないか把握も可能です。

絶対評価におけるメリット

絶対評価のメリットは次のとおりです。

  1. 評価の根拠が明確である
  2. 従業員の成長を促進する
  3. モチベーションの向上が期待できる

評価の根拠が明確である

絶対評価では目標達成度で評価が決定するため結果の根拠が明確です。より目標を高く設定するにはどんなスキルが必要であるのか、自分には何が足りずに目標達成できなかったのかなど課題がはっきりします。誰もが納得できる公正な評価制度であるため従業員からの不満は生まれにくいです。

従業員の成長を促進する

目標の達成度を評価基準とすると、自分に足りない能力や知識がはっきりします。課題が明確であるため解決することで効率的にスキルアップでき、従業員の成長を促進します。できる仕事の幅が広がり、レベルの高い業務を遂行できるようになれば、評価や報酬も向上するため、従業員は意欲的に取り組みを進められます。

モチベーションの向上が期待できる

絶対評価において評価基準が明確な場合、目標をクリアすれば企業から評価されるため、モチベーションの高い状態で業務に取り組めます。モチベーションが高まると、組織全体の生産性向上も期待できます。一方で、評価基準が明確でない場合だと何をすれば評価されるか不透明であり、業務に対する意欲は低下するため注意が必要です。

絶対評価におけるリスク

絶対評価のリスクは次のとおりです。

  1. 評価のバランスが取りにくい
  2. 評価担当者の影響が大きい
  3. 評価基準の設定が困難である

評価のバランスが取りにくい

絶対評価は目標を達成さえすれば全員が評価される仕組みです。簡単な目標を設定し、全員が達成できてしまえば評価する意味がありません。さらに報酬を渡す必要があるため、人件費の負担が大きくなります。

個人でも目標設定し、評価をおこなうため、担当者が全体評価にまで手が回らないリスクも考えられます。絶対評価はさまざまな問題点を抱えるため、評価のバランスが取りにくい点には注意が必要です。

評価担当者の影響が大きい

絶対評価では担当者の影響が大きいため、評価の際は注意が必要です。数値で表現できる成果であれば正当に評価できます。しかし、具体的な基準を表現できない業務は担当者によって評価が変わってしまう可能性は高く、評価に偏りが出てしまうケースも珍しくありません。

評価基準の設定が困難

絶対評価の基準設定は一般に困難です。簡単すぎず、むずかしすぎない評価基準を設定しなければ効果的な評価制度は実現しません。

特に数値化できない業務の評価がむずかしく、基準があいまいになってしまいます。システム導入やプロセスの評価を取り入れると、多くの従業員が納得する評価制度の実現が期待できます。

相対評価と絶対評価

相対評価と絶対評価には良い面と悪い面がそれぞれありますが、どちらの方が良い評価方法であるかは用途や状況に応じて異なります。人事評価制度とは従業員の成果や能力を評価する仕組みであり、報酬につながるため公正な評価方法が必要です。評価に対する従業員の納得感が大切であるため、柔軟に評価方法を運用するのがベストです。

まとめ

相対評価とは他者との比較により従業員の評価をする制度です。グループ内での評価であるため競争の激化が予想され、従業員はライバルとモチベーションを高め合う充実した環境下で業務に取り組めます。相対評価には評価に取り組みやすいメリットがありますが、個人の成長を妨げる、評価の根拠に具体性がないなどのリスクもあります。

一方で、絶対評価とは目標の達成度によって個人の評価をおこなう人事評価制度です。効率よく人材を育成できるメリットがある一方で、評価基準の設定がむずかしいリスクもあります。双方の価の良し悪しは状況に応じて異なるため、柔軟に使い分けるのがベストです。

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