2022.07.26

コンピテンシーとは

コンピテンシーとは成果を上げている従業員の行動や思考などを分析した行動特性のことをいいます。コンピテンシーを評価基準として人財育成や採用活動、また人事評価をおこなっている企業が年々増えています。

成果を上げている従業員の能力だけではなく考え方や成果を出すことに至るまでの行動まで含まれているため、企業にとっての必要な人材の明確な基準となります。そのため、従業員にとってどのようなことをすれば評価をしてもらえるのかが明確になります。求職者にとっても必要な人材を理解しやすいため採用後のミスマッチを減らすことができます。

コンピテンシーとは

コンピテンシー(competency)とは普段から高いパフォーマンスを維持できる人に共通して見られる行動特性のことをいいます。高いパフォーマンスを維持できる人は普段からどのような行動しているのか、どのようなことを意識しているのかを分析していきます。業務によってパフォーマンス内容が異なるため、コンピテンシーは企業ごとに異なることが一般的です。

コンピテンシーのモデルは実際に成果を上げている従業員のほかに、理想形のモデルを作り上げることがあります。従業員に対してのヒアリングや分析が必要ないため、作り上げるまでの時間を短縮することができます。しかし、企業が求める理想が高すぎたり現実から離れたりしないようにする必要があります。

コンピテンシーが誕生したきっかけ

コンピテンシーは心理学において1950年代から使われています。初めて採用活動に活用されたのは1970年代にハーバード大学のマクレランド教授が行った調査です。この調査はアメリカの国務省に依頼をされたもので、外交官を採用するときのテスト成績と配属したあとの実績を分析するといった内容です。

その結果外交官になったあと、高い業績を上げてる人には共通特性があることがわかりました。このことがきっかけで高いパフォーマンスを続けている従業員に共通する特性のことをコンピテンシーと呼ぶようになりました。

日本においてのコンピテンシー

日本では長年、年功序列であることが多かったため、コンピテンシーはなかなか活用されませんでした。しかし、成果主義へと変わりつつある現在においてコンピテンシーは評価基準の1つとなりつつあります。

日本は高齢化社会に加え、少子化が進んでいることから労働人口の減少が大きな課題となっています。この課題を解決するために従業員のレベルアップが必要であり、コンピテンシーはその手段の1つとして注目されています。

コンピテンシー導入のメリット

コンピテンシーを導入するメリットは次のような点が挙げられます。

  • 人事担当の負担を減らす
  • 生産性を高める

人事担当の負担を減らす

コンピテンシーの導入は人事担当の負担を減らすことにつながります。コンピテンシーは能力やスキルだけで判断をするのではなく、それらを発揮するための価値観や考え方が含まれます。

そのため、コンピテンシー評価を基準として採用した場合は、スキルや能力が十分でなくても今後の人材育成によって十分に企業が求めるような人材に成長することがあります。逆に能力やスキルを十分に持っていてもコンピテンシーがマッチしない場合は、採用後にミスマッチとなる可能性が高くなります。

評価をするうえでもコンピテンシーを基準にすると人の主観や感覚による判断がなくなるため、従業員の満足度を上げることにつながります。従業員が企業が求める人材を理解することにより、研修を落とした人材育成がスムーズにいくといったメリットもあります。

生産性を高める

高い成果を出している人材の行動特性を従業員全員が理解して日々成長することによって、企業全体の生産性を高めることになります。さらに、従業員一人ひとりが高いモチベーションを保って具体的に企業が求める行動をすることによって一人ひとりのスキルを高めることができます。

このようにコンピテンシーを導入することによって好循環を生み出すことにつながり、結果的に企業の生産性を高めることにつなげることができます。

コンピテンシーの活用方法

コンピテンシーは次のようにさまざまな状況において活用されています。

  • 採用時に活用
  • キャリア開発に活用
  • 人事評価において活用

採用時に活用

ミスマッチがないように採用活動を進めるためには、採用基準を明確にする必要があります。そこでコンピテンシーを採用基準を明確にするための指標にすることが一般的となっています。自社に置いて活躍をしている従業員のコンピテンシーを元にして採用基準を設定することにより、人材の見極めがしやすくなります。

求職者にとってもどのような人材を必要としているかを明確にすることができるため、面接前に自分に合っているかどうかを判断することができます。さらに、採用後も面接前に思っていたイメージと違ったといったことを防ぐことができます。

キャリア開発に活用

多くの企業で人材育成が大きな課題となっています。そこで、活躍している従業員のコンピテンシーをもとに、どのような行動すれば高い成果を上げられるのか、日頃からどのようなことを考えて業務に携わってるのかといった内容をテーマにした研修をすることが一般的となっています。

従業員にしてみたら、どのような人材が企業から求められていて活躍ができるのかをはっきりと理解することができるためモチベーションの向上にもつながります。

人事評価において活用

すでに高いパフォーマンスを出している従業員の行動分析を基に評価項目を設定している企業が増えています。コンピテンシー評価は担当する人によって基準が変わらないことが特徴であり、従業員にとって納得できる評価方法といえます。

コンピテンシー導入のデメリット

コンピテンシーを導入するデメリットは次のような点が挙げられます。

  • 柔軟性に欠ける
  • 導入まで時間がかかる

柔軟性に欠ける

コンピテンシーは一度設定すると明確な基準ができることから採用や人事評価をしやすくなります。しかし、逆にいえば企業の業績や社会の変化などに対応することがむずかしく柔軟性に欠ける部分があります。コンピテンシーは定期的に見直すことが必要になります。

企業の状況や社会の変化などによって成果を上げられる人材が変化することは少なくありません。

導入まで時間がかかる

コンピテンシーは成果を上げている従業員のモデル選定から行動特性のヒアリング、さらに分析をしていく必要があります。このほかにも、運用していくうえでの準備が必要となり、実際にコンピテンシーを導入するまでは時間と労力を必要としています。

さらにコンピテンシーは定期的に見直す必要があることから、コンピテンシーを運用するだけでも大きな労力が必要です。

コンピテンシーの導入例

給与に反映

楽天では期待される行動をあらかじめ設定しておいて、その行動を継続的に続けられているかを評価対象にしています。

楽天グループ株式会社の評価制度は、「コンピテンシー評価」と「パフォーマンス評価」から成り立っており、半年に1回、評価を行います。
「コンピテンシー評価」は、期待される行動を継続的に発揮できていたかを評価軸としており、その評価は給与に反映されます。
出典:キャリア開発(楽天)

アンケート結果からコンピテンシーを設定

大塚製薬では400人以上にアンケートを実施し、コンピテンシーを分析することにより研修や人材育成に活かしています。

大塚製薬様では、営業成績優秀なMRの行動特性、いわゆるコンピテンシーに着目し、400人以上に実施した行動変容に関するアンケート結果から優秀MRの「売れるコンピテンシー」を分析、MRの研修や人材育成に生かすプロジェクトを実施されています。
出典:優秀社員のコンピテンシーを人材育成に活かす!大塚製薬が実践する400人以上の“ハイパフォーマー分析の取り組み”とは?(日刊工業新聞)

まとめ

少子高齢化が進む日本において優秀な人材の採用や育成は重要な課題となっています。そこで、コンピテンシーを納入することにより明確な基準を作ることによって業績を上げている企業は少なくありません。

従業員にとって明確な評価基準ができモチベーションを上げることができる他、求職者にとっても企業がどのような人材を求めているかが明確なためミスマッチを減らすことができます。

コンピテンシーは従業員のスキルや経験だけにとどまらず、成果を上げるための考え方や価値観といった内容まで焦点を当てており、企業が成長していくには今後需要が高まっていくことが見込まれます。

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