2022.06.28

イノベーションのジレンマとは

イノベーションのジレンマとは、大手企業もしくは優良企業ならではの落とし穴のことを指します。大手企業もしくは優良企業が収入源を確保する際、新たなイノベーションにつながる改革を実施します。その際に指摘されるのがイノベーションのジレンマです。

昨今の複雑化するビジネスシーンにおいて、新たな市場開拓を通じたイノベーションが求められています。しかし、新たなイノベーションには必ずといっていいほど、大きなジレンマが存在することを知っておかなければなりません。

イノベーションのジレンマとは

イノベーションのジレンマとは顧客のニーズを取り入れた結果、経営判断が失敗してしまうことです。新たな技術や機能を通じた性能の向上に注力することが原因で、シェア拡大の経営判断が失敗することを指します。

イノベーションのジレンマは、ハーバードビジネススクール(アメリカ)のクレイトン・クリステンセン教授により提唱された理論により注目されました。

イノベーションのジレンマを理解するうえで重要な2つのイノベーション

イノベーションには、持続的イノベーションと破壊的イノベーションの2種類があります。それぞれの特徴を把握しておくことで、イノベーションのジレンマがより身近になるかもしれません。

たとえば、既存事業や製品などを改善することが持続的イノベーションに該当します。既存のものに顧客のニーズを掛け合わせ、より市場競争が有利になるものを生み出すことが持続的イノベーションの特徴です。

対して破壊的イノベーションには、既存の事業やニーズを無視し、新たな価値提供を生み出すという特徴があります。持続的イノベーションと比べてリスクはあるものの、市場のニーズにヒットした際の爆発力が期待できます。

イノベーションのジレンマ事例

イノベーションのジレンマについて、身近な事例を紹介します。自社のイノベーションに関する課題を明確にするための参考にしてください。

業界、市場 具体例
携帯電話
  • かつては日本独自の携帯電話文化があった
  • iPhoneの参入により日本メーカーの戦略が通じなくなったことでイノベーションのジレンマが起こる
アパレル
  • 従来はあくまでファッション性やブランド名が重視されていた
  • 昨今は安価かつ機能性の高いアイテムを求めるニーズがある
居酒屋
  • 低価格でメニューを提供する居酒屋が一般的だった
  • 産地や品質にこだわる居酒屋が増加したことでイノベーションのジレンマが発生

イノベーションのジレンマは、既存事業への依存や市場ニーズと技術の不一致などが原因で発生します。また、新市場へ参入する機会を見逃すことで、イノベーションのジレンマが発生することもあります。

既存事業への依存

新たな技術に関心を持たず、既存事業に頼り切ったビジネスだけでは、市場ニーズの変化に対応できません。既存事業でいかに大きな利益を出しているからといって、時代の変化に目を向けなければさらなる成長は見込めないといえます。

しかし、時代のニーズを片っ端から取り入れ、事業のコンセプトがブレてしまっては本末転倒です。既存事業の継続と成長の両方を視野に入れ、市場競争の動きに合わせた変革を実施しなければなりません。

市場ニーズと技術の不一致

市場ニーズを無視し、技術ばかりを成長させてしまうのもイノベーションのジレンマを引き起こす結果につながります。技術の成長は他社との差別化における重要な要素です。

しかし、技術レベルの向上だけに着目してしまい、肝心の顧客を置いてけぼりにしてしまっては意味がありません。市場や顧客が現在抱えているニーズを把握し、それに見合った速度、レベルでの変革を実施していく必要があります。

新市場へ参入する機会の見逃し

目まぐるしく変化する昨今のビジネスシーンでは、常に新しい市場が生まれています。企業が展開する事業によっては、市場規模や利益率などを加味して新市場への参入を見送ることもあるかもしれません。

しかし、市場が変化するタイミングで参入しておかないと、シェアの拡大や顧客の獲得などに障害が発生します。変化への対応力やスピード感が重視される現代において、新市場の動きは見逃せない観点です。

イノベーションのジレンマによるリスク

イノベーションのジレンマは、以下のリスクを発生させます。

  • 現状維持の思考が根付く
  • 競争の優位性がなくなる
  • 経営状況が悪化する

上記のリスクは、持続的イノベーションと破壊的イノベーション、どちらにも関連するといえます。2種類のイノベーションに関するメリットデメリットを把握するうえでも重要な要素です。

例えば、持続的イノベーションに重きを置く企業の場合、現状維持の思考が根付いて競争率が下がる可能性があります。現状を打破するために破壊的イノベーションを試みても、市場にフィットせず競争率が下がることも考えられます。

また、いずれのイノベーションにもニーズの捉え違いによって経営状況に打撃を与える可能性があるため注意が必要です。

イノベーションのジレンマ対策

イノベーションのジレンマを防ぐには、発生理由やリスクを加味したうえでの対策が必要です。

トライアンドエラーの実施

イノベーションを成功させるためには、あくまで小規模を意識したトライアンドエラーの実施が大切です。規模を抑えながら実施することで、リスクを回避しながら多数のイノベーションに挑戦できます。

トライアンドエラーを繰り返す風潮を作り出すためには、既存事業からの脱却も意識しなければなりません。破壊的イノベーションの視点を持って、企業内での改革を繰り返す必要性があります。

社会全体へのフラットな視点

市場の変化や新たな技術の誕生に合わせたフラットな視線を持つことも、イノベーションのジレンマを防ぐうえで重要です。ユーザーニーズの変化を予想し、新たな技術革新を実施しなければ、市場競争では生き残れません。

現在市場で出回っている製品が今後どのような進化を遂げるのか、どのような機能が求められるかといった視点が必要です。自社の事業内容に捉われず、あくまで市場や顧客視点での改革を実施してください。

新たなイノベーションの予測

社会全体へのフラットな視点を持ちながら、市場の変化に応じた新たなイノベーションの予測も大切な観点です。闇雲に予測するのではなく、ニーズの変化に沿った根拠のある予測を立ててください。

破壊的イノベーションのリスクである経営状況の悪化や市場競争の優位性に関する観点も、市場予測を的確に実施することで防止できます。

新市場への進出

目まぐるしく変化する市場のニーズに対応するには、新たに誕生した市場にも積極的に参加すべきといえます。

既存事業の枠内では、どうしても新たなイノベーションを創造できないという企業もあるかもしれません。持続的イノベーションに限界がある場合は、多少のリスクを加味したうえで破壊的イノベーションを実施する必要があります。

まとめ

イノベーションのジレンマとは、新たなイノベーションを通じた変革につきまとう落とし穴のことを指します。

昨今のビジネスシーンや市場は顧客ニーズの変化に比例して凄まじいスピードと勢いで変化しているのが現状です。市場競争を勝ち抜くために、持続的、破壊的イノベーションの特徴を理解し、イノベーションのジレンマに向き合う必要があります。

2種類のイノベーションは企業にとってのメリットもある反面、かえってリスクになる可能性も秘めています。既存事業との兼ね合いや新たな市場ニーズへの参入など、さまざまな視点で向き合うことが重要です。

ただし、顧客のニーズにすべて応えることが、経営判断の失敗につながる可能性もあります。あくまで企業として負債を抱えず、かつ市場競争に勝ち残れる手段を考えなければなりません。

常にイノベーションのジレンマがつきまとう環境下で、いかに自社ならではの新たな商材を生み出せるかが鍵になります。

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