2019.12.25

プロジェクト収益最大化のために「集客ピーク」と「販売力ピーク」の時期のマッチング精度向上に取組む

東急不動産株式会社 様

1.分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」を展開する東急不動産。現在、開発から販売まで「製販一体型」で、お客さまの多様なニーズに対応した住宅の供給を行っている。課題と捉えているのは、高く早く販売を行うことであり、これによりプロジェクト収益の最大化を図ることである。

 

2.その課題を克服するため、「集客ピーク」と「販売力ピーク」の時期のマッチング精度向上をテーマに、約半年にわたって販売現場の責任者であるチーフと複数物件の販売現場を統括するグループリーダークラスの皆さんが取り組んできた研修についてお話を伺った。

お話を伺った方々

  • 販売統括部統括部長
    兼 首都圏住宅事業本部販売第一部統括部長 執行役員
    佐藤 知之 様
  • 首都圏住宅事業本部 販売第二部統括部長
    山口 潤 様
  • 販売統括部 販売管理グループ グループリーダー
    塩田 光太郎 様
  • 販売統括部 販売管理グループ 課長
    久津 輪太 様
  • 販売統括部 販売管理グループ
    齋藤 智美 様

今回の研修に取り組むことになった経緯をお聞かせください。

当社は、首都圏・関西を中心に分譲マンション事業を展開していますが、以前はデベロッパーである東急不動産と、販売を担う東急リバブル、といったグループ会社内で機能が分断されていました。しかし、事業の収益性や成長スピードを考えたとき、今後は製販一体型の事業展開が望ましいと、大きな方針転換をすることになりました。東急不動産内に販売部隊を抱えることになったのです。そこで重要度が増したのが、プロジェクトの販売現場責任者であるチーフの役割です。これまでは、開発側の責任者と、販売側の責任者は別々であったわけですが、製販一体型となり、販売に関わるグループリーダー、チーフも商品計画の段階から販売まで関与することになりました。これにより、プロジェクトに対する関与度も責任も大きくなるということです。単に売ればよい、ということだけではなく、いかにプロジェクトの収益性を最大化するか、という考え方を持つことの重要性が増しました。

そこで、これを機にチーフメンバーを中心に、自社のあるべき販売スタイルについて、改めて考えてもらうプロジェクトに取り組むことにしました。とはいえ、自社だけでは新しい発想も生まれにくいと思い、以前に関西支店でお世話になったリブ・コンサルティングの加藤さんに相談し、研修をお願いすることにしたのです。

今回の研修における一番の狙いは何だったのでしょうか。

事業の収益性を最大化するための販売の仕組みづくりです。その際、重要となったのが高く早く販売を行うための「販売のピークマネジメント」手法の確立という考え方でした。本来、戸建・分譲マンションの販売は、販売開始当初に、比較的購買意欲の高いお客さまが来場されます。また、お客さまの来場数そのものも、販売開始当初が最も多く、時間が経つにつれ徐々に減少していきます。つまり、販売開始当初が最大の山場となります。しかしながら、販売側の体制は、販売開始までの準備に十分時間が取れなかったり、セールストークが各人バラバラでお客さまに物件の価値が十分伝えきれなかったり、ということが見受けられました。これまでは、販売が進捗するに従い、営業シナリオやセールストークは磨かれていくため、どちらかというと販売のピークは後半型だったのです。これは、まさに機会損失となります。戸建・マンション販売は、初めに勢いをつけることが重要ですからね。

そこで、お客さまの購買意欲や集客のピークと、販売力ピークを合わせるためにはどうすればよいか、を考えてもらいました。つまり、販売力ピークの前倒しです。そのためには、販売担当者がプロジェクト推進に、より早い段階から関与し、セールスストーリーを練り込んだ上で、ツールやトークに落とし込み、しっかりとトレーニングを積んで販売開始に備えることが重要であると認識できました。製販一体体制となったことで、販売を担うメンバーが早い段階から関与しやすくなったことも追い風でした。

セールスストーリーを設計しなおす上で、カギとなった考え方はありますか。

一つは「購買心理」の考え方です。その中でも特に「フレーミング」の要素です。自然に購買心理を意識したトークをしていたメンバーもいたと思うのですが、理論立てて考え方を学んだことで、セールスストーリーを考える上での共通の軸ができたと思います。今ではチーフがメンバーに対して「フレーミングトーク、考えた?」といった会話が飛び交うようになりました。

もう一つは、物件コンセプトをセールスストーリーへ落とし込む際のステップです。これまでも物件コンセプトは理解した上でセールス活動は行っていましたが、購買心理という視点が欠けていたため、効果的な伝え方に改善の余地がありました。お客さまの購買意欲を上手に高められるストーリーの作り方が明確になったため、あらゆる物件に応用可能な“セールスの方程式”が出来上がったと思います。

① 「集客ピーク」と「販売力ピーク」のマッチング

② 購買心理と物件コンセプトを捉えたセールスストーリーの設計

 

今回の研修における最大の成果は何だったとお考えですか。

当初、成果指標として五つのKPIを設定しました。うち二つは、プレセールス活動の強化に関するもので、「対総戸数来場倍率」と「対総戸数資料請求倍率」という指標です。残り三つはセールスストーリー強化に関するもので、「再来率」「再来契約率」「歩留まり」といった指標です。半年間のプロジェクトを通じて、いずれのKPIも高まりつつあります。

その大きな要因は、販売部門内に、販売戦略を考える上での共通の軸ができたことでしょうか。東急リバブルの頃にも営業研修を受ける機会はあったのですが、どちらかといえば「教わって終わり」でした。現場で生かし切れていないことが多いように感じていました。ただ今回のプロジェクトは、リブさんに主導してもらったとはいえ、自分たちで問題点を洗い出し、自分たちで解決策を考えていくというディスカッション中心のスタイルでしたので、納得感が高かったのだと思います。だから現場でもすぐに実践しようという気になったのでしょう。そのあたりの進め方は、非常にうまくいきましたね。それと、チーフ同士がお互いにどんなことを考え、どういう仕事の仕方をしているのか知れたことも大きかったのではないでしょうか。実はそれ以前は、チーム内の縦のつながりは強くても、横のつながりは強くはありませんでした。横のつながりが生まれたことも、思考の幅を広げるきっかけになったと思います。

では最後に、今後の展開についてはどのようにお考えでしょうか。

今回得たものを、これから始まる新規のプロジェクトでしっかりと実践して成果を上げていくことが何より重要です。現場で実践しながら自分たちのものにし、より磨きをかけていく必要があります。引き続きリブさんにもご支援いただきながら、大きな成果につなげていきたいと思います。

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