1. HOME
  2. > 対談インタビュー
  3. > これからの日本的経営とトップの役割

 

1981年一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。1990年、ハーバード大学にてPh.D(. 歴史学)を取得し、1997年より一橋大学イノベーション研究センター教授。1999年~ 2001年および2008年~ 2012年3月まで、同センター長。2012年3月よりプレトリア大学ビジネススクール(GIBS)日本研究センター所長を兼務。企業経営の歴史的発展プロセス、とくにイノベーションを中心とした経営戦略と組織の史的研究を主たる研究領域としている。経営史を専門とする一方で、関心領域を広く保ち、学際的であることを旨としている。季刊誌『一橋ビジネスレビュー』編集委員長、及びアカデミーヒルズにおける日本元気塾塾長でもある。『経営革命の構造』(岩波新書)、『創発的破壊:未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)など、著書多数。

関 厳(せき・いわお)/株式会社リブ・コンサルティング 代表取締役社長

東京大学教育学部卒業後、大手経営コンサルティング会社に入社。同社史上最年少で取締役就任、2010年専務取締役就任。リーマンショック後の逆風の中、自身の統括部門を3期連続の増収・増益に導く。2012年7月リブ・コンサルティングを設立。「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」を理念に掲げ、トップコンサルタントとして幅広い業界のコンサルティング支援に携わる。コンサルティング活動以外にも多くの業界団体向け講演活動も行っており、年間約5,000名を動員。昨年11 月出版の書籍「経営戦略としての紹介営業」は、全国の大手書店ビジネス部門にて第1 位を獲得。同社は「2016年:注目企業33」(経済界)に加え、2年連続で「働きがいのある会社ランキング」のベストカンパニーに2015年、2016年と2年連続で選出されている。

弊社は、「100年後の世界を良くする会社を増やす」ことをミッションにコンサルティングサービスを提供しています。かつて日本企業が成功した経営の良さを継承しつつも、現在の社会環境を鑑みたあるべき経営のモデルを「新・日本的経営」としました。
「業績」「CIS(顧客感動満足)」「EIS®(社員感動満足)※1」「仕組みづくり」「人財育成 ※2」の「5つの成果® ※3」 指標を設定し、中長期でスパイラルアップしていく経営システムを「新・日本的経営」と呼び、5つの指標の中心に、それぞれの企業が何をしたいのかという「理念」があると考えています。
「新日本的」「新アメリカ的」「新韓国的」という視点よりも、我々が意識すべきは、21世紀の「いい企業」「いい経営」をどうやって作るかではないでしょうか。100年続く企業を良しとするのかということ自体も考えるべきかもしれないですね。変わっていかなければ、生き延びていけない。「何をもって、何をするか」です。5つの指標は日本に限った話ではなく、これを新・日本的経営と言わなくてもいいのではないでしょうか。重要なことは、いい経営の指標を作って、その中心に理念があり、価値を作り続けていることだと思います。その点で、GEはすごい。130年の歴史でCEOは9〜10人でしょう。イメルトの時代は終わったと思っていましたが、ここに来て全く違う企業へと変革を進めている。この期間は15年。株主も我慢しましたね。よく米国企業は短期的だと言われますが、今一番短期的なのは日本企業だという気がします。

私も100年続く企業が必ずしもいい企業だとは考えていません。統計的にも日本は長寿企業が多いですが、内部留保で生き残っているかどうかではなく、現時点で価値を発揮しているかが重要だと思います。先程、「日本企業の経営は、短期的になってきた」という話がありましたが、具体的にはどういうことでしょうか。
企業統計から判断すると、2000年以降、日本企業は目先の利益を追求していて、利益率は悪くないんですよね。その一方、研究開発費の削減、リストラの実施、正規社員の減少など、価値を発揮する活動はほとんどやっていません。
現在の日本企業は、「グローバル企業は…」「米国企業は…」「シリコンバレーは…」と外部に振り回され、自社の強みや事業の成功要因を捉えず、一貫性がなくなってきているということもあるのでしょうか。
シリコンバレーは場所でなく、新しい企業を生み出す、優れた仕組み(エコシステム)と捉えるべきでしょう。この仕組みは、経路依存(パスデペンデンス)が強く、他地域での再現性は難しい。昔は「日本にシリコンバレー(エコシステム)を作ろう」と言ってきましたが、グローバル化が進展した現時点では「シリコンバレーに行って、起業しよう」と言いたいですね。

企業は、価値を作り続けるべく、新しい仕組みを作ることが重要でしょう。今、注目しているのは「オープンイノベーション」です。20世紀は、外部効率よりも内部研究開発、垂直統合型ビジネスに代表される「見える手の時代」。90年代以降のデジタル化、グローバル化の進展は、外部の方が安価で知識量が多いという事象を生みました。例えば、学生に「インターネットを使わずに最近の自動車事業の動向調査」を指示したとしましょう。すると、学生は中央図書館で調べることになりますが、これは時代錯誤で非効率であることがすぐに分かります。昔、中央図書館は情報の宝庫でしたが、今のインターネットが持っている情報と比べると何億分の1でしかありません。どれだけ新しくても昨日の新聞しかありませんが、インターネットは2秒前の情報を入手することができる。中央図書館での調査はどのくらいの品質だろうかというと、ネット検索と比較すると全く違うでしょう。同様に、新商品開発を自社の中央研究所で実施することと、オープンイノベーションで世界中のリソースを自由に活用し、開発することには大きな違いがあります。外部の知識に迅速にアクセスできることが重要です。なぜならば、現時点で企業に利益をもたらすのは唯一「スピード」だからです。新商品だけがマージンを取ることができ、商品は早期に陳腐化します。iPhone6 はもう値段がないのと同じです。始めの半年、1年だけが大きなマージンを取ることができる。それに加え、研究開発期間が半分になれば、開発コストは半分になる。
ビジネスのゲームは、収益構造のスピードを如何に上げるかなんです。日本企業の強みは、垂直統合型、企業グループをベースに「金のなる木」を「花形」にする領域(シェアを上げるべき領域、いわゆる問題児)に大量に資金を流すことができたことでした。しかし、ルールは変わったのです。日本企業は早急にゲームのやり方を変えなければ、キャッチアップは難しくなるでしょう。

弊社は韓国とタイに海外拠点があり、そのクライアントはほとんど現地企業です。現地での支援実績から、日本の特徴が分かってきました。韓国企業からは、経営計画の細かさは面白いという一方、慎重で遅いと言われる。私は、それに加えて、売る執念が弱いのではないかと考えています。彼らは、技術よりもデザインを重視します。なぜなら売ることから逆算して、デザインを重視するからです。日本企業が「あり方」を気にする一方で、海外企業はスピードに加えて「顧客の獲得方法」に注力しています。
「売るという執念」が弱いということは、「経営として甘い」とも言えますね。利益率が10%以下の企業でCEOが4年、8年も続くというのは、海外企業では例外です。「業績にもっと執着を持つべき」と言うと、「米国型になっていいのか」という議論になる。そうではなく、日本型の企業でも業績を上げている企業は上げている。業績が上がらないと、CIS、EIS、仕組み、人財育成も何もできないですよね。日本企業はもっと業績、特に売上げよりも利益率を重視すべきです。その利益率を高めるために「スピード」を意識することが重要だと思います。利益を高めるには、プロダクトアウトではなく、売れる、顧客のデータが大事です。今起きている、ビッグデータ、マーケットイン、オープンイノベーション、デザイン重視などは全て関連づけて理解できます。日本企業は、「日本的経営」を隠れ蓑に、低業績で、たいした価値を生まないゾンビ企業を増殖する構造に安住しています。「新・日本的経営」というと、そこに安住する可能性も包含している気がして違和感を持ってしまいます。「日本企業の現状は決してよくない」ということを前提とし、新たな価値と利益を生み出すことが重要ではないでしょうか。価値を生み出せなければ、最終的には雇用を失うことになってしまいます。
失われた20年の中で同じような変革メッセージが発信されていますが、日本企業がなかなかその方向に踏み出せない理由があるのではないでしょうか。文化的な違いによる前提条件の違いか、アプローチが適切でないのか、どのように変革を進めていけばいいのかについて、企業に迷いがあるように思います。実際に何がハードルになっていると考えますか。
解はないと思います。各企業のトップが、自社のおかれた環境下で最大限の努力をし、進退を掛けてコミットした数値目標の達成努力をすべきです。今後の環境の変化として消費税増税があります。消費税増税は消費を抑制すること。有効需要や市中の貨幣流通量を増やせば供給の波がくるというのは幻想です。今は供給過多であり、いくら需要を作ってもインフレによってそのギャップを埋めるということはありません。本質的な投資以外あり得ないんだと思います。具体的には、Industry4.0 やIoT などによって需要を底上げし、供給を均衡させることです。必要なもの以外作らない。マーケットが欲しいものだけにピンポイントでニーズを作り、価値を作る。大量に作って、大量に販売し、大量に廃棄するという従来の社会を変えることが、ドイツのIndustry4.0 です。したがって、この領域での投資は十分あるでしょう。投資は本質的なところにしかありません。本質的な投資のポイントは、「未来のエネルギー構造を見据える」「過剰生産をやめる」「地球に負荷をかけない」「特に経営資源が人間しかない日本は、人間に対する教育投資を増やす」の4項目だと思います。
特別インタビュー
プレミアム対談