2023.08.20

カーボンリサイクルとは

カーボンリサイクルとは、CO2を再利用することで排出を削減するための技術です。工場や産業プロセスで大量に発生するCO2を収集、分離して再利用することで、地球上の炭素循環を促進します。これにより、CO2の大気中への放出量を減らし地球温暖化の防止につなげることが可能です。

カーボンリサイクルとは

カーボンリサイクルとは、工場で排出されるCO2を炭素資源として再利用することです。排ガスからCO2を分離することでリサイクルするほか、大気中のCO2を減らすことが可能です。カーボンリサイクルは、持続可能な経済社会の構築に向けた重要な取り組みであり、再生可能エネルギーや省エネ技術とともに、地球環境保護のために広く注目されています。

カーボンリサイクルを表明している国

2021年4月時点で125ヵ国が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと発表しています。

参考:第2節 諸外国における脱炭素化の動向(経済産業省資源エネルギー庁)

カーボンニュートラルとは、CO2排出量を削減し、排出した量と吸収した量が釣り合っている状態を指します。これは地球温暖化対策の重要な目標であり、持続可能な社会を築くうえで欠かせない取り組みです。

これらの国々は、再生可能エネルギーの普及、省エネルギー技術の導入、森林保護など、さまざまな施策を進めてカーボンニュートラルを達成する計画を立てています。また、企業や個人もCO2排出を削減するために取り組んでおり、世界全体で温暖化防止に向けた取り組みが進んでいます。

日本のカーボンニュートラル実現への取り組み

日本は2020年に、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。脱炭素社会を実現することで、温室効果ガスの排出を実質なくすことが目標です。

さらに、2050年カーボンニュートラルを目指すことを目的としたエネルギー基本計画を表明しました。主なテーマとして、2050年カーボンニュートラルや温室効果ガス排出削減目標の実現を実現するためのエネルギー政策、安全供給の確保やコストの低減が挙げられます。持続可能な社会の実現に向けて、国民や企業が一体となって取り組むことが重要とされています。

参考:第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組(経済産業省資源エネルギー庁)

参考:第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました(経済産業省)

カーボンリサイクルのプロセス

カーボンリサイクルには主に次のプロセスがあります。

  1. CO2を回収
  2. CO2を有効活用

CO2を回収

カーボンリサイクルを進めるためには、まずCO2を回収することが必要です。工場や発電所などの排出源からCO2を回収し、再利用可能な炭素資源として蓄積することで、CO2排出の削減や資源の循環を実現します。

CO2回収技術にはさまざまな方法があります。例えば、吸収剤を用いて排出ガスからCO2を吸収し、再分離する方法や、高温でCO2を回収する方法です。これらの技術の開発と導入により、CO2回収の効率向上が進みつつあります。

CO2を有効活用

回収したCO2を有効活用することで、カーボンリサイクルの目的を達成することが可能です。回収したCO2は、さまざまな方法で再利用されます。例えば、CO2を化学反応に利用して新たな有用な物質を生成する化学的CO2変換や、植物が光合成に利用するためにCO2を供給するCO2供給システムなどです。

さらに、回収したCO2を鉱石やセメントなどの製造に利用するCO2鉱物化技術も研究されています。これにより、CO2を炭素固定した製品を生産することで、長期的なCO2排出の削減と炭素循環の促進を実現します。

カーボンリサイクルの利用例

カーボンリサイクルには次のようにさまざまな利用例が挙げられます。

  1. 燃料
  2. 鉱物
  3. 化学製品

燃料

カーボンリサイクルすることで、燃料として使っているケースがあります。例えば、再生されたCO2を化学反応を経て燃料として使うことで、従来の化石燃料の代替となるエネルギー源を生み出すことが可能です。

これにより、環境に負荷をかけずにエネルギーの供給がおこなわれるため、持続可能なエネルギー社会の実現につなげられます。カーボンリサイクルを通じて、CO2の排出を削減し、同時に再生エネルギーの開発や利用に向けた取り組みが進んでいます。

鉱物

カーボンリサイクルしたものを鉱物として再利用している場合もあります。CO2を化学的な反応によって固定化し、鉱物として地球内に貯蔵するプロセスです。具体的には、CO2を水や鉱物と反応させて安定した炭酸塩鉱物を生成する方法が用いられます。

この手法は地球温暖化対策の一環として注目されており、地球上のCO2の濃度を減少させることで気候変動の抑制につながると期待されています。さらに、CO2を鉱物として再利用することで地球上に長期間安定して保管されるため長期的な環境への影響を軽減することが可能です。

化学製品

カーボンリサイクルは、再利用されたCO2を化学製品として再利用する例も存在します。この場合、CO2を原料として使用してさまざまな化学反応を起こし有用な化学製品を生成することを目指しています。この手法はCO2の削減と同時に、新たな環境に優しい製品の開発にもつなげることが可能です。

例えば、CO2を利用してプラスチックやポリマーを合成する方法が研究されています。CO2は地球上に大量に存在するため、これを再利用してプラスチックを作ることで化石燃料由来の原料を減らすことができます。また、CO2を触媒として利用して化学反応を進める方法も開発されており、エネルギー効率の向上や副生成物の削減が可能です。

カーボンリサイクルにおける課題

カーボンリサイクルには次のような課題が挙げられます。

  1. 使用できない用途がある
  2. 多額のコストがかかる

使用できない用途がある

カーボンリサイクル製品は使用できない用途があります。例えば、従来のコンクリート製品と比較するとさびやすいため一般の建物には利用できず、道路ブロックなどに限られています。耐久性の面で制約があるため、建物や構造物のように長期間の使用を求められる場所ではカーボンリサイクル製品の利用がむずかしい場合が少なくありません。

今後はさらなる研究と技術の進化により、カーボンリサイクル製品の用途が広がることが期待されています。持続可能な社会の実現に向けて、カーボンリサイクル技術の発展が進むことで、より多くの分野での利用が実現される可能性があります。

多額のコストがかかる

カーボンリサイクル製品は作成の技術が確立していないことから、コストが高くなる点も大きな課題です。現在のカーボンリサイクル技術は、効率的かつ大量生産に向けた最適化が進んでいないことが主な原因です。高度な技術と特殊な設備が必要であるため、その導入コストが高くなっています。

この課題を解決するために、研究機関や産業界はカーボンリサイクル技術の向上に向けて取り組んでいます。新たな素材やプロセスの開発、効率的な製造方法の検討などがおこなわれているのが現状です。技術の進化により製造コストが低減すれば、カーボンリサイクル製品はより広範な用途で活用される可能性が高まります。

まとめ

カーボンリサイクルとは、CO2を炭素資源としてさまざまな用途に再利用することです。CO2排出量の大幅な削減や資源の安定的な確保をできる目的があり、技術革新ともいわれています。現状ではコストの高さや利用できる用途が限られているといった点が課題です。

しかし、これらの課題を解決するための研究が進んでおり、今後の技術革新に期待されています。カーボンリサイクルは、地球温暖化対策や資源循環に向けた重要な技術として注目されています。持続可能な社会を築くためには、引き続きカーボンリサイクル技術の向上と普及が不可欠です。

一覧に戻る

関連コラム