2023.07.05

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康管理や健康促進を経営目標として取り組むことで、企業自身が経営成果をあげると同時に、従業員の健康面での問題を軽減し、働きやすい職場環境を作ることです。

現代社会では仕事や生活のストレス、運動不足や不規則な食生活などが原因で、健康面の問題が深刻化しています。このような状況を受け、企業が取り組む健康経営が注目されるようになってきました。

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康管理や健康促進を経営目標として取り組むことで、企業自身が経営成果をあげると同時に、従業員の健康面での問題を軽減し、働きやすい職場環境を作ることです。

たとえば、企業がジムを設置したり、ストレッチやヨガのクラスを開催したり、定期的な健康診断を実施したりすることがあります。健康経営は、単なる健康管理や健康教育だけでなく、経営戦略の一環として、長期的な視野で取り組むことが重要です。

健康経営が注目されるようになった理由

健康経営が注目されるようになったのには社会的な要因があります。現代社会では高齢化や少子化などの課題があり、従業員の健康維持が企業にとって重要な課題となっています。また、働き方改革の取り組みも進むなか、従業員がストレスを感じたり、健康状態が悪化したりするリスクが高まっているため、企業は健康経営に力を注ぐようになったといえます。

健康経営の基本理念

健康経営の基本理念は、健康増進のための取り組みを通じて、従業員の健康を支援し、仕事とプライベートのバランスを取ることができる環境を整備することです。また、健康に関する情報の提供や健康意識の向上を促す取り組みをおこなうことも、健康経営の基本理念として挙げられます。

健康経営の意義

健康な従業員は生産性が高くなり、離職率が低くなるという効果があります。また、従業員の健康管理をおこなうことで、病気の予防や早期発見、医療費の削減につながることも期待できます。健康経営は企業の社会的責任の一環としても捉えられており、社会的な信頼を得ることにもつながります。

健康経営銘柄、健康経営優良法人における離職率
出典:健康経営の推進について(経済産業省ヘルスケア産業課)

従業員の健康状態の確認方法

健康経営を実践するうえで、従業員の健康状態を確認することは欠かせません。健康診断を実施することで、従業員の健康状態を把握することができます。また、定期的な健康アンケートを実施することで、従業員の健康意識の向上や健康に関する情報の提供をおこなうことができます。

健康経営における目標の設定方法

健康経営を実践するうえで目標の設定が重要であり、目標を設定することで、取り組みの方向性が明確になります。目標設定には3つのポイントがあります。

  1. 可視化できる目標を決める
  2. 期間を定める
  3. 目標設定は低めから始める

可視化できる目標を決める

健康経営では数字で可視化できる目標の設定が重要です。曖昧な目標設定では、健康経営の効果を発揮できません。数値化することで目標をどう取り組めばよいか明確になり、健康経営の結果も可視化できます。可視化することで進捗具合が把握しやすくなり、従業員のやる気にもつながります。

健康経営目標の例
健康経営目標の例

出典:健康経営における2023年に向けた健康目標値を設(ロート製薬)

期間を定める

健康経営は長期的に取り組むことで成果が期待できますが、そのなかでも目標を細分化し期間を決めておき、随時その目標を見直すことが大切です。数年先の目標設定をしただけでは、計画どおりに取り組みが進んでいるかわかりにくくなってしまいます。期間を設けることでより本格的な取り組みが期待できます。

目標設定は低めから始める

健康経営は長期的なスパンで取り組むものです。したがって開始直後から無理な数値の目標設定をしても、従業員からの反発が起こりかねません。また、目標達成をしてもリバウンドを起こし、すぐに元の状況に戻ることが想定されます。健康経営の基本的な目的は従業員に健康の意識を持たせ健康的な習慣を身につけさせることです。スタート時は課題に対して実現できる範囲の目標を決め、達成できたら次のステップに進むという流れが重要です。

健康経営のメリット

健康経営をおこなうメリットとして以下の6点が挙げられます。

  1. 生産性の向上
  2. 医療費の社会保障費の削減
  3. 人材の確保確保・定着
  4. ブランドイメージの向上
  5. 社員の健康増進

生産性の向上

生産性と疾患の客観的スケールによる評価
出典:疾患・病状が仕事の生産性などに与える影響に関する調査(健康日本21フォーラム)

健康な従業員は病気による欠勤やパフォーマンスの低下が少なくなるため、仕事の生産性が向上します。また、ストレスや不安の軽減によって精神的にも安定し、仕事に集中できます。健康経営を推進することで従業員の健康管理に力を入れることができるため、体調不良によるミスを防ぎ、生産性の向上につながります。

医療費・社会保障費の削減

社会保障給付金の見通し(経済:ベースラインケース)
出典:2040年を見据えた社会保障の将来見通し (議論の素材)(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省)

健康経営を推進することで、従業員の健康管理に力を入れることができます。その結果、生活習慣病やストレスなどの予防につながり、医療費の削減につながることが期待されます。また健康な従業員は、社会保障費の負担が少なくなります。医療費の削減につながることで、健康保険料や介護保険料の負担が軽減されます。

人材の確保・定着

健康経営に取り組むことで社員のモチベーションや満足度が高まるという効果があります。社員が健康であることで仕事に対するやる気やエネルギーがアップし、生産性が向上することが期待でき、社員が会社に対してより愛着を持つことで離職率が低下が見込めます。

ブランドイメージの向上

健康経営に取り組む企業は、従業員の健康管理に力を入れているということをアピールすることができます。健康に気を遣っている企業は社会的責任を果たしているというイメージが持たれ、社員が健康であることによって企業が長期的に繁栄することが期待できるため、投資家や顧客からの評価が高まります。

社員の健康増進

生活習慣病の健康問題がある場合、体調不良や疲労感があるため、仕事に集中することがむずかしくなります。また、長時間労働や過剰な業務負担などによってストレスがたまると、イライラや集中力の低下などが生じてしまいます。健康経営に取り組むことで、社員の健康を守り、ストレスの軽減、メンタルヘルスの改善などにつながります。

健康経営の課題

健康経営には多くのメリットがある一方で課題点も存在します。

  1. 費用の負担
  2. 従業員の意識改革のむずかしさ
  3. リスク管理の必要性
  4. 個人情報の取り扱い

費用の負担

健康経営を実践するためには、健康診断や健康増進の取り組みなど費用がかかります。また、専門的な知識を持つスタッフを配置する必要があるため、人件費の増加も課題となります。さらに、予算や人員などのリソースが限られていることもむずかしさの1つです。企業が健康管理に多大な費用を投入しても、従業員の健康リスクを完全に除去することはできません。そのため、企業は予算や人員の限られたなかで、もっとも効果的な健康経営を進めるための適切な判断が求められます。

従業員の意識改革のむずかしさ

健康に関する意識は人それぞれ異なります。健康経営を進めるうえで、従業員全員が健康への意識を高めることが理想ですが、現実的にはむずかしい場合があります。また、健康に関する行動は習慣化が必要です。従業員が健康的な行動を続けるためには、自発的な意識改革が求められます。しかし、習慣を変えることは簡単ではないため、従業員の健康意識を高め健康的な行動を続けるためには継続的な支援が重要です。

リスク管理の必要性

健康に関するリスクは個人差が大きいことが挙げられます。たとえば、同じ食事をしていても、人によっては健康被害を引き起こすことがあります。また、健康問題に関する症状が出るまで時間がかかることもあります。そのため、企業がリスクを予測し、対策を講じることは非常に困難です。従業員の健康状態は一時的なものではなく、長期的に見ていく必要があり、健康問題が発生した際にその原因を追究し、再発防止策を講じることが求められます。

時代の流れに応じた臨機応変さ

新型コロナウイルスの影響により、在宅ワークを取り入れる企業が増加傾向にあります。その影響から、在宅ワーク特有の身体的な不調やストレスが課題とされています。したがって時代の流れに応じた臨機応変な対応ができる仕組み作りが重要です。

テレワークによってどんな不調を感じていますか?
出典:テレワークとなった働き世代1,000人へ緊急アンケート(OMRON)

Withコロナ期に増えた相談
出典:健康管理システム「Carely」、Withコロナ期の健康相談を調査しました(PR TIMES)

まとめ

健康経営とは、従業員の健康管理や健康促進を経営目標として取り組むことです。2010年半ばから、健康経営の取り組みが適切かどうかを評価する基準として健康経営優良法人認定制度が設けられ、社会的に健康経営がますます重要視されるようになっています。

ただ、課題もあり、従業員が同じ目線で健康に対し取り組むことや、新型コロナの影響で新しい働き方として在宅ワークが増加したことで柔軟に対応する体制が求められています。事業を長期的に継続させるために、健康な従業員を育て企業とともに成長することができるよう、健康経営の考え方を今後も発展させていく必要があります。

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