2023.02.07

ジョブ型雇用と成果主義の違い

ジョブ型雇用とは、特定の業務に対して対応できる人材を採用する雇用手法です。業務内容や報酬、勤務地や業務時間などはあらかじめ決まっています。そのため、ほかの業務をする必要はありません。成果主義とは評価制度であり、業務や成果物の質によって報酬が異なります。成果主義はジョブ型雇用やメンバーシップ型雇用にも適用できます。

ジョブ型雇用と成果主義の特徴

ジョブ型雇用とは特定の業務に対して対応できる人材を採用する雇用方法で、成果主義とは業務内容に応じて給与を決める評価制度です。いずれも継続年数や年齢など年功序列の考え方はなく、業務の成果が重要な評価の材料となります。しかし、ジョブ型雇用の報酬が固定している点と比べて成果主義においては報酬が変動します。このほかにもさまざまな異なる点が挙げられるのです。

成果主義は、ジョブ型雇用やメンバーシップ型雇用両方の雇用方法に適応できます。

ジョブ型雇用の特徴

ジョブ型雇用は特定の業務に対して遂行できる能力のある人材を採用します。能力によって報酬が変動し、採用の段階で評価が終わっていることから報酬額は固定となります。つまり業務を遂行した時点で成果の良し悪しに関係なく、報酬は一律です。ジョブ型雇用はジョブディスクリプションに記載された業務内容や勤務地から変変更はありません。

ジョブ型雇用が進んでいる欧米では業務が終わったら契約が終わることが一般的です。しかし、日本では業務遂行後も次の業務を契約することが少なくありません。

成果主義の特徴

成果主義とは、業務の質や成果の良し悪しを基準として給与を決めていきます。成果主義はジョブ型雇用のように特定の業務に対して採用する場合と、メンバーシップ型雇用のように人材ありきで採用する場合があります。

成果主義は、業務の成果以外にプロセスや実力などに基づいて給与や人事に反映します。年齢や経験、学歴、勤続年数などは反映されないことが一般的であり、勤続年数が長い従業員であっても成果の良し悪しによっては評価が下がる可能性があるのです。このため、勤続年数や年齢などが評価されず成果が対象になる点はジョブ型雇用と特徴が似ています。

年功序列が廃止され成果主義を導入するケースは近年少なくありません。成果主義が導入されたきっかけとしては、働き方の多様性やバブル崩壊後の業績悪化が挙げられます。働き方が増えたことで、勤続年数や年齢が基準の評価だけでは公正な評価が出来なくなった点、また業績悪化により勤続年数が長い従業員に高い給与が支払えなくなったためです。

ジョブ型雇用と成果主義の違い

ジョブ型雇用と成果主義は次の点で異なります。

  1. 採用する人材
  2. 評価の違い
  3. 解雇の対象

採用する人材

ジョブ型雇用は特定の業務に対してスキルや経験を持っている人材を採用することが一般的です。対して、成果主義は対象の業務を遂行するために採用する場合のほかに、人材ありきで採用する場合もあります。

評価の違い

ジョブ型雇用は採用をする段階で評価が決まっており、業務を遂行した場合の報酬はあらかじめ決められています。そのため、担当している業務が遂行されていれば一律の報酬を支払うことになるのです。成果主義は業務の出来具合や成果などによって評価され給与を決めます。

解雇の対象

従来のジョブ型雇用の場合は特定の業務が終わると解雇となる可能性が少なくありません。しかし、日本ではジョブ型雇用であっても解雇されにくくなっています。成果主義で採用した人材は対象の業務がなくなっても、解雇にならないケースも十分にあります。

ジョブ型雇用の導入類型の種類

ジョブ型雇用には次の導入類型が挙げられます。

  1. アドオンタイプ
  2. ポートフォリオタイプ
  3. 階層切替タイプ
  4. 全社転換タイプ

アドオンタイプ

アドオンタイプとは、基本的にはメンバーシップ型雇用のままで高いレベルが必要、また特殊の職種のみジョブ型雇用を導入する方法です。人材マネジメントの枠組みを変更する必要がないため、ジョブ型をスムーズに導入でき、調整コストがもっとも抑えられる方法です。そのため、特別なスキルを持った人材を即座に確保する必要があるときに向いている方法です。

ポートフォリオタイプ

ポートフォリオタイプとは、業務内容やポジション等に応じて従来のメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の使い分けが可能です。営業担当者がメンバーシップ型雇用、開発担当者がジョブ型雇用など企業や業務内容によってさまざまな活用方法があります。企業に合わせて使い分けができるため、アドオンタイプ同様導入に負担がかからない方法です。

階層切替タイプ

階層切替タイプとは、管理職に上がったらジョブ型雇用、そのほかはメンバーシップ型雇用にするなど階層によってジョブ型とメンバーシップ型を切り替える方法です。管理職に就くまではメンバーシップ型雇用で色々な業務やポジションなどを経験し、管理職になったらジョブ型にするなど階層によって切り替えます。

全社転換タイプ

全社転換タイプはすべての従業員に対してジョブ型雇用を導入する方法です。メンバーシップ型雇用から完全に切り替えることになるため、企業全体としても改革が必要です。そのため、すべての従業員に周知するなど準備や導入に時間やコストがかかります。評価制度やビジョンなどを見直す必要があるため、もっとも手間や時間がかかるタイプです。

成果主義のメリットやデメリット

成果主義や生産性の向上やモチベーションの向上などのメリットがある反面、離職率の増加やチームワークの低下といったデメリットがあります。

成果主義のメリット

成果主義において、従業員がより高く評価されるためには成果を上げたり、プロセスを評価されたりする必要があります。そのため、従業員がいかに高く評価されるか自分で考える必要があることから成長につながる可能性があるのです。さらに、継続年数や年齢でなく頑張りによって報酬が上がる可能性があることから、モチベーションを向上できる場合があります。

このほかにも、従業員が高い成果を上げるために工夫することから生産性の向上も期待できるのです。

成果主義のデメリット

業務内容によって、明確な数値で成果が出ない場合があります。そのため、評価基準設定がむずかしいことがあり、従業員の不満につながる可能性があるのです。さらに、個人の成果を意識しすぎることからチームワークが低下するなど、不満が重なることによって離職率が上がるリスクがあります。

まとめ

ジョブ型雇用は、決まった業務に対して必要なスキルを持っている人材を雇用することです。業務内容を明確にしたうえで雇用契約を結ぶため、対象の業務だけをおこないます。そのため、採用してから業務が決まったり、異動や転勤の可能性があったりするメンバーシップ型雇用とは特徴が異なります。

成果主義とは、業務内容や成果物の質に応じて評価や給与が決まる評価制度です。ジョブ型雇用はあらかじめ報酬が固定されているため、報酬の面でも内容が異なります。さらに、成果主義は報酬制度であり、ジョブ型雇用やメンバーシップ型雇用の両方に適応できるのです。

ジョブ型雇用と成果主義は同じものだと考えられることがありますが、ジョブ型雇用は雇用方法、成果主義は評価制度であるため意味合いが異なります。

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