2023.01.16

バリューポートフォリオとは

バリューポートフォリオとは、ビジョンとの整合性やROI(投資資本率)といった2つの評価軸に対して事業の達成具合を評価する仕組みです。バリューポートフォリオを進めることで、本命事業や課題事業、機会事業、見切り事業といった4つの状況に分けられます。

ビジョンとの整合性は経営陣の評価やROIが高いと株主の評価が高いことになります。それぞれの評価に応じて会社がとるべき対応策が異なります。さらに、両方低い場合は事業を撤退をするべき場合もあるのです。

バリューポートフォリオとは

バリューポートフォリオとは、ビジョンの整合性やROIといった2つの軸で事業を4つのセグメントにわけて分析するポートフォリオ型のフレームワークのことです。バリューポートフォリオと同じようにポートフォリオ型のフレームワークにはPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)がありますが、いずれもBCG(ボストンコンサルティンググループ)が考案しています。

バリューポートフォリオは経営者が重要視するビジョンの整合性と、株主が重要視するROIの両方の視点から自社を評価できます。いずれかが足りていない場合は改善できる点が明確になるため、両方の要素を平行して成長させていくためにもバリューポートフォリオは有効的です。

バリューポートフォリオにおける評価軸

バリューポートフォリオは次の2つの評価軸で成り立っています。

  1. ビジョンとの整合性
  2. ROI

ビジョンとの整合性

会社は経営ビジョンを掲げているのが一般的であり、将来会社があるべき姿を明確にしています。利益目標が株主視点であるのに対してビジョンとの整合性は経営者視点です。

ROI

ROI(Return on Investment、投資利益率)とは、会社がどれほど利益を出しているかの指標です。ROIは利益 ÷ 資本により出ますが、数値が高くなればなるほど利益を出している会社を意味します。株主や投資家にとって利益を上げていることがもっとも重要であるため、ROIが株主視点として位置づけられていることが一般的です。

バリューポートフォリオのセグメント

バリューポートフォリオはビジョンとの整合性やROIをもとに現在の事業を評価します。評価結果をもとにして、バリューポートフォリオは次の4つのセグメントに分けることができます。

  1. 機会事業
  2. 見切り事業
  3. 本命事業
  4. 課題事業

それぞれのセグメントにおいて、会社が対応するべき内容が異なるのです。

機会事業

機会事業とは、ビジョンとの整合性がとれていないがROIは高い状況の事業のことです。利益を出していながら、将来的なビジョンとは方向性が違う状況であることが一般的です。利益が出ていることからそのままでいいと考えられがちです。

しかし、自社が掲げているビジョンと方向性が違う事業を長期間続けていると、顧客の理解を得られずブランド力が落ちる危険性があります。さらに、社員が方向性を見失うことになり離職率が上がるリスクもあるのです。

対応策としては、事業内容をビジョンと一致するように修正するかビジョンを変更するかのいずれかです。状況にもよりますが、事業内容を修正することが容易であることが一般的です。

見切り事業

見切り事業とはビジョンとの整合性がとれておらず、さらにROIも低い状況の事業です。一時的なブームに乗ろうとして失敗するなど、さまざまな理由が考えられます。このような状況であれば、事業修正に時間や費用をかけるのではなく早めに撤退するのが一般的な考えです。はっきりと見切り事業であると可視化できる事業は、早めに徹底もしくは縮小するべきです。

本命事業

本命事業とはビジョンとの整合性がとれており、さらにROIも高い事業です。しっかりと利益につながっておりビジョンとも一致している状態であり経営者にとっても株主にとっても理想的であるといえます。安定した利益を出し会社が求めるべきビジョンと一致していることから、価値のある事業でありさらに拡大を狙うべきです。戦略面においては現状で問題がないことから大幅に変更する必要はありません。

課題事業

課題事業とは、ROIが低い状態ですが経営ビジョンとの整合性はとれている状態の事業です。ビジョンと一致しているため継続したい事業ではありますが、利益が長期間上がらないと株主や投資家が満足しにくい特徴のある事業でもあります。

課題事業においては営業戦略を見直したり、コストを削減したりして利益率の向上をさせることが最優先課題です。経営ビジョンとの統合性はとれていることから、事業運営の方向性は基本的に変更する必要はありません。課題事業は利益を出すことができれば本命事業に変化する可能性があります。

バリューポートフォリオを導入するメリット

バリューポートフォリオを導入することにより、次のメリットが挙げられます。

  1. 株主の視点で事業を分析できる
  2. 経営者の視点で事業を分析できる

株主の視点で事業を分析できる

バリューポートフォリオを導入することで、株主の視点で事業を分析できます。株主にとって重要なのは会社が利益を出していることです。バリューポートフォリオを進めることで、ROIが高いかどうかの把握ができます。ROIが高いことによって、株主の視点では会社に対して高い評価ができるのです。

ビジョンとの整合性がとれていれば会社としては存続をしたいところですが、株主が納得しないことが多くなり利益が長期間でないと経営の継続がむずかしくなります。そのため、利益率の向上に努めることが必要です。

バリューポートフォリオを進めることで株主の視点において重要な利益率を意識しながら運営戦略の検討も可能です。運営戦略が明確であれば社員は同じ目標に向かって業務をできるため生産性が高まる可能性があります。しかし、社員の満足度が高くビジョンに向かって業務ができていても、採算をとれないと株主だけでなく会社にとってもマイナスとなります。そこでビジョンとの整合性を把握しながら、利益率にも注目できるバリューポートフォリオを活用すると効果的な運営が可能です。

経営者の視点で事業を分析できる

バリューポートフォリオを導入することで、経営者の視点での事業の分析が可能です。経営者にとって重要なのは利益だけでなく、経営ビジョンを達成することです。利益が出ていても経営ビジョンとずれている状態であれば、株主の評価が高くても社員や顧客の評価が落ちやすくなります。そのため、社員の離職率が高まったりブランド力の低下につながったりするリスクがあるのです。

たとえ現在利益が出ていてもビジョンとの整合性をとれていなければ、事業内容もしくはビジョンを変更することが必要です。バリューポートフォリオを活用することで、ビジョンとの整合性と利益の両方を可視化できるため運営において有効だといえます。

まとめ

バリューポートフォリオを進めることで、自社の事業をビジョンとの整合性やROIといった観点で評価できます。ビジョンとの整合性が高いと経営者の視点では評価が高く、ROIが高いと株主の支店で評価が高いことになります。

いずれかが低い場合は利益率を高めたり事業の変更をしたりなどの修正が必要です。ROIとビジョンの整合性が高い事業は理想的であり、今後拡大を見越した経営を進めていくことが一般的です。ROIとビジョンの整合性の両方が低い場合は時間や費用をかけずに撤退をすることが賢明です。

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